高飛車女王
魔物を倒しながら奥へと進んでいく。
出てくる魔物は、どれもこれも昆虫型のものばかりだった。
角が三本あるカブトムシとクワガタの合いの子みたいなやつに、人を丸飲みできそうなサイズのカナブンまで。
現れるようになったのは、明らかにこのアサイーの森には出てこないような強力な魔物ばかり。
あのアイアンモスキートが例外だったわけじゃなかった。
今ではもう、この森は虫達の楽園になってしまっているのだ。
そしてその原因は――最奥まで行けばすぐにわかった。
「おーーーーーーーーーほっほっほっほっほっほっ!」
奥で羽を羽ばたかせながら宙に浮かんでいる――虫の女王様がいたのだ。
といってもあれだよ、女王蜂みたいななんか大きくて子供を産む感じの虫って見た目はしていない。
見た目だけならむしろ、魔物よりも人間寄りだ。
正確な表現を探すなら、うーん……虫風の女王様って感じだろうか。
まず見た目は、すごく人間に近い。
けれど近くでよく観察してみると、その異常さに気付く。
その女の人は、全身に甲殻を纏っている。
上半身には、ボンテージのようなものを、そして肩から肘、肘から手にかけてはキラキラとしたエメラルドのようなものを。
更に更に腹部から下には、ポンパドールのドレスのような服がふわりと拡がっていた。
けれどよく見てみれば、その部分と彼女の身体との間には継ぎ目がない。
淡く虹色に光っているドレスもまた、彼女の身体の一部なのだ。
多分ワイバーンの翼膜みたいな、柔らかい素材でできているんだろう。
全身をオシャレな甲殻に身を包んだ女性は、妖艶な美女という感じだった。
こう……出るところが出ていて、引っ込むところは引っ込んでいて。
へその辺りは隠れておらず、たわわな胸部は彼女の一挙手一投足ごとに激しく上下に動いている。
自分の甲殻という鎧を着けているからこその、わがままバトルドレスだ。
「お嬢様だ……」
「お嬢様……」
「みみぃみぃみぃ……」
『高飛車インセクトクイーン……』と呟くアイビーの声を聞いて、思わず笑ってしまう。
なんだい、それ。
アイビーはネーミングセンスまであるのか。
まったく、敵わないよ。
「なななななんですのあなた方! この私――『昆虫女王』アイシクルを前にその余裕はっ!?」
高飛車インセクトクイーン改めアイシクルが、背中の羽をブブブと振るわせ始める。
多分縄張りを侵された蜂なんかがする威嚇行動みたいなものだと思う。
「ブルーノ……大丈夫なのか?」
「ブルーノ殿、さすがにあれを相手に余裕とは凄まじい……剛の者であるな」
後ろにいるレイさんとローガンさんは、冷や汗を流しながら武器を構えていた。
二人とも、アイシクルが出している殺気が並大抵のものではないことがわかっているのだ。
だから本能が、逃げるべきだと彼女達に訴えかけているんだと思う。
けれど彼女を見る僕とアイビーの方は、あくまでも自然体。
アイシクルの方を見て、ジッと観察する。
うーん……サンシタより、少し強いくらいかな?
レイさんとローガンさんが二人で挑めば、普通に勝てるような気もするけど……。
「みっ!」
あれくらい一人で倒しなさい、とアイビー。
うん、わかった。やってみるよ。
「――それっ!」
ライトアローを四発放つ。
二発が翼を打ち抜いて、残る二発が腹部と足を貫いた。
「ぎゃああああああああっっ!?」
とても綺麗な見た目から発されているとは思えないほど野太い悲鳴を上げながら、アイシクルが墜落していく。
加減せずに撃ったけど……一応急所は外したはずだ。
「きゅう……」
近付いてみると、彼女は気絶していた。
意外なことに、流れている血は僕らと同じ赤色だった。
彼女には色々と聞かなくちゃいけないことがある。
僕はアイビーと頷き合ってから、気絶する彼女に回復魔法を使い、そしてロープをぐるぐる巻きにして縛るのだった――。
【しんこからのお願い】
この小説を読んで
「面白い!」
「続きが気になる!」
「応援してるよ!」
と少しでも思ったら、↓の★★★★★を押して応援してくれると嬉しいです!
あなたの応援が、しんこの更新の原動力になります!
よろしくお願いします!




