第134話 異常なる者たちの自覚なき日常と、街を創る新たな絆
第134話 異常なる者たちの自覚なき日常と、街を創る新たな絆
辺境の街アシュタルの東、小高い丘に広がる特級クラン『絆紋亭』の拠点であり、『絆紋公国』の中心地であるこの場所は、世界を脅かした旧魔王城地下の特異点を完全に封じ込めた後も、変わることなく穏やかで調和に満ちた朝を迎えていた。
庭の中央にそびえ立つ巨大な精霊樹は、深淵の虚無や魔王の怨念を完全に浄化した極上の光をたっぷりと吸収し、もはや一つの大森林と見紛うほどの神樹へと成長を遂げている。その豊かに茂ったエメラルドグリーンの枝葉が朝の心地よい風に揺れるたび、チリン、チリンと微かな鈴の音のような魔力の波紋が広がり、拠点全体を極上の癒やしのオーラで包み込んでいた。
「ウォンッ!」
「キュイッ!」
「きゅるるーっ!」
澄み切った青空の下、縁側で朝の空気を胸いっぱいに吸い込んでいる俺の足元へ、一番最初に俺の固有スキルである『絆紋』を受け入れ、共に歩み始めた最古参の相棒たち――銀色のウルフ『フェル』、純白のポーションラビット『ピコ』、そして空色小竜の『ソラ』が競い合うように飛び込んできた。
彼らの後に続くように、水豹のリン、幻宝石獣のキラ、白銀の幼熊ブラン、空間転移を操る銀狐のギン、鋼棘の鎧獣マル、疾風の隼ゲイル、影猫のシャロ、水妖の獺ミロ、風精のリスのルル、土精の土竜ドロ、星翼の梟ステラ、幻影の蝶ファル、雲羊のモフ、木精の栗鼠コノ、鎌鼬のタマ、鋼殻の戦亀カメ、雷雲の幼鳥ライたちが一斉に集まってくる。
極北の遠征や各地の迷宮で家族となった魔物たち。次元を司る星天の神狼シリウス、時空の鯨クジラ、星喰いのバク、星の精霊であるルミ、コア、ジュジュ。虚無から生まれ変わった虚空の精霊ゼロ、時空猫のチク、星屑の幼竜アストラ。
さらに日課の救済活動で仲間になった琥珀の狐コハク、翠玉の螳螂ジェイド、紫水晶の蝶アメ、鋼角の猛牛バフォ、土塊の猪ブブ、豊穣の案山子ワラ、蜜の妖精蜂ハチ、水水晶の亀スイショウ、オアシスの蓮妖精ハス。
そして開拓地で仲間になった泥堀りの海狸マド、水袋の蛙ゲコ、硬石の土竜モグ。歴史編纂の記録者シリルの相棒となった記録の妖精メモ、記憶の水晶亀カメオ、伝承の白鳩クルックたちも、すっかり拠点に馴染み、わらわらと俺の周囲に集まり、心地よさそうに喉を鳴らしている。
「おはよう、みんな。今日も元気いっぱいだな」
俺が彼らの頭を順番に優しく撫でると、魔物たちは心底嬉しそうに目を細め、尻尾を振って応えた。庭の奥では、漆黒の竜ノヴァや紅蓮の火蜥蜴ガエン、鋼角の犀ザイン、岩砕の巨獣ダグといった大型組も、朝の日差しを浴びて気持ちよさそうに背伸びをしている。
「レイン様、朝食の準備が整いましたよ!」
厨房から、見習い魔導士のエリスと元宮廷料理人のセシルが、賑やかな声を上げた。
ダイニングルームの巨大なテーブルには、特製の魔力小麦で作った『焼きたてのチーズ・オムレツサンド』に、農学者セリーヌが育てた新鮮なカボチャを使った『冷製パンプキンスープ』、そして砂漠の巫女ナディアが持参したスパイスで味付けされた『極上オーク肉の厚切りロースト』が並べられている。
「ガハハ! 今日も飯が美味いねぇ! 平和になったからって体が鈍っちまうのは御免だからね。今日はウチの可愛い訓練生どもに、教官なしで通常ダンジョンの間引きをやらせてみる日だろ? 連中、ちゃんと生きて帰ってくるかねぇ」
女戦士のアイラが、厚切りローストを豪快に頬張りながらニヤリと笑う。
「ええ。彼らには日頃から、私たちの極大魔法の余波を相殺する訓練や、神話級の魔物たちとの鬼ごっこを課していますから。Bランク程度の通常ダンジョンなら、単独でも問題ないはずですわ」
少女魔導士のルウも、優雅にスープを飲みながら冷たげな笑みを浮かべた。
「武の極致は、己の未熟さを知ることから始まります。彼らも今日、外の世界に出て己の立ち位置を再確認することでしょう」
剣聖シルヴィアが静かに紅茶のカップを置いた。
教官陣は涼しい顔をしているが、俺は少しだけ冷や汗を流していた。
彼女たちの言う「基礎訓練」は、他国の騎士団から見れば間違いなく「処刑」か「拷問」の類である。そんな環境で毎日しごかれている訓練生たちが、一般的なダンジョンに放り込まれたらどうなるか。
少しだけ、ダンジョンの魔物たちに同情してしまう俺がいた。
訓練生たちの異常な自覚なき蹂躙
その頃、アシュタルから少し離れた岩山に位置するBランク通常ダンジョン『鋼鉄蟷螂の巣窟』。
ここでは、アシュタル軍の若き訓練生である剣士のカイ、魔導士のリゼ、重騎士のドンの三人が、教官不在の単独部隊として魔物の間引き任務にあたっていた。
彼らの周囲には、通常であればベテラン冒険者パーティーでも数日がかりで討伐するような、全身が鋼の刃で構成された巨大な『鋼鉄蟷螂』の残骸が、文字通り山のように築き上げられていた。
「くそっ……! まただ! また切り口が浅い!」
若き剣士のカイが、真っ二つに両断された鋼鉄蟷螂の死骸を見下ろしながら、絶望したように膝から崩れ落ちた。
「俺の剣圧じゃ、蟷螂を両断したあとに背後の岩壁をたったの五メートルしか抉れなかった……! シルヴィア教官なら、軽く振るだけでダンジョンごと山を真っ二つにしているはずなのに! 俺はなんて非力なんだ!」
「カイ、落ち込んでいる暇はありません! 右から群れが来ます!」
魔導士のリゼが叫びながら、手にした杖を振るう。
「『灼熱の業火』!!」
彼女が放った炎の嵐は、通路に押し寄せてきた数十匹の鋼鉄蟷螂を一瞬にしてドロドロの鉄だまりへと変え、さらに奥の通路までを真っ赤に焼き尽くした。
だが、リゼはその結果を見て、悔しそうに杖を地面に叩きつけた。
「ああもう、最悪です! 威力の収束が全くできていない! ルウ教官なら、熱を一点に集中させて、魔物だけを跡形もなく消し炭にするのに……! 余計な岩壁まで溶かしてしまうなんて、私の魔力コントロールは最低です! 発動まで〇・二秒もかかってしまったし、こんな素人魔法じゃルウ教官に破門されてしまいます!」
「二人とも、気をしっかり持て! 上から親玉が来るぞ!」
重騎士のドンが、巨大なタワーシールドを頭上に掲げる。
天井から降ってきたのは、通常の三倍の大きさを誇るダンジョンボス『暴君の鋼鉄蟷螂』だった。その巨大な両腕の鎌が、ドンの盾に凄まじい速度で叩き込まれる。
ガキィィィィンッ!!!
凄まじい金属音が響き渡るが、ドンの体は一ミリたりとも後退せず、逆に反発力でボスの両腕の鎌が粉々に砕け散った。
「やったか!?」と喜ぶどころか、ドンは自分の手首をさすりながら青ざめた顔をした。
「しまっ……今の衝撃で、手首に微かな振動を感じてしまった……! ガレス先輩やアイラ教官なら、衝撃を完全に殺して涼しい顔をしているはずなのに! 俺の防御姿勢は甘すぎる! 今夜は盾を背負って五千回のスクワットを追加しないと、死んでも死にきれん!」
彼らは本気で、自分たちが「絶望的に弱い」と思い込んでいた。
しかし、たまたま同じダンジョンに潜っていた他国のベテラン冒険者たちは、遠くからその光景を見て震え上がっていた。
「お、おい見ろよ……あのアシュタルの紋章をつけた子供たち……」
「Bランクの群れを瞬殺し、ボスの全力の一撃を無傷で弾き返した挙句、『自分は弱い』って泣き叫んでるぞ……」
「バケモノだ……アシュタルの訓練生は、頭のネジがどうにかしてる……!」
世界最強の教官たちと、神話級の魔物たちの規格外な力を毎日見せつけられ、それに対抗するための異常な訓練を強いられている彼らの「強さの基準」は、すでに一般世界の常識をはるかに逸脱していたのである。
隠密部隊の下っ端たちの異常な自覚なき潜入
同じ頃。大陸南部の交易都市、悪徳商人たちの裏帳簿が隠されていると噂される厳重な砦の内部。
特級密偵シオンと獣人のミャオの直属の部下である、隠密部隊の下っ端エージェント、ルカとベルの二人が潜入任務を行っていた。
彼らは影に溶け込む特殊な歩法で、最新鋭の魔力探知結界をまるで水たまりを跨ぐようにひらりと躱し、数十人の完全武装した警備兵たちの真横を、息の音ひとつ立てずにすり抜けていく。
「……ベル、目標の金庫室の前に到着した。だが、鍵は三段階の魔法暗号式だ」
ルカが音もなく壁に張り付き、手信号で相棒に伝える。
「問題ないわ。警備兵の足音のリズムと、巡回ルートの交差タイミングから計算して、この扉の解除パスワードはすでに割り出したわ。三十秒で開ける」
ベルが細い針金のような魔導具を鍵穴に差し込み、わずか十秒で全ての魔法暗号を解除し、音もなく扉を開け放った。
二人は金庫室の中に入り、山のように積まれた裏帳簿と違法取引の証拠書類を、特殊な『速読記憶の術』を用いて、パラパラと数分で全て脳内に焼き付け、さらに原本を複製魔道具で完璧にコピーしていく。
潜入から証拠確保、そして脱出まで、かかった時間はわずか十五分。警備兵は誰一人として、彼らの存在にすら気づかなかった。
アシュタルの拠点に帰還した二人は、シオンとミャオの前に進み出て、深く頭を下げた。
「シオン様、ミャオ先輩……申し訳ありません。任務は一応完了いたしましたが、我々の未熟さゆえに、完璧な仕事とはいきませんでした」
ルカが悔しそうに報告書を差し出す。
「なんと……。何かミスがあったのですか?」
シオンが首を傾げる。
「はい。金庫室の扉を解除するのに十秒もかかってしまいました。シオン様であれば、触れるだけで一秒で解錠できたはずです。さらに、建物の見取り図と警備兵のシフト、裏帳簿のコピー、隠し財産の正確な金額までは把握できましたが……ミャオ先輩のように、五百メートル先の別館で寝ている商会主の寝言の正確な内容まで聞き取ることはできませんでした」
ベルも悲痛な表情で言葉を継ぐ。
「我々の情報収集能力は、お二人に比べれば子供の遊びにも等しいレベルです。帰還の際も、砦の屋根を飛び移る時に、瓦を一枚わずかにずらしてしまいました。隠密として恥ずべき失態です。どうか、厳しい罰をお与えください」
その報告を聞いたシオンとミャオは、顔を見合わせて苦笑した。
「……ルカ、ベル。あなたたちは他国の王室直属の暗殺部隊よりも、よっぽど迅速で正確な仕事をしていますよ。瓦が一枚ずれただけで罰を与えていたら、世界中の密偵が首を吊らなければなりません」
シオンが優しく微笑むと、二人は信じられないという顔をした。
「お、お慰めは不要です! 私たちはもっと、シオン様たちのように息をするように完璧な隠密にならなければ!」
「まあまあ、二人ともすごいから自信持って! でも、その向上心は花丸ですよ!」
ミャオが犬耳をピコピコと動かして笑う。
アシュタルの訓練生たちと同様、彼ら隠密部隊の下っ端たちもまた、頂点に立つ者たちの異常なスペックを基準にしてしまっているため、自分たちが世界最高峰の技術を持っていることに全く気づいていないのであった。
新たな開拓地と、名もなき縁の下の力持ち
戦闘部隊や隠密部隊が(本人の自覚がないまま)異常な成果を上げている一方で、絆紋公国の真の強さを支えているのは、彼らのような戦闘職や諜報職だけではない。
午後、俺は視察のために、アシュタルから少し離れた場所に新設中の『生産・物流特区』へと足を運んでいた。
そこでは、凄まじい活気と熱気の中で、新しい街の基盤作りが進められていた。
だが、その一角で、何やら頭を抱えている二人の人間の姿があった。
一人は、分厚い手帳と計算尺を手にした、神経質そうな若い男性。
もう一人は、油まみれの作業着を着て、スパナを握りしめた快活そうな女性だ。
「ああもう、ダメだ! この建材の搬入ペースじゃ、予定していた魔導炉の基礎工事に間に合わない! 物流のラインが完全にパンクしている!」
男性が髪を掻きむしって叫ぶ。
「ヒューゴ、落ち着いてよ。私が設計した魔導炉の部品、精密すぎて運ぶのに神経使うから仕方ないじゃない。それに、最近この資材置き場に変な魔物が住み着いちゃって、余計に作業が遅れてるのよ」
女性がため息をつきながら、資材の山を指差す。
「どうした? 何か困っているのか?」
俺がフェルやピコを連れて駆け寄ると、二人は驚いて振り返った。
「あ、レイン公王様!? す、すみません、お見苦しいところを……。私は物流・倉庫管理の専門家、ヒューゴと申します。こっちは魔導具職人のティア。私たちは元々、王都の大規模ギルドで働いていたんですが、効率と品質へのこだわりが強すぎて上司と衝突し、追い出されてアシュタルへやってきたんです」
ヒューゴが手帳を胸に抱きながら説明する。
「レイン様の理念に共感して、この特区の物流と生産を完璧に管理しようと意気込んでいたんですが……。ティアの作る魔導具の部品が重くて繊細すぎる上に、最近、資材置き場に野生の魔物が入り込んでしまって、現場が混乱しているんです」
「魔物? どんな奴だ?」
俺が視線を向けると、資材の山の奥から、申し訳なさそうに身を縮めている四匹の魔物たちが姿を現した。
一匹は、巨大な荷車を軽々と持ち上げられるほど強靭な角と体を持つ、漆黒の甲虫――『剛力甲虫』。
一匹は、複数の腕のような脚を持ち、細い糸を使って精密な細工をするように動く蜘蛛――『絡繰蜘蛛』。
一匹は、真っ赤な鱗を持ち、口から極めて安定した温度の炎を吐き出している蜥蜴――『炉炎の蜥蜴』。
最後の一匹は、巨大な嘴の下に、空間魔法がかかったような底なしの袋を持つ鳥――『宝物庫の巨鳥』。
「この子たち、私たちが良質な素材を扱っている匂いに釣られてやってきたみたいなんですけど、勝手に資材を動かしたり、炉の火をいじったりして……悪気はないんでしょうけど、どう扱っていいか分からなくて」
ティアが困り顔で言う。
「よく頑張ったな。もう大丈夫だ」
俺はゆっくりとしゃがみ込み、右手の甲の『絆紋』の光を灯して、そっと彼らの体に手をかざした。
翠色の温かな波紋が、四匹の魔物たちを優しく包み込む。
『万物の調和と極限浄化』の力が、彼らの緊張を解きほぐし、その真の思念を俺に伝えてきた。
(……ごめんなさい。邪魔をするつもりはなかったんだ。ただ、人間たちが一生懸命に美しいものを作っているのを見て、私たちも手伝いたかっただけなんだ……)
剛力甲虫から、不器用だが純粋で、ものづくりを愛する温かい思念が伝わってくる。
「ああ。俺はレイン。お前たちは、この人たちを手伝おうとしてくれていたんだな」
俺が微笑みながら甲虫の硬い背中を撫でると、彼は嬉しそうに羽を震わせた。絡繰蜘蛛も器用に足を動かして挨拶し、炉炎の蜥蜴は俺の足元にすり寄り、宝物庫の巨鳥は誇らしげに嘴の袋を膨らませた。
「ウォンッ♪」「キュイッ♪」「きゅるるーっ♪」
フェルやピコたちも近寄り、新しい仲間を優しく迎え入れる。
「もしよかったら、俺たちの家族にならないか? うちには、お前たちの力を必要としている人たちがたくさんいる。お前たちの力があれば、この街はもっと豊かで素晴らしい場所になる」
俺の誘いに、四匹の魔物は嬉しそうに大きく頷いた。
「よし。甲虫のお前は『ギガ』だ。蜘蛛は『アミ』。蜥蜴は『ロロ』。巨鳥は『ペリ』だ。今日からよろしくな、みんな!」
「ギィィッ♪」
「キチチッ♪」
「キュルルッ♪」
「クァァッ♪」
新たなる家族、ギガ、アミ、ロロ、ペリを迎え入れた俺は、ヒューゴとティアに向き直った。
「ヒューゴ、ティア。この子たちは邪魔をしに来たわけじゃない。君たちの素晴らしい仕事を手伝いたかったんだ。ギガの怪力で重い資材を運び、ペリの空間袋で安全に保管する。アミの精密な糸で部品の仮組みを行い、ロロの安定した炎で魔導炉の温度を完璧に管理する。……どうだ、彼らと協力すれば、君たちの理想の物流と生産ラインが作れるんじゃないか?」
二人は目を見開き、そして歓喜の声を上げた。
「す、素晴らしい! 彼らの能力があれば、搬入のタイムロスはゼロになり、効率は百倍に跳ね上がります! ペリちゃん、君のその袋の容量を見せてくれないか!?」
「私の設計した精密部品の組み立て、アミちゃんなら絶対に完璧にこなせるわ! ロロちゃん、その炎の温度、ずっと一定に保てるの!? 最高じゃない!」
職人魂に火がついたヒューゴとティアは、さっそく魔物たちと連携し、凄まじい速度で物流の整理と魔導炉の組み立てを始めてしまった。
「ヒューゴ、ティア。君たちのアシュタルへの移住と、生産・物流部門のトップへの就任を歓迎するよ。これからも、縁の下の力持ちとしてこの国を支えてくれ」
「「はいっ! お任せください、レイン様!」」
こうして、優秀な物流管理の専門家ヒューゴと、凄腕の魔導具職人ティアという内政の要が、新たな人間の仲間として陣営に加わったのである。
終わらない夜の宴と、前を向く者たち
その夜、領主の館の巨大な中庭では、いつものように賑やかな大宴会が開かれていた。
セシルとエリスが腕を振るった山のようなご馳走が並び、新しく加わったヒューゴとティアは、クロムやバラン、セリーヌたち「内政組」と酒を酌み交わし、魔物たちと協力した新しい都市計画について熱く語り合っている。
一方、宴会の隅の方では、今日教官不在のダンジョン探索から帰還した訓練生のカイ、リゼ、ドンたちが、涙を流しながら肉を齧っていた。
「うぅっ……俺たちは弱すぎる……明日は剣の素振りを一万回やるぞ……!」
「私も……魔力コントロールの基礎を、徹夜で百回やり直します……!」
彼らの異常な向上心(と盛大な勘違い)を見て、アイラがガハハと豪快に笑いながら彼らの背中をバシバシと叩いた。
「いい意気込みだ! その悔しさを忘れなきゃ、お前らはもっと強くなれるさ!」
「はいっ! アイラ教官!」
訓練生たちは目を輝かせて返事をする。その光景を見て、俺は思わず苦笑いを浮かべた。
「レイン様。彼らも、そして我々隠密部隊の下っ端たちも、まだまだ未熟ですが、前を向く意志だけは一人前です」
シオンが静かにワイングラスを傾ける。
「ああ。戦う者も、裏方で支える者も、そして魔物たちも。誰もが自分の役割に誇りを持ち、互いを高め合っている。これこそが、俺たちの誇る『絆』の形だ」
「ウォンッ!」「キュイッ!」「きゅるるーっ!」
フェル、ピコ、ソラが俺の膝の上に飛び乗り、顔をすり寄せてくる。新しく加わったギガたちも、先輩の魔物たちと一緒に楽しそうに宴の輪に加わっていた。
果てしなき強さへの渇望と、国を豊かにしようとする情熱。
戦闘だけが全てではない。人々の営みと、魔物たちとの調和こそが、この世界に真の平和と繁栄をもたらすのだ。
アシュタル辺境国による『絆紋公国物語』の編纂と、俺たちの終わらない救済と開拓の日常は、名もなき英雄たちの手によって、今日も温かく紡がれていくのであった。
ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!尚、現在新作もよろしく(*´∀`)ノ
しがらみだらけの人生に疲れたので、記憶を消して無人境へ転生します〜無限魔力の【万能創造】で理想の拠点を作ってたら、最強の魔獣たちが勝手に懐いて最高の家族になりました〜
https://ncode.syosetu.com/n3777mp/




