表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/94

#71 追求

 エクシ(クッサンドラ)はドマースに対し、エクシが遊ぶ金欲しさに魔が差した的な言い訳をした。

 実際、エクシはアイシスで娼婦を買うためにフォーリーで自分の寿命を売っていたようだ。

 エクシは領兵の休暇日にアイシスまで行く商人や定期便の護衛を引き受けていた。

 それはアイシスまでの移動と小遣いとを兼ねていたが、それがあったとしても領兵の給料ではそう頻繁に隣領までは通えない。

 ドマース側もエクシのそういう状況を知っていたから最初に声をかけたとあって、その言い訳は通用してしまう。


 エクシがドマースを刺したことについては、結果的にドマースは助かったということで、ニュナムの町でドマースの持つ魔石がいっぱいになるだけの魔法代償をエクシの寿命で支払うことで手打ちになった。


 それにしても、全ての罪を一人で被ってくれたのは、クッサンドラの心の広さよ。

 エクシの記憶を共有したから、俺が『魔法封じの首輪』の効果を回避したことには気付いただろうし、マドハトの使った魔法がちょと尋常じゃないのも身を持って知っただろうに、それについては一切触れないでいてくれた。

 ゴド村での先祖返りはクッサンドラとマドハトだけだったとは言え、仲間意識とかでは片付けられないレベルだろう。


 ドマースが起きる前、エクシ(クッサンドラ)が決めた言い訳を俺たちに告げたとき、俺は反対した。

 自分の責任を押し付ける形にしたくはなかったし。

 しかしエクシ(クッサンドラ)は、エクシがしたことの原因の一端は自分にもあるからと、この作戦を固持した。


 エクシがアイシスで半返りの多い宵闇通りに通っていたのも、エクシを守ってくれていた姉キッチが嫁いだアーレ……クッサンドラの兄が半返りだったかららしい。

 エクシ(クッサンドラ)の説明を聞く限り、半返りを強引に抱くことで、自分が奪われた心の支えを補おうとしていたっぽい感じだった。

 フォーリーでは半返りや先祖返り嫌いで通していたから、どうしても知り合いの居ない場所で買う必要があったようだ。


 そんなエクシだったから、同じ職場で働いておきながら、クッサンドラと義理の兄弟であることはずっと秘密にしていたとのこと。

 それどころか、無茶な要求もけっこうあったらしい。

 クッサンドラはそんなエクシの言動の全てを受け止め、受け入れた。

 そうすることで、自分の兄がエクシの姉を奪ったことへの罪滅ぼしになればと考えていた、と。


「結果的には、ただ許してばかりだったおいらの行動は、エクシの心の醜さを増やしこそすれ、救うことは出来なかった。だから今回の事件はエクシ一人の罪じゃないんだ。おいらたち家族の罪だから……だから、おいらにちゃんと償わせてほしい」


 そんな風に言われて、突っぱねることは出来なかった。


 エクシの胸の内を知った今では、あのマウント取りたがりな所や、ちょっと腹立たしい言動の数々にも納得はできる。

 でもそれは逆に言えば、内面を知るまでは納得できないでいた自分もいたわけで。

 この旅の中で、自分と紳士との隔たりを事あるごとに感じさせられる。


 ……それに。

 死んだのは、エクシだけじゃない。

 エクシの死因はある意味自業自得だったけど、ヘイヤは違う。

 ヘイヤの行動の真意が分からない以上、原因について論じてもたらればの話になってしまうが、事実として殺したのが俺だということは変わらない。


 感傷に浸る間もなく、改めてドマースに交渉を求められる……それは俺に対し「王都のさる偉い方」の部下にならないかという誘い。

 俺はそれを断った。

 自分はまだ見習いであり、学ぶべきこともまだまだたくさんある。

 そして、そのような話を、先輩であるルブルムや師匠である寄らずの森の魔女様に内緒になどできるわけもないし、したくもないと伝えた。

 もちろん、その方のお名前も聞かないでおいた。

 寄らずの森の魔女、という名を出した途端、ドマースの表情に完全な諦めが浮かんだ。

 カエルレウム師匠の名は、王国内の貴族で知らない者は居ないという……自分の興味のないことには、例え国王の誘いであっても乗らないと……さすがカエルレウム師匠。


 ドマース側としては、交渉の成否に関わらず今回の交渉自体をクスフォード虹爵(イーリス・クラティア)にだけは知られたくないらしく、大金貨(プリームム)を一人一枚、手渡された。

 普段使う銅貨(エクス)の上が銀貨(スアー)、その上が金貨(ミールム)、さらにその上だから文字通り大金だよ。

 しかも亡くなったクッサンドラの分まで。


 その後、四人で話し合った結果、筋書きはこうなった。

 ドマースとヘイヤはアイシスからニュナムへ向かう途中、水汲み場の奥で魔物に襲われた。

 それに気付いたクッサンドラが駆けつけたが、ヘイヤとクッサンドラは戦死、さらに駆けつけたエクシ、リテル、マドハトの尽力により、ドマースの命は助かった。

 魔物は……この辺は小さな湖も少なくないので、エッヘ・ウーシュカという水に棲む馬型の魔獣を犯人ということにした。

 エッヘ・ウーシュカは湖へ逃げ帰ったが、こちらの被害が大きかったので深追いはしていない、と。


 ルブルムが学んでいた知識の中に名前があったその魔物は、元々は地界(クリープタ)に居る生物だが、こちらの世界(ホルトゥス)に居着くことの多い種族の一つ。

 美しい馬の姿で現れ、獣種を乗せようと跪く。しかしその肌は非常に粘性が強く、一度触れたら剥がれない。

 しかも胴を伸ばすことができ、一度に何人も攫うことができる。

 被害者を乗せたら湖へと飛び込み、肝臓以外は全て食べ尽くすという。


 クッサンドラ(エクシ)とヘイヤの死体については、胸元の実績紋の部分だけ切り取り、あとは丁寧に埋葬……している途中で、ルブルムとメリアンが様子を見に来た。

 水汲みにしては帰りが遅いと、心配になって様子を見にきたらしい。


 ドマースの説明を聞き、二人は一応は納得してくれたようだった。

 そして協議の結果、ニュナムまではとドマースを同行させることになった。


 木の陰にあった二人の荷物と、折りたたみができる木製の椅子を運ぶ。

 椅子は二つあったが、片方はバラして穴を掘るのと墓標とに使用した。

 あのあからさまに怪しいテーブルについては、ドマースの魔術『憂鬱な食卓』の中で作られる幻影であるらしく、運ばないで済んだのは幸いだった。




 会話の弾まない夕飯が済んだ後、鍋と食器を水汲み場へと洗いに行く。

 マドハトの代わりにルブルムとレムが付いてきてくれた。

 二人の気遣いに感謝を伝えたものの、それ以降の会話については……自分が人を殺した事実と、内緒にしなきゃいけないことを抱えていることとに思考の大半を奪われ、ちゃんとした受け答えが出来なかった。

 ルブルムにはいずれ全て伝えるつもりだけど、まだ話せていないことがあるレムに対しては、どこまで話してよいものか。


 なんだろうな。

 話すか話さないかでこんなにも悩まなくちゃいけないってのは。


 その後、出発して夜通し馬車を走らせる。

 御者の技術を磨きたいからと順番を多めに譲ってもらう。

 余計なことを考えずに済んでありがたかった。


 日が昇り、沈む。

 普通に走れば馬車で五日の行程だが、ずっと急ぎ気味だったこともあり、三個目の共同夜営地には二日目の夜遅くに到着した。


「今夜はここでしっかり休もうと思う」


 夕飯の準備をする前に、メリアンがそう言い出した。


「特にリテル。ちゃんと寝ろ。無理して起き過ぎだ。クッサンドラが居ない今は、ルブルムとリテルが交代で索敵を担当しているだろう。自分の状態を管理するのも大事なことだ」


「すみません」


「謝ることじゃない」


 また「すみません」を言おうとして言葉を飲み込む。

 元の世界でもこの世界(ホルトゥス)でも、日本人は謝り過ぎなようだ。


「あの、皆さん! 今夜の夕食には私の食材を提供しますよ!」


 ドマースが長い布に巻かれた塊肉を出してくる。

 彼の説明によると、肉は魔法で眠らせたから新鮮なままだという。

 そういえば、ちょくちょく魔法をかけていた。

 興味本位で尋ねたら教えてくれた『腐臭の居眠り』という魔法を。


 死んでいる肉ひとかたまりを、眠らせることにより鮮度を保つ魔法。

 一回かけると数ホーラから一晩くらいは鮮度が保たれる。

 魔法の効果時間中は、肉に触れると寝息のような振動を感じる。

 連続してかけると眠りが浅くなるらしく、魔法が切れてから一ホーラぐらいは間を開けた方がいいとのこと。


 ベイグルさんから教えてもらった『遠回りの掟』もそうだけど、この世界(ホルトゥス)では時間や現象について「遠回りさせる」とか「眠らせる」とか、まるで人であるかのような感覚で魔法を作る。

 初めは戸惑ったけど、単なる擬人化なのだなと考えられたら一気に受け入れられるようになった。

 魔法の基本は、考え方、なんだな。


 もう一つ教えてもらったのが『目覚まし』という魔法。

 魔法をかけるとき、一から十までの任意の数字を決めてかけると、その数と同じホーラが経過した後、耳元で自分にしか聞こえない音が響くというもの。

 一ホーラはほぼ一時間だし、まんまタイマーだ。

 この魔術を作る際、感覚でではなく王都の水時計で計測した一ホーラを基準にしたので、けっこう正確とのこと。

 こちらの世界の十は、十二進数だから魔法を使うとき、そこだけは気をつけないとな。


「何の肉だい?」


「ウサギです」


 ヤバい。

 ヘイヤを思い出す。

 というか、先祖返り……頭部はほぼまんまウサギのヘイヤと一緒に行動していたドマースは、平気なのか?

 遺体の埋葬を一緒にしたのだって昨日の夕方のことだろ?


「あたしはいらないよ。身内に兎種(ハクトッ)が居てね」


「私も……妹が兎種(ハクトッ)だから」


 メリアンとルブルムが辞退する。

 様々な獣種が居るこの世界(ホルトゥス)では、肉に関しては、基本的に自分の先祖の動物は食べないが、身内がってパターンもあるのか。

 メリアン曰く、人によっては、肉については自分の先祖の動物しかいただかない人ってのも少ないが居るらしい。

 あと、自分の先祖の動物を周囲が食べることについては、貴族でもなけりゃ文句言う奴はまず居ないとのこと。


 俺の場合、そういった肉食事情とは全く関係なく、目を閉じればあの生々しいヘイヤの死体が浮かんできて……ダメだった。


「申し訳ないです……俺も……今はまだ肉は食べられそうにないです」


 なのでウサギ肉は鍋には入れず、切り分けて枝に刺し、鍋をかけた火の回りで炙り、俺たち三人以外で食べることになった。

 鍋の具は人参とジャガイモ。

 いつもは物足りなさを感じる薄い塩味が、この優しい味が、今夜はやけにありがたい。




 食後、片付けも済ませて馬車の寝藁の上に寝転がる。

 今夜の見張りは、最初がメリアンとドマース、次が俺とエクシ(クッサンドラ)、次がマドハトとロッキンさん、最後がルブルムとレム。

 そのルブルムとレムが俺の両隣に陣取った。


「エッヘ・ウーシュカとの戦い、どんなだったか教えて」


「私も見たい」


 二人同時にか……となるとレムにも取引のこと、話すことになるか。

 レムのことはもう信用はしているから話してもいいかなとは思うけど……えーと、けっこう話してないことあったよな。


 まず、異世界から来たこと。これは二人とも話してある。

 呪詛のことはルブルムだけ。

 チェッシャーのお姉さんの彼氏、クラーリンさんから魔法を習ったことについては伝えたけど、チェッシャーに告白されたことはどちらにも言ってない。

 フラマさんとのやり取りも同様に言ってない……というか何を伝えられるんだよ、あんな破廉恥なこと。


 ちょとだけ整理して、それから『テレパシー』を二人につなげた。


(ルブルム、レム、さっきあったことを話すから、最後までちゃんと聞いて欲しい)


 俺の初めての殺人が、もしかしたら勘違いの過剰防衛だったかもしれないことを。


(お兄ちゃん、その話は後でもいいから。フラマとのやりとり、いろいろ教えて)


(え?)


(私も知っておきたい)


 ルブルムまで……ちょ、ちょっと待ってよ。

 なんで急に。


(即答しないってことは何かあったんだと思うんだけど、ルブルムはどう思う?)


(レムの言う通りだと思う)


 え、ちょっと二人はなんでそんなに仲良くなっているの?


(本当に、やましいことはなかったよ。俺は下着も脱いでないし)


(フラマの方は、下着までは脱いだんだ?)


 レム、鋭い。


(いやいや、脱いでないって……)


 そう。この世界の下着代わりのシャツやズボンは脱いでいたけれど……ほら、あの紐パンは履いてたからさ!


(リテル、その見た姿を思い出して、そのまま送って)


 ルブルムまで。


(あ、そうそう。そのフラマさんがね、今まで見たことない下着を着けていたんだよ。それでさ、その下着の名前が、俺がもといた世界のと形も名前も一緒でさ! 下着の名前の響きまで一緒なんだ。あの下着を作った人、同じ世界の人じゃないかなって思うんだ。しかも出身国まで一緒の)


(見せて)


 俺の送っている思考を遮ってのこの「見せて」は二人同時だった。

 ……これはもう無理だ。

 覚悟を決めて、フラマさんの紐パン姿を思い出し、二人へと送る。

 その途端、二人の様々な感情が津波のように押し寄せてきた。


● 主な登場者


利照(トシテル)/リテル

 利照として日本で生き、十五歳の誕生日に熱が出て意識を失うまでの記憶を、同様に十五歳の誕生日に熱を出して寝込んでいたリテルとして取り戻す。ただ、この世界は十二進数なのでリテルの年齢は十七歳ということになる。

 リテルの記憶は意識を集中させれば思い出すことができる。利照はこれを「記憶の端末」と呼んでいる。

 ケティとの初体験チャンスに戸惑っているときに、頭痛と共に不能となった。不能は魔女の呪詛による。

 その呪詛を作ったカエルレウムに弟子入りした。魔術特異症。猿種(マンッ)

 レムールの「ポー」と契約。伸ばしたポーの中においても、自分の体の一部のように魔法代償を集中したり魔法を使えることがわかった。

 現在は、呪詛持ちのラビツ一行を追跡している。

 アイシスでチェッシャーに告白されたり、死刑を宣告されたり、フラマからラビツ情報を聞いたり。

 その後、エクシに殺されかけたり、初めての殺人を経験したり。


・カエルレウム師匠

 寄らずの森に二百年ほど住んでいる、青い長髪の魔女。猿種(マンッ)

 肉体の成長を止めているため、見た目は若い美人。家では無防備な格好をしている。

 寄らずの森のゴブリンが増えすぎないよう、繁殖を制限する呪詛をかけた張本人。

 ディナ先輩、ルブルム、リテルの魔法の師匠。ストウ村の住人からは単に「魔女様」と呼ばれることも。

 自分の興味のないことに対しては、例え国王の誘いであっても断る。


・ルブルム

 寄らずの森の魔女カエルレウムの弟子。赤髪の美少女。リテルと同い年くらい。猿種(マンッ)のホムンクルス。

 かつて好奇心がゆえにアルブムを泣かせてしまったことを、気にしている。

 カエルレウムの弟子を、リテルのことも含め「家族」だと考えている。

 質問好きで、知的好奇心旺盛。驚くほど無防備。

 ケティがリテルとキスしたり痴話喧嘩したりするのを見て涙を流した理由に気付き、それでまた自分を責めていた。

 いつの間にかレムと仲良くなっている様子。


・マドハト

 赤ん坊のときに取り換え子の被害に遭い、ゴブリン魔術師として育った。犬種(コボルトッ)の先祖返り。コーギー顔。

 今は本来の体を取り戻しているが、その体はあんまり丈夫ではない。

 ゴブリンの時に瀕死状態だった自分を助けてくれたリテルに懐き、やたら顔を舐めたがる。

 リテルにくっついてきたおかげでちゃっかりカエルレウムの魔法講義を一緒に受けている。

 フォーリーの街中で魔法を使ってしまい、三年分の魔法代償徴収刑を受けた。

 勇敢なのか無謀なのかわからないときがある。いつも明るい。

 クッサンドラを救うためにエクシとクッサンドラの中身を『取り替え子』で入れ替えた。


・ディナ先輩

 フォーリーに住むカエルレウムの弟子にしてルブルムの先輩。

 男全般に対する嫌悪が凄まじいが、リテルのことは弟弟子と認めてくれた。

 アールヴと猿種(マンッ)のハーフ。壮絶な過去を持つ。

 フォーリー以北への旅について、大量の忠告をしてくれた。


・メリアン

 ディナ先輩が手配した護衛。

 リテルたちを鍛える依頼も同時に受けている。

 ものすごい筋肉と、角と副乳を持つ牛種(モレクッ)の半返りの頼もしい傭兵。

 円盾と小剣(ごつい)を二つずつ持ち、手にはスパイク付きのプレートナックルを装備。

 謎の襲撃犯を撃退し、リテル達と合流。

 騎馬戦も上手く、『戦技』や『気配感知』を使う。どうやらラビツの知り合いより近い仲である様子。


・ラビツ

 ゴブリン魔術師によって変異してしまったカエルレウムの呪詛をストウ村の人々に伝染させた。

 兎種ハクトッのラビツをリーダーに、猿種マンッが二人と先祖返りの猫種バステトッが一人の四人組。傭兵集団。

 ラビツは、ケティの唇をリテルのファーストキスよりも前に奪った。おっぱい大好き。

 北の国境付近を目指している。本人たちは呪詛にかかっていることに気付いていない。

 リテルたちより二日早くアイシスを出発した。ギルフォドに向かっているらしい。


・エクシ

 ビンスン兄ちゃんと同い年で、リテルが小さな頃は、ビンスンやケティと一緒に遊んでくれた。

 村一番の絶倫ハグリーズの次男で、今はフォーリーで領兵をやっている筋肉自慢。

 ちょいちょい差別発言や嫌味を吐き、マウントを取ってくる面倒な人だったが、それは父ハグリーズからの虐待に端を発していた。

 彼を唯一守ってくれていた姉キッチが隣村へと嫁いだせいで、闇を深くした。

 ルブルム一行の護衛として同行していたが、ドマースから交渉を持ちかけられたとき、自分が認められるチャンスと喜んだあとで、交渉希望相手がリテルだったと知り、希望を打ち砕かれる。

 そしてドマースが用意した交渉の場を利用して、リテルを脅すつもりだったが、何の因果か殺し合いへと発展してしまう。

 マドハトの『取り替え子』により、自ら殺しかけたクッサンドラと体を交換された直後、その傷がもとで死亡した。


・クッサンドラ

 病弱だったマドハト(中身はゴブリン)の世話を焼いていたゴド村出身の犬種(アヌビスッ)の先祖返り。ポメラニアン顔。

 フォーリーで領兵、それも偵察兵をやっている。

 ルブルム一行の護衛として同行。

 ドマースがリテルと交渉しようとした用意した場で、壊れたエクシからマドハトをかばって殺されかけるが、マドハトの『取り替え子』により今は、エクシの肉体の中に居る。

 エクシの闇の理由を知り、エクシとして罪を償うことを決意した。


・ハグリーズ

 粉挽き小屋で働いている。村一番の絶倫と評判。

 外面はいい反面、そこでためたストレスをエクシで晴らしていた。


・キッチ

 エクシの姉。ハグリーズからエクシへのDVを止めてくれていた。

 誰にでも優しく愛されていた。リテルとリテルの兄ビンスンの初恋の人。

 結婚後は、ゴド村に住み、夫の弟であるクッサンドラのことも可愛がってくれた。


・アーレ

 マドハトの兄。キッチを嫁にした犬種(アヌビスッ)の半返り。


・レム

 バータフラ・レムペー。クラースト村のバータフラ世代の五番目の子。

 魔法に長けた爬虫種(セベクッ)の少女。

 リテルより若いが胸はかなり育っている様子。髪型はツインテール。

 その母親は利照同様に異世界イギリスから来た。

 現在は、リテルのことをお兄ちゃんと呼び、魔法の使い方を習ったりもしている。

 ルブルム一行の護衛として同行。最近、ルブルムと仲が良さげ。


・ロッキン・フライ

 名無し森砦の兵士。

 フライ濁爵(メイグマ・クラティア)の三男。

 ウォルラースとダイクの計画を知らされていなかった。正義の心を持っている。

 ルブルム一行の護衛として同行。最近、影が薄い。


・ドマース

 森の中に小さなテーブルと椅子を置き、テーブルに突っ伏して寝ていた鼠種(ラタトスクッ)の先祖返り。

 睡眠することが効果に関係するオリジナル魔法を使う。テーブルも魔法の一部だった。

 王都キャンロルのさる偉いお方から「スノドロッフの一件に絡んだ者たちの一人に声をかけたい」との密命を受け、リテルと交渉しようとエクシへ接触した。

 結果的にリテルにはフラれたが、交渉自体は秘密にしてほしいと口止め料までくれた。


・ヘイヤ

 ドマースと共に、リテルとの交渉の場に居た兎種(ハクトッ)の先祖返り。

 攻撃してきたエクシを警戒していたと思われるが、その行動を襲撃と勘違いしたリテルの反撃により死亡……した可能性があるが、真実はもう確かめようがない。


・レムルース

 地界(クリープタ)に存在する種族。肉体を持たず、こちらの世界では『契約』されていないと長くは留まれない。

 『虫の牙』の呪詛のベースにされていた他、スノドロッフ村の人達が赤目を隠すために『契約』している。

 レムルースは複数形で、単体はレムールと呼ぶ。

 ディナ先輩の体からリテルの腕へと移ったレムールは、リテルと契約し「ポー」という名を与えられた。


・エッヘ・ウーシュカ

 元々は地界(クリープタ)の種族だが、こちらの世界(ホルトゥス)に居着くことが多々ある。

 美しい馬の姿で現れ、獣種を乗せようと跪く。しかしその肌は非常に粘性が強く、一度触れたら剥がれない。

 しかも胴を伸ばすことができ、一度に何人も攫うことができる。

 被害者を乗せたら湖へと飛び込み、肝臓以外は全て食べ尽くすという。

 今回は実際に遭遇したわけではなく、事件の隠蔽に名前が使われた。



この世界(ホルトゥス)の単位


・ディエス

 魔法を使うために消費する魔法代償(寿命)の最小単位。

 魔術師が集中する一ディエスは一日分の寿命に相当するが、魔法代償を集中する訓練を積まない素人は一ディエス分を集中するのに何年分もの寿命を費やしてしまう恐れがある。


・ホーラ

 一日を二十四に区切った時間の単位(十二進数的には「二十に区切って」いる)。

 元の世界のほぼ一時間に相当する。


・ディヴ

 一時間(ホーラ)の十二分の一となる時間の単位(十二進数的には「十に区切って」いる)。

 元の世界のほぼ五分に相当する。


・クビトゥム

 長さの単位。

 本文中に説明はなかったが、元の世界における五十センチくらいに相当する。

 トシテルが元の世界の長さに脳内変換しないでもいいくらい、リテルが日常的に使っていた単位。


・アブス

 長さの単位。

 元の世界における三メートルくらいに相当する。


・プロクル

 長さの単位

 一プロクル=百アブス。

 この世界は十二進数のため、実際は(3m×12×12=)432mほど。


・通貨

 銅貨(エクス)銀貨(スアー)金貨(ミールム)大金貨(プリームム)

 十銅貨(エクス)(十二進数なので十二枚)=一銀貨(スアー)

 十銀貨(スアー)(十二進数なので十二枚)=一金貨(ミールム)

 十金貨(ミールム)(十二進数なので十二枚)=一大金貨(プリームム)


・暦

 一年は、十ヶ月(十二進数なので十二ヶ月)+「神の日々」という五~六日間。

 それぞれの月は、母の月、子の月、大地の月、風の月、水の月、海の月、光の月、空の月、星の月、火の月、父の月、闇の月と呼ばれる。

 各月は、月の始めの十日(十二進数なので十二日)間は「月昼」週。次の六日間は「月黄昏」週、最後の十日(十二進数なので十二日)間が「月夜」週。トータルは十二進数で三十日間。

 毎月の、月黄昏週の一日が満月で、月夜週の九日が新月。月は二つあるが、大きい月の周期が基本で、小さい月の周期は二日ほど遅れている。夜が明けるまでは日付は変わらない。

 第七十一話終了時点では星の月夜週の六日の夜。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ