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俺に身長をくれっ!  作者: 968
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通話

先程千籐燐華に襲撃されメモ帳を奪われた男はその場から少し離れた彼女らをが見える位置でマスクを外し、携帯電話を取り出す。

黒く染まっていた画面を明るくして少し操作してからその画面を耳元に添える。

男は何者かに一連の出来事を連絡し始めた。

「総督、密書(メモ)が奪われました。」

相手に繋がったと知った瞬間に男は出来事の重要事項を口にする。

密書…彼女に奪われたメモ帳のことだ、あれには今までに見つけた選ばれし子と思われる少女について書かれている。

選ばれし子、と言っても世界を救済できるから~とか異世界から乗り込んできた魔物と戦う力を持っているから~とか魔法少女に変身することができるから~とかそのような理由ではなく、仕草や風貌や様々な外見から我々が愛でるに値する人物、という意味だ。

チャンスがあればメモ帳に書き込むだけでなく写真や動画に収めることもあるが、それは言葉で言い表せないような可愛らしさを持つ子に対して使う最終手段である。

許可せずして写真や動画に収める行為は盗撮と言われるのが確実。

可能なら小学生と思わしき少女を写真に…いや、あの可愛らしさを写真という複製で汚すのは躊躇われる。

『そうか……奪われてしまったか。こうしてお主が私に電話できるということは警察のような類に奪われたではわけないのであろう?して、誰に奪われたのだ?』

密書が奪われたというのに総督の口調は落ち着いたものであった。男に対しての怒りは篭っていない、強いて言えば奪われたことによる悲しみぐらいであろう。

それを感じ取った男は自分の行いを責める、たとえ至高の存在を目にしたとしてもあの女の目の前でメモを取り始めてしまった。特徴を余すことなく記憶し別所で記録すればよかったのだ。

自身の愚かさに下唇を強く噛み締める。

「千籐燐華…奴らの大将です」

自分が愚かなばかりに…。今度は手に持っている携帯電を握り締める。

『あ奴か…、それならば仕方ない』

ふぅぅぅぅぅ。と携帯電話越しに総督のため息が聞こえる。

余談だが総督は電話をする時機械に声を通して声音を変えていると聞く。趣味なのか自身を特定されないようにするためか、毎度声が違う。

前回電話を掛けた時はアニメ声の女声で出ていたが、それに対して今回は渋い男声だ。

『で、どのようにして奪われたのだ?近くにいることに気づかずに獲られたのか?』

「いえ、彼女の存在には気づいていました。その時メモしていた娘の隣にいたので目を離さなければ大丈夫だろうと思いペンを走らせたのですが、気づけば背後を取られてそのまま…」

あと、こちらをじぃぃぃぃぃぃぃぃぃ、と見てくるのでその一生懸命な顔に見とれてしまっていたってのもあるが奴から意識を逸らしてしまっていたということになるので、これは確実に怒られるから言えない。

『彼女らの存在に気づいたのならその場で行動せず立ち去れ、と言っていたつもりだが行動してしまったということはそれほどの娘だったということか?』

「はい。言葉だけでどう説明したらいいのか思いつきませんが、写真という名の贋作に写し取って複製することが躊躇われるほどの可愛らしさは確実です」

これは嘘ではない。あの可愛らしさを愛でることができたのならこの身体が爆散しようとも文句は言えない。いや、あの可愛らしさを愛でることによって爆散してしまう。

その御身を露わにして足先から頭頂部にちょこんと生えたアホ毛まで舐めまわすように見たいと考えて程である。

想像に過ぎないが肌はマシュマロのように柔らかく、脳を蕩けてしまうような甘い匂い。

その声の響きは我々の心臓の震えに同調して止めてしまうような可愛らしい…いや、我々の心臓の響きと同じにしてしまうのは失礼だ。天の鐘のように清らかに響き、安眠を誘うような優しさ、その声だけでも我々のハートを鷲掴みにしてしまうような可愛らしさが存在することだろう。

先程は雑音混じりでよく聞こえなかったがきっとそうだ。

『そこまで言うならきっと可愛らしいのだろう。まだその娘はいるのか?』

「はい、今動き始めたところです」

『ならばバレないよう十分注意して尾行し、その姿を写真に収めてこちらに送ってくれ。序でに何処かの店に入った場合その店の場所を知らせろ』

「了解です」

返事をすると通話が切れたので携帯をポケットに仕舞い、彼女らにバレないであろう距離でついていく。

千籐燐華ともう一人何処かで見たことのあるような女性はそれぞれ片方ずつ少女の腕を持ち、引きずりながら歩を進める。

少女は人生を諦めたかのような面持ちで引きずられていくが、引きずる彼女たちに話掛けられると表情は変えずに返答。

絶望した顔の彼女になにがあったのかは知らないが、あの外見からして恐らく小学生であろう。

欲しいものがあったのだが買って貰えなかったとか、行きたくない場所に連れていかれているとかそんなところだろうか。

雰囲気からして見知らぬ人ではなく友人に見えるので危ないところには連れていかれることは無いはずだ。

しかし…どこで見たのだろうか、あの胸の膨らみが皆無な女性…。顔がよく似た女性なら昔仲間に見せてもらったことがあるが、その女性はすれ違った男性誰もが二度見してしまうような巨乳であった記憶がある。

それに対して目の前にいる彼女は断崖絶壁、男性誰もが見向きもしないような壁だ。

巨乳ならぬ虚乳だな。

男がその言葉に上手い、と自画自賛している間に彼女たちはとある店に入っていった。

掲げられている看板には”B:G”と書かれ、BよりGのほうが大きい。比率としてGのほうが多いという意味なのだろう。BとGはどのような意味があるのだろうか。

入っていった店の名前を認識するとすかさず総督に電話をする。

「総督、俺です」

『君か。写真より先に電話をしたということは彼女たちは店に入ったのだな』

渋い男声に変わって今回は何処ぞの軍隊で指揮官をしていそうな強気な声質の女声だった。

趣味なのかな…。

「はい。彼女たちは”B:G”という店に入りました」

『…………。それは君や原田たちが通う高校の近くのショッピングセンターにあるやつか?』

総督の声が緊張したものに変化した。

その問に男は「そうです」と返事をする。

『その娘のことは構わん、すぐさまその場から立ち去れ』

「しかし…!」

総督がそう言うということはあの店は恐ろしいのだろう。

だがこの機会を逃せば次は無い、あの娘の可愛さは何としてでも写真に収めて総督に見せたいのだ。

『だめだ、リスクが高すぎる』

その言葉が足枷として近づこうと動かす足を床に縛り付ける。

しかしあちらに千籐燐華がいる限りリスクが高いことに変わりはない。

ならば少女を撮りやすい位置に移動して写真に収めすぐに逃げよう。

まだこちらに気づいていない今のうちに。

「総督、大丈夫です。俺絶対に写真に収めてみます」

『やめろ!失敗したら二度と』

通話が総督の話の途中で切れた、総督が切ったわけでも俺が切ったわけでもない。

俺の横にいつの間にか立っていた二十代と思わしき男性が切った。

話している最中に俺の腕を引っ張り画面に映し出された”通話終了”のボタンを押したのだ。

誰だ!と叫ぼうとした俺の口を押え男は言った。

「ワタシと、楽しいことしない?」



男はその後総督と…組織と関わることは無かったという。

男はどうなったのか…。

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