最終話
------我が友。そちらの暮らしはどうですか?
きっと、貴方はどこでも破天荒に明るく楽しんでいることでしょう。
こちらは良いことにも悪いことにも変わりはありません。
あれから年は過ぎ、ルーフォンが少し大人になった気がします。メッシュですか? 子供のままです。おそらくこのまま見た目は変わらないだろうと言われてます。複雑な表情でしたよ。
リベリオやヴィンス、シュンリンは変わり無く城に滞在してます。たまにリベリオがこちらに顔を出しに来てくれてます。なのでこちらからも、ルーフォンやメッシュを連れて行ってます。
変わったことは、僕の拠点がメッシュやルーフォンの人間の土地に変えたことくらいです。まぁ、所詮拠点なので変わらずあちこち行ってますが。
もうひとつ変わったことは、貴方にもう会えないと言うことくらいでしょうか。早く会いに行きたいものですが、それを言うと貴方は心配するでしょう。怒るでしょう。だから精一杯生きて、この世界を見届けてやりますよ。だからたまに報告するので、ちゃんと聞いてくださいね。
他に変わったことは、特にないです。
魔王の席も、シュンリンがきちんと掃除しておいてますので、来れるもんだったら来てください。もちろん期待はしてないです。
人間も相変わらずですよ。勇者を立てて、魔物にちょっかいかけてます。もう何人が犠牲になったことか。会ったこともない魔王を倒すなんて、無謀ですよね。
誰が魔王になったかですか?
先程も言ったように、魔王の席は貴方の戻る席です。
そういえばリベリオが嘆いてました。
人間の土地に多く生息してる猫。そういえば、リベリオは貴方の猫の姿。といっても耳と尻尾だけですが。その姿好きでしたよね。今はその本物の猫に苛められてるみたいですよ。
貴方のために残したままの椅子に、居座ってしまってるだとか。
何で猫がって?
いつだったかに城の中に潜り込んできたらしいですよ。それをシュンリンが見つけて飼っているようです。
猫が好きなリベリオでも、あの椅子に座られるのは嫌みたいです。
魔物に魔王がまだ健在だって信じ混ませてます。リベリオが魔王の姿を作ってます。そのくらいリベリオは貴方が魔王というのを続けてほしいみたいです。
でも居なくなって気づいたのですが、貴方は最後までみんなに本当の名前を教えていかなかったですね。まぁ、呼ばれても魔王で長い年月呼ばれて来たので反応できないのでしょう。まさか、ご自身でお忘れになったわけではないでしょう?
貴方の場合あり得そうで怖いです。
ところで貴方はどうしてますか?
たまには一報くらいください。
無理なのは知ってますが、いつも貴方は無茶でわがままばかり言ってきたのですよ。たまにはこちらからも言わせてください。
あ、やっぱり一報は要らないです。怪奇現象は勘弁です。
貴方と過ごした日々、とても楽しかった。死ぬ思いもしたし、今こうして生きていることが奇跡に感じてます。
老衰で死ぬことは、ほぼない歴とした魔物な僕です。人間の土地にいると、自分がおかしいと思えてくるのです。メッシュがいてくれて良かったと本当に思う。でも、ルーフォンは先に貴方に会いに行くことでしょう。それもまた悔しいです。友をまた見送らなければならないなんて。
これは自分に対しての罰なんです。貴方を最後まで守ることが出来なかった罰。きちんと償います。でもメッシュがいてくれているので、あまり罰になっていない気がします。
あ、すっかり忘れていましたが、ユンヒュとは会いましたか?
誰よりも先に貴方に会いに行ってます。元々好意がなかったから会いに行っていないかもしれないですが、たぶんその辺に隠れているでしょうから、探してあげてください。
ただ、しばらくはそちらに行く者はいなさそうです。
なのでどうか、ユンヒュをいじめて遊んで、時間潰しでもしていてください。
どうか、また会えますように。勝手に生まれ変わりとかしないでくださいね。
いや、もう遅いでしょうか?
もし生まれ変わっていたら、貴方から早めに声をかけてくださいね。さすがに生まれ変わりは見付けられそうにもないので。
そうだ、これは言っておかなくては気がすみません。なので貴方の気持ちを一切考えずに言わせてもらいますが、最後のシェイルの一撃、わざと抵抗せず、避けることもせず、真正面から受けてでも、自らの手でシェイルを攻撃したことを。避けようと思えば、避けれたはず。皆気づいてます。シェイルを、孤独にしたくなかったのですよね。
優しいんだか優しくないんだか。
ちゃんとそちらで、会えていますか?
ユンヒュだけではなく、シェイルもいるのを忘れてました。
貴方を失ったのが、何よりも大きすぎて。
しかし、これを言わないと僕の精神が崩れてしまいそうだったので、吐きだしてみました。
あともう一つ、そちらでお聞きしているのかもしれないですが、仲間への最後の言葉もなく私を殺してくれてありがとう。とシェイルは最後に言ってました。貴方に殺されたかったのを、知っていての行為だったのですか?
いつかはその答えが聴けたらと思います。
では、また気が向いたら。--------
「メッシュじいちゃん。また本読んでるー」
「大事な友の日記だからつい、ね」
「お話聞かせて! じいちゃんの昔話大好き」
「じいちゃんはやめて。この面でじいちゃんはないでしょ」
「だって、アマシュリがよくじいちゃんって言ってたじゃない」
「からかわれてたんだよ」
「もう言う人がいないから寂しいかなって」
「そうだね。冗談だよって言って帰ってきてほしいものだね」
「ねぇ昔話! ルーフォンって人の話も聞きたい」
「じゃあ今日はルーフォンさんのお話にしようか」
「うんうん!」
「えっとねぇ~……………」
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。