第36話 反逆ではない
祝賀は、行わなかった。
越境取引が成立し、信用圏は国境を越えた。
だが、役所の空気はいつも通りだ。
「……これで、王都は」
ユーリが言いかけて、言葉を飲み込む。
私は、帳簿を閉じる。
「王都は、何も変わりません」
「ですが」
「私たちが、変わっただけです」
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フェリクス・ノートンは、珍しく静かだった。
「商人は、勝者に群がる」
「群がらせません」
私は、即答する。
「選ばせます」
イザベルが、わずかに笑う。
「良い言葉です」
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会議は短く終わった。
流通は安定。
証書は機能。
参加希望は増加。
問題は、ない。
(だからこそ)
私は、執務室に戻る。
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夜。
一人で地図を見る。
王都。
辺境。
越境都市。
線は、もう中央を経由していない。
(反逆ではない)
王を倒していない。
軍を動かしていない。
税を拒否してもいない。
ただ――
通らなくなっただけだ。
それが、国家にとってどれほど重いか。
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王都。
マレク・ヴァイスは、静かに書類を閉じた。
「……軍も、法も、使えない」
違反はない。
反乱もない。
ただ、選ばれていない。
それが、全てだった。
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辺境伯領。
ユーリが、最後の確認を終えて言う。
「これで、信用圏は独立したと言えますか」
私は、少し考えた。
「独立、ではありません」
「では」
「自立です」
その違いは、大きい。
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帳簿を閉じる。
「第3期、終了」
静かな一行。
反逆ではない。
革命でもない。
ただ、単位が変わった。
王都は、まだある。
だが、中心ではない。
信用圏は、まだ小さい。
だが、止まらない。
私は、窓を開けた。
夜風は、冷たい。
「選ばれなかっただけです」
それが、全ての答えだった。
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