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 透子たちが家に帰る少し前、隣の集落では


「あ。ダニエルさんが戻って来たよ!荷物が多そうだ。」


「手伝いに行こう。」


「おお、ありがとう。往復6時間かかったけど、行って良かったよ。ほら卵50個ある。光魔法使えるコニー探してくれ。」


「おう、わかったコニー呼んでくるわ。」


「あと、手の空いたやつ、集会場まで来てくれ。古着をもらってきた。」


「古着ですか、この透明の袋に入っているやつ。こんなに!!」


「ああ、結構あるから一人2枚はいけると思う。後エーリクいるか?」


「エーリクなら、おおい、エーリク、ダニエルさんが呼んでいるぞ。」


「おお、なんですか、ダニエルさん。」


「これ、もらってきたジャガイモとカボチャだ。ジャガイモは種芋にできる15個あるからかなり増やせるぞ。カボチャは1個だけど、種が多い。実は食べていいそうだから、スープにでもいれて、種を植えてくれ。」


「ああ。わかった。今の時点で種芋があるのは非常に有難い。助かるな。カボチャも増やせそうだ。もう食べ物もぎりぎりだったから、ここから巻き返せればいいな。」


「あと、鶏の餌でこれ貰って来た。」


「結構大きな袋だな。開けてみるぞ。あ、トウモロコシとアワとヒエと割れたコメか。これ鶏にやるのか?人が食べてもいいんじゃないか。」


「向こうの集落のものが言うには、畑でトウモロコシとヒエとアワは育てられるそうだ。食べずに増やそう。

 そして卵は50個ある。今、光魔法使えるコニーを呼んでいる。もし、ひよこが50羽孵れば餌がいる。

ひよこが大きくなれば卵が採れるしオスは食べることができる。

 だから鶏の餌は人が食べきるなって言っていたぞ。それに、取りに行けばもう1袋やるとも言われた。今日は三人で行ったからこれ以上は持ち運びできなかったが。」


「増やせるものなら増やそう。いつもと同じだと思って、種も備蓄せずあるだけ食べてしまって、行商人も来なくなって、王都に行っても種が買えずここまで逼迫してしまった。同じ過ちはおかしたくない。」


「あと“ゆたんぽ”というものと“ういすき”というお酒も貰ってきた」


「ダニエルさん、隣の集落はこれだけ俺たちに渡して大丈夫だったんですか?無理していませんでしたか?」


「ああ、まったく大丈夫だった。ほんとみんな笑顔だった。温かい具沢山のスープにあたたかい“こたつ”というものに足をいれ、美味しいお酒もいただいた。久しぶりに張り詰めた心が解放された気がしたよ。」


「それはまた・・・。何があったんですか?」


「まぁ集会場へとりあえず行こう。立ち話は体が冷えるからな。」


「わかった。他のものにも声掛けしてくる。」


「みんな集まってくれたか。今日隣の集落へ行ってきた報告をしたい。」


 集落のみんなに、古着、卵、ジャガイモやカボチャ、鶏の餌に湯たんぽやお酒の話をする。あと、見たことがなかった暖房器具の話。

 そして、


「伝説の三魔女殿がいらっしゃっていた。」


「え?三魔女殿?!」


「魔法は使えないとおっしゃっていたが、あれは伝説の三魔女殿だ。今、紹介したものはすべて三魔女殿がお持ちになったものだと伺った。」


「古着も卵も鶏の餌もお酒もジャガイモもカボチャに暖房器具も全部だ。」


「「「おおお!!」」」


「ジャガイモは種芋として植える。カボチャは種を植える。鶏の餌はトウモロコシとヒエとアワが入っていたから、これらも植える。

 植物魔法の使えるアニタ、ちょっと頑張ってくれ。

そして卵、隣の集落はこの50個の卵のうち47個孵化したと聞いた。47羽ひよこになる。光魔法の使えるコニーがいれば、あっという間に孵化するし、成長もする。

 ひよこが大人になれば、卵が定期的に入るし、オスならば肉が食べられる。餌もある。これで逼迫してきた食糧難が少し緩和される。


 古着は一人2枚は行き渡ると思う。あとで順番に選んでくれ。


 新しい暖房器具として“ゆたんぽ”を見本でいただいてきた。これは中が空洞になっているから、熱湯を入れて蓋を締めると、朝まで温かいそうだ。夜寒くて眠れなくなることがなくなると聞いた。これは職人チームで増産できるか検討してくれ。


 職人チームには、何人か隣の集落に行って欲しい。“こたつ”と“火鉢”を作れるように学んできて欲しい。あれらは非常に温かかった。冷えた足が一瞬でほかほかして、体の芯まで温まった。あれはいい。“こたつ”で飲む酒は最高に旨かった。」


「ダニエル!飲んできたのか!」


「ははは。行った特権だな。ただみんなにも1本頂いてきた。これは非常に旨い。そして酒精が物凄く強いから、ほんの少しだけで満足できる優れものだ。“こたつ”や“火鉢”が完成したら、みんなで飲もう。」


「おおう!絶対だぞ!」


「約束しよう!」


「「「おおお!!」」」


 この後、みんなでテンション高めで古着を選んでいく。温かくて軽くて素敵な古着というより新品のような服に興奮した。合い物や夏物の服でも重ねて着れば今よりずっと温かくなる。みな今より温かければ幸せなのだ。


 純毛のセーターやベストも温かいし、ジャンバーというものはカッコよくて本当にただで貰っていいんだろうかとみんなどきどきだった。でも頂いたのだしっかり着用させてもらおう。今の服の上から重ねて着ると寒さが和らぐ。それだけで嬉しいと思ってしまった。


 コニーとダニエルは鶏の飼育場所へ行く。卵50個分を次々孵化させていくと、48羽のひよこが孵った!


 久しぶりに聞くひよこの可愛い声に、他の住民も集まってきた。餌をやると凄い勢いで食べだした。子ども達も喜んで見ている。久しぶりのひよこだ。それもこんなにたくさん。

 これでどうにか生き延びれそうだ。


「そうだ、“ゆきがっせん”という遊びも教えていただいた。」


「遊びなのか?子どもがするものか?」


「いや、大人も混じって遊ぶらしい。」


「なんだ、それ?」


「試しにやってみるか。」


「おう。三魔女殿の言うことなら試してみる価値があるだろう。」


「話に聞くと5人ずつのチームに分かれて、雪で玉を作りぶつけ合うのだそうだ。当たった者がその場から抜けて全員当たったら負け、最後まで残った方が勝ちなんだそうだ。」


「よし、やってみよう。」


 白熱した。物凄く楽しかった。息が上がるぐらい張り切った。大人も子どもも、手が冷たくなるぐらい雪を握って玉にして投げ合った。


「なんだ、雪は寒くて邪魔だってずっと思っていたけれど、楽しかったな。」


「ああ、とても楽しかった。ははは。」


「また、やろう。今日のリベンジをしたい。」


「俺も再戦したい。今日は勝手がわからなかったせいですぐに負けたからな。」


「冬でも楽しいことがあるんだな。」


「面白かった!もう1回戦いたい!」


 雪合戦の楽しさを味わっていた、その時ぱきんと頭の中にいつもの音がした。


 冬の良さ発見を確認済。達成率17パーセント。


「「「おおお!!!!」」」


「おい、達成率が増えているぞ!」


「俺らも貢献したのか?!」


「やったな。冬の良さ、俺少しわかったぞ。」


「俺もだ、ははは。」


「明日は職人チームが隣の集落へ行くことをゴランに伝えてくれ。」


「わかったわ。兄さんにメッセージ送っておくわ。でもこんな素敵な服をいただけて、カボチャのスープも美味しかったし、みんなで“ゆきがっせん”は、なんだか本当に久しぶりに楽しかった。兄さんからも向こうも楽しいってメッセージが届いていたけど、これだったのね。冬でも楽しいって。伝説の三魔女殿って本当にいたのね。」


 こっちの集落と隣の集落、少しずつ冬の楽しみが伝わってきた。


 じんわりじんわりだけど、嬉しい事実である。


 そしてその頃王宮では、奇跡の集落の報告を聞いた王太子殿下が明日にでも視察に行くと張り切っておられた時に


 “冬の良さ発見を確認済。達成率17パーセント”


 と聞いた。狂喜乱舞である。


 今からでもその集落に行くと王太子殿下が駄々を捏ねられたが、夜に馬車を走らせるのは危険であると、翌日に出発することにした。

 集落まで馬車だと1日。朝出て夕方に着くぐらいだ。王宮の確認者が王都に戻る時にまた来るって言ってきたらしいから大丈夫だろう。

 明日どうなるのか。


 透子も凛子も洋子も何も知らないまま今日はおやすみ中。


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