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【書籍化】その亀、地上最強【コミカライズ】  作者: しんこせい(『引きこもり』第3巻2/25発売!!)
第二章

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魔王


 どこに連れて行けばいいのかわからなかったので、とりあえず森の中で待機することに決めてからしばらく。


 ローガンさんとレイさんが出発のための準備を整えてくれるというのでお言葉に甘えながら、僕とアイビーは簀巻き昆虫女王の監視を続ける時間が続いていた。


 半分眠りながら、見つけたひなたぼっこスポットでポカポカ陽気を浴びてまどろんでいると、蓑虫みたいに鳴っている女王様(自称)に動きがあった。


「――はっ!?」


 だいたい戦闘から一時間くらい経ったくらいだろうかというところで、ようやくアイシクルが目覚めてくれたのだ。

 一応回復魔法で傷は塞いでいるから、今すぐに生死がどうこうということはない……はずだ。


「ここはどこ!? 私は誰? ――そうよ! 私は『昆虫女王』アイシクル!」


 前に一度だけ見たことのある、劇に出てくる登場人物のように芝居っ気たっぷりな様子で、アイシクルが何やら叫んでいる。


 声が無駄に通るせいで、耳の奥がキンキンする……。

 おまけに叫び声が劇団員みたいに大仰なものだから、げんなりしてしまうのも無理のないことだと思う。


 アイビーの方を向くと、彼女にしては珍しく面倒そうな顔をしているのがわかった。

 きっと今の僕も、彼女と似たような顔をしているんだろうな。


「魔王十指の左手三指のこの私に対してこんな無礼をして――」


 ん、今この蓑虫女王、何かとんでもないことを呟いたような……。

 どうやら詳しい話を聞く必要がありそうだ。



 凶悪な魔物が暮らしていると言われる孤島。

 その場所には魔王と呼ばれる魔物達の王が住んでいる。


 その情報だけは、誰からともなく伝わってきている。

 けれど魔王という存在は、かなりの部分が神秘のヴェールに包まれている。


 どんな見た目をしていて、どれくらい強くて、どんな考え方をする人なのか。

 僕が個人的には一番大事だと思っている、いったい僕達人間にどんな害を与えようとしているかという部分すらも曖昧なのだ。


 ただ魔物という存在が、人類にとっての敵なのは間違いない。

 知恵のある魔物は、人という物を害そうとしている節があるからね。

 長年の魔物との因縁の歴史もそれを証明してる。


 アイビーの話じゃ、以前アクープで戦うことになった黒の軍勢――彼らは魔王軍の尖兵ということらしかった。


 そしてそれから大して間を置くこともなく表れた、魔王と関連している存在。


 もしかしたらこの二つの間には――共通項が存在しているのかもしれない。


 そう、たとえば――魔王が人類を征服するために動き出した……とか。


「ちょっと、私をいったい誰だと心得て――ひっ!?」


 高飛車インセクトクイーンは相変わらず活きが良かったけれど、僕がフッと一本のライトアローを宙に浮かせると、さすがに黙ってくれた。


 どうやらさっきやられた時の痛みを思い出したのだろう。

 こちらを見ながら口を開いて、ブルブルと震えている。


 試しにライトアローを撃って、アイシクルの甲殻を軽く傷つけた。

 そして回復魔法ですぐ治す。


「……」


 アイシクルはもう無駄口を叩かなくなった。

 先ほどまでの威勢の良さはどこへやら、ずいぶんとしおらしくなってくれた。


「さて、それじゃあ話を聞かせてくれるかな……?」


 そう言って笑いかけると、ヒッとアイシクルの喉の奥から音を鳴らすのがわかる。


 なんだか僕の方が悪いことをしている気分になってきた……。

 言葉が通じる魔物って、やりにくいなぁ……。


 アイビーはいざという時には相手を倒せと言ってくることが多い。


 今では僕も、魔物なら倒せるようになった。

 ……人はまだ無理だけどさ。

 でも言葉を解する魔物は……まだちょっと、抵抗があるなぁ。



 アイシクルから教えてもらえた情報は、人間の常識からするとまったくと言っていいほどに聞き馴染みのないものばかりだった。

 彼女が教えてくれたのは、簡単に言えば魔物界での常識だ。


 どうやら魔物の界隈には、序列みたいなものがあるらしい。

 その理屈はシンプル。

 強い魔物が偉くて、弱い魔物はそいつに従う。


 基本的には強い魔物ほど賢いので、魔物は強いやつが弱い奴らを従えるという脳筋な関係で成り立っているらしい。

 弱い魔物の中にはまともな頭を持っていない奴らも多いけれど、そういう場合は身体にどちらが上かを教え込む形で従わせるらしい。

 また、魔物を従わせるための魔道具なんかもあるみたいだ。


 そして中でも気になる情報があった。

 それが彼女が所属しているという――魔王十指というグループだった。


 どうやら彼らは、魔王軍における幹部のような存在らしい。

 魔物達の中でも、その強さを認められた十匹の存在。


 彼らは魔王から爪を与えられ、その身に魔王の力の一部を宿すことになる。

 そして与えられた爪の名をもらうのだという。

 強さは左手五指から左手一指の順で強くなっていき、右手の五指は左手一指よりもはるかに強く、そこが一つの大きな壁になっているらしい。


 右手五指の序列はもう何百年もの間動いておらず、左手指の座を狙って魔物達は日夜血で血を争う戦いを繰り広げているらしい。


 うわぁ、魔物社会って、絶対にとてつもない脳筋集団じゃないか。

 ああいうノリって、正直あんまり得意じゃないんだよね。

 深くは関わりたくないなぁ……なんて思っていた時に、アイシクルからとんでもない爆弾発言が飛んできた。


「でもあなた方のことを、他の十指も狙っていましてよ? 私は会ったことはないですけれど、風の噂では魔王様もあなた方に興味津々なようですし。あのバカ幽鬼を倒したあなた方は、良くも悪くも私達の注目の的なのです」


 魔王十指を……倒した?

 え、僕達が?

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