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石中の恋歌  作者: モノノベワークス
一対一対応の枕辺(まくらべ)
73/81

ルリコの転生の考察

次回の更新は4/5です。なんかランキングのったらしいんですが、時期的に仕込み作業が忙しく確認はまだです。落ち着いたら確認します。

 って言っても何から話したもんか…。私、転生者です! とか? クリシダは信じたけどこの世界の人は転生者って言って信じられるもんなのかな? そもそも私の前世とこの世界って同じ時空に在る? 或いは同じ星? もしかして地球の月が壊れたのが宙の星環だったり? あーでも月は太陽の光を遮るから地球の周りを回ってたらもっと寒さがヤバいよね? ていうか地球にエルフなんて人種いなかったし…。エルフは遺伝子操作された人類の進化系とか? でも私達の中に地球の歴史が残ってないのもおかしい気もするし…あーでも一回伝承途絶えてる説もあるか…。だったら人類の史跡がないのもありえるかな…?あ、でも旧約聖書はある…っぽいからやっぱり地球なのかな? でも聖書が残ってるならなんで他の文献は残ってないんだろう?


「ねえ、ルリコ! ルリコってば! どこまで行くのよ!?」


「え?」


 考え事をしていた私は気が付いたらかなり森の奥まで進んでいた。


「ああ…考え事してた」


 そう言って振り返ると、フランはビクリと身を震わせた。


「え? 何?」


「何って…全然声かけても反応しないから…」


「ちょっと考え事してて…」


 気が付けば私は詫びじーちゃんのお墓の前まで歩いて来てしまっていた。


 そういえば…詫びじーちゃんってカラリリのご先祖様みたいなもんなんだよね…多分…。


 そう思ってカラリリを振り返ると彼女は墓石をつまらないものを見るかのように見下ろしていた。


 そう言えば最初にこの人は、このお墓を壊そうとしていたっけ…。


 フランが詫びじーちゃんの墓石に近づくとカラリリを振り返って言った。


「ねえ、祈らないの?」


「はい? 何故私が?」


 フランの言葉を聞いたカラリリは口元を大きく空けて呆れた声を上げた。


「だって…この人って貴方のご先祖様じゃないの?」


「…石板には確かに、我らの祖に巫女の神託を受けた男があったと伝えられていています。ですがそれがこの墓の男と同一人物とは認められません。なにより我々はその政を捨てました。だとしたら我らには無関係です」


「そんな言い方って…」


 カラリリはフランの落ち込んだ子犬の様な眼を見て大きくため息をついた。


「この男の名前はハリス。言い伝えによればこの男には身を寄せる家がありました。でもそれを捨てて巡礼の旅に出ました。家の為に働くのが血族の仕事。それを放棄した時点でこの男は自分の運命を覚悟していたハズです。それともエルフの里には集落から出て死んだ者が一人も居ないと言うのですか?」


「そんなことはないと思うけど…でもだからこそ…死をいたむべきじゃないの?」


 カラリリはフランの言葉を聞いても墓石に近寄ろうとはしなかった。暫くしてカラリリは私に目線で「さっさと話せ」と催促して来た。その無言の重圧を受けると、私は大きくため息をついて話し始めた。


「どこから話したものか…とりあえず結論から話すね。私…実は…別の世界? の人の生まれ変わりなんだよ」


 それを聞いて三人は首を大きく傾げる。それを見て三人を指さす。


「ホラぁ! 信じないじゃん! だから言ったのに」


 私がそう言うと、フランが片手を小さく振って言った。


『いやいや、そうじゃなくてさ…。私達ってご先祖様の死んだ誰かの魂が生まれ変わって今があるんだから…。別にそれは変じゃなくなない? って…。生まれ変わりの何が問題なの? って思った』


 アキレアもカラリリと顔を見合わせてから言う。


「別の世界? とは? 他の領で死んだということですか?」


 あー思った以上に説明が面倒そうだな!


「いや、あのね。仮説だけど…正しいかわからないけど…。私は地球っていう別の惑星で死んで生まれ変わったの! 元は地球っていう星で生きていたOLなの!」


 それを聞いて三人は「何言ってんだコイツ」みたいな目で見る。フランが口を開きかけるがそれを手で制して続ける。


「良いから黙って聞いて! 見て! この宙の上には沢山の星が見えるでしょ!? いや星環が明るくて見えにくいけど…見えるでしょ!? あの宙の星々に私達みたいな人間が住んでるの! いや、住んでない星もあるけどとりあえず今はそう理解して。で、あの星のもっと先、宇宙の闇は無限に続くの! そのどれかに多分地球がある! 私はその星で産まれて死んだ人間! ここまではいい!? はい、質問どうぞ!」


 手を上げたフランに質問を許可する。


「え、じゃあ…あの宙の星々には私達みたいな人間が沢山いるってこと?」


「さっきはわかりやすくそう説明しただけで…。実際には居ないと思う。何故なら星に人間が産まれるには太陽と大気があってそこから段々生命が進化して人間になるっていう奇跡みたいな偶然が重ならないと駄目だから…」


「進化?」


 私の言葉にカラリリは首を傾げる。


「人間は人間になる前は猿で、それが段々と変化して人間になった…って説があるだけ。まあ、この星の人達もそうかはわからないけど」


 猿が人間になったという話を聞いてカラリリは口を開けたまま青くなって固まる。そして口を押えるとその場を離れて近くの茂みで吐いた。


 …そういえば進化論って神様を信じている人にとってはかなりショックだったんだっけ…。


 私はカラリリが消えた茂みに向かって言った。


「安心してカラリリ。あくまでこれは私の世界の話であってもしかしたらこの星か人間は猿から進化したんじゃないかも。トカゲみたいな恐竜とか…」


「猿? 恐竜? って何?」


 フランが言い終わる前にカラリリが茂みから出て来た。彼女は口元をハンカチで拭いながら言った。


「もし、それが真実なら…。貴方はこの世界に居るべきではない。やはり貴方は…」


「カラリリ嬢」


 カラリリの言葉をアキレアが制した。


「もはや我々は同じ船に乗っています。今更貴方だけ降りることなどできませんよ」


 そう言うと彼女は刀を腰から地面に置くと両脚を横に流して座り、どうぞとカラリリを誘った。しかしカラリリはその場で腕を組んで仁王立ちしたまま動こうとはしなかった。フランは近くに寝そべるとあごに手をついて足をぶらつかせた。


「そちらの麗人は何故ルリコさんの話を受け入れられるのでしょう?」


 それを聞いたフランは地面に手をつくと、顔を振り向けて言った。


「私達エルフは大いなる母に産み落とされた存在だから。猿? とは関係ないんだ。ゴメンね?」


「左様ですか」


『それで? 続きは? ルリコ?』


『え、だから私はこの宇宙のどこかにある地球で死んだ人間の女性の生まれ変わり。その記憶を持ってます。終わり』


『え? 本当にそれだけ?』


『それだけって…。これが映画だったら今明かされるルリコに隠された真実! とか言われるレベルなハズなんだけどな…』


 寝っ転がっていたフランが地面に手をついた勢いで膝立ちする。


『うーん。後はまあ…。…強いて言うなら…孤独死したことかなぁ…?』


 それを聞いて三人はキョトンとした顔をした。


『孤独死って一人で死んだってこと? 前のルリコは旅人だったの?』


 旅人と言われて私は首を傾げる。


 ああ…そうか。この世界の人達にとって孤独に死ぬ状況って放浪しているぐらいしかないのかもしれない…。


『いや、まあ。私は城みたいなところで働いてたよ』


『? それで一人で死んだということですか? 何故ですか? 城にはしもべや家族はいなかったのですか?』


 カラリリの言葉に私の胸はズキリとちょっと痛む。


『何でだろうね。多分私が…ちょっと人生失敗してたからかもしれない』


『家族は?』


 それを聞いたフランに私は首を横に振って答える。


『居たけど別々に住んでた。っていうか何かダメな娘だと思われたくなくて…離れてた』


『何で?』


『ええと…恥ずかしかったから?』


 フランは両手を地面について上半身を起こすと言った。


『でも家族じゃん。家族だったら助け合うのが当然じゃないの?』


 そう言われて腕を組むと首を傾げて言った。


『私の星だと、人は家から自立して生きるべしって言われてたんだよ…』


『だから。それは何で? 独りで生きたら解決できない問題もあるんじゃない?』


 それを言われて私は地面を見つめて言った。


『それは私達が自分の人生を自由に生きる為のルールみたいなもんだと思う。好きにやれるかわりに何か不利益が起きても自己責任みたいな』


『ふーん…じゃあしょうがないか…』


『え…?』


 私はフランが身の上話にあまりにそっけない態度で驚いて顔を上げた。


『え? って何が?』


『いや、だって…私孤独死したんだよ? 普通だったらもっとなんかない? 可哀そうとか。辛かったねとか…』


 フランは身体を起こすと膝を横に流して座って言った。


『え? だって放浪している人達って人間の世界に沢山いるじゃないの? 詫びジーちゃんみたいに。だったらルリコの死だって沢山ある死の中の一つに過ぎないじゃん』


 そう言われると…確かにそうかも…って感じがするけど…。


『でも、ルリコがそんな死に方をするべきじゃなかったと思う』


『え?』


『だってルリコは優しいじゃん。人の為に頑張れるじゃん。そんなルリコが一人ぼっちで生きて死ぬなんて、おかしいし、私は嫌だよ』


 そう言われて急に恥ずかしくなって頬を指で軽く掻く。


『そ、そうかな?』


『うん。ルリコの魂はキレイだから。ちゃんと美しい終わりを迎えるべきだったと思うよ』


 そう言うとフランは眉を吊り上げた。


『むしろ、ルリコをそんな風に死なせた城ってどうなってるの? って私は思ってる。ルリコみたいな人が一人ぼっちで死ぬなんてその城の主はおかしいよ!』


 フランはそう言うと怒った顔で遠い空を見る。フランが私の為に怒ってくれている。そう考えると胸に熱いものがこみあげて来た。


『ていうか何でそんなこと隠してたの?』


 フランにそう言われて私は眉をひそめる。


『いや、だって…恥ずかしいかなって…』


 これにフランも眉をひそめて言った。


『何言ってるの? ルリコは詫びじーちゃんみたいに独りで死んだ人を恥ずかしいって思うの?』


 それには即座に首を振って答えた。


『でしょ? どんな死に方をしたって頑張って生きてきた人は美しい。ルリコの魂は歪んでないだからルリコは間違った生き方してないよ』


 じわり…。と私の胸のつかえが解けたような気がした。


 そうか…。そうだったんだ…。


『私はてっきり孤独死した未練のせいで転生したのかと思ってたけど…。フランと話してたそうじゃないのかも…って気がしてきた』


 そして私は詫びジーちゃんの墓を見下ろして思った。


 むしろ私は詫びジーちゃんと同じって考えると、世界に同じように一人ぼっちで死んでいる人達を思うと…。そんなに苦しくなくなってくる。


『でもそうなると…ずっと疑問だったんだけど。実は私が転生した理由ってよくわかってないんだよね」


 それを聞いたカラリリは仁王立ちのまま答えた。


「それは神が貴方に試練を授けたのでしょう」


「何の為に? っていうか私って転生させるほどの特別な人間じゃなかったですよ」


「だからこそです。主は貴方の様な弱い人にこそ試練を与えます。モーセ、ダビデ、ペテロ。彼らは貴方の様に凡人でした」


 モーセはわかるけど他は知らないな。


「モーセって海割ってませんでしたっけ? どこが凡人なんですか?」


「あれは神の御業であり、彼の力ではありません」


 へ~。


「で、結局神様は何故私を転生させたのですか?」


「それはわかりません。神の考えを人間が理解するには未だに我々の善性が足りないのです」


 うーん出た出た。キリスト教の苦手なところ三選。結局神の御意思はわからない問題。


「私は以前は従者の様な仕事していたので指示されないと迷ってしまう部分があるので神様の指示がないとどうしていいかわかりません。ていうかぶっちゃけ私は神様を信じてないんですよね」


「はい?」


「いや、ていうか私の前世では神様を信じている人は少なかったんですよ…」


「何を言っているんですか? 貴方が転生したという奇跡自体が神の実在を証明しているじゃないですか!」


「ええと…私達エルフにとって転生って自然の働きの様なものであって…。神の証明にはならないんですよ」


「いいえ。神はいます。私は断言できます」


「…その根拠はなんですか?」


「歴史が証明しています。かつて私達が住んでいる地は生き物が住めない程に寒波で冷え切っていました」


 それって確か凍土に現れた救世主の話だっけ?


「神は氷に覆われた地で苦しんでいた人間達をみかねて一人の人間の夢にあらわれた」


「それが救世主?」


 フランはコテンと首をかしげる。


「そう、救世主は夢にあらわれた神の予言に従い三人の勇士を募り七つの神器を集め、厳しい旅の末に極北の地にて寒波を晴らしたのです。そうでなければ未だに私達は寒波の下で身を寄せ合って生きるケダモノの様な存在だったでしょう」


「じゃあ仮に神様がいて…なんで私をここに…? って言ってもだからそれがわからないんですよね…結局」


「はい、わかりません。私には。しかしルリコさん。貴方は…知っているんのではありませんか?」


「え?」


「以前貴方は城で大司教に奇妙な夢を見たと告げたそうですね。夢の中で貴方は王と一緒に居たと」


 あーそういえばそんなことあったな…。


「城の大司教はそれを神のお告げだと吹聴しているらしいです」


「ホワイ? 何故?」


「大司教はいわく。第六石エルフのルリコは夢の中で王の尊顔を見た。いずれ三国を統一する真の王の顔を」


「いや、でも…ただの夢…ってあ…」


 救世主が見た夢がこの世界を救った。だったら…いずれ世界を統一する王様の顔を見れてもおかしくは…。


天人夢テンジンム。神に遣わされた人が見る夢がもたらす実。貴方はこの世界を統一する鍵を握った神に遣わされた存在なのかもしれません」


 ああ…。あのときマッパさんが言ってたテンジンムってそういうことだったのか…。でもなぁ…。いきなりそんなこと言われても…。正直実感わかないって言うか…。


「でもカラリリさんさぁ。ルリコって外交官もできないんだよ? ましてやいつも滅茶苦茶で…。最初、私もルリコとなら…って思ってたけど。ルリコに王様の部下なんて無理なんじゃないかなぁ…って」


 それを言われてカラリリも顔をうつむかせると言った。


「それは否定できませんね」


 私もそう思う。


「ですが、凍土の救世主も最初は寒波の洞窟の中に住んでいた凡人だったのですから。ですからルリコさんもいずれは目覚めるやもしれません」


 カラリリの言葉に私は首を傾げると言った。


「でも、この世界って言うほど問題ないですよね。寒波みたいな…」


 それを聞いたカラリリは天を仰いで大きくため息をついた。


「わかりました。では途中まで一緒に行きましょう」


 そう言うと彼女は私の側に立って手を差し出した。


「貴方も私達の世界の在り様を見ればいずれ気づくでしょう。この世界がいかに汚辱にまみれているか……それを見て貴方がなんと言うか。今から楽しみです」


 そう言うとカラリリは組んだ腕を解いて私に差し出した。それを見て私は思った。


 もし神様が私をこの世界を統一させるために遣わしたのだろうか? 正直私は世界を救うことに一片の興味も使命感もわかなかった。


 だって、世界を救って頑張って来た前世の地球じゃ未だに戦争してるだろうしねー。世界を救う? 無理でしょ?


 でもその手を差し出しながら微笑むカラリリさんの目を見ていると奇妙な高揚感が湧いてくる。今まで半眼だった瞳が今は大きく見開かれて私を見ている。


 今思えば…。ここまで人に必要にされたことってなかったな。


 私はこの世界を救えると思えない。でも…目の前に居るフランやカラリリを失望させたくない。その為だったら。ちょっとぐらいなら。後少しぐらいなら。付き合ってあげるのが義理かもしれない。それに私も気にはなる。


 何故神は私をこの世界に転生させたのか? それに対する興味はある。私はそれを知りたい。それを知る為だったら。


 そう思い、私はカラリリの手を取ってみることにした。

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