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ユニ -モチーフ・桐歌-  作者: オッコー勝森
第五話

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ミステリアスな美女


 夕食後、波音と共に修練場で色々試してみたものの、異能の検証はほとんど進まなかった。強いて言えば、既存のブロックのどれとも違うと分かっただけだ。

 落ち込む。堅物で有名な私も、目の前で可愛い猫ちゃんの具現化など見せられれば、超能力に対して強い期待を抱かざるを得なかった。それが裏切られたのだから、多少の落胆は仕方がない。

 深夜の十一時五十分、修練場の寝室を抜け出す。ミステリアスな美女に言われた通り、「まだい」の裏口にやってきた。息が荒くなっている。地上と地下を繋ぐ長くて急な階段のせい。エレベータの設置義務がある高さ。

 ノックする。すぐに開いた。彼女に出迎えられる。


「やっぱり来たね。君は来る奴だと思ってた」「…………」

「警戒してる? そりゃそうだ。あ。言ってみたかったセリフがあるんだけど、言っていい? このまま元の生活を続けたいなら、踵を返して帰りなさい。敷居を跨ぐ資格があるのは、真実知る勇気ある者だけ」


 冗談っぽい言葉だったけれど、どことなく凄みもあった。負けたくないから、躊躇なく足を踏み入れる。

 扉が閉められた。もう引き返せないと真に思わせられるのは、彼女が振り撒く独特のカリスマが原因だろうか。


「正解。力のあるなしに依らず、変化は平等に訪れる。とりわけ此度は劇的。ドラマティック。知る機会があるなら恐れず踏み込むべき。そうだとは思わない?」

「ええもちろん。貪欲に知り、無限に想像しなければ、勝負は出来ない」

「人材不足でねぇ。君を見た時、心が踊った。偶然の帰省に感謝しなきゃ」

「帰省? ここが実家だと? てっきり王侯貴族の類かと」

「昔も今も、私はただの、定食屋の芋娘。みんな信じちゃくれないけど」


 誰もいない食堂、一つ光る奥の照明下の机で、着席を促された。ホカホカの饅頭が十も置かれている。遠慮なく手を伸ばした。

 美女は柔らかく微笑む。なんとなく気恥ずかしくなって、手を引っ込めた。おかしい。先ほど田峰たちによって、世間的に見て私は食い意地が張っている方らしいと分かったけれど、差し出されたお菓子へ我先にと食いついたことはないのに。

 彼女といると心がホワホワする。調子が狂う。


「出来たてだから早く食べて。楽にして、私の話を聞いてよ。饅頭美味しい?」

「はい。AUFO関係かしら?」「もちろん」


 頷かれる。容易い推測だ。


「AUFOに入ってくれる?」

「気乗りしないけれど、それ以外の選択肢はありません」

「真面目だなぁ。AUFOに入って何がしたいとかある?」

「人々の生活を脅かす海底人を駆除したいです」

「まだあるよね、水晴桐歌ちゃん? お父さんとお母さんを殺した海底人どもに復讐してやるとか」「!」


 どうして私が「父と母を殺した仇が海底人だと知っている」と知っている?

 心中で構えるが、反応は表に出さない。マサコたちから聞いたのだろうか。


「いーや。それを大義名分に、海底人を皆殺しにするゲームがしたいとか。勘だけど」「…………」「何でもいいや。私は君を歓迎する」


 優しく応対され、甘い物を与えられ、心が緩み始めた所でこれだ。油断するなという警告と、あと序列付け。

 ショックはない。この人の方が格上だというのは、最初に見た瞬間から分かっている。


「あなたとAUFOはどういう関係なのですか?」

「ふっふっふ、秘密。田峰っちや神木(クマさん)よりは偉いよ」

「でしょうね。トップだったとしても驚かない」

「これ、AUFOという組織の説明書。ぼちぼち覚えといて」

「冊子? 今時珍しいですね」「PDF開けない人未だにいるから」

「階位があるのですか? アルファベットで分けられると」

「うん。かっこいいでしょ?」「いや、別に」


 C級36位とか、A級7位とか、まるで少年漫画のような決まり方だ。脱力感すら覚える。分かりやすいけれど、指揮系統が不明過ぎた。


「もちろん、役職は別に決まってるよ? でもほら、AUFOの本分は海底人との戦いだから。各個人が現場でどの程度力を発揮出来るか、指標があった方が便利でしょ? そうではない?」

「現場での実力というのは、このように綺麗に整序出来るものなのかしら?」

「? 聖女?」

「……現場でどの程度使えるのかという情報は、一番目二番目三番目みたいに、きちんと順番が決められるものなのですか?」

「さあ? でもよく変動するよ。株価みたいに。入れ替わり戦で」

「まずくないですか? それってまずくないですか? 出動者を事前に決めにくいという点で。命がかかっているのに」「え?」


 ミステリアスな美女が首を傾げる。賢そうな人だと思っていたけれど、意外とそうでもないようだ。人は見た目で判断してはいけない。恐らく階位制度は、この女がイケてるとかそういう理由で勝手に導入したものなのだろう。周りに冷静な人たちがいて、ルールの暴発を防いでいるに違いない。

 残っているのは、努力動機維持のための道具としては割と便利だからか、あるいはランキングトップ層がマウント好きだからか。

 冊子をパラパラ捲りつつ、AUFOという組織の価値を吟味する。美女に視線を送った。頭脳担当とはお世辞にも言い難そうだけれど、やはり雰囲気に強者の厚みがある。隣にいるけれど、きっと大きな隔たりがある。

 最後のページにサインしてから、冊子を返した。饅頭に手を伸ばす。


「君の字。めっちゃフツウだね」「そのコメント意味あります?」

「早速だけど、宿題出していい?」「嫌ですけれど」

「水晴桐歌ちゃん。二日以内にブロックの能力を突き止めて」

「なんですって?」

「出来なかったら君が偽ζ-01だとバラす」


 饅頭が喉に詰まりかけたし、鳥肌が立った。


この作品は拙作『聖女の首を拾ってしまった』の設定を流用して作られたものです。ミステリアスな美女は、まだ中学生でしたが、その作品で主人公を張ってた奴です。度を越した変態聖女が好きな人向けの作品でして、読んでいただかなくても全然問題ないです。

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