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『MPを累計200消費した記念にスキルを獲得できます

1.治癒魔法:病気(ウイルス)

2.治癒魔法:病気(細菌)

3.採掘

4.魅了

5.料理

獲得したいスキルを1つ選んでください』


日課のレミさんへの治療を行うと、想定通りスキル獲得画面が出た。

料理スキルが気になるところだが、私は兼ねてより決めていた病気(ウイルス)を選択する。

そして、レミさんに今度は病気(ウイルス)の治癒をかける。


いつもより多めに治癒をかけられたから不思議そうな顔をするレミさんに、病気の治癒が出来たかもしれないことを伝え、解析魔法をかけさせてもらった。


『名前:レミ・アークシィ

年齢:38歳

種族:獣人族

ジョブ:コック

HP:130/130

MP:120/120

状態:健康』


「やった!」

見事に治癒に成功していた。

大喜びする私の声に、料理中だったリュイくんとロイくんもキッチンからやってきた。

「リュイくん!ロイくん!レミさん治ったよ」

私は2人に交互に抱きついた。


2人はもちろん、当の本人であるレミさんも呆然としている。

「母さん、ほんと? 本当に治ったの?」

リュイくんが恐る恐るレミさんに尋ねる。

レミさんは自分の体を触りながら、困った顔をしている。


「最近、すごく調子がよかったから。あまり、自覚がないのよ。でも、アズサさんが言うなら間違いないわよ」

「お母さん!」

その言葉にロイくんは大泣きしながら、ベッドに腰掛けるレミさんに抱きつく。

リュイくんも涙目である。


「アズサさん。本当にありがとうございます。本当に、本当に」

深々と頭を下げるリュイくんに、私はいたたまれなくなる。

「き、気持ちは分かったから。私も居候させて貰ってるし。恩返しできてよかったよ」

「恩返しなんて、比べ物にならないですよ」

なおも続けそうなリュイくんをなんとか宥めて、全員で晩ご飯を食べる。


リュイくん達が用意してくれた、チキンソテーはとても美味しかった。

「レミさんの状態は健康なんで、明日の土曜祭3人でまわってみたらどうです?」

家族水入らずで。そう私が伝えると3人とも乗り気であった。



次の日、私はイベント会場に居た。

もちろんお仕事のためだ。

今日はカーティさんと、ステージ横の試食コーナーを担当することになった。

試食コーナーも新しい試みで、複数の店舗の試食がこの場所でできるのである。


来たお客さんに試食品を渡すだけでなく、お店の場所を伝えたり、試食が無くなりそうならお店に取りに行く作業もあったり大変である。

しかしステージ横なので、ステージを楽しみながら作業できる。

……そう思っていた時もありました。


なんと、試食コーナーはとても人気で行列が出来るほど人が並んでいる。

ひっきりなしに来る人を捌くのに必死で、ステージを楽しむ余裕はなかった。

カーティさんと汗だくになりながらお客さんの対応をする。

運営側が慌てて人の増員をしてくれるほどである。


「休憩だよ」

2時間ほど無心で働いていると、交代のメンバーが来た。

お昼も兼ねて2時間の休憩をくれるらしい。

カーティさんと一緒に出店でもまわろうかなと、カーティさんの方をみるとヤンクルさんが側にいた。

空気を読んで、一人でまわろうかなと思っていると、ガイランクさんが手を振っていた。


私は吸い寄せられるようにガイランクさんの側にいく。

「一緒にまわろう」

そう言って、ガイランクさんは私の手を取り、出店の方へ向かう。

「食べたいものある?」

振り返りながら聞いてくるガイランクさんに、私は手持ちが1ネルもないことを伝える。

かなりの金欠具合である。


そんな私にびっくりした顔をしたガイランクさんであったが、奢るからと何店かまわり食べ物を買っていく。

「これ美味しいよ」

そう言って、1本の焼き鳥をくれた。

私はせっかくだからと、食欲に負けて焼き鳥を美味しくいただいた。

あまりの美味しさにほっぺたが落ちそうである。


「美味しそうに食べるね」

「本当に美味しい!」

よかったと微笑むガイランクさんの眩しさに目がかすみそうになる。

「こっちも食べなよ」

餌付けをされている気分になる勢いで、いろんな食べ物を分け与えられた。

私の一番のお気に入りはやはり、焼き鳥であった。

ガイランクさんに強請り、もう1本買ってもらった。


「アズサさんって意外としたたか?」

「調子に乗りすぎました?」

「いいや。その方が好き」

素のトーンでの好きというセリフに私は胸がキュンとする。

ドキドキさせるのはやめて欲しい。


出店には食べ物以外にも、工芸品やミニゲームなどもある。

私はある程度お腹が膨れたので、ガイランクさんに連れられて、ミニゲームを数種類楽しんだ。

射的では、ガイランクさんはど真ん中特賞を当てていた。

いちいち格好いい姿を見せるのは遠慮して欲しい。


「あっちの方も見る?」

ガイランクさんが指差す方角は工芸品のコーナーである。

指輪やネクレス、ブレスレットなど光り物系の店が多かったので、遠慮した。

似合うと思うのに。と残念そうな顔を見せるガイランクさんは私の所持金が0ネルなことを思い出して欲しい。


2時間というあっという間の時間が終わり、私は再度、試食コーナーの売り子に戻った。

午前中に比べ、列は落ち着いており、比較的ゆっくりできた。

途中で、アークシィ家が勢ぞろいで遊びに来てくれた。

試食を何点か試し、ロイくんが気に入った焼き鳥を買いに行っていた。

うん。私もその焼き鳥大好き。

実際には鳥ではなく、スノーラビットというツノの生えたウサギ型のモンスターの肉らしいが、食欲がなくなるので鳥と思い込むことにしている。


「さぁ、お待ちかね。告白タイムのお時間です」

ステージでは今回の目玉イベントである、告白タイムが始まった。

トップバッターはタテガミが素敵なライオンの獣族のカップルで、プロポーズが行われていた。

見事成功で、会場には大きな拍手が起こる。


私は試食コーナーにちょうど人がいなくなったので、イベントを横目で眺める。

一緒にステージに上がる事もあれば、1人で登場して、相手はわざわざ放送で呼び出す場合まである。

もちろん失敗に終わるケースもあり、その場合は会場から慰めの拍手が送られる。

飛び入り参加もありで、会場自体が盛り上がってきたところで、ガイランクさんが登場した。


隣で一緒に見ていたカーティさんもびっくりした顔をしている。

他の参加者に比べてイケメン度が高いことにより、会場の女性がざわめき立つ。

そんなガイランクさんがマイクを持ち、こちらを見てくる。

「アズサさん。俺と付き合ってください」

まっすぐと貫かれそうな勢いで目が合い、私は偽装とわかっているのに、胸のドキドキが止まらなかった。



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