飯テロって変に豪華なものよりも、カップラーメンとかの方が効くよね
「あれ、お兄ちゃんもう帰ってきたの?」
女風呂での駆除を、終えた俺を迎えたのは妹のそんな疑問だった。
「もう、つっても」
日付とっくに変わった時間なんだけど。
「お前はお前でなんで起きてるんだよ」
「え? 推しのリアタイしてるに決まってるじゃん」
「日頃は夜更かしは敵とか言っとるのに」
「推しの生ライブは別腹」
侑芽は、坂系は全て網羅しているそうだ。
「どこいくの卓也。 今から、出番始まるのに」
「シャワー」
「なるほど、身を清めてから見るんだね。 さすが!」
「違う」
別に俺ファンじゃないし。
風呂から上がるとメッセージが届いていた。
『今日の夕食』
画像には、カップ麺が堂々と写されている。この時間はもう夕食じゃなくて、夜食なんじゃないかな。どっちでも良いか。
で、なんで、唐突にこんなもん送ってきたんだ佐伯のやつ。
『飯テロ』
大変シンプルな回答ありがとうございます。そう言われると、めちゃくちゃカップ麺食いたくなってくるから不思議だ。
…………カップ麺あったかな。
『今頃、頭の中がカップラーメンで埋め尽くされていると思うが、冗談だ』
なにが。
『飯テロというのがだ。 どこぞのだれかにチクられたお陰で、三食記録することになってしまった。 ということで。 ここをメモ帳代わりに使ってしまっても、構わんだろう?』
「構うわ」
普通にやめろ。あと、大半が佐伯の自業自得だよ。
そして、我が妹よ。
「人のリュックを勝手に漁って、ゲットしたオランジットは旨いか」
「旨い。 これ、加奈さんから?」
「うん」
タッパー洗って返すから、満足したら残りはどこかの容器に移してくれるとお兄ちゃんは嬉しい。あ、やってくれる、やったー。
「それにしてもねえ、お兄」
「ん?」
「本当に加奈さんって、栄養失調寸前だったの?」
「スキルはあるけど、それ以上に洗い物やら調理過程がめんどくさいらしい」
気持ちは結構分かる。親父が単身赴任しているため、基本が三人の我が家だけど洗い物がめんどくさすぎて数日放置されてる、なんてこともざらだ。
「うーん。 加奈さんの健康のために、卓也一緒に住んだら?」
「なんでそうなる」
いや、まあ、言いたいことは分かるけども。
「で、さっきからキッチンで何探してんの?」
「カップラーメン」
「は? こんな時間から?」
端末の画面を侑芽に見せる。
「なんてものを…………! これは到底許されない私も食べる、カップラーメンとカップ焼きそばどっちが良い?」
じゃんけんの末、俺はカップ焼きそばになってしまった。おのれ侑芽…………カップラーメンの恨みは忘れんぞ。
次ホワイトデーにするか仙人の話にするか悩み中