#72 起動
俺が思い出したのは、目の前へと迫ったフラマさんのくびれから腰、すらりと伸びた膝にかけてのライン。
その中央に、この世界では見慣れない紐パン。
両側の腰骨付近で結ばれた紐は、左右の輪っかが二重になっている蝶結び。
そして、フラマさんの股の間に見える、ジャック様の恥態。
一番重要なのは、フラマさんが外させようとした紐を、俺が抵抗して外さなかったっという部分。
(こんな感じだよ。一生懸命、抗ったんだ。あくまでも情報収集のためにね)
(なんで見せてくれるのは一部分だけなの?)
レムのこの追求姿勢……き、君は妹なんだからそんな怒った感じ出さなくていいんじゃないかな。
(性交できないのだから、ベッドの上に乗る必要はないはず)
ルブルムまで。
(いや、ずっとジャック様に見張られていたから……演技をしてほしいって言われてたし、ほら、クスフォード虹爵様からの密命を、話すわけにもいかないし)
(お兄ちゃん、今の性交できないって何?)
(理由まで言わなくとも、拒否は可能だと思う)
(フラマさんの機嫌を損ねたら情報をもらえないかなって思った……んだけど……確かに、二人をこんなに怒らせてまで取るべき行動じゃなかったね。ごめ)
(怒ってない)
また二人同時に「怒ってない」が来た。
(触りたいんだったら、私の触っていいのに。フラマほどじゃないけど、それなりにあるよ?)
(私も、リテルのは触ったけど、私のを触らせてなかった)
(ど、どういうこと? ルブルム。まさか、できないのって、ルブルムにしか反応しないような魔法とか?)
(ちょ、ちょっと待って、二人とも……レムにはまだ話してないこともあるし、先に基本的な情報共有したいんだけどさ)
その後、精神的には小一時間消費して、二人にある程度の説明を済ませた。
『テレパシー』を使っているから現実時間はほんのわずかな間なのだけど……なんかすげー疲れた。
レムに、そしてルブルムには情報共有として教えたこと。
俺の元の世界での名前、利照……姓の有主もこの際、教えておいた。
ある程度の詳細は省いたものの、俺が不能となる呪詛にかかっていること。
その治療魔法はカエルレウム師匠が現在作成中であること。
ルブルムとのやり取りに関しては、魔術師の先輩から「色仕掛けに耐える修行」として強いられたこと。
本当に詳細は省いたものの、ウォルラースがその先輩の仇であること。
ウォルラースとは懇意にしている凄腕の奴がいること。
その凄腕が魔法武器で先輩につけた呪詛の傷を、なんやかんやで部分的に解放し、今、ポーという心強い仲間になってもらっていること。
フラマさんの演技に付き合った経緯と、逮捕後の牢獄でのやりとり……フラマさんがポーを見ることが出来たこと。
もしかしたら、フラマさんが仇と言っていた奴が、ウォルラースの仲間の凄腕と同じ奴かもしれないこと。
紐パンについては、本当に純粋に元の世界への手がかりとしてのみの興味で、やましい気持ちは全くなかったこと。
そこまで伝えたとき、レムがまたぶっ込んできた。
(お兄ちゃんは、ケティとルブルムと、どっちが大事なの?)
ぐっ。
(……トシテルとしては、ルブルムだ。でも、この体はリテルのものだし、リテルはケティのことを、かけがえのない相手として大事にしている)
ごまかしてもしょうがないことだし、そのまんまを答える。
(じゃあ、もしもトシテルお兄ちゃんとしての体を手に入れるのにとっても時間がかかったら、その間はどうやって暮らすの? 二人とも結婚するの?)
(え?)
その可能性には、向き合っていなかった。
(魔術師ならば他の職業より稼げるでしょ? そしたら妻を二人くらいは養えるんじゃない?)
(……正直、そこまで先のこと、考えていなかった……というのが本音でした)
この世界、いわゆる冒険者みたいな便利職業はないようで……ってあたりで止まってた。
自分がまだ見習いだってこともあったし。
戦闘が好きで得意ならば傭兵という手もあるが、戦争がある場所を渡り歩くか、どこかの貴族や金持ちの専属になるか、何にせよ自由はあまりない。
魔獣討伐ってのもそれだけで生計が成り立つほどの出現率と引取価格というわけでもないようで、実際には戦争や護衛にありつけない傭兵がつなぎバイト感覚でこなしている状態らしい。
街には短期仕事の斡旋屋の類は居るようだけど、定期的に需要が発生する仕事は大抵専門職として確立しているし、マンガや小説で見るような冒険者ギルドと依頼掲示板みたいなノリは全くなかった。
ちなみに、冒険者という職がないから冒険者等級なんぞもなくて、その代わりに実績紋がある、という感じだ。
魔術師が就く仕事としては、魔術師組合の職員か貴族の配下……カエルレウム師匠が「徘徊」と言っていた雇われ職……普段は組合や貴族の護衛や、施設の魔法的な道具のメンテナンス、時として魔獣討伐に駆り出されるあたりは傭兵と変わらない仕事。
実力があると認められた場合のみ、カエルレウム師匠のように「居付き」できる場所を与えられ、地域を護る仕事にも就ける。
あとは、カエルレウム師匠が全く興味なくて話してもくれなかった部類……他の職業に就いて、そこで魔法を活用するというもの……もっとも、魔法の使用には寿命の消費という大前提がつきまとうから、魔法をつかいまくる状況は長続きせず、結局はその職業の技術を高めることが重要になってゆくという。
リテルは次男なので、家業の農夫はビンスン兄ちゃんが継ぐ……というか、ビンスン兄ちゃんが結婚したら恐らく俺と兄ちゃんの部屋が夫婦の部屋になるだろうから、リテルは家を出ることを考えなくちゃいけなくなる。
猟師としての腕はマクミラ師匠には敵わないし、だいいちストウ村に許可される狩猟数を考えると、二人目の猟師で生計を立てるのは難しい。
となると、テニール兄貴みたいに門番……をしつつ、狩猟もちょっと手伝って、それらがない場合は、ビンスン兄ちゃんの農業を手伝って……うわぁ。
その稼ぎだと妻二人なんて無理だこれ。
もしもリテルがケティと結婚する場合は、ケティが鍛冶屋を継いで、リテルも鍛冶屋見習いになって、二人で鍛冶屋として……という可能性はリテル自身も考えていたようだけど……その選択だと、ルブルムがそばには居られなさげだよな。
(まだ見習いだからって、先のことは考えてなかったよ)
冒険者として生計が成り立つ異世界って羨ましい……というか、実は王国の偉い方のお誘いって実はとんでもなく魅力的な話だったんじゃないのか、と、いまさらだけど。
(それでさ、ドマースのことなんだけど)
俺は、水汲み場の奥の森で起きた本当のことを、二人に話した。
マドハトが使った魔法については、ゴブリン魔法の『取り替え子』と同じ魔法とだけ……そこだけは偽って、それ以外は全て。
(だからかぁ。お兄ちゃんとエクシさんの距離感、なんか変わったから)
(私はトシテルが断ったのは正しいと思う。それに、その事実を報告したら、クスフォード虹爵様に取り立ててもらえないだろうか)
(ダメダメ、ルブルム。もしそれを伝えたら、秘密という約束を破る人だって判断されちゃう。それに、いくら断ったと報告しても実は裏でつながってるんじゃないかって疑われかねないから)
レムの言うことはもっともだ。
(ルブルム、俺もレムの意見に同意する)
(なるほど。わかった……人の判断というのは面白いな。自分とは異なる思考をする人への考慮が私には足りないと気付けた。レム、ありがとう)
(いいの。私、ルブルムも好きだから。こうして……)
その一瞬に、レムの心が伝わった。
俺とルブルムとレムが三人で暮らす家。
今みたいに三人で川の字になってベッドに眠る、そんなシーンが。
(お兄ちゃんがトシテルの体を手に入れたら、ケティはリテルと暮らすだろうから、私も一緒に暮らしてもいいでしょ? ちゃんと働くよ?)
え、ちょっと待って。
レムの気持ちは嬉しいけど……レムから伝わってきたイメージでは、掛け布団の下の俺たち三人が裸っぽいんだけど。
(お、お兄ちゃんと妹では)
(私の村では、世代ひとくくりで同じ名前っての前に話したでしょ? 兄弟姉妹みたいに育つけど、その中で結婚すること多いんだよ。だから大丈夫)
大丈夫って……せっかく妹として自分の中に刷り込んでいたのに。
(結婚か……私がそれを経験できるだなんて、考えもしなかった)
(もったいない! ルブルムは魅力的だし、お兄ちゃんがこんなに大事に想っているのに!)
(と、とりあえずはだな、今はラビツに会うのが先決で……そこから先の話は、まだまだだ。この一件が終わるまでは、今ある身近なことへの警戒に意識を使いたいんだ)
なんかこういう幸せを夢想するのは死にフラグっぽくて嫌だし。
(あ、そうか。それでお兄ちゃんやルブルムやメリアンはドマースの食材に手をつけなかったの?)
レムに言われるまで気付かなかった。
ドマースが口封じとか、ヘイヤの敵討ちとか考えている可能性を。
あの肉が毒入りかもしれないし、魔法で何か加工している恐れだってあったんだ。
自分のファースト殺人にばかり思考を消費して、それ以外の思考が完全におろそかになっていた。
(……ごめん。俺、自分が人を殺したことにばかり意識を取られて、全然気が回ってなかった)
(私は、メリアンがああ言ってくれたから言いやすかった。自分一人ではあの言い訳は思いつかなかった)
さすがルブルム。さすがメリアン。
それに比べて俺は……本当にただ、ヘイヤが兎種だったってだけだから。
ディナ先輩の忠告を思い出す。
もしもドマースに悪意があったなら……そういう可能性の思考を、俺は手放してはならないんだ。
(ね、お兄ちゃん。寝ている間に見回りしてくれる魔法みたいなの、ないの?)
(そうだな……そういう魔法、創ってもいいな)
あ。
そのものってわけじゃないけど、ディナ先輩からゴーレムを作るための道具をもらっていたのを思い出した。
確か……起動と、一日維持するのに一ディエスずつ。それとは別途魔法を封じる度に、その魔法コストがかかるってやつ。
条件付き発動も可能だったんだよな。
後で見張りの時、ちょっと試してみよう。
その後、ルブルムとリムとは、魔法についての話を少しだけしてからお開きになった。
メリアンに起こされて目を覚ます。
疲れが溜まっていたせいか、しっかり寝てしまっていたようだ。
ドマースを警戒して起きていようと思った矢先に……昼間、メリアンに言われたっけ……無理して起き過ぎだと、自分の状態を管理するのも大事なことだと。
今はまだ、こういう失敗が仲間や自身の死に結びついていないから救われているけれど……。
悩むよりも前にやらなければならないことはたくさんある。
かけがえのない仲間を守るために……俺、いつの間にかこの世界にかけがえのない人たち、できてるじゃないか。
気を取り直して、見張りを頑張ろう。
そして眠気防止に、ゴーレムを試してみよう。
まず最初に、エクシに『警報通知』を教えてもらうことにする。
偵察兵が察知した異変を隊長へ送るための連絡魔法……と聞いていたから。
するとエクシが貸してくれたのは、紫魔石がはめられた革製の腕用ベルト……そうか。送信側も魔法品だったのか。
紫魔石に触れ、中の魔法を確認する。
『警報通知』……事前に設定してある魔法品へ情報を送る魔法。
その情報というのは……なるほど。『魔力感知』で感知した周囲のイメージを、元の世界のレーダー画面みたいな一枚の画像イメージへと転写して……ほー。それを送るのか。
紫魔石付きベルトをエクシに返してから、自分の持ち場へと移動する。
まずはディナ先輩からもらった紅魔石に触れて起動する。
そしてすぐに、ロービンからもらった卵石に巻きつけて……しっかり留める。
おお!
来た来た来た!
『遠話』や『テレパシー』のような、魔法的な接続感!
目を閉じてゴーレム側へ意識をスライドさせてみる……当然何も見えない……けど、『魔力感知』をさせてみると……おおおおおっ!
すげー!
卵石ゴーレムを起動したまま俺がゴーレムから遠ざかってみると……すごい。俺の寿命の渦が離れていってる!
ゴーレムを動かしたり、ゴーレムを介して情報を得ようとしたいならば、それなりの手足なり耳目なりがついたモノをゴーレムにしなきゃいけないって教わった。
でも、背負い袋にしまったままにするなら動く手足は必要ないし、五感に関係ない『魔力感知』なら、目や耳がついていなくとも周囲の情報を把握できる……という仮定は、ぶっつけ本番で成功したわけだ。
早速、『警報通知』と『目覚まし』の要素をうまく組み合わせて……『ゴーレム警報』という魔術を創ってみる。
ゴーレムの『魔力感知』……その密度を高めた範囲に、二ディエス以上の魔法代償集中を感じたら、その時点のレーダー的な画像と共にアラームを俺に対して送信する。
この二ディエスは、一ディエスとそれを隠そうとする『魔法偽装』も対象とする。
実際に一ディエス分の魔法代償と『魔法偽装』を一ディエス分を集中してみて、ゴーレムから感知できるかを試してみる。
『魔力感知』の密度を変え、その中に浮かび上がる空虚なスポット……うんうん。いけそうだ。
微調整を繰り返しながら色々と試し、実用的な『ゴーレム警報バージョン十七』が完成したのは見張り時間がもう終わる頃だった。
警報発動するか、効果時間が終了するまで魔法は継続。効果時間は一から十(元の世界では十二)までの数を決め、その数分のホーラ経過後、というドマースの魔法を参考にした。
見張り、次の番はマドハトとロッキンさんか。
早速見せてもらおうか! 俺のゴーレムの性能とやらを!
● 主な登場者
・有主 利照/リテル
利照として日本で生き、十五歳の誕生日に熱が出て意識を失うまでの記憶を、同様に十五歳の誕生日に熱を出して寝込んでいたリテルとして取り戻す。ただ、この世界は十二進数なのでリテルの年齢は十七歳ということになる。
リテルの記憶は意識を集中させれば思い出すことができる。利照はこれを「記憶の端末」と呼んでいる。
ケティとの初体験チャンスに戸惑っているときに、頭痛と共に不能となった。不能は魔女の呪詛による。
その呪詛を作ったカエルレウムに弟子入りした。魔術特異症。猿種。
レムールの「ポー」と契約。伸ばしたポーの中においても、自分の体の一部のように魔法代償を集中したり魔法を使えることがわかった。
現在は、呪詛持ちのラビツ一行を追跡している。
アイシスでチェッシャーに告白されたり、死刑を宣告されたり、フラマからラビツ情報を聞いたり。
その後、エクシに殺されかけたり、初めての殺人を経験したり、ゴーレムを起動したり。
・カエルレウム師匠
寄らずの森に二百年ほど住んでいる、青い長髪の魔女。猿種。
肉体の成長を止めているため、見た目は若い美人。家では無防備な格好をしている。
寄らずの森のゴブリンが増えすぎないよう、繁殖を制限する呪詛をかけた張本人。
ディナ先輩、ルブルム、リテルの魔法の師匠。ストウ村の住人からは単に「魔女様」と呼ばれることも。
自分の興味のないことに対しては、例え国王の誘いであっても断る。
・ルブルム
寄らずの森の魔女カエルレウムの弟子。赤髪の美少女。リテルと同い年くらい。猿種のホムンクルス。
かつて好奇心がゆえにアルブムを泣かせてしまったことを、気にしている。
カエルレウムの弟子を、リテルのことも含め「家族」だと考えている。
質問好きで、知的好奇心旺盛。驚くほど無防備。
ケティがリテルとキスしたり痴話喧嘩したりするのを見て涙を流した理由に気付き、それでまた自分を責めていた。
いつの間にかレムと仲良くなっている様子。
・マドハト
赤ん坊のときに取り換え子の被害に遭い、ゴブリン魔術師として育った。犬種の先祖返り。コーギー顔。
今は本来の体を取り戻しているが、その体はあんまり丈夫ではない。
ゴブリンの時に瀕死状態だった自分を助けてくれたリテルに懐き、やたら顔を舐めたがる。
リテルにくっついてきたおかげでちゃっかりカエルレウムの魔法講義を一緒に受けている。
フォーリーの街中で魔法を使ってしまい、三年分の魔法代償徴収刑を受けた。
勇敢なのか無謀なのかわからないときがある。いつも明るい。
クッサンドラを救うためにエクシとクッサンドラの中身を『取り替え子』で入れ替えた。
・ディナ先輩
フォーリーに住むカエルレウムの弟子にしてルブルムの先輩。
男全般に対する嫌悪が凄まじいが、リテルのことは弟弟子と認めてくれた。
アールヴと猿種のハーフ。壮絶な過去を持つ。
フォーリー以北への旅について、大量の忠告をしてくれた。
・メリアン
ディナ先輩が手配した護衛。
リテルたちを鍛える依頼も同時に受けている。
ものすごい筋肉と、角と副乳を持つ牛種の半返りの頼もしい傭兵。
円盾と小剣を二つずつ持ち、手にはスパイク付きのプレートナックルを装備。
謎の襲撃犯を撃退し、リテル達と合流。
騎馬戦も上手く、『戦技』や『気配感知』を使う。どうやらラビツの知り合いより近い仲である様子。
・ラビツ
ゴブリン魔術師によって変異してしまったカエルレウムの呪詛をストウ村の人々に伝染させた。
兎種ハクトッのラビツをリーダーに、猿種マンッが二人と先祖返りの猫種バステトッが一人の四人組。傭兵集団。
ラビツは、ケティの唇をリテルのファーストキスよりも前に奪った。おっぱい大好き。
北の国境付近を目指している。本人たちは呪詛にかかっていることに気付いていない。
リテルたちより二日早くアイシスを出発した。ギルフォドに向かっているらしい。
・ウォルラース
かつてディナ先輩とその母を絶望のどん底へ叩き落とした張本人。
名無し森砦を守る兵士たちと手を組み、スノドロッフの子どもたちを狙っていたが、ダイク達を見捨てて独り逃げた。
クスフォード虹爵と国王との間で、カウダ盗賊団の首領とされ逆賊認定された。
本来は身を守るための魔法品を、相手の無力化に用いたりなど、魔法品を使いこなす。
・エクシ
ビンスン兄ちゃんと同い年で、リテルが小さな頃は、ビンスンやケティと一緒に遊んでくれた。
村一番の絶倫ハグリーズの次男で、今はフォーリーで領兵をやっている筋肉自慢。
ちょいちょい差別発言や嫌味を吐き、マウントを取ってくる面倒な人だったが、それは父ハグリーズからの虐待に端を発していた。
彼を唯一守ってくれていた姉キッチが隣村へと嫁いだせいで、闇を深くした。
ルブルム一行の護衛として同行していたが、ドマースから交渉を持ちかけられたとき、自分が認められるチャンスと喜んだあとで、交渉希望相手がリテルだったと知り、希望を打ち砕かれる。
そしてドマースが用意した交渉の場を利用して、リテルを脅すつもりだったが、何の因果か殺し合いへと発展してしまう。
マドハトの『取り替え子』により、自ら殺しかけたクッサンドラと体を交換された直後、その傷がもとで死亡した。
・クッサンドラ
病弱だったマドハト(中身はゴブリン)の世話を焼いていたゴド村出身の犬種の先祖返り。ポメラニアン顔。
フォーリーで領兵、それも偵察兵をやっている。
ルブルム一行の護衛として同行。
ドマースがリテルと交渉しようとした用意した場で、壊れたエクシからマドハトをかばって殺されかけるが、マドハトの『取り替え子』により今は、エクシの肉体の中に居る。
エクシの闇の理由を知り、エクシとして罪を償うことを決意した。
・ロービン
一見して凛々しい青年で、筋力がある。ホブゴブリン。
獣種に似ているけれど、獣種よりももっと力強い異世界由来の種族。
人の言うことを信じて疑わないタイプっぽい。スノドロッフの人々と仲が良い。
リテルに魔法を教えてくれた他、魔術師が喜ぶ卵石というものをくれた。
・ビンスン兄ちゃん
リテルの兄で、部屋も一緒。
結婚したい相手がいる様子。
・マクミラ師匠
リテルに紳士たれと教える狩人の師匠。猿種。
狩りができない日は門番をしていたりも。
・テニール兄貴
村の門番。傭兵経験があり、リテルにとって武器としての斧の師匠。
御者もできる。
・レム
バータフラ・レムペー。クラースト村のバータフラ世代の五番目の子。
魔法に長けた爬虫種の少女。
リテルより若いが胸はかなり育っている様子。髪型はツインテール。
その母親は利照同様に異世界から来た。
現在は、リテルのことをお兄ちゃんと呼び、魔法の使い方を習ったりもしている。
ルブルム一行の護衛として同行。最近、ルブルムと仲が良さげ。
お兄ちゃんとは結婚できるとか言い出した。
・ロッキン・フライ
名無し森砦の兵士。
フライ濁爵の三男。
ウォルラースとダイクの計画を知らされていなかった。正義の心を持っている。
ルブルム一行の護衛として同行。最近、影が薄い。
・フラマ
アイシスの宵闇通りの高級娼婦。おっぱいで有名。
鳥種の半返りのようだが、嘴はない。足は水鳥のよう。
ジャック・ボートーに言い寄られている。しばらくはリテルに買われている状態。
魔法を使え、他の人には見えないはずのポーの姿が見える。
『虫の牙』を持つ者が父の仇だと言う。
・ジャック・ボートー
フリルのついたシャツを着るアイシスの治安部隊の隊長。太めの河馬種。
アイシスを含むボートー領を支配する紅爵と同じ名前。
フラマに入れ込んでいる。根は真面目だが、NTR性癖の気配。
・ドマース
森の中に小さなテーブルと椅子を置き、テーブルに突っ伏して寝ていた鼠種の先祖返り。
睡眠することが効果に関係するオリジナル魔法を使う。テーブルも魔法の一部だった。
王都キャンロルのさる偉いお方から「スノドロッフの一件に絡んだ者たちの一人に声をかけたい」との密命を受け、リテルと交渉しようとエクシへ接触した。
結果的にリテルにはフラれたが、交渉自体は秘密にしてほしいと口止め料までくれた。
・ヘイヤ
ドマースと共に、リテルとの交渉の場に居た兎種の先祖返り。
攻撃してきたエクシを警戒していたと思われるが、その行動を襲撃と勘違いしたリテルの反撃により死亡……した可能性があるが、真実はもう確かめようがない。
・レムルース
地界に存在する種族。肉体を持たず、こちらの世界では『契約』されていないと長くは留まれない。
『虫の牙』の呪詛のベースにされていた他、スノドロッフ村の人達が赤目を隠すために『契約』している。
レムルースは複数形で、単体はレムールと呼ぶ。
ディナ先輩の体からリテルの腕へと移ったレムールは、リテルと契約し「ポー」という名を与えられた。
● この世界の単位
・ディエス
魔法を使うために消費する魔法代償(寿命)の最小単位。
魔術師が集中する一ディエスは一日分の寿命に相当するが、魔法代償を集中する訓練を積まない素人は一ディエス分を集中するのに何年分もの寿命を費やしてしまう恐れがある。
・ホーラ
一日を二十四に区切った時間の単位(十二進数的には「二十に区切って」いる)。
元の世界のほぼ一時間に相当する。
・ディヴ
一時間の十二分の一となる時間の単位(十二進数的には「十に区切って」いる)。
元の世界のほぼ五分に相当する。
・クビトゥム
長さの単位。
本文中に説明はなかったが、元の世界における五十センチくらいに相当する。
トシテルが元の世界の長さに脳内変換しないでもいいくらい、リテルが日常的に使っていた単位。
・アブス
長さの単位。
元の世界における三メートルくらいに相当する。
・プロクル
長さの単位
一プロクル=百アブス。
この世界は十二進数のため、実際は(3m×12×12=)432mほど。
・通貨
銅貨、銀貨、金貨、大金貨。
十銅貨(十二進数なので十二枚)=一銀貨
十銀貨(十二進数なので十二枚)=一金貨
十金貨(十二進数なので十二枚)=一大金貨
・暦
一年は、十ヶ月(十二進数なので十二ヶ月)+「神の日々」という五~六日間。
それぞれの月は、母の月、子の月、大地の月、風の月、水の月、海の月、光の月、空の月、星の月、火の月、父の月、闇の月と呼ばれる。
各月は、月の始めの十日(十二進数なので十二日)間は「月昼」週。次の六日間は「月黄昏」週、最後の十日(十二進数なので十二日)間が「月夜」週。トータルは十二進数で三十日間。
毎月の、月黄昏週の一日が満月で、月夜週の九日が新月。月は二つあるが、大きい月の周期が基本で、小さい月の周期は二日ほど遅れている。夜が明けるまでは日付は変わらない。
第七十二話終了時点では星の月夜週の六日の深夜。




