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「チラシ落としちゃったね」
チェリーレッドカラーの短髪はふわふわとパーマがかかっており、切れ長のつり目が七三分けの前髪から覗いている。
筋肉質のガッチリとした体型が魅力的なイケメンが、私の落としたチラシを拾ってくれる。
「すみません。ありがとうございます」
私は慌ててイケメンから、チラシを受け取りお礼を言う。
「アズサ!」
そこへ後ろから、カーティさんがヤンクルさんを伴ってやってきた。
「あ」
そして目の前のイケメンを見ると、意味ありげに言葉を漏らす。
「ガイランクじゃないか。君も当番かい?」
「俺はただの散歩」
「そうか」
なにやらイケメンはヤンクルさんと知り合いらしい。……たぶんカーティさんとも。
「怪我してない?」
「はい、大丈夫です」
ガイランクさんは、私の怪我の心配をして、何事もないとわかると、その場から去っていく。
ガイランクさんは炎の精霊、ヤンクルさんは雪の精霊だそうだ。
精霊族はその属性を活かしての仕事をしていることが多いそうだが、ガイランクさんもヤンクルさんも腕に自信があり、貴族区画の護衛を行っているらしい。
ヤンクルさんも仕事があるので、早々に分かれて、チラシ貼りの続きを行う。
規定枚数を捌き終わり、設営会場に戻ると、ステージやら屋台やらが出来上がってきていた。
私とカーティさんは、屋台への荷物の運び込みを手伝う。
忙しそうなところを手伝ったりで、その日は終わった。
途中、ギルドから帰宅途中のロイくんが待っててくれたので、一緒に帰ることにした。
「お姉ちゃん、土曜祭の手伝いしてるんだね。僕も年齢が足りてたらしてたんだけどな」
実はこのコンテストの準備は夜間の作業もあるため、この世界での成人である16歳以上からの応募となっていたのだ。
恨めしそうに見てくるロイくんに、私は苦笑いを返すしかなかった。
帰宅し、レミさんに日課としているHP回復と病気(風邪)の治癒魔法をかける。
これで、明日も同じ工程を行えば、病気(ウイルス)をゲットできるので、レミさんも土曜祭に参加できるかもしれない。
治癒魔法の後は、まだ帰宅していないリュイくんに代わり、晩御飯の準備をする。
料理は作れないわけではないが、MP消費のために今日も食べ物図鑑を物色する。
まだレミさんの体調は万全ではないので、消化のしやすい食べ物がいいだろう。
「というわけで、豚汁、ご飯、鮭のホイル焼きです」
さっぱりしすぎると、成長期の2人が物足りないと思い、それなりの量を用意した。
「おいしそー」
ロイくんは待ちきれないと、ダイニングのテーブルに座ってそわそわしている。
リュイくんも帰宅しており、レミさんと一緒に待機していてくれたので、テーブルにご飯を用意して食べ始める。
ロイくんはもちろん、リュイくんもレミさんもおいしそうに食べてくれた。
まあ私が作ったわけではないのだが、嬉しい。
シャワーを浴びて、明日に備えて早々に寝ることにした。
翌朝、昨日と同じように朝食を用意して、今日はギルドによらずに直接、設営会場へと向かう。
リュイくんもロイくんも相変わらずギルドで依頼を受けるらしいが、明日の土曜祭は祭を楽しむそうだ。
今日は野外ステージの裏方担当となった。
リハーサルを行う人たちを案内して、ステージの説明を行う。
カーティさんは機材の準備を担当しているようだ。
「やあ、君は昨日の」
次のリハーサル予定の人を呼ぶと、なんとヤンクルさんやガイランクさんたちだった。
護衛団の宣伝とメンバー募集のために、模擬戦を行うらしい。
ヤンクルさんが私の周りをキョロキョロと見回していたので、カーティさんならいませんよ。と伝える。
「いや!違うよ。探してない、探してない」
めっちゃ焦りながら返答するヤンクルさん。
カーティさん!めっちゃ脈ありですよ。
ヤンクルさんたちの模擬戦リハも終わり、午前中のリハの時間は終了した。
カーティさんがテントの部品などを運んでいるので、私も一緒になって運び、お昼は一緒に喫茶ボンに向かった。
私はお金がなくて、朝にお昼ご飯分も用意してお弁当を準備していたのだが、カーティさんに持ち込みも大丈夫だからと連れて行かれたのだ。
「盛り上がりそうなイベントね」
「ほんとだね。リハで見ちゃってるのが勿体無い気分」
カーティさんも機材を運びながら、ステージをちらちら見ていたらしい。
ヤンクルさんとガイランクさんの模擬戦、迫力あったもんね。そう付け加えると、カーティさんは別にヤンクルだけのことじゃないと焦って言い訳をしていた。
私は胸がほっこりする。
お昼のリハは孤児院のメンバーの声楽から始まった。
ランちゃんやロイくんたちより小さい子が一生懸命歌っているのを見ると、微笑ましくなるが、この年齢で親がいないのだというのがなんとも言えない。
親が病気で亡くなってしまったという子は少なく、ほとんどが孤児院の前に捨てられていくらしい。
同じ町だと足がつくから、わざわざ別の町の孤児院に捨てるという。
ひどい親だが、そうしないといけないほどの経済状況なのだとか。
私たちのいる領土は領主が善人なので安心して生活できるのだが、違う領土では領主による搾取がひどい地域があるらしい。
そういった地域では、領民がいなくなるのを恐れ、転居に関しては厳しい制限が設けられているらしい。
親はせめて子供だけでも、自由な環境で育って欲しいと、安全な町の孤児院に捨ててしまうのだと。
そんな背景を聞くと、その領主に対する怒りが湧いてくる。
「次の方どうぞ」
孤児院の子たちの次は、獣人による曲芸であった。
聖歌隊による合唱、角笛演奏などが続き、最後が目玉の告白タイムとなる。
この告白タイムは飛び入り参加なので、今日のリハはないとのことで、今日も1日が終わった。
「ねぇ」
カーティさんを探そうと周りをキョロキョロしていると、後ろから声をかけられた。
振り返ると、ガイランクさんがいた。
「こんにちは」
「頼みがあるんだけどさ。明日の告白タイムで、君に告白するから受けてくれないかな?」
イケメンからの突然の告白に、私はどぎまぎしてしまう。
「えっ?」
わたわたと慌てふためく私を尻目に、ガイランクさんはなんてことない種明かしをする。
「ヤンクルとカーティナクルのお膳立て、手伝ってよ」
「そういうことでしたら!」
カーティさんのためにも一肌脱ぐのはやぶさかではない。
私は明日の告白タイムの時間が楽しみになった。




