3-1
翌朝、女子寮の部屋に差し込む柔らかな光で、まふゆは目を覚ました。
小鳥のさえずりが窓の外から聞こえてくる。昨日一日の冒険がまるで夢だったかのように、穏やかで平和な朝だ。
(……朝や……)
体を起こすと、まだ少しだけ昨日の疲れが残っている気がする。けれど、それ以上に心が軽やかで、満たされているのを感じた。
「ふふ……」
ベッドから降りて、大きく伸びをする。
窓を開けると、ひんやりとした朝の空気が頬を撫でた。眼下に広がる学園の景色は、昨日よりもずっと親しいものに感じられる。
(今日も、みんなに会えるんやね)
その思いだけで、胸が温かくなる。
手早く身支度を整え、お弁当を鞄に入れると、まふゆは期待に胸を膨らませながら、教室へと向かった。
教室の扉を開けると、そこにはもう見慣れた仲間たちの姿があった。
「おう、まふゆ!おはよう!」
前の席のレオンハルトが、快活な声で振り返る。
「レオンハルトさん、おはようございます」
まふゆはにこやかに挨拶を返した。
「おはよう、まふゆ。昨日はよく眠れたかい?」
隣の席のセリウスが、穏やかな笑みを向けてくれる。
「はい、セリウスさんも、おはようございます。ぐっすり眠れました」
そして、自分の席に着くために、その後ろへと回り込む。
いつも通り、黒い装束に身を包んだミカゲが、静かに窓の外を眺めていた。
「……ミカゲさん、おはよう」
まふゆがおずおずと声をかけると、彼はゆっくりとこちらに視線を向けた。
「……ああ」
短い返事。けれど、その瞳がほんの少しだけ和らいだように見えて、まふゆの心臓が小さく跳ねる。
自分の席に座ると、彼の大きな背中がすぐ後ろにある。それだけで、不思議な安心感に包まれた。
やがて、始業のチャイムが鳴り響き、ガレオスが教室に姿を現した。
その筋骨隆々な巨体は、何度見ても迫力がある。
「うっす、お前ら!今日の午前は三時間ぶっ通しで、俺の戦闘訓練だ!昨日クエストで疲れてる奴もいるかもしれねえが、手加減はしねえから覚悟しやがれ!」
ガレオスの言葉に、教室のあちこちから小さな悲鳴や気合の入った声が上がる。
「よーし、まずは準備運動だ!全員グラウンドに出ろ!」
号令と共に、生徒たちが一斉に立ち上がる。
まふゆも席を立ち、仲間たちと顔を見合わせた。
「三時間も訓練……大丈夫かなぁ……」
まふゆが不安そうに呟くと、レオンハルトが力こぶを作って笑った。
「大丈夫だ!昨日みたいに、みんなで乗り越えりゃいいさ!」
その言葉に、セリウスもシャノンも頷く。
ミカゲは何も言わなかったが、その視線は既にグラウンドの方を向いていた。
(うん、そうやね……みんなと一緒なら、きっと大丈夫)
まふゆはきゅっと唇を結び、新たな一日への決意を固める。
昨日とは違う、でもきっとこれも大切な学園生活の一ページ。
まふゆは仲間たちと共に、グラウンドへと元気よく歩き出した。




