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その時だった。
突然、まふゆの身体が眩いばかりの光に包まれた。イルミネーションなど比べ物にならないほど強く、神聖で、圧倒的な光。
その輝きは講堂全体を照らし出し、生徒たちが驚きの声を上げる。
「まふゆ……!?」
ミカゲの腕の中で、まふゆの身体が薄く、透けていく。まるで、彼女の存在そのものが、光に溶けていくかのように。
彼女は驚愕に目を見開き、自分の手のひらを見つめた。透き通っていく身体。
そして、どこからともなく、厳かな声が響き渡る。
『汝、異世界の魂。己の役目を果たし、記憶を取り戻したその時、汝は還らねばならぬ。元の世界へ──』
まふゆの心臓が、冷たい恐怖で締め付けられる。
──帰る?どこへ?
もう、あの白い病室には、死んだ自分の身体しかないはずなのに。
「嘘や……!なんで……!」
彼女の声が、悲痛に震える。
ようやく、すべてを受け入れて、ここで生きていくと決めたばかりだったのに。
大切な人たちと、笑い合って過ごすと決めたばかりだったのに。
光が強くなる。彼女の身体は、もう半分近くが透明になっていた。
「……っ、まふゆ!」
ミカゲの低い、しかし決して諦めを含まない声が、まふゆの耳元で響いた。
彼は、彼女の身体を強く、強く抱きしめる。まるで、この腕の中から奪い取ろうとするものがいるなら、命を懸けて戦う、とでも言うように。
「離さない……!離してなるものか……!あんたは、俺の光だ……!誰にも、渡さない……!」
その瞬間、レオンハルトが駆け寄り、二人の肩に手を置いた。
「……まふゆ!お前は俺たちの仲間だ!どこにも行かせねえ!」
セリウスが反対側から、まふゆの手を握りしめる。
「僕たちが、君を手放すわけがない……!」
シャノンが背中から飛びつき、リリアが足元にしがみつく。
「まふゆん、行かないでっ……!」
「行かせるもんですか!あたしたちの友達なんだからっ!」
そして、アリスが、静かに、しかし確かな意志を込めて、まふゆの手に触れた。
「……まふゆは、アリスの、大切な人……」
七人の温もりが、まふゆを包み込む。
光が、揺らいだ。
「みんな……!」
まふゆの瞳から、涙が溢れ出す。その涙は光の中に溶けて、きらきらと宙を舞った。
『……なに……?この力は……!?』
厳かだった声が、初めて戸惑いを帯びる。
七人が触れ合った瞬間、それぞれの魔力が共鳴し、巨大なうねりとなって爆発した。それは、世界の理を捻じ曲げるほどの、強大な絆の力。
光が、七人を包み込む。
そして、次の瞬間。
──講堂から、七人の姿は跡形もなく消え去っていた。
残された生徒たちは、ただ呆然と、彼らがいた場所を見つめることしかできなかった。
クリスマスツリーの光だけが、虚しくまたたいている。




