第36話 原宿でスイーツ②
◎コンビニの購入品でお菓子パーティー
その後、二人はコンビニにも立ち寄った。
日本らしい甘味の展開として、ここは外せないと思ったのだ。
自動ドアが開いた瞬間、ルシアンの足が止まる。
「ドアが勝手に…ここは?」
「コンビニエンスストアよ」
「一つの店に、これほどの商品が?」
食品、飲み物、日用品。
そして大量の菓子。
ルシアンは棚を端から端まで眺めた。
「これは……」
「どうしたの?」
「この店ごと国に持ち帰りたい」
「また、ご商売ですか」
「小規模な店でありながら、日常生活に必要なものをまとめて販売している。しかも営業時間も長い。地方の町にも応用できるかもしれない」
「なるほど」
「この仕組みは詳しく調べたい」
そう言いながら、ルシアンは菓子を一つ手に取った。
「……これは?」
「チョコレートよ」
「こちらは?」
「クッキー」
「これは」
「キャンディ」
「包装への工夫も、ちょっと尋常ではないな」
気づけば、ディアーヌのカゴにはいくつもの菓子が積み上がっていた。
「ルシアン!研究よ。帰ってお菓子パーティーをしましょう」
「すごい量だが……比較研究に必要、というわけだな」
「ええ!」
研究のため!?結局、二人は大量の菓子を抱えて王都へ戻ったのだった。
ーーその夜。
王宮の一室に、色とりどりの菓子が並んでいた。
「さぁ、ルシアンに食べてほしいニッポンのお菓子を独断と偏見で選んだわ。レッツパーティーよ!」
「素晴らしい。あくまで、研究のためだがな」
ルシアンはコンビニの菓子とスイーツを眺めて、すでに満足そうな顔をしている。
「本当は長年争っている山菜のチョコ菓子なんかもぜひ食べて欲しかったのだけど、大人の事情でなかなか難しくってね。ふわっとサクッといくわよ」
「ほう」
ディアーヌはまずは自分の好きなスナック菓子を手にする。
「このじゃがいもスティック!いろんなフレーバーを好きになってきた遍歴があるけれど、今好きなのはこのじゃがバター味よ」
「なるほど!サクサク、ポリッとした食感、止まらない塩加減、そしてジャガイモの味がいきている。」
「この、マカダミアナッツのチョコレートも大好き!」
「これほど質の良いチョコレートが、あんなに簡単に誰にでも手に入るのか…恐れ入ったな」
「これはココアのほろ苦いクッキーにバニラクリームがサンドされたお菓子、ミルクとの相性は抜群よ!!」
「ココアクッキーのビターさとクリームの甘さが素晴らしいバランスだっ!」
ハッピーな粉のついたスナックを食べ切るのは早かった。
「ルシアン」
「何だ?」
「少々ペースが早いのでは?」
「研究のためだ。しかも、これな」
甘ジョッパさのたまらないハッピーなお菓子の袋を指差す。
「食べれば食べるほど、うまい」
「確かに。ついでに、最後に指まで美味しいわよ」
「なんと!」
いつの間にか、研究という名のお茶会はすっかり盛り上がっていた。
コンビニスイーツであるシュークリームやプリンも驚くべきクオリティの高さである。
「ルシアン、このシュークリームも美味しいわね!」
「では、それを半分」
「半分でよろしいの?」
「……やはり全部もらおう」
「ふふっ」
二人は笑いながら、次々と菓子を開けていった。
気がつけば、机の上には空になった袋が山のように積み上がっている。
しばらくして、ディアーヌがふと我に返った。
「……ルシアン」
「何だ?」
「わたくしたち、何を研究していたのだっけ?」
「……」
ルシアンが周囲を見渡す。
大量の空袋。
空になった皿。
そして、まだ開けていない菓子。
「……甘味の種類と味についてだ」
「具体的には?」
「美味い」
「他には?」
「非常に美味い」
「それだけ?」
ルシアンは少し考えた。
「種類が多い」
「それは確かに」
「包装も便利だ」
「はい」
「そして、どれも美味い」
「そこに戻るわけね」
「非常に、重要なことだからな」
二人は顔を見合わせ、吹き出した。
その後、二人は簡単な資料をまとめてみることにした。
机の上に紙を広げ、ルシアンが筆を走らせる。
『ニッポンの菓子について』
その下に、ルシアンがいくつか項目を書き込んでいく。
・種類が非常に多い
・包装が個別で持ち運びに便利
・保存性に優れた商品も多い
・甘味の種類が豊富
・コンビニエンスストアで容易に購入可能
ディアーヌが横から覗き込む。
「ちゃんと研究っぽくなっているわね」
「ああ」
「最後に結論も書きましょう」
「そうだな」
ルシアンは少し考え、筆を走らせた。
『結論――ニッポンの菓子文化は、王都への導入を検討する価値が高い』
「完璧ね。いつか、あのような技術が我が国でも再現できたら、本当に素敵だわ」
「それまでは、あくまで機密にしておこう」
ディアーヌが満足そうに頷く。
しかし、その下にはまだ少し空白が残っていた。
ルシアンは真剣な顔で考えたあとで、最後の一行を書き加える。
『今後の課題――未試食の菓子がまだ多数残っているため、追加研究が必要』
「ルシアン」
「何だ?」
「それは研究課題ではなく、ただの食いしん坊の願望では?」
「まさか」
王子が異国文化の研究に熱心なのは、実に結構なことである。
ただ、この研究だけはどうにも終わりが見えそうにない。




