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信玄の厠  作者: 厠 達三
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インチキビブリオ その2

 寺から脱走した主人公はどういうわけか海に行って海の荒波を見てるうちに「金閣を燃やさなければならない」とかいう支離滅裂な思考に至ります。

 なんでも金閣ほどの美しい建造物を燃やすことによって平和ボケした連中を覚醒させたいのだそうな。ほとんどテロです。しかも金閣を燃やすと決意した自分こそが選ばれし者とかイタい勘違いまでします。

「戦乱の時代から京の神社仏閣は燃やされ続けた。いま金閣が燃やされないでよい筈があろうか?」

 よい筈があろうか? って言われてもなあ……戦乱の時代と一緒にされても困るんだが。


 とにもかくにも金閣を燃やすと覚悟をキメた主人公は完全に開き直ります。

 脱走を母親に咎められてもどうせ金閣燃やすし〜

 借金の利子が膨れ上がってもどうせ金閣燃やすし〜

 住職になれなくってもどうせ金閣燃やすし〜 万事こんな調子。挙句の果てにはどうせ金閣燃やすんだからと風俗行って童貞卒業。それに対する主人公の考察。

「私にとって金閣を燃やす行為は自殺に等しい。自殺する人間が死ぬ前に童貞を捨てたいと思うのは当然ではないだろうか」(やや曲解アリ)

 本気で自殺を考えてる人がそんなこと思うかなあ? しかも思ってたより気持よくなかったからという理由で日を改めて同じお相手と再戦。なにやってんだか。


 主人公の妄想はさらに暴走。「自分には放火犯を嗅ぎ分ける特殊能力が備わった」とか妙な自信を付けます。街なかでキョドい学生を見つけると「コイツは放火犯に違いない」と勝手に決め付け尾行。寺の境内でマッチ擦ったかと思ったら予想に反してタバコふかしただけでがっかり。どうやらただの勘違いだったと普通の人なら思うところなのでしょうが、主人公はさらに意味不明な妄想を展開。学生が隠れ喫煙のような小さな悪事しかできず、放火といった大きなことができないのは文化的教養のせいだとかとんでもない妄想を始めます。学生がマッチの火を念入りに消していたのは火に対してしか自分の支配欲を満たせないとか無茶な妄想までします。フツーに火事になったらいけないからとは考えられないようです。


 そんでもっていよいよ決行となるわけですが、その間にもあれやこれやと妄想しまくって、初めて会った高僧に止めてもらおうとかしたり準備で買ったパンにまであれこれ考えを巡らせたり。金閣寺に忍び込んでからも優柔不断な主人公はついにやるぞ、いややっぱりやめようかなと散々ワケの分からん思索を巡らすもんだから読んでて何が何やらサッパリ分からず。

 クライマックスなのにあまりにもモノローグが長すぎていつ放火したのかも気付かないという引っ張りっぷり。もうここまで来ると現実なのか主人公の空想なのかも分かりません。さすがは五◯勉氏のお師匠様。現実と空想のハザマを読ませる技術は筋金入りです。(この五◯勉氏のお師匠様ってのは素人の勝手な思い込みなので本気にしないでください)


 とまあ、こんな感じで要約するとなかなか(悪い意味で)面白い作品ではあるんだけども、なんかもう随所に展開する文学文学した表現が読む者の思考を停止させます。読んでるうちに自分がどこまで読み進めたのか分からなくなる体たらく。文学的な表現を廃すれば半分くらいの分量で収まりそうですが、それをやるとあらすじのように主人公がただのおバカな奴にしか見えません。いや、そもそも自分がこの作品を正しく読めてるかは甚だ疑問です。本物の読書家で三島文学を愛する人がこの感想読んだら「内容を半分も理解してない」と、バッサリやられる可能性大です。

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