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『PAX UNIVERSALIS 2041/蒼の序曲』  作者: 幸塚良寛
二章.NEXT DAY / 災難はひとりでは来ない
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8.馬に蹴られて死んじまえ―3

 おゝ、青年よ、

 平然と過失を

 犯すことは青年の権利だ、

 われらは過失を目標としてゐない、

 だが過失を怖れては

 何事も為し得ないだらう、


小熊秀雄 『春は青年の体内から』(抜粋)



 チョッと……今は何も喋りたくない気分なんだけど、

 きっと、そうはいかない。そんな勝手はとおらない。

 だって俺は婦女暴行の加害者、それも現行犯だから。

 (ああ)……、何てこったい阿呆か俺。

 そうだ。そうだよ。やらかした。

 年端もいかない女の子相手にこの俺、東雲藍はやらかした。

『ウッキャ~~ッ!』と奇声を発したかどうかはわからない。

 ただ、

『すッッげェェ~~ッッ!』と叫んで女の子の両肩をぐわし! と掴んだ事はおぼえてる。

 更に、

 あるまい事か、『エスパーだ! エスパーだ!』と錯乱しまくって、許可なく当の女の子の身体をペタペタ触りに触りまくった事も……、

 憶えてる……。

 憶えてるんだ。

 噫……、この、ハンサムで、背が高く、お洒落、モテモテの東雲藍ともあろう男が……。

 ウキャウキャのお猿さんモードに先祖返りしてしまうとは……。

(だ~~~~ッ!)

 反省…………。


「少尉殿?」/「タコ?」

 丸いテーブルの向こうから女の子(と、もういいかげん名前で呼ぶとしようか)新橋愛二飛曹が問いかけてきた。

「ああ、悪い悪い」

 無意識のうちに掻きむしっていたらしい両手を頭からどける。

 ふい、と俺が黙り込んで髪の毛をガシガシやりはじめたので、どうも心配されたらしい。

 なにしろ、突然、雄叫んだかと思うと、(えん)(りょ)(えし)(ゃく)もまったく無しに、他人の……、女の子の身体を触りまくったこの俺だ。

 警戒されても仕方がない。

「これから、どうなさるんですか?」/「とっとと計画たてろよな」

「そうだなァ……」

 言われて俺は、今日これからの予定を考える。

 相も変わらず空は晴れ。

 舗装路面からは陽炎がゆらゆら立ち昇ってる。

 時間はお昼をすこし過ぎた頃。

 カフェテラス風に屋外に設けられた座席は、大きな日傘の下にあってさえ、じりじりとした暑熱にさらされている。

 クリーム色をしたテーブルに頬杖をつき、網膜を白く灼かれる前に視線を路面から並木、すこし離れた公園の緑へとうつす。

 二階建てか三階建て程の建物群で構成された商店街は、すでに全ての店がオープンし、カップルや仲間連れ――いろいろな人々が、さまざまな装いで街路をゆきかっている。

 平日ではあるが、人出は結構あるようだ。


 といったところで現況を説明しとこうか。

 五W一Hは物語の基本。

 場面の(唐突な)変化についてこれない女の子がいたら大変だ。


 まず、先祖返りしたモンキー野郎はどうしたか?

 正解――もう一度ニンゲンに進化した。

 次。ヒンシュクもののセクハラ野郎はどうしたか?

 正解――『お嬢さん、背骨が曲がってるアルよ』とエセ整体術士にトラバった。

 そして、超能力オタク野郎はどうしたか?

 正解――自分と女の子の間を(ホテルの備品の……、と、もとい! 『愛♡』の)手錠でガッチリ結んだ。

(って、をいをいをい!)

『お前(貧弱な)理性が、まァだ死んでるンじゃねェか?』と天の声が何処からか聞こえてくるような気もするが、

『訓練プログラムの変更をお伝えします。東雲少尉の休暇は取消しとなりました。ただちに戦隊指揮所まで出頭して下さい』って(まるで電報でも読み上げるような棒読み口調で)用件を伝え終えた途端、

『それでは私はこれで……』と腰を上げられてみろ。非常手段をとるもやむなしってェ気分にきっとなるから。

「…………」/「ならん、ならん」

 も、もちろん非礼の埋め合わせはチャンとやったさ。

 セクハラのお詫びに、()()()()には服を一式プレゼントした。

 なにせ手錠で互いを連結したからね――はじめての時ふたたび、って感じでとっとと帰ろうったって物理的にムリ。

「行こう、行こう。遊びに行こう♪」と、俺が宿から表に出たら、否が応でもそれに同行するしかなくなるって寸法。

 幸いに、ってか、非難の一言、わずかな抵抗さえなく、おとなしく手を引かれるままついてはきてくれたんだけど。

……感情面にとどまらず、意志も希薄な子なんだろうか……。

 で、

 それはさておき、そんなこんなで、いの一番にやったのが装備の変更、ならぬ、着衣のお着替え。

 何度か入ったことのあるブティックの入り口をくぐると、そこの店員と一緒になって、あぁでもない、こぉでもない。アレがかわいい、コレがぴったりと、在庫を総ざらえする勢いで着せ替え人形しまくった。

 女の子と一緒に買い物に行って、よく、『疲れた~』とか、ボヤく奴もいるけど、俺に言わせりゃ『未熟者』

 女の子と時間をともにしているだけでもウキウキなのに、ショッピングするのがどーして負担になるのか理解不能。

 だって、衣服にしたって、アクセサリにしたって、一緒にワイワイ品定めするのって楽しいじゃんか。

 でもって、選んだ品でその女の子の魅力が増すんだぜ?

 当然、相手の機嫌も上々だろうし、言う事ないじゃん。

 と、

 まぁ、そんな感じでデコりまくった愛ちゃんは、ブティック入店前と入店後――ビフォー/アフターで別人だった……、ってのは言い過ぎ、もとから可愛かったんだけども、何て言うのか、ほら原石だ。

 宝石だっても、そのままだったら只の石ころと大差なく見えても、それを磨いてカットしてって、手をくわえたら、『をを……ッ』ってくらいに輝くだろ?

 言葉の通りに宝の石になるじゃあないか。

 それと同じで、グッドな素材を更にデコれば、もぉサイコーさ。

 ブティック後に、とりあえず一服、と、このカフェに来るまで、まぁ、愛ちゃんの注目されることされること。

 まっこと、努力の甲斐があったでごわす。

「…………」/「おんなに貢いで身を滅ぼすおとこの典型例だな、気をつけよう」

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