表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白の少女はこの世界に愛される  作者: 有氏ゆず
第三十六話 白の少女
414/424

36-6




パーティー会場となっている大講堂は、生徒たちの熱気と楽しげな喧騒で満ち溢れていた。

壁には色とりどりのガーランドが飾られ、中央にそびえ立つ巨大なクリスマスツリーには、無数のオーナメントと魔法の光がまたたいている。


その輪の中心から少し外れた場所で、レオンハルトたちは浮かない顔で立ち尽くしていた。


「……ミカゲの奴、まふゆを部屋に連れて行ったきり戻ってこないな」

「でも、ミカゲならきっと……」


レオンハルトの呟きに、セリウスが不安と期待の入り混じった声で応える。

シャノンは腕を組んでそっぽを向き、リリアとアリスはただ心配そうに入り口の方を見つめていた。




その時だった。

大講堂の大きな扉が、勢いよく開かれる。

全員の視線が、そこに現れた一人の少女に釘付けになった。


息を切らし、肩で呼吸をしながらも、その菫色の瞳は真っ直ぐに彼らを捉えている。


雪のように白い髪、白を基調とした装束。それは、ここ数日見てきた『水鏡まふゆ』と何ら変わりない姿のはずだった。


しかし、彼女が纏う雰囲気は、明らかに違っていた。冷徹な女王でも、ただ慈愛に満ちた聖女でもない。

その両方を内包した、凛とした輝き。




「ま、まふゆ……?」


レオンハルトが、戸惑いながらも彼女の名前を呼んだ。

まふゆは、深く、深く頭を下げた。


「みんな……ごめんなさい」


その声は、震えていた。けれど、はっきりと講堂の隅々まで響き渡る。


「うち……みんなに、ひどいこといっぱい言うてしもた。傷つけて、しもた。……ほんまに、ごめんなさい」


顔を上げた彼女の瞳には、涙が溢れんばかりに溜まっていた。

それは、以前の彼女が時折見せた弱さの涙ではなく、自分の過ちを認め、心から謝罪する、強い意志の涙だった。


「……うちは、全部思い出しました。この学園に来てからのことも、それより前のことも。どっちも、うち自身やったんです。それやのに、うちは……弱い自分を認めるのが怖くて、みんなを突き放してしもた」


レオンハルトも、セリウスも、シャノンも、リリアも、言葉を失って彼女を見つめる。




一番最初に動いたのは、アリスだった。彼女はとてとてとまふゆに駆け寄ると、その装束の裾をぎゅっと握りしめた。


「……おかえり、まふゆ」


その小さな一言が、堰を切った。


リリアが「まふゆーん!」と泣きながら駆け寄り、シャノンも「ばかっ!心配させんじゃないわよ!」と悪態をつきながら、その目には涙が光っている。

レオンハルトは安堵の息をつき、セリウスは優しく微笑んだ。


仲間たちに囲まれ、涙でぐしゃぐしゃになりながらも、まふゆは最高の笑顔を見せる。


「うん……ただいま、みんな」




その時、講堂の入り口の柱に寄りかかっていた影が、静かに動いた。

ミカゲだった。彼は、まふゆがここへ来ることを信じて、ずっとここで待っていたのだ。


仲間たちの輪の中から、まふゆが彼を見つける。

目が合った瞬間、二人の間にだけ、特別な時間が流れた。

まふゆは仲間たちに小さく「ごめん」と断ると、まっすぐに彼の元へと歩み寄る。


そして、ミカゲの目の前で立ち止まると、少しだけ背伸びをして、その唇に、そっと自分の唇を重ねた。


「……ただいま、ミカゲ」


驚きに目を見開く彼に、まふゆは悪戯っぽく微笑む。それは、かつての彼女と、新しい彼女が合わさった、最高に魅力的な笑顔だった。


「うちのこと、信じてくれて、ありがとう」


ミカゲは何も言わず、ただ、その華奢な身体を強く、強く抱きしめた。

失われた光が、今、確かな温もりと輝きを持って、彼の腕の中へと還ってきたのだ。


講堂の喧騒も、きらめくイルミネーションも、すべてが二人を祝福するように、優しく世界を包み込んでいた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ