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「おはよう。」
「「おはよう」」
「今日はみんなが何故か日本語が読めることがわかったから古本屋さんで絵本を仕入れてきたよ。あと、うちにあるもう読まない本も紙袋に詰めてきた。」
「私も昔読んでもう読まない推理小説やミステリー小説持ってきたの、考えることは同じね。あと、日本語がいけるんなら動画もいけるかもってDVDプレーヤー持ってきたわ。ポータブル充電器もあるから5時間ぐらいは行けると思う。壁に映せるようにオプション器具も持ってきたからみんなで見ることができると思う。とりあえず試してみないとね。」
「映画いいね。じゃポップコーンいるじゃない?スーパーで買ってこようか。今日はホワイトシチューとマルちゃんと約束したからカステラパンケーキ作る予定で材料は買っているんだけど。」
「そうね。ポップコーンはあるといいね。でも、今からスーパー行くのは大変じゃない?」
「大丈夫よ。自転車なら数分だし。やっぱり映画にポップコーンは欲しいね。」
「じゃ透子お願いするね。」
「わたしは畑用の種を追加で持ってきたよ。あっちの畑は、すぐに大きくなるんだから面白いね。この際だからいろいろ実験してみようかと思っている。あとは昨日のパッチワークの続きね。」
「そうだね。とりあえずポップコーンだけ買ってくるから、お茶でも飲んで待っていて。」
準備も出来て向こうに行く。台車に本を載せていく。わたしと凛子の本合わせると結構な量になった。何故日本語が読めるのかはさっぱりわからない。向こうの文字が読めない人も日本語は頭に意味が浮かぶそうだ。面白い。理由はわからないけど、日本の本が読めるのであれば読んでもらいたい良質な物語がたくさんある。自分の持っているものはあげてしまえないので、古本屋で同じものを仕入れてきた。何度読んでも好きな本は手放せないんだよね。昔人間だから布教用は常備置いていないし、今はネットでもすぐに欲しい本が買えるのが凄い。助かっています。
「マルちゃん、遊びに来たよ!」
「まじょさん、おはようございます~。」
「トーコ様、リンコ様、ヨーコ様おはようございます。」
「マルちゃんのお母さん、おはようございます。」
「トーコ様、それは大量の本でしょうか。」
「ええ、昨日みんなが日本語を読めるってわかったので、たくさん持ってきました。全部古本ですが、物語は面白いものばかりです。集会場に置いておくつもりなので、みなさんで読んで下さいね。あと、今日はお昼のスープとおやつのカステラパンケーキとポップコーンを作って映画を見ようと思っています。洋子は畑に新しい野菜を植えに行く予定です。」
「本に、“えいが”ですか。新しいものがたくさんでとても嬉しいです。みんなも喜ぶと思います。トーコ様たちのお陰で、午前中はみんな仕事を頑張っています。こたつや火鉢や湯たんぽも増えてきたんですよ。あと、リンコ様、鶏が卵を産むようになって、ひよこが産まれましたよ。」
「え、ひよこちゃん。透子、洋子、本とDVDプレーヤーセットを集会場に置いてきたら、ひよこちゃん見に行ってくるわ。」
「わたしは、まず畑に行ってきます~。」
「凛子、ひよこのところに行ってきていいよ。荷物は全部集会場に持っていっとくから。」
「ありがとう!じゃ行ってきます。」
凛子と洋子と集会場の前で別れ、集会場に入ると今日もお手伝いしてくれるお母さん方が待機してくれていた。ホワイトシチューとカステラパンケーキの作り方を教えながら作っていく。ちゃんと泡だて器を持ってきた。ハンドミキサーは充電式持っていなかったから頑張らねば。マルちゃんには絵本を渡す。喜んでお母さんと一緒に集会場のすみっこで読みだした。上敷き敷いているけど、床に直はちょっと冷たいかも。今度使わない客用座布団とか、古い絨毯とか、また持ってこよう。
シチュー用に牛乳も持ってきている。パックに入っているのでびっくりされたし、スープに牛乳もびっくりされた。そもそも牛乳はあまり飲まないらしい。まぁ美味しいからお楽しみに。カステラパンケーキの方も順調だ。こっちは娘が小さい頃に絵本に影響されて何度か一緒に作ったことがある。出来上がりが本当絵本のようで娘たちは大喜びだった。久しぶりにレシピを確認してきたけど、いい感じだ。
集会場に人がひとりふたりと増えていく。洋子と凛子も戻ってきたところで、シチューとカステラパンケーキを配布していく。スープは白くてどろりとしているので、恐る恐るだが、カステラパンケーキの甘い香りにみんな気を取られている。
さぁいただきましょう。
「お、なんだ、このスープ旨い!」
「本当、食べたことないけど、美味しい。」
「寒い時はいいな。体が温まる。」
「このお菓子もとてもとても美味しいです。ふわふわで甘くて溶けてしまいそう。」
「こんな美味しいものは初めて食べました!」
「まじょさん、ねずみさんの“ぱんけいき”とおんなじです!!」
いつもより人気である。ふふふ。日本の固形シチューの素の勝利である。カステラパンケーキも完璧に美味しくできて、洋子と凛子も褒めてくれている。よし。
「今日は、映画の上映もするので、時間のある人は残って下さい~。」
「“えいが”?」
「そう、絵本が動いているものっていう感じ?です。わたしたちの話す言葉が理解できているのであれば、いけるかなって思って。とりあえず実験です。」
「トーコ様、リンコ様、ヨーコ様のすることであればどんなことでも受け入れます!」
いや、それは重いから・・・。
凛子がせっせと上映の準備をしている。洋子がポップコーンを作ってくれている。ぽぽぽんと激しい音がしだして、みんながびっくりしている。
「あれはお菓子を作る音です。大丈夫です。」
「そうなんですか。お菓子ですか。凄い音がするんですね。びっくりしました。」
「驚かせてしまってごめんなさいね。映画には必要なものなんです。」
さぁ準備ができた。ポップコーンは紙コップに入れてみんなに手渡した。上映開始である。
ちなみにDVDプレーヤーは凛子の私物で、上映するのは、〇〇ディ・ジョーンズ、イケオジの冒険ものである。凛子好きだねー。
集会場の壁に映した映画は、結果2時間近く興奮の渦に巻き込まれた。
みんな手を振り上げたり、声をあげたり映画に入り込み楽しめた。そのせいで、見ながら食べると思っていたポップコーンはぜんぜん手が付けられていなくて終わってから食べていたりした。想像以上に盛り上がってこっちがびっくりである。
「こんな面白いものがあるなんて初めて知りました!」
「とても良かったです!!」
「もう1回見たいぐらいです。」
「このお菓子も甘くないけど美味しいです。」
もう1回見たいという声が多かったので、凛子がバードにDVDプレーヤー操作を教えていく。映画の途中にやってきた隣の集落の職人チームの人も一緒に操作方法を聞いている。充電器ももう1回ぐらいならいけそうみたいだ。
職人チームの人は、こたつと火鉢を確認しにきたらしい。夜に再度上映すると聞き、今日はお泊りしたいとお願いしていた。途中から見たのなら最初から見たいよね。
「冬って寒いだけだと思っていたけど、温かい部屋の中で楽しい時間を過ごせるなんて素敵ですね。」
「ほんと、冬は楽しみがいっぱいだってわかってきたよな。」
「冬は寒いばかりじゃなくて、部屋でまったり楽しむのがいいんだな。」
住民の一言にみんなが大いに賛同した時
ぱりんといつもの音が頭の中でして、
冬の良さ発見を確認済。達成率24パーセント。
「おお!!また来たぞ。達成率上がった!!!」
「冬の良さって、楽しんでいるだけなのに。」
「冬はみんなで集会場にこもって楽しめばいいのか。」
「でも、これでいいんだ!!」
方向性が間違っていないことに安心して、わたしたちは家に帰った。今日も満足な一日だった。この後、王太子殿下一行様が集落にいらして、集落中がパニックになったり、一緒に映画を見たり、次の日朝から視察したりと大賑わいだったことは、次の日遊びに行くまで知らなかった。そして、夜の映画終了後に、達成率は30パーセントになったそうだ。良かった。良かった。ちなみに王太子殿下は、お泊りセットを持ち込みで馬車1台は寝台に改造されていたそうだ。気配りできる人は良き人である。




