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「で、でもうちは攻撃は出来ひんくて……」
思わず口から飛び出したのは、か細く、自信なさげな声だった。
周りの生徒たちが、それぞれのペアと向き合っていく中で、まふゆだけがその場に立ち尽くしてしまう。
目の前には、すでにやる気満々の表情で木剣を構えるレオンハルトがいる。その堂々とした姿が、余計に自分をちっぽけに感じさせた。
(どうしよう……うち、レオンハルトさんの相手なんて、務まらへん……)
白魔術は、誰かを守ったり、癒したりするための力。人を傷つけるためのものじゃない。
模擬戦闘だとしても、どうやって攻撃の「型」を見せればいいのか、全く見当もつかなかった。
そんなまふゆの不安を察したのか、レオンハルトが屈託のない笑みを浮かべた。
「心配すんな、まふゆ。これは訓練だ。俺がお前の動きに合わせてやる」
「でも……」
「お前は白魔法使いなんだろ?だったら、防御や回避に専念してみろ。俺の攻撃をどれだけ避けられるか、どれだけ防げるか。それだって立派な戦闘訓練だ」
レオンハルトの言葉は、まるで暗闇に差し込む一筋の光のようだった。
そうだ、攻撃ができないなら、守ることに集中すればいい。彼の攻撃から、自分自身を守る。それなら、自分にもできるかもしれない。
「……わかり、ました。やってみます……!」
まふゆはきゅっと唇を結び、覚悟を決めて頷いた。
「よし、それでこそだ!」
レオンハルトが満足そうに笑う。
二人は少し距離を取り、向かい合う。
まふゆはドレスのような装束の裾を軽く持ち上げ、いつでも動けるように身構えた。心臓が早鐘のように鳴っている。
「いくぞ、まふゆ!手加減は無しだ!」
レオンハルトが叫ぶと同時に、地面を強く蹴った。
筋骨隆々とした体が、信じられないほどの速さで迫ってくる。振り上げられた木剣が、太陽の光を反射して鋭くきらめいた。
「……ッ!」
速い。目で追うのがやっとだ。
まふゆは咄嗟に、体を右にひねる。
ヒュン、と風を切る音が耳元を通り過ぎ、木剣が空を切った。
「ほう、今のを避けるか!いいぞ!」
レオンハルトが楽しそうに声を上げる。休む間もなく、今度は横薙ぎの一閃が襲いかかってきた。
(間に合わへん……!)
避けるのは無理だと判断したまふゆは、両手を胸の前で交差させ、とっさに叫んだ。
「聖なる光よ、我が盾となれ──『ライト・ウォール』!」
まふゆの前に、淡い光の障壁が瞬時に展開される。
ガキンッ!と硬い音が響き、木剣の猛攻を光の壁が受け止めた。衝撃で壁に細かなヒビが入るが、なんとか持ちこたえている。
「なるほど、これが白魔術の防御魔法か!大したものだ!」
目を輝かせるレオンハルトを見て、まふゆは少しだけ自信を取り戻す。
(大丈夫……やれる……!)
攻撃はできなくても、自分には自分の戦い方がある。
仲間を守るために磨いてきたこの力は、自分自身を守るためにも使えるんだ。
まふゆは光の壁を維持しながら、次の攻撃に備えて意識を集中させた。グラウンドの喧騒が遠のき、目の前のレオンハルトの動きだけが、鮮明に映る。




