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六花と槍の物語  作者: hiddenkai
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第124話 ウボ=サスラと36兄弟

「なんと酷いことを!」


女皇は近衛から送信される映像を見て嘆き膝をつく。

居住区で戦士の凶行を止めようとする非戦闘員が次々と素粒子分解されていた。


「総司令官・・・いや、軍部は既に形骸化しております。

あ奴らは正義を謳うだけの暴力集団にすぎません。

女皇、今すぐご決断ください。

そしてあの神格に判断をお任せしましょう。」


恭しく首を垂れる参謀長であったが、声音に脅迫に似た強い意志を感じさせた。


女皇は静かに頷くと、参謀長に脱出計画の全指揮権を預ける。

参謀長は立ち上がり一礼をすると退出し直ぐに副官に念話を送った。


「女皇から脱出計画の全権を拝命した。

すぐにプランEXを発動する。

同志と旗艦ノアに移乗を急いでくれ。

司令部は管理権限剥奪後閉鎖。

老害共を逃がさないでくれよ。

それと「罪使徒」を解放してくれ。

私からの指令は以上だ。

後の指揮は全て君に任せる。

では幸運を祈る!良い船旅を!」


参謀長は軍服を脱ぎ捨て「罪使徒」が収容されている施設に転移する。

転移阻害シールドは解除され直接病室に転移した参謀長は蹲る「罪使徒」を見つけた。


「同志よ裁きの時は来た。

我らが犯した神聖なる神への償いの時だ。

葛藤と懺悔と贖罪の日々は今日終焉を迎える。

共に神の元に参ろうぞ。」


絶望に満ち満ちた顔に僅かな光明が差す。

戦士達は立ち上がり手を取り合った。


「罪使徒」とはロッガーロボを凌辱した戦士の呼び名である。

帰還後、軍部から「神殺しの戦士」と称えられ、異例の出世を果たすも自らの犯した罪の大きさに心が耐え切れず、多くが施設送りとなった。


参謀長もその一人であったが、慢心した司令部と総司令官が神への反逆を企んでいる事を知り、心の葛藤に苦しみながら情報を取集した。


充分に情報を取集した時点で星の最高権力者である女皇に情報を開示し、軍部の粛清計画を持ち掛ける。

女皇も軍部の度重なる暴走に心を痛めていた。


女皇の許可を得た参謀長は軍部の若手を中心に協力者を集める。

そして大勢の賛同者を得て今日に至った。


▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽


星の中心部に到達するロッカAO。

超重力の影響で追跡する戦士はいない。

光の無い「真の真空」の場が太陽の直径ほど広がっている。

コアは無数の障壁で包み込まれ姿が見えない。


「物質は素粒子に分解され全てコアに吸収されます。

エネルギーも同様に吸収されると予測できます。」


「ふふふ、こんなこともあろうかと!用意してたでち!

ゴッチンハンマー!」


ガマ口ポシェットから取り出した巨大金槌は、自身の3倍の大きさがあり漆黒で光を反射せず、周りの空間がユラユラと揺らめいでいた。


「このハンマーは真空エネルギーで作られていて破壊は不可能でち!

無限の質量でどんな固いモノでも一撃で割るでちぃぃ!

ウリャァァァァァァ!」


気合を込めてハンマーを振り下ろすと打撃音が吸収される。

静寂の中でコアの表面に一条の光の線が走る。

玉子が割れ黄身と白身が流れ落ちるようにコアが現れる。

コアは光子を纏い眩く輝いていた。


障壁と光子を吸収し急激に縮小すると直径2mほどのブヨブヨとした不定形生物へと姿を変える。

ロッカAOは近づき持ち上げると思念を送った。


「ウボ=サスラ、聞きたい事があるの。

あなたこの女達を知らないかしら?」


「知らない。ずっとここに閉じ込められていたから。

あなた助けてくれたの?」


「まあそんなところね。

ここにヨグ=ソトースとナイアーラトテップが居るけど会いたい?」


ロッカAOが胸に手を当てた。


「会いたい!もう一人ボッチは嫌っ!」


「神格を奪うのが条件だけど。」


「こんなのいらない!早く会わせて!」


「了解。」


聖なる子宮が輝きウボ=サスラが吸収された。


「ウボ=サスラ!ひさしぶりじゃな!」


「ヨグ=ソトースなの?!印象変わったね!」


「それはあなたもですよ。」


「わあ、ナイアーラトテップってばイケメン!

ん?イケメンってなんだ?」


「地球人の印象ではそう呼ぶそうです。

私達は地球人を参考にしたペルソナなので。」


鏡に写る自分の姿を見て喜びの悲鳴を上げた。


「なんて可愛らしいの!」


「地球人はそれをロリータ幼女と呼ぶそうです。」


ゴテゴテに着ぶくれしたロリータファッションに、人形のような可愛らしい顔が乗っている。

ウボ=サスラは嬉しくなってナイアーラトテップに抱き着いた。


▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽


「六花の女神よ、お目を汚すことお許しください。」


「居るのは分かってたけど・・・あなた達あの時の戦士?」


「さようでございます。

恐れ多くもあなた様の純潔を汚した咎人とがびとでございます。」


「それで何の用かしら?」


「私達の罪を裁いていただきたく参りました!

どうぞ心済むまで断罪ください!」


36人の戦士が片膝を着き首を差し出す。

ロッカAOは36人といたしたのかぁと漠然に思った。


「いや、その必要はないよ。別に怒ってないし。

何より純潔じゃなかったし。

犬に噛まれたと思って忘れたよ。」


「それでは我々の気が済みません!どうか断罪ください!」


「本人が必要が無いって言ってるの。

それとも自分達の心が苦しいから楽になりたいのかな?」


「そ、それは・・・」


「ああ、図星みたいね。

じゃあ絶対に許してあげないし断罪もしない。」


「それでは我々は狂ってしまいます!どうかご慈悲を!

安寧な世界へと送り出してください!」


「いやよ!

なんでレイプ魔のためにそんな面倒くさいことしなきゃいけないの?

自分達で何とかしなさいよ。」


「我々は自死できない体なのです!

我々の存在を抹消できるのは神のみでございます!」


「・・・捨てたい命なら私が貰うわ。

アンタたちこれからは私の下僕ね!忠誠を誓いなさい!」


「神よ!それでは・・・私達に永遠に苦しめとおっしゃるのか。」


「めんどくさい奴ね!いいから忠誠を誓いなさい!」


罪使徒達は渋々忠誠の誓いを立てる。

すると全員の姿とマーキングが赤・青・黒とカラフルに変化した。


「ご注文通りのカラーリングと装飾を施しました。如何ですか?」


「完璧よアルジー!たぶん歴代36人揃ったわ!」


アルジーの仕事に満足すると36人に向き直り最初の指令を伝えた。


「いい!これからはウルトラ〇ンと名乗りなさい!

設定では兄弟なんだからね!・・・もう穴兄弟だったか。

個別名は後できちんと教えるわ。

とりあえずリーダー!あんたはゾ〇ィーよ!返事!」


「は、はい!」


「直ぐに船に戻ること!直にここは反粒子爆発を起こすわ!

時間を稼ぐから船が出航したら念話で教えて!

さあ!早く!行け!」


「はい!」


凄んだロッカAOの迫力に怯えながら36兄弟は転移をした。


場のゆらぎから湧く無尽蔵の粒子・反粒子が、そろそろ連鎖的対消滅を起こすまで空間を埋めている。


「「真の真空」空間を広げることにより時間稼ぎとなりますが、爆発規模が相乗すると思われます。」


「ゆらぎを止めることはできない?」


「コアを叩いた際に発生した時空振が原因です。

覆水盆に返らずです。」


「よし!内殻を削っていこう。

反粒子を内殻にぶつけて対消滅させるよ。

アルジー計算よろしく。タイミングは任せるよ。」


「了解です。弾着今!」


ロッカAOから揺らめいた波動が放たれると、内殻に眩い対消滅光が輝き直径が倍に広がった。


「粒子の生成速度が1.25倍上昇。爆発予想時間が87秒伸びました。」


「いいね!続けて!」


時間と引き換えに超巨大反粒子爆弾は規模を加速度的に増していた。


▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽


最後の脱出船に乗り込んだ36兄弟が出航を急がせる。

先発の船は既に長距離転移で星系の遥か彼方に去っていた。


「どの位の規模の爆発が起きるか予測がつかない!

近隣星系と銀河に警戒喚起を至急発信するんだ!

自衛手段を持たない生物生息惑星に船と戦士を送り障壁展開を急がせる!

時間が無いぞ!」


船がドックを離れるとゾフィーがロッカAOに出航を知らせる。

すると直ぐに転移して現れた。


「あと13秒後に半径3光年が対消滅に巻き込まれるよ!」


「エンジン臨界迄14秒掛かります!」


操船オペレーターが悲鳴を上げた。


「よし!波乗りするよ!全員対ショック防御!ちと行ってくる!」


ロッカAOは転移で船外に出るとベテルギウスの最期の姿を見る。

爆発の閃光と共に光子波と電磁波が津波のように押し寄せ、船体を包み込む。

物質でできた船ならば一瞬で素粒子分解されそうなエネルギーの奔流を、サーフィンのように波に乗っていた。


「エンジン臨界!長距離転移します!」


船はエネルギーの波に後押しされながら時空を猛烈な勢いで移動する。

それと並行してタイムカウンターもあり得ない速度で時を刻んでいた。


通常空間に出現した船の目の前に六花に見慣れた惑星が浮かんでいる。

その惑星は全ての陸地部分が濃い緑で覆われ、海洋部分が濃い青で満たされたいた。


「地球に帰ってきました。ただし1万年後ですが。」


アルジーの報告にロッカAOは驚き跳ねた。


「お帰り!萌葱!会いたかった!」


エアロックが開くと財前 康子が萌葱に飛びつく。

7令嬢全員が揃い六花との再会を心から喜んだ。


「アルジーから帰ってきた事を知らされてね!

職務を放り出してきたのよ!

1000年ぶりかしら、もっと頻繁に帰ってきてよ!」


京極 恵三子が夜花子にべったりとくっつき甘えた声を出す。

1万年経過しても7令嬢に老いた様子が見えない事に六花は安堵した。


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