春になり
5ヶ月も雪に覆われていた街もようやく地面が見えるようになり春が近いことを教えてくれた。ロゼは毎日のように講習に行っていたおかげでたくましく男らしくなった。
冬の間はほぼ未収入だ。講習が終わって依頼書を見てみるが近所の買い物代行や配達ぐらいしかなかった。
春が近くなりロゼはそろそろ本格的に冒険者職に復帰しようかと朝から依頼書を探っていた。
「よっ、ロゼ。もう依頼書見ているのか。そういえば、3階の4人が来月アパートから出るそうだ。俺たちも5階に移動する。ロゼは今まで7階で大変だったろう?俺たちと一緒の5階に来いよ!」
イケメンのキシがキラキラした笑顔で言ってきた。しかも、肩を抱いている。
図々しいな…。肩を払いながら
「いや、いい。7階で問題ない。7階には竈も風呂も付いているからな」
「ああ、ロゼはだから下の食堂にはいないのか。下でみんなと食べるのもいいよ。楽しいし。」
「いや、7階でいいよ。荷物まとめるのも面倒だし」
「手伝うよ?」
「いや、いい」
「頑固だな」
「キシもな」
「そうか…」
諦めたのかキシは冒険者ギルドから出て行った。なにしに来たのか。
悪かったかな…でも7階は都合がいい。誰もこないしね。別に竈も風呂も使ってはいないが、詮索されるのは困る。なぜ、あんなに構うのかよく分からない。ほっといてほしいのに。
11歳のロゼはひょろりとしていてとても弱く見える。実際は女の子だからそれで問題はないのだが、アパートいる連中は男だと思っている。言うなれば弟のように見えてしまっている。ロゼはちょっとしたことでもどうしたらいいのか、この動きはどうだとか質問していた。
それは社会人のとっては常識で、分からないことは聞くということが身に付いていた。セドたちだけではなく近くにいる冒険者には割と気さくに話し掛けていた。そのせいかは定かではないがみんなに取ってはかわいい弟気分なのだ。だがロゼに取っては違う。ただ、聞いているだけだ。
しかし、ロゼは銀髪のせいで薄く見えずらいまつ毛も近くによれば長く、大きな瞳で身長のせいだが、上目遣いに話している。ちょっと父子本能を擽られるらしい。しかし、実際のロゼは剣や弓をこの冬でメキメキ上達させ、小さな魔獣なら精霊に頼らなくても倒せるほどに成長していた。
しかし、一緒に講習を受けていないものからは、年下のかわいいロゼのままなのだ。構いたくて仕方ない存在になっていた。
変に絡まれるのはごめんだ。成人まで金を稼ぐそれだけだ。中学生くらいの友達なんて大人になったら一切関わらないではないか。関わりがなくなるのにいちいち付き合っていたら面倒でしかない。中身が50代だから色々と淡泊なんだよね。そこは仕方がないよね。
問題がそこではないことをロゼは分かっていない。
暖かくなり本格的に活動再開になった。
森に行き栽培している薬草を刈っていると大きな気の乱れを感じた。
「なにか感じる。森のもっと奥かなぁ。なにかわかる?」
精霊たちに聞いている。
『大きな魔獣がいるよ。行ってみる?』
契約している精霊が言ってきた。
「そうなんだ。行ってみようか」
森の中に入って行く。しばらく歩いて行くと大きなクマの魔獣が暴れている。
「すぐ近くかと思ってきて見に来たけどけっこう遠かったね」
森の奥に入って40分くらい歩いた。
『感知能力がまだ未熟なのよ。もっと経験をつめば距離感もつかめるわよ』
と、時ちゃんが教えてくれた。
「感知能力とかあるの私!チートぉ!」
『なに呑気におしゃべりしているの?魔獣がこっちくるわよ!』
ひのちゃんが珍しく慌てている。
最近は修行のためにロゼが自分で倒すから手を出さないように言っていた。なので誰もまだ攻撃をしていない。
3mくらいありそうな大きなクマの魔獣だ。なにか怒っているのか近くにある木をなぎ倒している。その距離20mもない。
冬に習った技で勝負しようかと購入したばかりの安物の剣を構えるが近くに来るとやっぱりこわい。
「こわっ!無理!やっぱりこわいよ。水のさんいつもみたいにお願い!」
『う~ん、なんか気が強くてちょっと無理みたい』
水のさんが攻撃した力が跳ね返ったように見えた。
魔獣が攻撃をされたとわかったのか木をなぎ倒しながロゼの方向に向かっている。
「無理?無理なの?じゃあ帰ろうかな」
ロゼが逃げようとしたその時、火の塊が飛んできて目の前の木に当たり爆発した。
クマの魔獣が口から火の塊を放ったようだ。
なにこれゴ〇ラみたい…
ロゼは木の陰に隠れていて爆風は逃れていたが魔獣とはもう10mの距離だ。
『水のさん鉄砲みたいに脳天を狙って打ってよ!」
『え?鉄砲ってなに?』
「え?鉄砲だよ!バギューンって感じ!」
手を鉄砲の形にして構えて見せるが精霊たちには通じない。
『全然わかんない!ロゼに任すから勝手にやって!』
「勝手にやってってどういう事?!」
クマの魔獣はもうすぐそこにいる。魔獣が振り向けば見つかるだろう。
精霊に勝手にやってと、言われてから身体の中が熱く感じられた。ロゼは手をピストル型にすると魔獣の頭に狙いを定めた。そして、ピストルが発砲するイメージを精霊と魔力に重ね合う。
ロゼの構えた指先から水がクルクルと蠢き合い、水が勢いよくクマの魔獣の脳天に突き刺した。
魔獣の頭を貫通したようだった。しばらく魔獣は身動きをしなかったが、大きな音を立てて倒れた。
心臓がバクバクしてロゼはその場から動けずにいたが、一息して魔獣に近寄り絶命しているのを確認した。
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