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ダンジョン「地球」の管理者は、人生二度目の天使さま。  作者: 伊里諏倫
小鬼たちの哀歌

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123/129

天使さま、こそっと手を振る

【連続投稿 1/2】

 その日、俺は珍しくロゼリア号の操縦室にいた。

 じっと見つめるモニターには、護衛艦リーヴァが今まさに幽門(ゲート)を潜ろうとしている様子が映し出されていた。神族である俺が開いた門だから、その安定性は抜群だ。安心して使うがよろしい。


『レグ様、よろしかったので?』

「もう十分挨拶はしましたから。それにこれが今生の別れになるわけでもありません」


 傍にいたフクレからの質問に頭を振る。


 先だって、小鬼種(ゴブリン)族たちの船は無事修復を終えた。パーツが無いから全快とまではいかないが、少なくとも星間跳躍(ワープ)航行に耐えられる程度には回復している。だから満を持して旅立つところだった。


「フクレこそ、時間でいえば私よりもかれらと接していたでしょう」

『むしろ清々します。何度手を煩わされたことか』

「あ、はい」


 そう言えば俺の相棒は俺以外に基本塩対応だったわ。例外は他の有翼人種(ハーヴェン)と山戸家くらいか。意外とツンデレさんなんだよな。まぁツンデレはツンデレでも(俺以外に)ツン(で俺だけに)デレだけど。


「私は感謝こそすれ、文句なんてありませんけどねぇ」


 思い返せば矢のように駆け抜けた一カ月が脳裏を過ぎる。


 初めは急な来訪に戸惑って、勢いでとんでもない大見得を切ることになったけど、お陰でダンジョンにまた新しい風を吹き込むことが出来た。ゴブリンと『仮契約』から『真契約』に進んだ探索者も出たことだしな。


 実は仲間になるゴブリンは、どの個体も初めは仮契約の状態で、ダンジョンで死ぬとロスト――復活することなく、消滅してしまうよう作っていた。なんでこんな仕様にしたかというと、前にもちらっと触れたが、親心だ。


 万一ゴブリンを使い捨てにするような人の元に行ってしまったら。

 たとえデータだけの存在だとしても、愉快な想像にならない。だから俺は本当に大事にしてもらえる探索者だとシステムが認めるまで、真の意味で仲間にならないようセーフティをかけたのだ。


 たとえば名前をつけたり、ちゃんと会話したり、ご飯をあげたり、一緒に笑ったり泣いたり。そうやって仲間のゴブリンを一つの命と認め、絆を結んで初めて真契約となる。


 ここまで来れば戦闘で死んでももう大丈夫だ。待ち時間(クールタイム)こそあるものの、探索者と同じく復活出来る。ただしそこで安心して酷い扱いをすると、知らぬ間に契約破棄されてしまうことになるが……。

 まぁあくまで「もしも」の話だ。


「お陰でデータもたんまり貯まりましたし」

『ム……。それは、そうデスが』


 今回蓄積された仲間モンスターの実験データは、そのまま他のモンスターにも流用出来るし、ジードさんに協力してもらったイベントクエストも良いテストになった。ちょっと俺が思ってた以上に強すぎたけど。

 そのうち〈魔物使い〉なんて職業(クラス)を追加するのも面白そうだ。


「言ったでしょう、フクレ。共楽共栄です。私たちだけが楽しんでも、それは後に繋がらない。だから広く繋がりを持ちましょう」

『……ハイ』

「とはいえ、です。さすがにアレコレ挑戦しすぎてくたびれました。今日はオフにして、ラーメンでも食べに行きましょう。もちろん、二人で」

『……! 不肖フクレ、どこまででもレグ様にお供いたします!』


 今回は影でフクレも頑張ってくれたからな。

 一緒に出掛けるだけで労いになるなら、いくらでも付き合ってやるさ。

 それに英気を養うなら今の内だ。次なる開発に向けて力を補充しよう。


 ――またいつジード艦長たちが遊びに来てもいいように。


 そういう『約束』だから。


 うきうきと小型転移装置(ミニポータル)の元へ急ぎだしたフクレの後を追う。その途中で俺は振り返って、もう何も映っていない、信号途絶(シグナルロスト)した画面へ呟く。



良い旅を(ボン・ボヤージュ)



 今日の気分は……しょっぱさマシマシの塩ラーメン、かな。


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