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満月ロード  作者: 琴哉
第2章
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第34話

「まったく無駄な方々です」

「シェイルてめぇ」


 ようやくこちらに気付いたリベリオ達を見ていたが、後ろからシェイルが声に出しながら笑ってくる。


「この二匹が魔力で勝てると思っているのですか? この壁を壊すには上回る魔力が必要です。今のあなた方には無理だ」


 怒りに満ちたシレーナは、後ろを振り向きシェイルのほうにある壁を、力強く何度も叩く。口から示す言葉が見当たらないのだろう。しかし、その行為は良かったのか、どうすればいいのかと軽く上を向き、リベリオ達のほうを見ると、今の打撃に気付いたのか、視線がシレーナのほうへと向いた。

 こちらの打撃音は聞こえるのか。シレーナに上を見るように指さすと、視線がリベリオ達と合う。いや、こちらから一方的に合っているだけだ。何度も何度も叩いてこちらの存在を気づかせる。


「…シレーナ後ろだ」


 シェイルのほうではなく、外側のほうへと叩く様に命令する。

 一つ方法なら見つけた。ここから出る魔術がないのであれば、打撃に魔術を加えることはできるだろう。

 何度も叩くシレーナに視線を送り、呪文を唱え始めた時だった。


「邪魔をするな」


 シェイルのほうから聞こえた声とともに、足元の透明な何かが消える。

 下から来る風に頭が真っ白になる。視界にあったはずのシレーナの姿が消え、シュンリンと目があう。しかし、その姿は徐々に遠くへと離れていく。

 体を地面のほうへと向け、地面との距離を確認する。


(無理だ)


 頭が真っ白になったせいで魔術の一つも出てこない。

 目を閉じ衝撃を待つ。しかし、現れたのは謎な浮遊感だった。


「おい」


 聞こえてきたのは最近聞きなれた声。ゆっくりと目を開くと、リベリオの顔がすぐそこにあった。

 リベリオに抱えられ、地面への直撃は免れたようだった。

 上を見上げると、シュンリンがホッとした表情を見せている。

 慣れない浮遊感に不安を感じながらも、リベリオはシュンリンの元へと俺を移動させる。

 足元がある程度安定しているのを確認すると、リベリオの手は離される。


「中にシレーナ…魔王がいる」

「ヴィンスは」

「…」


 そう問う二匹の魔物から視線を外す。外した先は、ヴィンスが消えた土。レリィの炎に覆われた後、どうなったかはわからない。炎が消えたと思えば、そこにはヴィンスの姿はなかった。助けに入りたくても、閉じ込められた、起こったことをすべて伝える。

 中にはシェイルとシレーナ。間には見えない壁みたいなものがあり、今のところ接触はないが会話はできる。壁はすべてシェイル次第。いつシレーナと接触するかはわからない。

 大体のシレーナの位置を教えると、魔術を使えと命令される。リベリオの手をめがけて強化の魔術を与える。その先はシレーナのいる場所だった。

 しかし数回重ねて魔術をかけても、その壁は壊れることはない。


「リベリオ、ルーフォンと一緒にヴィンスを探してきてください」

「シュンリンは」

「どうにかします」


 その言葉を残し、リベリオは俺を再度持ち上げて地へと足を降ろした。すると、リベリオは最初の位置へと視線を向けた。何かあるのかと、しゃがんで場所の確認をしようとした俺も立ち上がり、その視線の先へと向く。

 遠くから翼を生やした魔物と、もう一匹何か連れてこちらに向かって来ていた。


「リル」


 向こうの戦いも終わったのか、リルとアマシュリが近づいてきていることをリベリオから聞く。さすがに遠すぎてあまり見えなかったが、近くまで下りてきてようやく認識する。

 ヴィンスとシレーナの事を聞くが、リベリオはリルをシュンリンの元へと行くよう指示し、アマシュリをこちらを手伝うよう指示した。

 リルの体力がかなり消耗しているようにも見えたが、リベリオはそんなこと一切気にかけることはなかった。


「ヴィンスが行方不明って」

「このあたりで消えたのは間違いないんだけど、レリィの炎にやられたのか…また別のものなのか」


 詳しく戦いを教えてほしいとのことで、炎に覆われたヴィンスを、水の魔法と魔術でレリィとヴィンスに一度手を貸した。その位置はちょうど地面が湿っているところだと、指して大まかな場所を伝える。

 壁で覆いレリィを閉じ込めたが、炎になって出てきたのを伝え、そこから再度加勢に入ろうとしたがつかまった経緯伝える。

 レリィ自身が炎になってヴィンスの周りを覆ったところまでを伝えると、リベリオが考え込んでしまう。


「もしかしたら土と同化した可能性はある」

「土?」

「移動手段で、俺なら水に。レリィなら炎に代わることができる。ただ、少しでも失敗すると高いリスクを負うことになり、完全に失敗すると戻らぬ者となる」

「ヴィンスは木や土の魔法を得意とするから、応用してそれと同じようにした結果…」


 補助するようにリベリオの言葉にアマシュリが付け加えるが、その先もいい結果ではなかったのだろう。


「高いリスクっていうのは?」

「体の一部が同化したものになる」

「それは戻らないのか」

「戻らないとは言い切れないが、あまりいい状況ではない」

「もしそのリスクにかかったのであれば、ヴィンスは生きてる?」

「土のどこかでな。この付近なのは間違えないが」


 リベリオが言い終わる前にしゃがみ、ヴィンスがいなくなった付近の土を、近くにあった瓦礫を手にし、土を掘り始める。

 様子を見て驚いていたアマシュリだったが、同じようにしゃがんで近くの瓦礫で掘るのを手伝う。


「リベリオは…」


 シュンリンのほうへ行ってくれと言おうと顔を上げるとともに、上空からガラスが割れるような音が響き渡った。

 リベリオとアマシュリも顔を上げると、そこにはリルの手によって開いた壁。その奥にはシレーナとシェイルが戦っている姿があった。


「中で始まってたのか」


 黙っていられなくなったシレーナが、おそらくシェイルを挑発したのだろう。先ほどの様子からしても、怒りで我を失いかけていた。

 援護する様にリルとシュンリンが加勢に入る。


「リベリオこれをシレーナに」


 そういって腰に差していた剣を渡し、加勢に行くようにお願いをする。後ろに振り向き剣を受け取って縦に首を振り、すぐに飛び立って行ってしまった。

 しゃがみこみ、ヴィンスを探す作業へと手を移す。どうにかしてヴィンスを助け出し、加勢に入らなければならない。


「死ぬなよヴィンス」

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