第64話 基準の改定案
分散連合本部。
「優先順位の地域裁量化?」
会議室がざわめく。
アーネストは資料を広げる。
「接続停止基準の再定義を提案します」
「未達は未達だ」
幹部の一人が言う。
「数値は守らねば意味がない」
「守るための数値です」
アーネストは返す。
「守る対象を失えば、本末転倒です」
沈黙。
---
「山岳地域では、軍需優先が命を奪った」
「外洋制度の話だ」
「我々も同じ構造を持っています」
清算機構の優先条項。
大口決済優先。
流動性保護最優先。
小規模取引は後回し。
「分散でも、順番はある」
アーネストは言う。
「ならば順番を地域に戻すべきです」
---
「基準は一律でなければならない」
「例外は制度を崩す」
幹部の声は冷たい。
「中央は一つの順番を強制する」
「分散は複数の順番を許す」
静まり返る。
---
ユーリが静かに言う。
「改定案の内容は?」
アーネストは深く息を吸う。
「接続停止基準を三段階化」
・即時停止
・条件付き接続
・改善猶予枠
「さらに、優先順位を地域信用団体に委譲」
ざわめきが広がる。
「統一性が失われる」
「効率が落ちる」
「市場が混乱する」
---
「効率は下がります」
アーネストは認める。
「だが中央化は防げます」
沈黙。
---
その時、通達が入る。
「外洋帝国より抗議声明」
【山岳地域への干渉は契約違反と見なす】
圧力が早い。
「彼らは察知しています」
ユーリが言う。
「分散連合が再接続を試みれば、保証条件を強化する」
つまり、
外洋帝国は山岳を囲い込む。
---
夜。
会議は紛糾のまま終わる。
アーネストは一人、廊下に立つ。
肖像画の前。
「あなたはどうやって中央を壊したのですか」
返事はない。
だが問いが残る。
壊すのではない。
中央にならない。
---
翌朝。
山岳都市で抗議が拡大。
「順番を取り戻せ」
「軍事優先を撤廃せよ」
外洋軍が警戒態勢を強化。
市場は揺れ始める。
保証信用の価格、わずかに下落。
安心は、亀裂を持ち始めた。
---
報告が届く。
「山岳若手商人、独自信用証の再発行準備」
分散の芽が、静かに戻り始める。
だが外洋帝国は黙っていない。
アーネストは決断を迫られる。
基準を守るか。
基準を変えるか。
中央は強い。
だが分散は――
守らねば消える。
本話もお読みいただき、ありがとうございました!
少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、
ブックマーク や 評価 をお願いします。
応援が励みになります!
これからもどうぞよろしくお願いします!




