2
3日目のダンジョンの攻略でも私とウーガの活躍の場はなかった。
大型の魔物がでるのだが、アタッカーのガイランクさんとサポートのマフィンで、ちょっと手こずるが討伐できてしまうのだ。
私は戦闘前にバフをかけるのみで、ウーガに至っては私の腕の中で優雅に寝ている。
ガイランクさんが押され始めてきたのは117階層あたりだった。
疲労も溜まってきていたので、休憩を取ってもらい、私は動物図鑑からヒョウを召喚した。
117階層の魔物は見た目はゴリラで腕が4本生えていた。
オーゴという名称らしく、ヒョウとオーゴは激戦を繰り広げていた。
私の隣まで戻って来たガイランクさんは、座り込み体力回復に努めていた。
5分もしないうちに決着がつき、オーゴが仰向けに倒れダンジョンに吸収される。
ヒョウを召喚したまま118階層へと向かう。
118階層はうさぎの魔物オーラビットであった。
スノーラビットの進化先で見た目はスノーラビットと同じだが、サイズが先ほどのゴリラと同じくらい大きいのである。
まあ肉食動物と見た目草食動物なので決着は早かった。
大型になった分、オーラビットにはスピードが搭載されていなかったため、ヒョウの圧勝であった。
この調子で3日目の夕方には120階層まで到達した。
このダンジョンでは100階から10階層ごとに、1階までテレポートできる帰還石が設置されている。
この帰還石にギルドカードの登録をしておけば、1階から登録した階数まで一気に登ることも可能である。
120階で登録をし、一度1階へ戻り、宿で休憩を取ることに決まった。
4日目はダンジョンの攻略を一休みし、町でこれまでの成果の売買を行った。
「お兄さんたち、随分と高階層まで攻略進んでるんだね」
「まあ、相方がいいんでな」
素材屋のおじさんは、大量に持ち込んだ収穫物に目玉が飛び出しそうになっていた。
すぐに複数人の従業員が来て、収穫物の清算を手分けして行う。
私とガイランクさんは奥の休憩スペースへと案内され、清算が終わるまで待機することとなった。
「にしてもこのオーゴの毛皮は最高品質ですよ。この皮はもともと傷がつきにくく、商人のカバンに大人気でね。これは高く売れますよ」
お茶を持って来てくれたおじさんは興奮したように話し出す。
「今後も討伐を続けます?」
「まあその予定だが」
「でしたら、今後のドロップ品もぜひうちにおろしてください」
今後でてくる魔物についての予備知識も教えてもらっているうちに清算も終わっていた。
価格が大きいので、ギルド預金に直接支払われることとなった。
私はギルド預金を持っていないため、ガイランクさんのギルド預金に全額振り込まれる手続きが行われた。
「ポイントについては等分で分配しておりますので」
「ありがとうございました」
従業員総出でお見送りされ、私とガイランクさんは店を後にした。
さて、そのころウーガとマフィンは2匹で自由行動をとってもらっていた。
召喚獣は首輪がついているため、飼い主とはぐれて歩いていてもお咎めはない。
ウーガに至っては見た目ただの犬なのでまったく問題ないのである。
裏路地などを適当に歩いて、魔術についての情報を集めてくると言っていた。
ドロップ品の売買も終わる頃にはお昼時であったので、定食屋でご飯を食べることにした。
ギルドランチというアルガイガ名物のランチを注文して、今後の予定を立てる。
今日は昼からも町の観光をして、宿にもう一泊し、明日またダンジョンの120階からスタートすることに決まった。
アルガイガでは町中に山があり、山頂からの景色が綺麗だと観光名所になっているらしく、食後の散歩がてら行って見る。
「ちょっ、ガイランクさん、もっとゆっくり」
結構急な坂道で、道の整備もされていないため、私は早々にバテていた。
ガイランクさんは軽々と登って行くので、慌てて呼び止めるのである。
「わあ、綺麗」
ようやく登り終えた頃には、日が沈みかけており、夕焼けの赤が町全体に広がり絶景であった。
昼間は昼間でまた違った景色が見られるのだろうが、もう一度この坂を登ろうとは思わない。
山頂でアイスを食べ、のんびりしているところで、ウーガとマフィンも合流した。
「魔術について情報はやはりないな」
この世界では魔術師のジョブが100年ほど前から消えてしまったのだ。
そのため、魔術師の使う魔術についての情報もほぼ消えかけてしまっている。
情報収集も大変になってしまったのだ。
「早めに宿に戻るがよい。雨が降るぞ」
ウーガの言葉に私とガイランクさんは、山頂を後にした。
上りよりも下りのほうが足に来るので、あまりスピードは出せなかった。
それでも雨が降る一歩手前で宿に戻ることができたのである。
4日目、当初の予定通りダンジョンへ向かい、120階までショートカットした。
日付が変わっているため、120階の魔物をもう一度倒す羽目になったのだが、体力の回復したガイランクさんとマフィンのコンビニより、ものの数分で討伐することができた。
ガイランクさんとマフィンとそれから召喚したアフリカゾウにより現在の最高到達階である124階にあっさり到着した。
「ここの魔物は動きが変則的だ。十分に注意しろよ」
ガイランクさんの言葉を皮切りに討伐がスタートした。
124階の魔物は蛇型で直径が私たちの身長よりも太いのである。
真っ白な巨大なガースネークであるが、動きが読めず、数々のパーティが敵前逃亡を強いられた。
私たちのパーティでは特攻隊長のアフリカゾウ、アタッカーのガイランクさん、後方支援のマフィン(たまに私)の猪突猛進型である。
アフリカゾウの突進では大体の魔物がスタン状態に陥る。
その隙にガイランクさんとマフィンが集中攻撃するのである。
しかしガースネークはアフリカゾウの突進でスタン状態にはならなかった。
作戦が崩れたのだが、ガイランクさんが俊敏性を生かしてガースネークを翻弄し、マフィンが攻撃魔法を当てて行く。
私も俊敏性に定評のあるベンガル虎を追加で召喚した。
ベンガル虎とガイランクさんに翻弄され、アフリカゾウの突進とマフィンが攻撃魔法とを次々とくらい、ガースネークは瀕死状態になる。
とどめとばかりにマフィンが氷結魔法を繰り出し、ガースネークを氷漬けにする。
動かなくなった氷漬けのガースネークにアフリカゾウが3度突進し、氷が割れるとともにガースネークはダンジョンに吸収された。