さーくーらーさーくーらー
春は、出会いと別れの季節だとこの国では良くいわれる。年度始めだからね。
この時期を象徴するのは、なんと言っても桜の花だろう。昔から、それこそ千年以上前から、ご先祖様達は桜の花を愛で、時には「お前らがきれいすぎてしんどい……」と文句(?)をつけたりしてきた。
厳密には、今の俺達が見ている桜は、ご先祖様達が愛でてきたものとは違うようだけど。
俺が通う大学にも、桜の木が植えられている。それらは学内の池沿いに立ち並んでいて、近所の人たちにはちょっとしたお花見スポットにもなっていたりする。
そのせいもあってか、池沿いのちょっとしたスペースは毎年、新一年生の歓迎会──通称:新歓──が開かれる場所になっている。他の大学は知らないけれど、俺達がいう新歓とは、つまるところ部員勧誘の場でありそれはもう毎年熾烈な戦いが繰り広げられているのだ。
ちなみに現在、我らが部活のブースは閑古鳥が元気よく鳴いていた。
「なあ、卓也」
「うん?」
実に穏やかな昼下がりだ。
今は暇だが、ちらほらと部活見学にも新入生が来てくれていたので、俺も前田もそこまで本気にビラ配りをする気はない。したがって、レジャーシートで思いっきり手足を伸ばしても叱られない。
「隣の、陸部か。 あそこにいるの、お前の学部の有名人じゃなかったっけ」
「有名人?」
そんな奴いたっけか。
隣を見る。
「……………」
前田曰く、この時俺の顔はすさまじくしかめられていたらしい。
なぜならそこには。
一回生の振りをして。
堂々と無料のお菓子をむさぼり食っている。
仙人がいた。
「前田、ちょっと任せていいか?」
「あ、ああ、忙しくなったら戻ってこいよ」
あの野郎、いたいけな二回生達のなけなしの金で頑張って購入した菓子を、食ってやがる……!
「ひどいじゃないか卓也君」
「学部の恥を、純粋な一回生に見せるわけにはいかないからね」
というか、お前ご飯までついていくつもりだっただろ、どうせ。
「おいおい、君は彼らの『奢りたい』という気持ちを無碍にしろというのかい?」
「'新入生'を歓迎するっていうそもそもの趣旨に反してる輩が、偉そうにすんな」
ぶっちゃけると新歓は、部活やサークル存続のための、未来ある新一回生への投資なのだ。つまり、新入生とは程遠い12留(あくまで噂だけど)男に飯を奢るなんて少なくとも新歓の目的から考えると、無駄でしかない。
「おや、君は知らなかったのか」
「なんだよ」
「四回留年すると、リセットされて新入生になるんだ」
そんなシステムねえわ。
懲りずに馬術部の方に向かおうとする馬鹿の首根っこを掴んでいると、大体文化部が陣取っているエリアから顔見知りがやってきた。
「たく……伊豆野」
「佐伯じゃん」
ホワイトデーぶりだ。
「やあ、加奈君」
「喋るな。 伊豆野、その隣の粗大ごみは何をやらかしたんだ?」
粗大ごみって……。
というか、二人とも面識あったんだ。いやまあ、一応同じ学部ではあるからおかしくはないか。
「何もやらかしていないよ。 僕と卓也君は大親友だからね」
「伊豆野、友達は選べ」
その点につきましては同意します……。誰が親友だ。




