第10章「焦る気持ち」
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第10章「焦る気持ち」
今日も家に無事に帰ってきた。
学校から家に帰ると俺はこの2学期になってからの習慣、マンションの裏庭に向かう。 外壁と木々で囲まれた先に歩を進めると急に声が聞こえた。
ト「ご主人、おかえり」
「トリスタンか? ……どこにいる?」
外からは見えづらい裏庭、しかし中からはどちらかといえば見通しのよいにもかかわらず、聞こえたのはその声だけ。
俺がキョロキョロしていると等間隔に植えられた木、その中でもまだ冬に向かって枯れるのを必死で抗っている葉っぱの間からズボッっとトリスタンの頭だけが出てきた。
「うお!? びっくりした…」
トリスタンはクルンとでんぐり返しをするように地面に降り、服に付いた枯葉を落とす。
ト「すまないご主人。 裏庭ではみんなが修行をしているから一般人が来ないようにこういった所に隠れて監視しているのだが…フッ、驚かせてしまったか?」
「修行って、何で俺が半分もの小人を家…妹に割いているか分かっているのか?」
ト「もちろん。もしランスロットがご主人の留守中に妹君を襲うことも想定して、警護、見張りは行っている。 ちなみに今日は既に妹君は帰られているよ」
トリスタンの業務報告を受けながら進むと、小人たちは一心不乱に戦い合っていた。
相変わらず子猫1匹にも太刀打ちできそうに見えない。 ならばこの修行という名目のじゃれ合いに意味はあるのだろうか?いや、結果ではなく過程を大事にして…しかし結果が子猫以下では…。
俺は一人応援をしているケイの隣にいく。
ケ「がんばれぇ♪ がんばれぇ~♪ あっ用兵ちゃん、おかえりぃ~」
「ああ、ただいま。 お前は修行しないのか?」
俺の問いにケイはニコニコと高そうな装飾品を輝かせながらネコ声で答えた。
ケ「だってぇ~ケイ~からだぁ弱いもん♪」
どこぞのニートと同じようなことを言うケイに現代の若者の世情を見る俺、するとモルが寄ってきた。
モ「用兵さん、部屋に戻ったらお話があります」
「…分かった。 お前ら部屋に戻るぞ」
部屋に戻ると俺のベッドでガラハットが我が物顔で寝ていた。
ガラ「ZZZ…。 あ!我が麗しきマスターおかえりなさいませ。今日もお元気そうでなにより…眠い」
「起きろよエセ聖人」
ガラ「なんという物言い。 マスターの心の闇をわたくしに取り除く力が無いのが悔やまれる」
「ハァ~。 んで、モル。 話って何だ?」
モルドレッドは先ほどまで疲れ果てて汗だくだったのが嘘のように、優雅に扇子を扇ぐ。
モ「用兵さんが帰ってくる少し前のことなのですけれど、このマンション…いえ、用兵さんの部屋が誰かに監視されていましたわ」
「マジで?」
モ「わたくしの能力のことはお教えしたでしょう? 間違えは万に一にもありませんわ」
「…そうだったな。相手はランスロットか?」
ケ「ん~とねぇ、多分違うって思う。 だって使ってた召喚獣が鷹だったからぁ、ちなみにその鷹はさっきまでいたんだけどぉ……今はいないよぉ」
ケイは女子高生の携帯電話のように、キラキラにデコられた羅針盤を見ながら言った。
モルドレッドの【murder crisis = 真紅の殺意】。
生物の殺意、注目が色で見える。
ケイの【trace navigator = ナビナビ君】。
半径10mの生物反応をデコられた羅針盤に映し出すことができる。
この2人を毎回、妹の護衛にしているのはこの能力ゆえ。
じゃなければこの犬猿チームを一緒にはしない。
しかし成果は上場、どれだけうまく隠れようがこの2人がいればまず不意打ちは防げる。
そしてこれは妹だけは守ろうとした俺にベディが言った策。
「ベディ、この状況をお前ならどう見る?」
ベデ「由々しき事態ですね、おそらく主はマークされていると思いますが、召喚獣を使っていることを鑑みると警察とは考えづらい……主の話によく出てくる私刑団とはどういった組織なのですか?」
「簡単に言うと召喚獣の使い方を教える学校の生徒だ。警察やらの要請で動くこともある」
ベデ「完全にマークされています、主。」
「やっぱりか~」
ベデ「はい。 おそらく学校でコウチョーとやらが言っていた、50人以上が闇討ちに会った。 それを学校側から聞き、普通の召喚獣ではなく、テスト1位で1番強い召喚獣を持っている主をマークする。 話に筋が通っています。」
引いたのはハズレなのに
なぜにみんなは分かってくれないのだろう…
「てことはこの後、俺の身に起こることは~」
ベデ「主への直接的な聞き取り。 被害者が増えるようなら身柄の拘束」
「だよね~俺も同じ意見だ。 俺はやってねーのに」
ベデ「そういうことは署で聞きます。 さぁ手を…出しなさい」
「ハイ…刑事さん。すいませんでした…って言うかー! 何でもう捕まってんだよ!」
でも確かにこのままだとそうなる、被害者の数を考えれば…持っている召喚獣が犯人と同じ小人だと考えれば…ちくしょう!
こっちには世間体っていう命よりも大事な社会的ステータスがあるのによ!
俺はベッドの上で寝ていたガラハットをとりあえずゴミ箱に投げ入れた。
デ「マァマァ、ご主人。 落ち着いて」
いつもヘラヘラしているディナダン、今日はいつもよりチャラく感じる。
デ「こういう時こそ逆転の発想が大事やで」
「…なるほど。確かにその通りだ、して解決策は?」
ディナダンはジャンプし、俺の胸をドンッ!と叩いてきた、そして降りると自分の胸を指す。
デ「ワイに聞いてくるなんてご主人、ノッてるね~♪ ここに聞いてごらん♪ 分かったやろ、ご主人。 ワイの言いたいこ――」
さてと、どうしたものか。
俺はディナダンをゴミ箱に捨て入れ、悩みに耽る。
このまま手をこまねいて、指をくわえるためにあの夏の悪夢を潜り抜けたわけじゃない。
「そうだ!!いいこと考えた! 喜べ2頭身ども、仕事の時間だ!」
全「「???」」
そしてこの夜、俺は小学生以来の学校侵入を決行することにしたのだった。
暦は11月。肌寒いから寒いに確実に移行してきた夜のこと…。
閲覧ありがとうございました。
例え流し読みでも、チラ見でも、視界に入れたことが私の幸せでございます。




