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クラス転移に巻き込まれ用務員は魔力が0だった。  作者: ぐっちょん


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第27話(レイラ視点)

「アイスルンレイラ。このまま進めば昨日の二の舞になってしまうのではないですか?」


「分かっている。だが、このまま指を咥えて見ているわけにはいかないだろう」


 この世界には魔物が発生する汚溜まり地帯というものがある。

 つまりその汚溜まり地帯以外には魔物は発生しないのだが、唯一の例外がダンジョンだ。


 ダンジョンもまた世界各地、無数にあり勝手に増えるだけでなく、植物が根を張るように成長していく。

 人の出入りがないとまるで我々を挑発しているかのように魔物が溢れ出してくるので放置はできない。


 まあ魔物の存在も悪い事ばかりではなく、魔物の死骸や魔石(魔物の核)は素材となりあらゆる分野で活用されているので良い面もあるが、それはあくまでも管理下にあるのが前提である。


 幸い、できたばかりのダンジョンは浅く魔物も弱いため、その土地の領主もしくは国王の判断で、王国騎士団の中でも、ダンジョンの攻略を担当(得意)する部隊を派遣する事になる。

 

 このように昔から存在しているダンジョンだが、未だに解明されていない不明な点は多い。


 代表的なもので言えば、ダンジョン内では僅かだが常に魔力を消耗(吸収されている?)し続けてしまうことや、魔物を倒した後に放置していると自然消滅してしまうことなどがあげられる。


 これらについては、ダンジョンそのものに吸収されてしまったという説と、ダンジョン内ではクリーン魔法の様なものが発動していて、魔物が討伐され無機質な存在となった時点でクリーンの対象となり消滅するという説がある。


 ちなみに私個人の考えとしては後者だ。ダンジョン内は灯りがないのに明るくゴミや小石なども落ちていない。それでいて傷をつけた壁や床などもいつの間にか綺麗に修繕されているのは周知の事実。


 ダンジョン内で消費された(吸収された)我々の魔力はそういったものに使われていると考えた方がしっくりくるのだ。


 ただし、ダンジョンの発見が遅れたり、成長の速度が早い厄介なダンジョンは核までの階層が深くなり、その途中で魔力枯渇に陥る可能性が出てくる。


 魔力枯渇と言っても命の危険はなく、少し休めば回復もする。

 ただ歩行が困難なほどの疲労感に襲われるため油断はできないが。


 しかし、魔物が徘徊するダンジョン内や汚溜まり地帯となると話は別だ。


 いくら休んだところで魔力が回復する事がないため、ダンジョンや汚溜まり地帯への探索は魔力回復薬が必須となる。


 そんな魔力回復薬の制作には魔力が欠かせないのだが、上質な魔力回復薬を一番生産している国がマホマホ王国なのだが……やめよう。今は魔の森に集中すべきだったな。


「アンナ、いいだろうか」


「ああ、聞くまでもないね」


 何も手を打たなければ汚溜まり地帯に発生する魔物が強化されてしまう。

 そうなると今の戦力で浄化魔石の交換は厳しくなる。アンナもそれを分かっているのだ。


「そういうわけだ。お前たち第一部隊は合図があるまでこの場で待機。第二、第三部隊は……そうだな、周囲の魔物でも狩ってもらうとするか。昨日はそんな冒険者に助けられたからな協力して効率よく狩ってくれ。では、これより先は私とアンナで行動する」


『そんな』

『アイスルン様!』


 各部隊長が不満の声を上げるが、確かめたい事もあるので、今は皆の意見を聞くわけにはいかない。


 私は昨晩の出来事。帰り際にゴローから受け取った水筒に視線を落とす。


 ——ふふ……


———

——


 それは昨日のこと。


 先行していた斥候から突然の救援要請。


 あの時は、駆けつけた先で片膝をついていた斥候が魔物に囲まれているところに割って入り、斥候を背後にして魔物と相対したまではよかった。


 だが突如として襲われた倦怠感に部隊みんなが斥候と同じように片膝をついた。かくいう私もそうだ。訳が分からなかった。


 それからは無我夢中。部下たちを先に逃すことだけを考え私とアンナで必死に殿を務めた。


 思い通りに動かない身体で剣を振り魔法を放つ。


 一瞬、あの日から一度も姿を見せないブラックマスの存在を警戒したが魔の森に生息する下位魔物、モブリンとモブルフ(ウルフ)のみで、正直助かったのだが、それでもで動かない身体では苦戦を強いられてしまい、どうにか撃退した時には、私とアンナはかなりの怪我を負っていた。


 運良く砦側から魔物を間引くよう指示していた冒険者たちと合流できのも大きい。


 しかし、私とアンナの怪我の状態を見た部下たちはよほどショックだったのか、揃って泣き崩れてしまった。


 慌ててハイポーションを持ってくるよう指示を出す部隊長たち。


 しかし、砦に備蓄されている回復系のポーションには限りがあり高価なハイポーションは数本しかない。すぐに補給できない回復薬は貴重なのだ。


 私とアンナはハイポーションを使おうとする部下たちを制止した。

 

 今はゴローがいる。ゴローには申し訳ないと思いつつも、人の良いゴローならば何も言わずに治療してくれるだろうと信じての事。


 そう説得すれば部下たちは不満そうにしながらも渋々承諾して、傷薬を塗り丁寧に包帯を巻いてくれた。


 最低限の治療をしてゴローを尋ねたら泣きそうな顔で……いや、あれはもう泣いていたな。泣くほど心配してくれるとは思っていなかっただけに申し訳ない事をしたと思いつつも、ますますゴローの事を愛おしく思うようになっていた。

 

 それからすぐに治療してくれたゴローには精一杯のお礼をするつもりだったが、私が思っていた以上にアンナもゴローの事を気に入っていたらしく、ゴローの取り合いに一時はなってしまったものの、それでも、私たち2人を相手に頑張ろうとするゴローの姿を見ていたら己の事しか考えていなかった自分が恥ずかしくなりアンナにシェアする事をこそっと提案。アンナも思うところがあったのかすぐに同意してくれ、そのあとは3人で仲良く……正確には2人でゴローが満足するまで奉仕した。

 こういう日もたまになら悪くないとも思ったな。


————

——


 ——ふふ……


「おうおう、レイラさんよ。何を思い出してにやけているのかな?」


「ゴローだな」

 

「あー、なんか、その反応は面白くねぇな。もしかして本気でゴローに惚れてるのか」


「そうだな。私はゴローを気に入っているからな。これからもゴロー以外に抱かれるつもりはない」


「マジかよ」


「そういうアンナこそ、面白くなさそうな顔をしているが……嫉妬か?」


「なっ! ふん……まあな、ゴローはあたいもお気に入っているからな……ってかもういいだろう。そろそろ昨日引き返した辺りだ。レイラ油断するなよ」


「分かっている」


 今回、浄化魔石の交換が必要な聖女器(正式名称は清浄機、それがなぜか聖女器として伝わっている)は10基。


 浄化魔石とは魔物から得た魔石にクリーン魔法を注いだけの魔石。シンプルな作りだが効果は高い。

 生活魔法故に魔力の消費が激しく1人では作成できないのが難点の代物だ。


 だからだろう。効果のほどは知らないが、他国ではすでに生活魔法(クリーン魔法)ではなく光魔法ホーリー水魔法アクアヒール聖魔法セイントなどを使用した浄化魔石に変更していると聞く。


「来るっ」


「ああ」


 今回の相手もモブリンとモブルフ。数は多いが今はまだ倦怠感はない。

 向かってきたモブリンとモブルフを難なく斬り捨てる。


「……今のところ、なんともなかったな」


「そうだな」


 不思議に思いつつも警戒しながら先に進めば、またすぐにモブリンとモブルフの群れに襲われる。


「おかしい」


「何がだ?」


 昨日は冷静でいられなかったから気がつかなかったが、本来、モブリンとモブルフは別々に群れる魔物だ。

 稀にモブルフを使役しているモブリンもいるのだが、それでも2、3頭くらいのものだろう。


「なるほど。やはり何かが潜んでいるって訳だな」


「確証はない。ただ、その可能性があるというだけだ」


 だが所詮、モブリンとモブルフは下位の魔物。

 いくら数が多くても身体さえまともに動けば相手にならない。


「!?」


「これは」


 しかし、魔物を狩り終え少し進んだ先で、身体にちょっとした違和感があったかと思えば、すぐに倦怠感が襲ってくる。

 ただし、昨日ほどの倦怠感ではない。


「っ……少し休息をとり様子をみよう」


「ふぅ……そうだな。もし今以上の倦怠感が襲ってくるようなら撤退した方がいいな」


 そんな事を言ってるそばから腰からぶら下げていた水筒を手に取るアンナ。


 私もゴローから受け取った水筒をすぐに手に取る。確証はないが、ゴローから受け取った水筒の水を飲めばなんとかなりそうな気がしていたのだ。


「!? うまい……」


「うまっ」


 とても美味しい水だった。が、その水は美味しいだけのものではなかった。


 小枝で引っ掻いていた擦り傷が癒え倦怠感がスーッと消えていく。


「あはは……マジか」


 アンナにも同じ効果があったのだろう。不思議そうに両手を握ったり閉じたりと感覚を確かめていた。


「ふふっ、ゴローには助けられてばかりだな」


「まったくだ。あはは」


 それから倦怠感が襲ってくる度にゴローの水を少しずつ口に含むように飲み、一つ目の聖女器にたどり着き、無事に浄化魔石の交換を終えた。


 交換を終えた帰りは、一つ目の聖女器の効果だろうか? いくら歩いても倦怠感に襲われる事なく部下たちと合流した。


「レイラ様! ご無事で」

「アンナ様、よかった」


 回収した黒い魔石を見せれば驚かれ、倦怠感についてあれこれ聞かれた時には返答に困ったが、王国騎士の間ではゴローはかなりの有名人。緘口令が敷かれているため、限られた者にしか接触の許可が出ないのだが、治療を受けた者の中にはゴローの人柄に惚れ、恩を返す機会を窺っている者もいるくらいだ。


 砦に戻り報告書を作成した時にはいい時間。私とアンナは迷う事なくゴローのお店に向かうのだった。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

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