第142話 異常なる合同訓練と、地下水脈の探求者
第142話 異常なる合同訓練と、地下水脈の探求者
辺境の街アシュタルの東、小高い丘に広がる特級クラン『絆紋亭』の拠点であり、『絆紋公国』の中心地であるこの場所は、新たな同盟国を迎え入れ、真の平和へと力強く歩みを進めている今日もまた、世界中のどの場所よりも優しく、奇跡のような調和に満ちた朝を迎えていた。
庭の中央にそびえ立つ巨大な精霊樹は、深淵の虚無や旧魔王城の怨念を完全に浄化した極上の光をたっぷりと吸収し、もはや一つの大森林と見紛うほどの神樹へと成長を遂げている。その豊かに茂ったエメラルドグリーンの枝葉が朝の心地よい風に揺れるたび、チリン、チリンと微かな鈴の音のような魔力の波紋が広がり、拠点全体を極上の癒やしのオーラで包み込んでいた。
「ウォンッ!」
「キュイッ!」
「きゅるるーっ!」
澄み切った青空の下、縁側で朝の空気を胸いっぱいに吸い込んでいる俺の足元へ、一番最初に俺の固有スキルである『絆紋』を受け入れ、共に歩み始めた最古参の相棒たち――銀色のウルフ『フェル』、純白のポーションラビット『ピコ』、そして空色小竜の『ソラ』が競い合うように飛び込んできた。
彼らの後に続くように、水豹のリン、幻宝石獣のキラ、白銀の幼熊ブラン、空間転移を操る銀狐のギン、鋼棘の鎧獣マル、疾風の隼ゲイル、影猫のシャロ、水妖の獺ミロ、風精のリスのルル、土精の土竜ドロ、星翼の梟ステラ、幻影の蝶ファル、雲羊のモフ、木精の栗鼠コノ、鎌鼬のタマ、鋼殻の戦亀カメ、雷雲の幼鳥ライたちが一斉に集まってくる。
極北の遠征や各地の迷宮で家族となった魔物たち。次元を司る星天の神狼シリウス、時空の鯨クジラ、星喰いのバク、星の精霊であるルミ、コア、ジュジュ。虚無から生まれ変わった虚空の精霊ゼロ、時空猫のチク、星屑の幼竜アストラ。
日々の救済活動で仲間になった琥珀の狐コハク、翠玉の螳螂ジェイド、紫水晶の蝶アメ、鋼角の猛牛バフォ、土塊の猪ブブ、豊穣の案山子ワラ、蜜の妖精蜂ハチ、水水晶の亀スイショウ。
最近の開拓地や闇夜の救出劇、天空の遺産から仲間になった白磁の巨象マク、風見の鶏カゼ、掘削の土竜ドリ、癒やしの綿毛獣フワリ、幻影の黒豹クロ、月光の梟ツキ、隠密の晶蜥蜴カゲ、空泳ぐ雲鱏フウ、古の機巧梟ギア、陽光の小結晶サン。
そして、前回の結晶変異ダンジョンで仲間になった、晶光の狐クリ、プリズムの宝鹿プリ、鏡盾の亀カガミたちも、すっかり拠点に馴染み、わらわらと俺の周囲に集まり、心地よさそうに喉を鳴らしている。
「おはよう、みんな。今日もいい天気だな」
俺が彼らの頭を順番に優しく撫でると、魔物たちは心底嬉しそうに目を細め、尻尾を振って応えた。庭の奥では、漆黒の竜ノヴァや紅蓮の火蜥蜴ガエン、鋼角の犀ザイン、岩砕の巨獣ダグといった大型組も、朝の日差しを浴びて気持ちよさそうに背伸びをしている。平和な空気が、この庭には満ち溢れていた。
「レイン様、朝食の準備が整いましたよ!」
厨房から、見習い魔導士のエリスと元宮廷料理人のセシルが、賑やかな声を上げた。
ダイニングルームの巨大なテーブルには、特製の魔力小麦で作った『焼きたてのチーズバゲット』に、農学者セリーヌが育てた新鮮なトマトをふんだんに使った『濃厚なミネストローネ』、そして砂漠の巫女ナディアが持参したスパイスで味付けされた『極上オーク肉の厚切りステーキ』が並べられている。
「ガハハ! 今日も飯が美味いねぇ! 新しくウチの傘下に入ったファルビア騎士団の連中、今日はアシュタルの教練所に合同訓練をしに来るんだろ? たっぷりしごいてやるかね!」
女戦士のアイラが、ステーキを豪快に頬張りながら大笑いする。
「ええ。誇り高き騎士団とはいえ、アシュタルの訓練生たちの『日常』にどこまでついてこられるか、見ものですわね。魔法の基礎から叩き直して差し上げましょう」
少女魔導士のルウも、優雅にスープを飲みながら冷ややかな笑みを浮かべた。
「彼らの志は本物です。我々の限界を超える鍛錬を経験すれば、さらに強固な盾となるでしょう」
剣聖シルヴィアが静かに紅茶のカップを置いた。
ファルビア騎士団の驚愕と、異常なる教練所
朝食後、アシュタル辺境国の軍事教練所。
そこには、先日同盟を結んだばかりのファルビア王国騎士団長ガラハドと、彼が率いる精鋭の騎士たちが、ピカピカに磨かれた白銀の重鎧に身を包み、緊張した面持ちで整列していた。
彼らを迎え撃つのは、槍使いのクロード、重騎士のガレス、そしてアシュタルの若き訓練生たち(すでに他国の近衛騎士を凌駕する実力を持つ者たち)である。
「レイン公王陛下! 我らファルビア騎士団、本日の合同訓練、粉骨砕身の覚悟で挑ませていただきます! どうか、貴国が誇る最強の兵法を我々にご教授ください!」
ガラハドが声を張り上げ、直角に頭を下げる。
「ああ、こちらこそよろしく頼む。だが、うちの教官たちの訓練は少し……いや、かなり特殊だから、絶対に無理はしないでくれよ」
俺が苦笑いしながら釘を刺すと、ガラハドは不敵に笑った。
「ご心配には及びません! 我らファルビアの騎士は、過酷な訓練を耐え抜いてきた自負があります。いかなる厳しいしごきであろうと、音を上げるような軟弱者はおりません!」
「そうか……。アイラ、手加減してやってくれよ」
「ガハハ! 任せときな! さあ、ファルビアのお上品な騎士様たち! 準備運動を始めるよ!」
アイラが戦斧を肩に担ぎ、グラウンドの中央に進み出た。
「まずは基本の『回避と防御』の連携だ! そこにいるノヴァとガエンのブレスを、三十秒間相殺し続けてみな! 防壁が破れたら丸焦げだぞ!」
「……は?」
ガラハドとファルビアの騎士たちが、ぽかんと口を開けた。
「ブルゥゥゥゥッ!!」「ギュオォォォォッ!!」
アイラの合図と共に、グラウンドの端に待機していた漆黒の竜ノヴァと紅蓮の火蜥蜴ガエンが、凄まじい火炎の息(手加減はしているが、それでも城壁を溶かす威力)を容赦なく吐き出した。
「ぎゃあああっ!? 竜!? 本物の神話級の竜のブレスだとォォォ!?」
「な、なんだこの熱量は!? 陣形を組め! 多重魔力障壁を展開しろォォォ!」
ファルビアの騎士たちがパニックになりながらも、必死に盾を掲げ、魔法で防壁を展開する。しかし、彼らの常識の範疇に収まる防御では、ノヴァたちのブレスを完全に防ぎ切ることはできず、数秒で結界にヒビが入り始めた。
「ほらほら! アシュタルの訓練生はどうやってるか、よく見て学びな!」
アイラが笑いながら指差す先では、カイ、リゼ、ドンといったアシュタルの若き訓練生たちが、完璧な連携で水魔法と氷魔法を複合展開し、さらにドンのタワーシールドで物理的な熱波を完璧に逸らしながら、涼しい顔でブレスを凌ぎ切っていた。
「ば、馬鹿な……。まだ十代の若者たちが、神話級の竜の攻撃を無傷で受け流しているだと……!?」
ガラハドが震える声で呟く。
「素晴らしい。ですが、実戦では上からの攻撃もありますわよ。私の『超新星爆発』の余波も防いでみせなさい」
ルウが炎の杖を掲げると、上空に擬似的な太陽が生まれ、圧倒的な熱線がグラウンド全体を焼き尽くそうとする。
「ひぃぃぃっ! 上からもかよ!」
「もうダメだ! 死ぬぅぅぅ!」
ファルビアの騎士たちが半泣きになりながら、泥だらけになって必死に結界を維持する。
訓練生たちが限界を迎えそうになると、癒水の精霊シズクや風精のリスのルルたちがすかさず回復魔法をかけ、ピコが目にも留まらぬ速さで跳躍して、倒れかけた騎士たちを安全圏へと蹴り飛ばして救出していく。
「ぜぇ……ぜぇ……。こ、これが、アシュタルの……日常……?」
訓練が一段落し、地面に這いつくばったガラハドが、虚ろな目で天を仰ぐ。
「ああ、言っただろ。特殊だから無理はするなって。でも、みんなよく耐えたな」
俺が苦笑しながら手を差し伸べると、ガラハドは震える手でその手を握り返し、涙を流しながら立ち上がった。
「……公王陛下。我々ファルビア騎士団は、井の中の蛙でした。これほどまでに次元の違う高みがあるとは……。本日から、這ってでもこの教練所の日課にしがみつかせていただきます!」
彼の目には、絶望ではなく、さらなる強さを求める純粋な炎が宿っていた。
ファルビア騎士団が、真の意味でアシュタルの異常な(そして最強の)日常に組み込まれた瞬間であった。
未知なる地下水脈と、行方不明の地質学者
教練所での騒ぎが一段落した午後。
領主の館の執務室に戻った俺の元へ、特級密偵のシオンと、首席文官のエレナが急ぎ足で入ってきた。
「レイン様。東の開拓地、先日アーサー男爵が治めることになった領地から、緊急の報告が入りました」
エレナが地図を広げる。
「アーサー男爵の村の近くで、水源を確保するために岩山を掘り進めていたところ、巨大な『未知の地下水脈』と、古代の迷宮と思われる洞窟が発見されたとのことです」
「新しい地下迷宮か。水源が見つかるのは開拓にとってありがたいが、危険はないのか?」
「それが問題なのです」
シオンが表情を引き締めた。
「発見と同時に、公国から派遣されていた地質学者の青年『ジオ』が、調査のために単独で地下水脈へ潜り……そのまま半日が経過しても戻ってこないそうです。アーサー男爵たちも捜索隊を出そうとしましたが、地下には見たこともない強力な水棲魔物や、迷路のような洞窟が広がっており、素人では立ち入れない状態だと」
「ジオという青年は、どんな人物なんだ?」
「彼は元々、王都の魔導学院で地質学と鉱物学を修めた優秀な学者でしたが、現場主義が過ぎて学会から浮いてしまい、アシュタルの噂を聞いて自ら志願してやってきた変わり者です。石や地層のこととなると周りが見えなくなる傾向があり……おそらく、未知の地層に興奮して奥へ入り込みすぎたのでしょう」
エレナがため息をつく。
「分かった。民間人をそのまま放っておくわけにはいかない。俺たちで救出に向かい、ついでにその地下水脈の安全を確保しよう」
俺は即座に立ち上がり、準備を整えた。
「ガハハ! 地下の魔物退治か! 狭い場所でもアタシの斧は容赦しないよ!」
「地下水脈……水属性の魔物が多いのであれば、私の炎と氷で完全に制圧できますわ」
「暗所での戦闘、我々教官陣にお任せください」
アイラ、ルウ、シルヴィアの主力陣に加え、フェル、ピコ、ソラも同行する。さらに、今回は地下探索のプロフェッショナルである『掘削の土竜ドリ』と、『隠密の晶蜥蜴カゲ』も連れて行くことにした。
蒼き水晶の迷宮と、未知なる魔物たち
空間転移でアーサー男爵の開拓村へと跳躍した俺たちは、アーサーとミレイからの切実な願いを聞き届け、すぐさま発見された岩山の洞窟へと足を踏み入れた。
洞窟の入り口から少し進むと、空気は急激にひんやりとし、湿気を帯びてきた。
さらに奥へ進むと、そこには息を呑むような光景が広がっていた。
洞窟の壁面や天井が、淡く発光する蒼い水晶で覆い尽くされており、その中央を清らかで豊かな地下水脈の川が流れているのだ。
「美しい……。これが、自然の作り出した地下迷宮ですか」
シルヴィアが感嘆の声を漏らす。
「キュルルッ♪」
掘削の土竜ドリが、得意げに鼻を鳴らしながら先導していく。隠密の晶蜥蜴カゲも、水晶の壁に同化しながら周囲の警戒に当たっている。
だが、その美しい景色を堪能する間もなく、地下川の中から突如として水柱が上がり、無数の水棲魔物たちが襲い掛かってきた。
全身が刃のようなヒレで覆われた巨大な魚『ブレード・シャーク』や、硬い甲殻を持つ『ロック・クラブ』が、侵入者を排除しようと群がってくる。
「おっと! お出迎えが激しいねぇ!『極大旋風』!!」
アイラの戦斧が巻き起こす風の刃が、飛びかかってきたブレード・シャークをまとめて弾き飛ばす。
「凍てつきなさい。『絶対零度』」
ルウが杖を振るうと、襲い掛かってきた水棲魔物たちの一部が、川の水ごと瞬時に氷漬けにされた。
「我が剣の前に、死角はありません。『神速・絶空の剣』」
シルヴィアの剣閃が、ロック・クラブの硬い甲殻の隙間を的確に斬り裂き、行動不能にする。
「フェル、ピコ、ソラ! 奥へ進む道を確保しろ!」
「ウォォォンッ!!」「キュイッ!!」「きゅるるーっ!!」
フェルの天雷が洞窟内を明るく照らし出し、ピコの浄化の蹴りが前方の障害物を粉砕し、ソラの神聖ブレスが水脈の濁りを消し去っていく。
俺たち『絆紋亭』の圧倒的な突破力で、地下迷宮の魔物たちを制圧しながら、さらに深部へと進んでいった。
地質学者ジオと、輝く地下の固有種
地下迷宮の最深部近く、巨大な地底湖が広がる空間。
そこに、行方不明になっていた地質学者の青年『ジオ』がいた。
彼は泥だらけの服を着て、分厚い眼鏡をずり落ちさせながらも、手にしたハンマーとルーペで壁面の蒼い水晶を狂ったように観察していた。
「素晴らしい……! この地層、数万年かけて魔力と地下水が結露して形成された、完全な『魔導石英』の層だ! 学会の連中が見たら泡を吹いて倒れるぞ!」
ジオが興奮して叫んでいるが、彼の背後の地底湖からは、主と思われる巨大な魔物『深淵の水晶竜』が、まさに今、彼を丸呑みにしようと巨大な顎を開いていた。
「危ないッ!!」
俺はフェルの背を蹴って神速で跳躍し、右手の甲の『絆紋』の光を長剣に纏わせた。
「『絆紋・極限調和の剣』!!」
俺の一撃が、水晶竜の鼻先を正確に叩き据え、その巨大な頭を横に弾き飛ばす。
ズドォォォンッ!!
水晶竜が地底湖に倒れ込み、巨大な水しぶきが上がる。
「うおわぁっ!? な、なんだ!?」
ジオがようやく背後の脅威に気づき、尻餅をついた。
「あんたがジオか? アシュタルから救助に来た。無事でよかったが、研究に夢中になりすぎるのは命取りだぞ」
俺が剣を構え直しながら声をかけると、ジオは分厚い眼鏡を掛け直し、驚いたように俺を見上げた。
「き、絆紋公王様!? わざわざ私のような平学者のために……! も、申し訳ありません、この地層があまりにも魅力的で……」
「話は後だ! こいつの親玉を大人しくさせる!」
水晶竜が怒り狂い、口から強力な高圧水流を放ってきた。
「ルウ、防壁を!」
「お任せを!『極氷結界』!」
ルウが展開した分厚い氷の壁が、水流を完全に防ぎ切る。
その直後、俺は右手の甲の『絆紋』の光を限界まで解放し、水晶竜の懐へと飛び込んだ。
「お前たちも、静かな住処を荒らされて怒っているんだろう。だが、争う必要はない。俺が調和させてやる!」
俺の掌から放たれた翠色の極限浄化の光が、水晶竜の巨体を優しく包み込んだ。
荒れ狂っていた竜の魔力が、光の波紋によって洗われ、徐々に穏やかで純粋な水の魔力へと還元されていく。竜は戦意を喪失し、静かに地底湖へと身を沈めた。
「ふぅ……これで安全は確保できたな」
俺が息を吐くと、地底湖の奥の岩陰から、怯えたように震える小さな魔物たちが姿を現した。
彼らはこの地下水脈の固有種で、迷宮の主が暴れていたために隠れていたらしい。
一匹は、全身が透明な水晶のように輝き、超音波で地脈を探護るコウモリ――『水晶の蝙蝠』。
一匹は、暗闇の水中を自ら光を放って泳ぎ、水を浄化する魚――『発光の魚』。
最後の一匹は、岩石の体と純粋な魔力で構成され、地盤を安定させる小さな精霊――『岩石の妖精』。
「おや……! 彼らは、この地層特有の魔力に適応した希少な固有種です!」
ジオが目を輝かせてルーペを構える。
「怪我はないか? もう大丈夫だ」
俺はゆっくりとしゃがみ込み、右手の甲の『絆紋』の光を灯し、彼らの体に手をかざした。
翠色の温かな波紋が、三匹の魔物を優しく包み込む。
(……あたたかい。怖い竜が、大人しくなった……。お前が、助けてくれたのか?)
水晶の蝙蝠から、高い金属音のような澄んだ思念が伝わってくる。
「ああ。俺はレイン。お前たちの住処を少し騒がせて悪かったな」
俺が微笑みながらコウモリの頭を撫でると、彼女は嬉しそうに俺の腕にぶら下がった。発光の魚は俺の足元の水面をキラキラと泳ぎ回り、岩石の妖精はトコトコと歩いてきて俺の肩によじ登った。
「ウォンッ♪」「キュイッ♪」「きゅるるーっ♪」
フェルやピコたちも近寄り、新しい仲間を優しく迎え入れる。
「もしよかったら、俺たちの家族にならないか? うちには、お前たちのように優しくて、一緒にこの大地の謎を解き明かしてくれる人間がいるぞ。お前たちの力があれば、もっとたくさんの水源を見つけ、地盤を安全にすることができる」
俺の誘いに、三匹の魔物は嬉しそうに大きく頷いた。
「よし。コウモリのお前は『バト』だ。魚は『ルミ』。妖精は『ロク』だ。今日からよろしくな、みんな!」
「キィィッ♪」
「ピチャッ♪」
「コトッ♪」
新たなる家族、バト、ルミ、ロクを迎え入れた俺は、ジオに向き直った。
「ジオ。君のその地質学の知識と、探求心は本物だ。だが、これからは単独行動は禁止だぞ。……どうだろう、アシュタルへ来て、俺たちの仲間にならないか? 『公国直属・地質調査および資源開発局』の責任者として、この国の開拓を足元から支えてほしい」
俺の誘いに、ジオは分厚い眼鏡の奥の目を見開き、そして深く頭を下げて力強く頷いた。
「はいっ……! 私のような変わり者を拾っていただけるなら……この命と知識の全てを、絆紋公国の大地のために捧げます!」
こうして、優秀な地質学者ジオという内政の要が、新たな人間の仲間として陣営に加わったのである。
終わらない夜の宴と、深まる大地の絆
その夜。
アーサー男爵の開拓村の広場では、地下水脈の安全確保と、新たな水源の発見を祝う盛大な宴が開かれていた。
豊富な地下水が引かれたことで村人たちは歓喜し、ジオはさっそく、アーサーやミレイたちと共に、魔導石英を利用した新しい水路の設計図について熱く語り合っている。
魔物たちも、新しく加わった水晶の蝙蝠バトが月光の梟ツキと一緒に夜空を飛び、発光の魚ルミが水精ウルと水槽の中で輝き、岩石の妖精ロクが岩砕の巨獣ダグの肩にちょこんと座って楽しんでいた。
「ガハハ! 騎士の特訓に、地下迷宮の探索! 今日も一日、充実してたねぇ!」
アイラがワインを一気飲みして豪快に笑う。
「ええ。地上だけでなく、地下の豊かな資源と命にも目を向けることができた、有意義な一日でしたわ」
ルウが優しく微笑み、シルヴィアも深く頷いた。
「ウォンッ!」「キュイッ!」「きゅるるーっ!」
フェル、ピコ、ソラが俺の膝の上に飛び乗り、顔をすり寄せてくる。
彼らの温もりを感じながら、俺は満天の星空と、笑顔に溢れる新しい家族たちを見渡した。
空の遺産から、地下の迷宮まで。
世界が平和になったことで、この星が隠していた美しい謎と命が、次々と姿を現し始めている。
地質学者ジオと、新たなる魔物の家族たち。
絆紋公国に集う全ての人々と魔物たちが紡ぎ出す、大地と心を結ぶ調和の輪は、明日もまた、この星をどこまでも温かく照らし続けるのであった。
ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!尚、現在新作もよろしく(*´∀`)ノ
しがらみだらけの人生に疲れたので、記憶を消して無人境へ転生します〜無限魔力の【万能創造】で理想の拠点を作ってたら、最強の魔獣たちが勝手に懐いて最高の家族になりました〜
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