絶世の美少女救世主、現れる
久しぶりに会ったシイナは、どこか少し大人びたように思える。
座り姿なので全貌は分からないが髪も伸びて、身長も心ばしか大きくなったように思える。
相変わらず顔立ちは整っていて、その美貌は日を重ねるごとに増している気もする。
数日だけの、僕とシイナの冒険のような一夏の旅を僕は走馬灯のように思い出していた。
東京で彼女のやりたいこと100リストをやり遂げるためにわざわざ車を走らせてきたが(実際運転したのはシイナだが)、まさか到着して早々に喧嘩別れをしてそのまま音沙汰がないままに時間が過ぎていた。
やりたいことリストがすべて完遂するまでは、二人でいると思っていた矢先だったので、お互いの連絡先も知らないままだった。
そのため、連絡を取ることもできなかったが、仮に連絡先を知っていたとしても、僕からは連絡はとらなかったと思う。
まさかの再会だ。
そしてまさに、救世主のごとく、最高のタイミングで現れた救いの女神の姿がそこにあった。
「ごめんなさいね。手が滑っちゃって、私の大好きなカフェオレが悪さをしたみたいで」
あくまでも悪いのは自分ではないという主張を遠回しにしているのが、シイナらしいなと感じた。
「おい…何してるのか分かるのか…?」
明さんは鬼の形相だというのが後ろ姿からでも伝わってくる。
声の雰囲気からして、かなり怒り狂っている。
僕は顔に垂れるカフェオレを手の甲でぬぐって、膝に手を当ててゆっくりと立ち上がった。
「桶谷さん…あの子の知り合いなの…?」
白澤さんはシイナから視線をそらさずに、僕にだけ聞こえるくらいの声量で話しかけた。
「ま…まぁ…それなりには知ってるよ」
「…とても綺麗な子ね」
こんな追い込まれている状況でも、美しいと言わせてしまうほどに、美しい容姿をしているのだ。
「どうかしまして?」
何か用でもある?文句でもありますか?といった風に、明さんに対してしらを切り続けている。
「おい、お前誰だよ。弁償してくれるんだろうな」
「私は通りすがりの一般人です。それに弁償なら、その溢れているカフェオレにお願いします。私は何もしていないので」
「言わせておけば…」
一旦明さんは冷静さを取り戻したものの、結果的に火に油をくべてしまっている。
「まぁ、いいさ。御託はもういい。もうこの写真を送ってしまえば、俺の価値さ。ははは、そして美並お前の人生はもう終わりだ。もう、俺と出会う前から終わっているがな」
明さんはそう言って、スマホを操作し始めた。
(これは不味いぞ。拡散されてしまう…)
手を伸ばしても意味はないが思わず僕は空中に手を泳がせた。
そのときだったー。
ジリジリッ
耳慣れしない不快な電子音がしたかと思えば、次の瞬間に、僕の目の前で大きな明さんの体がぐらりとゆれて、そのまま地面に倒れた。
「あ、意外と効果あるのね。護身用で買っておいて良かったわ」
何やら手に怪しげな黒い機械を持ちながらシイナは驚いていた。
「あ、これ、スタンガンです。女の一人旅はいろいろと入り用で」
シイナは、満足そうに微笑みながら、
「さ、悪者退治は終わりましたね」
と取って置きの美少女スマイルを見せてくれた。




