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六花と槍の物語  作者: hiddenkai
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第126話 父を手伝う子供達 

「はあー、これが本来の行先なのね。」


目の前に街が広がっている。

たくさんの建物と様々な人種が通りを埋め尽くしていた。


宿屋や商店が圧倒的に多く、店先には日本の商品が置かれている。

人種問わず買い物を楽しんでいる姿が見えた。


「ここも以前は鬱蒼としたジャングルだったけど、自衛隊の基地が作られてから急速に発展したのよ。

今では日本の品物が買える商業地となって観光客も増えたわ。

それにしてもこの間来た時の3倍くらい大きくなっているわね。」


山城が発展の経緯を六花と狼牙に伝える。

地元民の逞しさに感心する六花達であった。


「久しぶりじゃな!狼牙よ見違えるほど強くなりおって!」


白虎王、五虎将、戌亥姉妹が迎える姿が見える。

白虎王の外見に変化は見られない。

五虎将、戌亥姉妹は総じて5歳ほど老けたように見えるが、姉妹は幼さが抜け成人女性の色気をムンムンと放っていた。


「ええ!五虎将の奥さんってあなた達だったの!」


萌葱は戍亥家長女 梓音しおんと馬の相乗りをしている。

いつ何時反乱軍に襲撃されても迅速な対応ができるように、馬車を使わず馬で移動が定められていた。


「そうなのよ、偶然あなた達の話題で盛り上がってさ!

それから度々みんなで食事をすることになってね。

気付いたら子供ができてたの!」


「そ、そうなのね・・・おめでとう。

ところでひとり余るじゃない、他の人と結婚したの?」


「ここじゃ重婚ありなのよ!私と楓佳の旦那は関勝よ!」


萌葱は思わず息を吸い込む。

梓音はその音を聞いてニヤリと笑った。


一行は何事もなく魔王城に到着し戍亥夫婦、村長の俱利伽羅クリカラ・バステト夫婦に出迎えられた。


「バステトっち!お久!」


「珊瑚!相変わらずギャルギャルしてるし!チョー可愛いし!」


二人はギューとハグをすると並んで写メをする。

その後全員とハグをして回り写メを撮り続けた。


「妻が済まないねお嬢さん方。私は俱利伽羅です。」


倶利伽羅は目を細め六花に笑いかけた。


「どこかでお会いしたことがあるでしょうか?」


萌葱は見覚えのある金色の瞳を思い出そうとするが、記憶にモヤが掛かり思い出すことができなかった。


(この記憶はあなた達自ら強力な封印を施しています。

解除できません。)


アルジーが心話でそう告げた。


「魔王城は封印が施され立ち入りができないと聞いていたが。」


「それがですね私が調査に訪れた際に封印が解けたのですよ。」


日向の質問に戍亥 和幸が答えた。


「中に入ると何かとても落ち着いた気持ちになりましてね。

すっかり気に入ってしまい移住しました。

ただ1階のみで2階から上には入れないのです。」


和幸に続いて妻ソフィアが話しはじめた。


「それとですね最近2階に誰か居るような気配があるんです。

気のせいかと思ったのですが確かに複数の足音とか女性の笑い声が聞こえるんです。」


六花は揃って心当たりを思いつき天井を見上げた。


「もしかしたら私達の母親かもしれません。」


萌葱が切り出し母親が消えた経緯と手紙の内容を話した。


「ならば行って自身の目で確かめてきなさい。」


倶利伽羅はとても満足げな笑顔で六花に語りかけた。


2階への階段を上がる六花、狼牙、ママ達は、魔王城に入った時から感じていた既視感を更に強めていた。


扶桑「ここを知っている。何故かしら。」


山城「子供達がこの手摺を滑り降りていた感じがする。」


長門「ええ、それを見てとてもヒヤヒヤしていたわ。」


陸奥「少し目を離した隙にハイハイで集団脱走してたわ。」


伊勢「もう少し気が付くのが遅れていたらここから転げ落ちた。」


日向「赤子の頃からヤンチャでとても可愛らしかった。」


ママ達は夢遊病者のようにボーとしながらブツブツと呟く。

それは階段を上がるにつれて酷くなっていった。


「階段の先から前に進めなくなるってか!」


階段最上部から先は暗闇で何も見えない。

茜が慎重に腕を伸ばし暗闇に触れると手首から先が消えた。


「ん!通れるぞ!」


言うが早く闇に飛び込み姿を消した。


「わっ!少しは警戒しなさいよ!」


続いて萌葱が飛び込むと後から皆が続いた。


目の前に見事な調度品が置かれたホールが広がる。

天井のシャンデリアは魔法の光を放ち辺りを煌々と照らしている。

真っ白でふかふかな絨毯が敷き詰められた、長い長い通路の片側に幾つもの扉が見えた。


「ここを知っている。」


六花、狼牙、ママ達はいよいよ確信を強め目の前の大きな扉を開く。

室内の照明と違う自然の光に眩さを感じ目を閉じる。

そこは天井から壁まで総ガラス張りの大きな広間であった。


「お帰りなさい。子供達。そして清白と度胸の乙女達。

長い旅からよく無事に戻りましたね。」


広間の中央で六花の実の母親達が慈愛の笑みを浮かべ立っていた。


「さあ、これをご覧なさい。」


母親達が輪になり手を上げた先に地球とそっくりな球体が見える。

球体から光の粒子が飛び出すと六花達に降り注ぐ。

粒子は六花達に吸い込まれると前世の記憶として発芽した。


「お、かあ、さん。」


「・・・奥さま。」


六花と狼牙、ママ達は前世の記憶を全て思い出した。


「思い出したようですね。さあいらっしゃい。」


7人の母親が手を広げると六花と狼牙は、自分達の母親目がけて飛び付いた。


「お母さん!お母さん!」


幼き日に母を亡くした狼牙は母の姿を覚えていない。

父親の不道徳な行いの結果、恨みをかい全てを失った。

家族の写真さえ残らなかった。


しかし、前世の記憶に母の姿はしっかりと残っている。

白虎の獣人であり気高く凛々しく誰よりも優しかった母親の姿が。

狼牙の目の前の女性にその母親の姿がだぶって見える。

自分より小さい母親の胸に顔を埋めると声を上げて泣いた。


「ああ、愛しい我が子 狼牙ノヴァ。やっと私の元に戻ってきた。」


ディメントの記憶を持つ母は狼牙の頭を抱きしめいつまでも撫でまわしていた。


六花もそれぞれの母親の胸に抱かれ泣き声を上げている。

ママ達はそれぞれの主の元へ近づくと膝を着き首を垂れた。


「ネーヴェ様、忘れていたとはいえ数々の御無礼ここに謝罪いたします。」


扶桑は両ひざを着くと土下座をして詫びる。

萌葱の母は娘を抱いたまま扶桑に覆い被さった。


扶桑アルタイル、あなたが居てくれたお陰で萌葱ルミナスは私と再会することができたのです。

あなたは私と娘の恩人であり、娘のもう一人の母です。

私達はいにしえからの家族です。

頭を上げてください。

そして礼を言わせてちょうだい。」


扶桑は涙と鼻水で塗れた顔を上げる。

萌葱の母は両手で扶桑の顔を包み込むと「ありがとう」と告げた。


「ぐすっ!お母さんはお母さん。

蒔子ママは蒔子ママ。

これからもママでいてね。

あなたは最高のママです!」


▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽


「俺は重度のマザコンだった!今判明した!」


狼牙ノヴァは頭を撫でて貰う為に母の膝から離れようとしない。

ディメントは嬉しそうに頭を撫でまわしていた。


記憶が戻っても培ってきた性格や考え方が劇的に変化することはなく、前世でのお嬢様・お坊ちゃん気質が融合し、少しばかりマイルドになった程度であった。


「それでは おカリエンテさんも前世の記憶を失い生きてきたのですね。」


「ええ、そうよ夜花子ミストラル

ただ私達の場合は作られた感情と思考を植え付けられていたの。

ある時が来たらそれらが一掃されて記憶が蘇ったわ。

多分、素のままで転生したら話が面白くなくなるとお父さんが思ったのね。」


「ホストから聞きました。あっという間に数十億を稼ぎだしたって。

お父さんが求めていた物語ってそういうものではないのですね。」


「そうよ。お父さんは神の力を超えた自分と比肩する力を求めていたわ。

そしていつもあなた達を見守っていたのよ。

あなた達がお守りで持っている黒い石はお父さんの肋骨の一部よ。

多分あなた達が気が付かないところで助けていたはずよ。」


六花はガマ口ポシェットをギュッと握り締めた。


「お父さんは今もこの宇宙の中心で、アザトースの欠片を探し続けています。

お父さんの真意は理解できないけれど、必ず全ての幸せの為に働いていると思うのよ。

あなた達が手伝ってくれれば家族全員が一緒に暮らせる日が早まると思うんだけど。」


「美津子!とーちゃんの手伝いをすればいいんだな!」


茜は美津子ベアトリーチェの真意を察知し元気よく答えた。


「なあ!行こうぜこの宇宙の中心!何があるかワクワクするぜ!」


姉妹達は顔を見合わせ頷いた。


「よし!行こう!お父さんに聞きたいことがいっぱいあるし!」


「応!」


萌葱の号令に全員が呼応する。

六花は渋る狼牙を引っ張り込みロッガーロボへと合神した。


狼牙ノヴァとても素敵よ、お母さん嬉しい!」


「お母さまに喜んで貰えるなら、ボク頑張ります!」


六花は狼牙のマザコンぶりに不安を覚えた。


「そう言えばさ私達、前世は血の繋がった姉妹兄弟じゃない。

倫理的にOKなのかな。」


「DNAでは他人ですので子を成したとしても障害児発生率は数%程度です。問題はありませんよ珊瑚。」


アルジーの報告に少し気が晴れた。


「ねえアルジー。みんなを元の体を再構成できるかな?」


「それはあなた達の肉体を光子へ転換し概念化すれば可能ですが必要でしょうか?」


「私達とこの子達は既に別の自我なのよね。

この子達にちゃんとした人生を歩ませてあげたいと思うの。」


「承知しました。では概念化を始めます。」


アルジーは肉体を構成する素粒子間の真空のゆらぎから光子を取り出す。

光子に六花と狼牙・アルジーを刻印すると光子体を発現させる。

概念と分離した六花・狼牙が組体操のように一つに固まっていた。


「面白いものを発見しました。

光子に皆さんの転生前の遺伝子が記録してあります。

お父様は再構成を前提にされていたのですね。」


「流石はお父さん!抜かりが無いね!」


「再構成にあたり、ママ内蔵のアルジー分体を回収します。

なお非常時の対応手段として、アルジー光子を原子構成の場のゆらぎに内包することで私達の力の一部を使用することができます。

いかがしますか?」


「それくらいの特典はありだね。やっちゃおう。」


「了解です。それでは肉体の再構成を開始します。」


ロッガーロボが腕を振ると肉の体を持つ者は、すべて素粒子に分解され瞬く間に再構成された。


「ああこんな顔だったね。体も小さいや。確か6歳くらいだった。」


ロッガーロボは転生前の容姿を見てフムフムと頷いた。


「時間補正をかけます。消失時から3年の経過を確認。肉体年齢を3年加算します。」


子供達の身長が伸び一回り大きくなった。


概念化・再構成にかけた時間は僅か0.369秒。

六花・ノヴァの親子と扶桑達は再構成された事に気付かない。

更に記憶が書き換えられたことでロッガーロボの存在さえ忘れていた。


「さてそろそろ行こうか。じゃあね、もう一人の私達。

お母さん。ママ。行ってきます」」


誰にも気づかれることなく、ロッガーロボは衛星軌道に跳んだ。


宇宙から見る異世界地球は現実地球と変わりがない。

緑なす大地と青い海、白い雲が絶妙な色合いを魅せる。

ロッガーロボはその光景を目に焼き付けた。


転移をせずに通常空間を突き進み3日で宇宙の中心に辿り着く。

その間の宇宙の詳細情報をアルジーが熱心に収集していた。


中心点は現実地球の宇宙と違い、銀河と同程度の大きさのブラックホールが空間を捻じ曲げ鎮座している。

超光速高圧のガスを吐き出し、光速を超える速度で回転していた。


「中にアザトースの神格を僅かに感じます。」


ヨグ=ソトースからの報告を受けると、ガス噴出を押しのけ内部に侵入を果たした。


「星が見えない。真っ暗な空間。何もない空間。」


「亜空間と次元を走査しましたが半径500億光年に星はありません。

推測になりますがこの空間は無限大の広がりを持っています。


更に空間に素粒子が検出できません。

真の真空状態の可能性が99.9999999%です。

ここは静寂と無と孤独な世界です。」


「でもさ、みんなと一緒だからさ、お父さんよりマシだと思うよ。」


絶望的な数値の報告にロッガーロボの気が滅入るが直ぐに立ち直った。


「六花!あっちからアザトースの歌が聞こえる!」


ウボ=サスラが突然叫んだ。


「とても小さな小さな歌声。私が案内する。」


ウボ=サスラが差し示す方向に全速力で5日進み、素粒子レベルのアザトースの欠片を見つける。

回収したアザトースの欠片は旧知の神と出会いとても喜び笑い声を上げていた。


「やっとひとつ回収っと。さて何年かかるやら。」


ロッガーロボは無限に広がる漆黒の空間を見つめ溜息をついた。

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