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剛拳の魔獣 LAST

 巨大な拳は中指と薬指の間から裂け、引き締まった筋肉をゆっくりと切り裂きながら手首の部分で止まった。切断面から見える内部には極太な骨や凝縮された肉などなく、ただ一点の闇だけが静かに蠢いていた。


 剣は空中を切ったにも関わらず、なぜかジジャルの拳は縦に割れている。

 

 「うわっ!」


 驚く暇もなく体は重力に引っ張られていく。


 を振ることに精一杯だったため、着地をするところまでは考えが追いついていなかった。重く伸し掛かる拳圧に押され地面へと急速落下していく。

 

 「ユキト!」


 そこへ神父が落下地点へタイミング良く滑り込み受け止めた。


 神父はそのまま軽々と体を抱え、その場から離れた。


 黒い霧が激しく噴き上がる。ジジャルはけたたましい悲鳴を上げ思わず攻撃の手を止めた。それを見て後から追ってきた兵士達は巨大な筒を脇に締めて構え、ジジャルの腕と足を目掛け一斉に発射した。


 丸い煙を上げ中からは玉状のものが飛び出した。


 空中でそれは分散し、網には幾つもの細かい返しの付いた鉤爪のような鉄の杭がジジャルの筋肉を突き破り深く射しこんでいく。全ての鉄杭砲はその動きを止めるために必要な箇所へ命中する。網の尻からは長い縄が垂れ兵士達はすかさずそれを掴みに行き、ジジャルの身動きを制限させるため死に物狂いで縄を引く。一瞬の出来事にジジャルも吠えることしかできない。


 「ナヴィ! 持って十秒だッ!」


 右腕の下部に刺さった鉄杭の縄を持つ、大男の兵士が顔を歪ませながら叫んだ。


 それを聞きナヴィは瞬時に目標を見定める。


 「アレク! まずは右腕部の破壊だ!」


 「はい!」


 大きな隙のできたジジャルの腕を切り落とすため、アレクとナヴィはまだ痺れて感覚が戻らないままの、剣を持つ手に鞭を打ち、二人同時に飛び上がる。右腕部には既に機能を失い動かなくなった上部と、鉄杭に支えられた制止した下部の腕が待ち構えている。

 

 「ハアッ!」


 アレクはジジャルの肩で一度着地し、そこから背中の方へ折り曲がった上部に狙いを定め、自分のウエストと同程度の手首を一刀両断する。


 刀身は硬い肉を上回る力で無理矢理に線を入れていく。

 

 ブツブツと徐々に入る切れ込みからは黒い霧が絶え間なく溢れ、アレクの甲冑を濡らしている。歯を食いしばり更に力を込める。裂け目により分断された腕の一方が切れ始めると、そのままの勢いでもう一方の部分は素早く切り落とすことができた。ジジャルの手首の先が地面へと離れていく。


 アレクは役目を終えると素早く退避する。


 「連脚!」


 一方ナヴィは二本の剣を、上部の脇の下から繋がっている下部の肩のような箇所に投げた。剣は浅く刺さり、そこへナヴィの強烈な蹴りが飛んでくる。高速で繰り出される連脚は持ち手と衝突し、刀身を肩の深くまで食い込ませた。ちょうどその横には先程投げ込んだ鉄杭がうずくまっている。


 「縄を引けッ!」


 ナヴィが大男に合図を送る。


 ジジャルを除いたこの場にいる誰よりも力の男が縄を引くと、肩の中から肉のちぎれようとしている音が聞こえてきた。ナヴィは落下する際に最後の攻撃を加えるため剣の持ち手を掴んだ。重力に任せたまま落下していくナヴィの体に引かれていくように、埋まっていた二本の剣は内側の肉も一緒に切り裂いていく。剣の下部の腕を半周ほど切り裂いたところで、縄を持つ男が強引に鉄杭を引っ張り、まさに肩をまるごと外すようにして破壊することに成功した。


 「グモアァアアアアアアアッ!?」


 十秒の隙に一瞬で破壊された右腕の痛みに思わず片膝を付いた。


 ジジャルは痛みに耐えかねて暴れ、狂ったような怪力に兵士達の力も及ばなくなり全員が一度距離を取った。ジジャルの体は右腕部の機能を失い、半奇形な痛々しい肉体を晒している。


 「凄い……一瞬であんなに……」


 思わずジジャルの光景に目を奪われる。


 「ユキト、君も良くやったよ」


 「僕はそんな……あれ」


 立ち上がろうとしたが、足に力が入らない。抜け落ちたかのように感覚が無い。見ると全身は小刻みに震えていた。情けないことに一度の攻撃に全力を注ぎすぎて腰が抜けてしまっていた。


 「足を切り落とすべきだったが……左の腕も先と同様に私達が先行して切り落とす! 他の者は取り囲んで手篭めにしろ、気を引くだけでいい」


 ナヴィが駆け出すと、休む間もなく自分と神父以外の者はジジャルの元へと、それぞれ剣を構えて走り出した。


 ナヴィを筆頭に、足元で円を描くようにして取り囲む人間達をうっとうしい塵を払うかのように巨大な双角を突き立てる。しかし、ジジャルは手当り次第といったようにメチャクチャな動きで角を振り回すため、大雑把な攻撃は簡単に避けられてしまう。


 だが一向に体力が衰えることのないジジャルの暴れっぷりに致命的な攻撃を与えられずにもいた。大きく破損させた右腕部のハンデがあるものの、力の差は未だ五分に持ち込むのがやっとだった。


 目まぐるしく変わる息もつかせぬ戦況から、ナヴィ達の体力を奪う一方的に不利な消耗戦へと突入した。


 「そこだッ!」


 アレクが角を振るったジジャルの隙を見つけて左腕へと飛び掛るも、すぐに両腕で跳ね除けられるか防御に徹するかで一太刀も入れることができず、歯痒い時間は続いた。


 統率の取れた兵士達の中に自分も入り連携攻撃を繰り出すのも難しく、胸の中を突くような緊張感ともどかしさに黙って眺めることしかできない。


 ジジャルの鼻息交じりの怒号が街道に響く。


 それを見てあることを思い出した。


 「そういえば神父さん! あのジジャルというスクーロはどうやら鼻で僕達の正確な場所を特定しているようです」


 「鼻で? 確かに目はないが……」 


 そのことに気が付いたのは、ジジャルに変化する前の徘徊者の一撃を食らった時に見つけた特長だった。


 ジジャルとは、元を辿れば殺されたクダルモの闇の部分だ。それを確信したのはジジャルが最初に口走ったオンナという言葉、クダルモも女性に関する事を言っていたのを強烈に覚えている。


 「なぜジジャルに変化する前の徘徊者は、背中越しに僕の正確な位置を把握して攻撃を叩き込むことができたのか……それは、この服に染み付いた香水の匂いを嗅ぎ分けたに違いありません……確信を持って言えます」


 「確かにクダルモという男が、女性の匂いやそれに準ずる香水の匂いなどを忌み嫌っているようにも見えた……徘徊者は人間の心の闇。 だとすれば徘徊者には召喚した者の意志が反映されるのかもしれない……香水の匂いに敏感に反応するのも頷ける」


 神父も顎を触りながら考えを巡らせる。


 視線の先は剣を振るうナヴィ達の方にあった。


 「あのままでは援軍が辿り着く前に負傷者が出るかもしれない。 ジジャルが鼻で位置を把握してるのならば、私達は匂いを消す方法を見つけなければならいッ!」


 神父の意見と全く同意見だった。


 幸いこの場所は露店の立ち並ぶ街道。


 匂いを消す何かがあるに違いないと、周囲をくまなく散策する。露店に放り出されたままの植物や果実、強烈な匂いがすれば良いのだが、そのどれもがジジャルの嗅覚を狂わすには及ばないだろう。


 「これもダメだ……何か匂いの強い物……あっ、そういえば!」


 街道にある物で使えそうな物を見た覚えがある。それは徘徊者に吹き飛ばされ露店を破壊した時に衝突した樽だった。自分を受け止めた時、樽の中には何か入っていた。


 それを確かめるため、ジジャルの近くにある無残な姿になっている露店へと駆け寄った。


 「グモォッ!!」 


 近くまで駆け寄った瞬間、ジジャルの双角が襲い掛かってきた。この巨体のレーダーの代わりを成しているジジャルの鼻は確かに香水の匂いに反応している。しかし、今はそんなことを考えている暇ではなかった。


 「ぐっ!?」


 「神父さん! アレク!」


 薙ぎ払うような角の振りを二人が受け止めた。初めから来ると構えていた防御ではないため不備があったのか、二人は後方へと仰け反り体制を大きく崩した。


 「安全な場所にいろと言ったはずだ!」


 すかさずナヴィがフォローに入り、ジジャルの背中に一太刀入れ、自分の方へと気を逸らさせた。


 「ユキト! ここは危ない……」


 アレクの言葉を最後まで聞くことなく、目的である樽の中身を確認するため足を進めた。樽に耳を澄ませてみると、地鳴りに揺れた中身が静かに水音を立てている。ジジャルから離れたところまで転がし、樽のフタに剣を突き刺し強引に割ってから中を覗き込んだ。


 割れ目から溢れ出すそれを見て一度、安堵する。


 「神父さん! この樽の中身は酒です」


 神父は一旦匂ってみた後、指ですくい口に含む。


 「確かにブドウ酒だ。 これを鼻の近くで拡散させることが出来れば良いのだが……」


 一つの問題が発生する。


樽の中に詰め込まれた酒は重く、とても人間の力だけで上空に打ち上げることは難しい。砲台のような役割を果たせるものがあればいいと考えてみるが、それどころか街道には剣の一つも転がってすらいない。


 ナヴィや兵士達の息も荒くなり始め動きも徐々に鈍くなっている。軽々と回避していたのが、剣で直接防御する姿も見えていた。


 じきに負傷者が出る。


 本隊も時間通りに来るのかも分からない。


 すると、ある一つの方法が頭の中を過ぎる。それは失敗すれば命を落としかねない危険な方法だった。

 

 「……僕が囮になって樽を運び出します。 幸い、ジジャルは僕の衣服に染み付いた香水の匂いに過剰な反応を示してきますから、わざと攻撃させて割らせるんです」


 「それはいけないッ!」 


 神父が今までにしたことのないような、眉間にシワを寄せた険しい表情を浮かべて怒鳴りつけるように叫んだ。


 「君がジジャルの角を防ぎ切れるとは到底思えないッ! 君は既に徘徊者の攻撃を受けて傷付いている! 痛みを薄っすらとしか感じないのは脳が興奮状態にあるせいで、錯覚を起こしているだけだッ! その体には確実に異常があるッ!」


 神父の顔は真剣だ。真剣に自分の事を心配している。


 「状況はよく分からないけど……もし本当にユキトの衣服にジジャルが反応しているならば、その服を樽にくくりつけて転がせば良い。 ユキトが正面から受けることはないよ」


 横から冷静に諭すアレクの言葉はもっともだ。


 けれど違う。自分の中が考えているのはそういうより安全な方法で、確実に崩せるチャンスから逃げる方法なんかではない。自分の胸の中で、意識の中に潜む本心が素直にそう言っている。


 「それじゃダメなんだ……みんなもう疲れている。 僕わを散々守ってくれたんだ、僕がこの中で一番上手く攻撃ができる! みんなもう自分を必死に守らなきゃ、ジジャルに対した反撃をできないところまできているッ!」


 神父は既に徘徊者との戦闘で消耗仕切っている。それが一番分かっていたのは神父自身だった。彼がこの中で一番年老いている筈だからだ。


 「ユキト、君は他の皆を買いかぶり過ぎだ! そして君は自分の事を見誤っている! 俺やナヴィさんや他の皆だってまだ戦える!」

 

 意見が真正面からぶつかる。


 お互い誰かを思うことで出た尊重は譲ることが出来ない。感情をこんなにもあらわにして、誰かにぶつけたのはいつ以来だろう。誰かを助けたいと思ったのも初めての感情だ。譲れない。自分がやる。やれることをやる。


 それが今この瞬間だった。


 「ナヴィさんの受け売りだけど、言わせてもらうよ……君はいま命を投げ出そうとしている! 命を投げ出すなんて……してはダメだ。

それは自分の無力さを知った時に使う言葉だッ! 死んだ時には後悔する暇なんてないッ!」


 アレクがナヴィに言われた言葉だ。


 アレクは悔しそうな表情で言い切った。まさか自分が言い返せずに納得してしまった言葉を、誰かに言うハメになるとは思いもしなかったからだ。その言葉が自分にも跳ね返る。


 アレク自身、先程のジジャルの攻撃を受け切れなかったことに剣を持つ手を通じて気付いたからだ。剣の持ち手を見ると、真っ赤な血が付着していた。無


 自分の現在の戦闘力はよく分かる。


 守って援軍を待つのが精一杯だと感じている。


 「違う……僕は無力さを感じてなんかいない」


 ポツリと呟いたその言葉にアレクは顔を上げる。


 「命を投げ捨てでも行動するということは……誰かを命懸けで守ってみせるという確固たる意志を剣に捧げるということだ! 僕は限界以上の先に希望を見出してみせる! みんなが守ってくれたように、自分がやれること以上のことをやってみせるッ!」

          

 いつになく全身が奮い立ち、目頭に熱いものを感じたと同時に心臓から火照りが広がっていくのを感じた。


 自分には力が無い。剣の使い方も、戦いの作法も分からない。無いものばかりだが、胸の奥で誰かを助けたいという意志が火花を散らしながら、激しく燃え上がるのを今かと待っている。


 「意志を……剣に……?」


 アレクは考え深いような表情で、血のついた自らの長剣をじっと眺める。アレクには銀色に輝く刀身が、シジャルの血に汚れたせいでは無く、自分の心を映したかのようにどこか濁っているようにも見えた。


 その時だった。


 地面が揺れ、腹に響く怒号と共に建物が倒壊し砂煙が三人のところまで舞い上がった。それと一緒に兵士の泣き叫ぶような悲鳴が耳を突く。見ると、倒壊した建物の瓦礫に足を取られ、ジジャルがゆっくりと振り返りその兵士を貫こうと、うねりを上げる双角を光らせた。


 「まずい!」 


 アレクはふと我に返り一目散に走り出した。


 「神父さん! これをあそこまで一緒に!」


 「分かった、行こう!」




 太陽が西の空へと傾き始めた。


 もみじの様に赤い空と、遠くの方で群青色に染まる空がイナクトの国へと押し寄せてきている。二つの色は重なり、空が生み出したグラデーションが夜の報せを運ぶ。


 「う、動け!」


 逃げそびれた兵士は右足に重なる瓦礫を退かそうとするが、想像以上に瓦礫は大きくて重たく、満身創痍の兵士には一人で這い出せるような余力は残っていなかった。


 「グモォォ……グモォオ……」


 ジジャルは鼻息を豪快に鳴らしながら、砂煙に紛れた微かな匂いを辿り、下敷きとなった兵士の匂いを的確に嗅ぎ分ける。


 「やめろォッ!」


 周りにいたナヴィ達が抜け出すための時間を稼ごうと剣を振るうが、その一撃はジジャルの筋肉質な肌を浅く切ることしかできない。


 残った二本の剛拳で薙ぎ払い、双角を乱暴に振り回し、虫けらのような扱いで近付こうとするものを吹き飛ばした。


 「今、助けますッ!」


 隙を見て兵士のところに辿り着いたアレクが力を振り絞り瓦礫を退かそうとするが、なかなか持ち上げることができない。


 「アレクもういい! お前は早く逃げろ!」


 「何を……言ってるんです!」


 微かに隙間ができた。兵士の男は素早くもう片方の足を踏ん張り、抜け出すことに成功する。


 「さぁ、背中に乗って下さい!」


 「いや、もうそんな時間はない……」


 アレクは振り返る。


 そこには夕暮れを背に、巨大な角に影を作りながら振りかざすジジャルの姿があった。山が揺れ動いたような音が響いた。ジジャルの唸る声だ。


 咄嗟に剣を構え兵士を守ろうと防御するが、力を長く溜めた一振りにアレクは耐えることができないと確信した。それでも防御の姿勢を崩すことを止めない。ジジャルの口が不敵に笑った。


 「ニンゲンノ、チダ」


 引き絞った弓を放つような勢いで振りかざす。


 アレクは死を覚悟した。


 「ジジャルッ! ……いや、クダルモッ!」


 砂煙に紛れた声にジジャルの動きは止まった。


 「オンナノニオイダ……ニクイ、ニクイ」


 ジジャルの巨体が砂煙の中から、こちらに向き直った。街道のど真ん中、酒の入った樽を引っさげ奇形のそれを見つめる。


 来るなら来い。固く決意を結んだ。


 「グモァアアアアッ!」



 ジジャルが角を向け、猛進を繰り出した。


 地面からは地鳴りが絶え間なく全身を震わせ、激昂するジジャルこの一撃の激しさを連想させた。剣を水平に構え、向こうと同じ突きの一撃を繰り出そうと、その瞬間を待つ。


 あと数歩。思った以上に速い。


 ジジャルの双角が守る頭は、無防備にも体勢を低くして猛進してきているためその姿を晒している。双角の間の一番弱いであろう場所。


 人間と急所が同じではなかったらどうなる。


 もし外せば自分は死んでしまう。


 その時は考える暇を与えることなてきた。


 「はあッ!」


 樽を蹴り上げ、ジジルの前に転がす。


 「グモォッ!」


 それを構うことなくジジャルは酒の入った樽を角の最も深い部分まで串刺しにした。粉々に破壊された樽からは上手く酒が飛び出し、ジジャルは頭からそれを被った。


 「……ッ!」


 角の隙間に入り込み脳に剣を突き立てようとしたが、思ったよりもその幅は狭く、両方の脇腹を微かに突き破った。自分の血が地面を濡らすと同時に、灰色の刀身がジジャルの脳天へと半分ほど突き刺さっていった。


 「うがぁぁあッッ!」


 「グォオオオオッ!」


 二つの突きが、双方の体に悲鳴を響かせる。


 衝突した頼りない体は、そのまま街道を真っ直ぐに飛ばされていく。霞んだ視界の中で最後に見たのは、未だ沈黙しない真っ直ぐに立ち上がる巨影だった。


 倒し切れない。完全に力不足だ。


 しかし、後は引き継いでくれる。


 たった一手。ギリギリの一手だが、僕が上回った。



 「本当に……君には驚かされる……強い精神力だ……ユキト、君が残してくれた意志は、確かに私が受け取った」


 「グモォッ!?」


 自慢の鼻が効かない。強烈なアルコールの匂いによりレーダーが機能しなくなっていた。そんなことを感じながら、ある小さな影が近付いていたのをジジャルは見落としていた。


 たった一瞬、拮抗していた戦況がどちらかへ傾く。この死に物狂いで得た一瞬の隙が、戦いの中では大事なのだ。


 ホルダーから取り出した二つの刃が、剛拳の魔獣の首を深く切り裂き、これまでで最も多い黒霧が噴き上がる。巨体はようやく力なく崩れ落ちた。



 

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