第101話 許されない選択
「禁止する」
それは、宣言ではなかった。
命令だった。
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港の中央。
外洋帝国の監査官が、一歩前に出る。
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「分散選択制度」
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「全面無効」
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静まり返る。
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次の瞬間。
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「この取引、停止」
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帳簿が閉じられる。
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「この契約も無効」
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次々と。
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動き出していた市場が、
再び止められていく。
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「ふざけるな!」
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怒号が上がる。
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「何が悪い!」
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「ルール違反だ」
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監査官は淡々と答える。
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「許可されていない」
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それだけ。
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正しさは関係ない。
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許可されるかどうか。
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それだけが、世界を決める。
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分散連合本部。
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ユーリが叫ぶ。
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「全面停止です!」
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「新制度、全部弾かれてます!」
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マルクが舌打ちする。
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「やっぱり来たか」
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リゼットは静かに言う。
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「予想通りね」
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アーネストは窓の外を見る。
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動き出したはずの流れ。
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それがまた、
押し潰されていく。
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「……違う」
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小さく呟く。
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ユーリが振り向く。
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「え?」
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アーネストは言う。
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「前とは違う」
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沈黙。
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「止められているだけだ」
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「崩れてはいない」
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その言葉に、
空気が変わる。
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マルクが言う。
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「つまり?」
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「耐えてる」
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アーネストは言う。
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「構造は生きてる」
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リゼットが頷く。
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「だから潰しに来てる」
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沈黙。
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敵は理解している。
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この制度が、
危険だと。
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だからこそ、
許さない。
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港。
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「全部外洋を使え!」
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声が飛ぶ。
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「それが安全だ!」
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流れが傾く。
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外洋へ。
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単一へ。
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支配へ。
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「……これでいいのか」
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誰かが呟く。
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楽だ。
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考えなくていい。
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だが。
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選べない。
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その時。
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「違う」
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別の声が上がる。
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小さな商人。
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「選ぶ」
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帳簿を開く。
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外洋ではない。
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分散の選択。
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「通せ」
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監査官が言う。
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「無効だ」
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沈黙。
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だが商人は引かない。
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「それでもやる」
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一人。
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また一人。
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選ぶ。
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許可されない選択。
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だが。
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消えない。
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分散連合本部。
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ユーリが言う。
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「まだ…動いてます」
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小さく。
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だが確かに。
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「消えてない」
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マルクが笑う。
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「しぶといな」
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リゼットが言う。
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「これが分散」
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アーネストは頷く。
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「止められても」
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「消えない」
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沈黙。
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そして。
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彼は言う。
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「やるぞ」
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空気が変わる。
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「許可されなくても」
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「動かす」
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ユーリが息を呑む。
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「それって…」
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「反抗だ」
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マルクが笑う。
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「いいじゃねえか」
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リゼットも笑う。
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「やっとね」
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完全に揃う。
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中央でもない。
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外洋でもない。
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分散でもない。
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「選ぶ側」
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その側に立つ。
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港。
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流れがぶつかる。
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外洋の力。
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分散の選択。
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衝突。
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まだ小さい。
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だが確実に。
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ユーリが言う。
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「拡大してます」
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アーネストは言う。
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「止められる前に広げる」
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沈黙。
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時間との戦い。
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その時。
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外洋の艦が動く。
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一歩。
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さらに一歩。
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港へ近づく。
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マルクが呟く。
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「来るな」
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アーネストは見る。
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静かに。
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「……ああ」
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制度の戦いは、
終わった。
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これからは。
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力の戦いだ。
ついにここで「制度の戦い」から「力の戦い」へと移行しました。
ここまで積み上げてきた理屈や構造が、
現実に押し潰されるのか、それとも乗り越えるのか。
物語はいよいよ最終局面です。
ここまで読んでくださっている方、本当にありがとうございます。
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次話、真正面からの衝突が始まります。




