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魔術師の使う魔術は禁術である。
魔術から身を守るには、魔術に詳しくなくてはならない。
私は今回、とある魔術師から魔術についての詳細を教に聞き出すことに成功した。
その情報をもとに、魔術からの防衛方法並びに、もし魔術にかけられたときの解術について記していく。
そんな出だしから始まる『魔術からの防衛方法』を私は真剣に読んでいく。
魔術についての詳細な説明と、それぞれの攻撃からの防御の仕方が記載されている。
明らかに難しい防衛方法もあるが、概ね有効な方法が記載されていた。
最後の方のページになると、もし魔術にかかった場合の解術が載っており、私のお目当てである幻影の呪文についての記載もある。
幻影の呪文の原理は相手の体の核を歪ませることで、姿などを変えるというものであった。
魔獣は基本的に体に核という人間でいう心臓みたいなものがあり、この核により体の情報が決められている。
ウーガの場合、フェンリルの核を持っていたのだが、この幻影の呪文により犬の核に作り変えられてしまったのだ。
この魔術を解術するには核の情報を元に戻す必要がある。
しかし、核の情報を作り変える魔法はこの幻影の呪文しかないので、魔術師がいなくなった世界では実質詰んでいるのだ。
もし魔術師がいたとしてもウーガのために幻影の呪文を使ってくれるとも限らない。
「実質、この魔術を解術する方法はないということか」
本を読み終え、私たちは意気消沈するしかなかった。
「とりあえず、前の部屋に戻って本を探してみるかい? もしかしたら他に方法があるかもしれない」
「そうよ。女神様がここに行けって言ったんだから、ちゃんとした正解の方法があるのよ」
カーティさんに引きずられるように本棚が並ぶ部屋まで戻る。
「まあ、一応探すか」
全員が全員、諦めに似た感情を持ち合わせているのだろうが、ウーガのために協力してくれる。
そんな優しさが目にしみて、私は涙が出て来てしまった。
私は周りにバレないように、本を探しながら必死で涙を止めたのである。
もう1泊イグルーに泊まり、本棚を全て調べたが、やはりそれらしい情報はなかった。
「もしかしたら、他のイグルーだったのかもしれないね」
雪山をさらに捜索する方向で話が進んでいたのだが、私は申し訳なかった。
「もう、いいよ。 これ以上。……ウーガもいいよね」
「致し方あるまい」
残念ではあるが、方法は見つからなかったのだと諦めて、町へと戻ることにする。
帰りの道も雪道の進行となるため、速度は出さずに確実に前に進む。
「まって、あっちにもイグルーあるよ」
またもやカーティさんが遠くにある雪山を発見した。
今回のイグルーから数十キロメートル離れた場所に同じサイズのイグルーがあったのだった。
「いくつもあるとなると、あたりのイグルーを見つけるのも大変になるね」
今回はヤンクルさんがイグルーの中の安全を確認しに行ってくれた。
先ほどと同じ作りで、やはり人気はなく埃が溜まっている。
「今回も地下があるな」
前回のイグルー同様、中央には地下への入り口があり、地下へ行くと本棚ではなく祭壇があった。
「とりあえず祈ってみる?」
カーティさんの言葉に全員が祭壇の前に片膝をつき祈りを捧げた。
「よくぞここまで参られました」
すると祭壇に女神様が登場したのである。
「女神様!」
全員が突然の女神様の登場にびっくりしている。
「この場所はこの世界の始まりの場所でもあります。そのため私の力がより使いやすいので、ここまで来てもらったのです。ダンジョンでの願い通り、フェンリルを元の姿に戻すのが願いでよいですか?」
「はい。お願いします!」
女神様が手を組み祈りを捧げると、ウーガが淡く光る。
みるみるうちにサイズが大きくなり、地下にある祭壇を埋め尽くすほどのサイズになった。
「先ほどの姿も気に入っていたようでしたので、変化自由にしときましたよ」
女神様は少し窮屈そうにそう告げると、ウーガはサイズをポメサイズに戻してくれた。
「この場所に来た冒険者には、天使の宝玉を授けています」
そう言って女神様が手を前に出すと、私たちの前に雫型の宝石がついたネックレスがいつの間にか首にかかっていた。
「このネックレスは悪の気を浄化する効果があります。この世界の魔王が復活したとの情報がありましたので、十分に役立ててください」
そう言い切ると、女神様は瞬く間に祭壇から消えていた。
残された、私たちは自分の首にかかるネックレスを見続ける他なかった。
「とりあえず町にもどるか」
再度町への道を進む。
前回とは違い、ウーガの件が解決したので足取りが軽かった。
もちろん雪道なのでスピードの違いはないのだが……。
丸1日かけて町へと戻ると、町の人がみな驚いた顔をして喜んでいた。
小さな町であったので、私たちが戻ったのも秒速で町の人全員に伝わり、たくさんの人に囲まれる。
私とガイランクさんは早々に取った宿に戻り、町の人の対応はヤンクルさんとカーティさんに任せた。
「今回は主役不在の祝いにならずに済んだな」
以前のダンジョン攻略の時の件を引き合いに出し、ガイランクさんはから笑いをする。
「ウーガも、よかったな」
「うむ。みなにも迷惑をかけたな。俺が元の姿に戻れるようになった以上、旅の速度は安心せい」
ウーガの背中に乗れるようになったため、乗馬からようやく解放されるのだと、私はとても嬉しくなった。
「この後の予定は決まってるの?」
「さあな。ヤンクルたちとこのまま旅を続けてもいいし、ソリーガに戻ってもいいし」
俺たちは冒険者なのだから自由に選べるぜ、とガイランクさんはかっこよくセリフを吐く。
「このメンバーでの旅も楽しいし、もうしばらく続けたいかな」
「あいつらも喜ぶぜ。次はどこに行こうか」
カーティさんもヤンクルさんも不在の中、私たちは勝手に旅の行程を組んで行くのであった。




