第85話 交換の壁
港の取引所。
朝の鐘が鳴ったが、
動きは鈍かった。
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商人たちが立ち止まっている。
「信用証で払う」
「金でしか受け取らない」
「では交換を」
「手数料が高すぎる」
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会話が止まる。
取引が止まる。
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以前なら起きなかったことだった。
通貨は一つだった。
迷う必要はなかった。
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今は違う。
選べる。
だから迷う。
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分散連合本部。
ユーリが数字を示す。
「交換コストが急上昇しています」
アーネストは頷く。
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「通貨間の摩擦だ」
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リゼットが言う。
「通貨が増えすぎた」
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マルクが机を叩く。
「交換業者が儲けている」
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ユーリが続ける。
「中間業者が増えています」
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地図の上に新しい線が引かれる。
交換所。
仲介商。
為替業者。
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「彼らが価格を決めています」
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アーネストは静かに言う。
「市場の中に市場ができた」
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港。
交換屋が叫ぶ。
「信用証から金へ!手数料三割!」
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商人が顔をしかめる。
「高すぎる」
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だが他に方法はない。
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外洋使節館。
カタリナが報告を読む。
「交換市場の膨張」
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エリオットが言う。
「中央があれば一瞬で解決する」
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「単一通貨」
「単一決済」
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カタリナは首を振る。
「だが彼らはそれを選ばない」
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「ならば」
エリオットは静かに言う。
「摩擦を抱える」
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分散連合本部。
沈黙。
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リゼットが言う。
「交換制度を作るしかない」
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ユーリが言う。
「統一レート?」
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マルクが言う。
「それは中央だ」
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沈黙。
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アーネストはゆっくり言う。
「中央を作らずに交換する」
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リゼットが笑う。
「無茶ね」
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「いや」
アーネストは続ける。
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「交換を分散する」
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ユーリが目を見開く。
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「取引ごとに交換を成立させる」
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「固定レートではなく」
「動的レート」
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マルクが言う。
「市場に任せる?」
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「違う」
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アーネストは紙に線を引く。
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「複数通貨を同時に使う」
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沈黙。
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リゼットが呟く。
「同時決済…?」
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「そうだ」
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「一つの取引を」
「複数通貨で分割する」
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ユーリが理解し始める。
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「金と信用を混ぜる…?」
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「軍事保証も国家も」
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「全部使う」
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マルクが笑う。
「そんな面倒なこと、誰がやる」
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アーネストは答える。
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「制度がやる」
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窓の外。
港の動きがさらに鈍る。
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交換の壁。
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それはまだ目に見えないが
確実に広がっていた。
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通貨が増えた。
選択が増えた。
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だが
繋がりは減った。
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アーネストは呟く。
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「分散は、まだ足りない」
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本当の分散は
通貨の数ではない。
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繋がりの数だ。
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その繋がりを作れるかどうか。
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それが
次の戦いだった。
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