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最後の恋文  作者: 月樹


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8/8

番外編 結婚式前日

申し訳ございませんm(_ _)m


何故か番外編だけ、クライブの名前を全部リカルドと記載してました。


修正いたしました。意味がわからなくなり申し訳ございませんでしたm(_ _)m

 式前日のストラルガー公爵家は大混乱だった…。



「お嬢様、そこは今危険ですから入ってはいけません!!

 誰か~、オリビア様を止めて~!!あ~っ!!」


 ガチャン!!


「キャ~ッ!!誰かお怪我されないようにオリビア様を抱き上げて~!!

 申し訳ございません。披露宴に飾る花器が一つ割れました~!!」

 美しく装飾された会場で、双子の片割れが暴れまわり…



 その頃キッチンでは…

「奥様、明日の披露宴の料理に使う予定の鴨がまだ入荷されておりません。

 あの料理は仕込みに丸一日掛かりますので、今から他の料理に変更いたしましょうか?」

「料理長、貴方が作る鴨のテリーヌは王太子様の大好物なの。絶対に外せないわ!!

 デニス、忙しいところ申し訳ないけれど、あなたが直接店に確認して急ぎ届けるよう手配してくれる?」

「かしこまりました」




「坊ちゃま、どちらに居られますか~?

 」

 ちょっと目を離した隙に、行方が分からなくなった公爵家の大切な跡取り息子。


 探していると、不自然に扉が少し開いている部屋を見つけた。

 そこは明日の婚礼衣装が飾られている衣装部屋…。


 嫌な予感がした側仕えのアレクが、扉を開けると…


「うわ~っ!!フェリックス坊ちゃま、お止めください!!」

 フェリックスは母のために用意された、高価な真珠をふんだんに使用した純白のドレスに抱きついていた。

 そりゃ極上のシルクを用いているので、触り心地も最高だろうが…

 それは当主のクライブ様が妻への盲愛と欲望を込めて贈った愛の証なので、汚したり破いたりしたら大変なことになる…


「坊ちゃま、お祖父様からプレゼントされた新しいオモチャですよ。

 お母様のドレスより、これで遊びましょう」

 アレクは、フェリックス捕獲のため使用許可を得たガーランド公爵からのプレゼントの仕掛け箱を目の前にチラつかせる。


 色んな音が出たり、人形が飛び出したりと、子供がすぐには飽きない仕掛けが施された箱だ。


 まだドレスとオモチャのどちらを選ぶか迷っているフェリックスに…


「坊ちゃまがいらないなら、オリビアお嬢様にあげちゃおうかな…」

 と揺さぶりをかけると…釣れた。


 双子だからなのか、この兄妹はお互いに牽制し合うところがある。


 ウェディングドレスには少し掴んだシワが出来たけれど、すぐに元に戻るだろう…。

 アレクは急いで部屋の鍵を閉め、二度と入れないようにした。


 ~・~・~・~・~


 こんな感じで、みんな明日の準備でいっぱいいっぱいだったから…


 当主のクライブが

「ちょっと行ってくる…」

 と言って、ふらっと出掛けたのにも…


「いってらっしゃいませ」

 とおざなりに見送っただけで…


 誰も()()()()()()()と尋ねる者はいなかった…。



 クライブが家を出たきり帰ってきていないことに気がついたのは、すっかり日も暮れ、一段落ついたからそろそろ夕食にしようという時だった…。


「あらっ?誰かクライブ様がどこに行かれたのか聞いていない?

 まだ…戻られていないようなのだけれど…」

 クライブの所在を尋ねるアンネマリーに、デニスも首を傾げる。


「私も鴨の調達に出掛けておりましたため、旦那様の外出を確認出来ておりません…。

 申し訳ございません」

 普段なら有能な執事のデニスが、主人の行き先はちゃんと把握しているのに、今日は間が悪かった…。


「馬車は使用されていないようだし…クライブ様の愛馬のロクサーヌも今は負傷して休ませているから…歩いて出掛けられたのかしら?」

 普段使いの馬車は、デニスが鴨の調達に出掛けるために使用しており、愛馬のロクサーヌも負傷中…。

 他にも馬車はあるが…全て公爵家の紋章が入っており目立つため、ひっそりと街に行くには向かない。


 そのため、クライブは目立たない装いで、途中辻馬車を拾って、街へと出掛けた。


 それも、後にクライブの足取りを辿れない原因の一つとなった…。



 アンネマリーは【鑑定】の固有魔法を持つが…それは人であれ物であれ、目の前にその対象がないと行うことが出来ない…。


 外はもう真っ暗…こんな時間になっても帰らないクライブ…。

 明日は結婚式だというのに、明らかにおかしい…。


 クライブの身に何かあったのでは…?と考えたアンネマリーは、すぐに王家と五大公爵家に連絡を入れた。


 五大公爵家当主の安否は、決して内輪だけで済ませて良いことではないからだ…。


 ~・~・~・~・~


 王と五大公爵家の当主が密かにストラルガー公爵家に集結した時に、それは起こった…。


 突然目の前の空間に現れる文字。


 ストラルガー公爵家の固有魔法【メッセンジャー】だ…。


 まだ息子のフェリックスは幼いので、現在これを使用できるのは現当主のクライブだけ…。



『愛している…』



 唐突に《《愛の告白》》で始まったメッセージは、最後は感謝の言葉で終わった。


 たぶん、まだ他にも伝えたい言葉はあったのだろうが…そこで途切れた…。




「ストラルガー公爵の反応が消えました…。夫人…残念ながら()()を終える前にその反応が消えたため、所在を確認することは出来ませんでした…」


 そう沈痛な面持ちで告げたのは、固有魔法【探知】を持つサザビー公爵家当主ダルタニアン。


 彼はその固有魔法で、遠く離れた場所にいる人物も探し出すことが出来たが、あくまでもそれは()()()者にだけ有効で、死者や物に対しては効力がない能力だった…。



「そんなはずないわ!!

 …だって…あんなに私達の結婚式を楽しみにしてたじゃない…」



 心を切り裂くような悲痛な叫びが、シーンと静まり返った応接室に響き渡る…。


 父として、彼女の悲しみを一緒に受け止めるガーランド公爵を残して、他の皆は、ストラルガー公爵が最後の力を振り絞って贈った、最愛の妻へのメッセージを彼女が心に刻むことが出来るように、静かにその場を立ち去った。


 明日の式の中止の手配を進めるよう、執事のデニスに告げることも忘れず…。



 ~・~・~・~・~


 アンネマリーは今日も変わらず愛しい夫に恋文(ラブレター)を出す。


 それは、今日あった些細なことだったり、可愛い子供達のやんちゃなイタズラについてだったり…


 クライブに話したかったことを書き連ねた手紙を、毎日欠かさずポストに出しに行く。


 それを見た人々は色々と噂した。



『そんなことをしても意味がない…』


『あなたが傷つくだけよ…』


『だって…あなたの愛する彼は…(もうこの世にいないのだから…)』




 そうしたら…


 ()に掛かった…


 金と銀のキツネが…




 さあ、愛しい貴方を迎えに行きましょう。

明けましておめでとうございます。


本年もよろしくお願いいたします。

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