#63 あんちゃんをあんちゃんと呼ばなくなった日
共同夜営地を出てからアイシスまでの道のりは平和だった。
アイシスを治めるボートー紅爵領の私兵による見回り隊とすれ違ったのみで、盗賊や魔獣とは出遭うこともなく。
おかげで随分と精神的な鍛錬が捗った。
ルブルムに教えてもらった『テレパシー』の対象を自分にする方法。
実際試してみると本当に、過去の自分の記憶をリアルに体感しているように思い出せた。
教えてもらった魔法や、自分が構成した魔法を何度も追体験することで、魔術師としての熟練度がかなり上がった気がする。
あとはここまでの道中での実戦や、メリアンにつけてもらった稽古、ストウ村で狩りをしていたときに弓を射たときの感覚とその結果を何度も思い出したりもした。
もちろん紳士を目指す身としては、心を乱されてしまうような記憶は積極的に思い出さないようにした……けれど。
考えないようにって思うと思い出しちゃうのだから……これ、呪詛が消えて不能が治ったら絶対にヤバいな。
そんな順調な旅が突然止まったのは、アイシスの城壁も遠くに見え始めた夕暮れ前。
……えっと。御者交代かな。
今やっているのがマドハトだから次は俺か。
御者席に移動しようとすると……馬車を止めたのは、エクシあんちゃん?
『魔力感知』には特に気になるものは引っかからないけど。
「日没まで休憩だな」
「休憩? 何か見つけたのかい?」
エクシあんちゃん同様に騎乗しているロッキンさんが、馬車の前方へと移動してくる。
「行きたいなら行ってもいいけどよ。そんときゃ払ってくれるんだよな?」
やけにもったいぶるなぁ。
「ああ、そうか。例の一日税か」
メリアンも御者席の横から顔を出す。
「アイシスの日替わり法ってのがあってな。通称、一日税。その日だけ有効な法律が毎日発表されるんだ。で、その法律はだいたい三銅貨分の費用がかかる内容でな、日没までにそれをやらないと逮捕される。日没までにアイシスに到着できなかった者はその法律の対象から外される。とはいえ、日が沈むと門が閉ざされるからな。ちょうど日没に門に到着するように着くのがいい……ってのは聞いたことあるよ」
なんだその冗談みたいな法律。
横暴な統治者ってのはどこにでも居るんだな。
ストウ村のあるクスフォード領がそんなとこじゃなくて本当に良かった。
ちょうど日没のタイミングでアイシスの街へと滑り込む。
最初に訪れるのは魔術師組合。
そこでルブルムの通行証を確認してもらい、クー・シーやスレイ・ベガの撃退報告を行った後、メリアン達は奥の小部屋へと入ってゆく。
俺とルブルムとマドハトがそれをぼんやり見守っていると、レムが駆けてきて、俺の手を引っ張った。
「リテルお兄ちゃん、実績紋、更新しないの?」
「実績紋?」
レムが実績紋の説明をしてくれた。
魔獣撃退や護衛をはじめとした任務などの業績報告を行った場合、魔術師組合にて実績紋という魔術的な入墨を入れてもらえるらしい。
メリアンのような傭兵、兵士のような防衛職に就いている場合、その実績紋の内容によって受けられる仕事のグレードが上がったり、昇進に影響したりってのがあるようだ。
ということは魔術師組合が冒険ギルドを兼ねていて、その実績紋が冒険者ランクの代わりなのかなと早合点しかけたが、どうやらそれは違うようだ。
そもそもこの世界における「冒険者」とは職業でも何でもなく、文字通り「冒険をする人」でしかない。
どちらかというと「乱暴者」とか「物好き」とかと同程度の単なる私的な肩書きで、決して公称ではないそうだ。
組合というものも、元の世界におけるファンタジー世界のギルドとは全く異なり、むしろ歴史の授業で習ったような徒弟制度の組合にかなり近い。
特別な技術を伝える職業は、親方なり師匠なりに認められなければその世界に足を踏み入れることはできないし、そうやって弟子入りできても親方が認めなければ独立はできないし、独立した場合は組合に属さなければならないし。
組合は免状の発行と、税金の徴収代行、困ったときの互助システムなどがあって……そこまで説明を受けたところでメリアンが出てきた。
レムが実績紋の更新へと行き、続きをメリアンが説明してくれる。
「ようは身分証明みたいなものさ。どこでどんな仕事を成功させたか、何を撃退したか、そういう積み重ねが蓄積される。よその街に行っても実績紋を魔術師組合に見せれば、そういった記録をちゃんと引き出せるのさ」
この世界、街の中や多くの目撃者が居る中での殺人は当然重罪で、かなり大量の魔法代償徴収刑になるが、正当防衛ならば返り討ちも許容されている。
しかし、例えば目撃者の居ない街の外における正当防衛を主張しても、実績紋次第では、襲った側と判定されることもあるという。
今回のようにクー・シーの毛皮や、スレイ・ベガの楽器など物的証拠があると撃退実績は速やかに認められる。
メリアン達は、フォーリーや名無し森砦からアイシスまでの護衛実績まで認められるとのこと。
ちなみに町の外で実績紋持ちの行き倒れを見つけた場合、実績紋部分を切り取って持っていけば、それもまた報告実績として認められる。
ルブルムやマドハトと話し合い、俺たちも実績紋の登録をすることに決めた。
四銅貨を支払い、小部屋に入ると中央に大きな椅子を見つける。
顔が見えないほど深くフードを被った三人の魔術師が、椅子の横に控えていた。
指示されるまま椅子に座り、いくつかの質問に答える。
それからシャツの襟口を自分で広げ、魔術師の一人が持つ杖の先端を左の鎖骨の下あたりに押し付けられる。
魔法代償の集中を感じた直後、杖の先が触れている辺りに熱いものを感じた。
音や光はない。
唐突に杖は離れ、部屋を出るよう言われる。
動きに無駄のない流れ作業……「実績紋」の登録はそれでおしまいだった。
見た感じ、同心円を中心に、放射状に伸びる幾つもの直線。パッと見は太陽のような意匠に見えなくもない。
他の人のも見せてもらったが、さほど個人差はないように見える。
ただ、メリアンだけは同心円の本数が多い。
「ある一定の実績を積んだら、目で見ても分かるように増えるんだよ。中には自分で描き足す愚か者も居るらしいが、それが露見すると逆実績として記録されちゃうから真似しないように」
盗賊団に襲われたときのメリアンの戦いっぷりを考えたら、それだけの実績を積んでいると言われても肯ける。
「皆さん、実績紋の話はその辺にして、まずは宿に移動しませんか」
ロッキンさんの提案に従い、移動を開始する。
魔術師組合に教えてもらった宿は、部屋の外で魔法代償の集中があれば、街中と同様に通報されるセキュリティの高さ。
宿内に共同トイレが付いていて、さらに借りた部屋へ持ち込み可能なトイレ壺や、行水したい場合のタライや桶を、別料金で貸してもらえる。
公衆浴場もあるらしいが、これは宿を出て歓楽街の方に行かなければない……というか、このアイシスという街自体、街の三分の一が歓楽街という「そういう街」なのだそうだ。
だからこそ、おそらく徒歩のラビツ達がまだこの街に留まっている可能性は高いとメリアン。
ラビツに出遭えたら……この旅は終わる。
昨晩、ルブルムと『テレパシー』で交わした想いが蘇り、なんだか急に気恥ずかしくなる。
こういうとこだよな。
注意しなきゃいけないのは。
マクミラ師匠がリテルにしょっちゅう言っていた「終わるまでは終わってない」ってやつ。
宿に着くとまず、「明日の日替わり法」と「明後日の日替わり法」について説明を受けた。
明日、星の月夜週の五日は、日没までにタルトのスープを飲まないと逮捕で死刑。
明後日、星の月夜週の六日は、クロケ様紐を日没までに一度でも腰紐にしないと逮捕で死刑。
「……ちょ、ちょっと待って。逮捕で死刑って、その罪の重さは本当ですか?」
宿の主人がうんざりとした顔で詳細を教えてくれる。
「タルトというのは庶民はまずお目にかかれない高級料理でしてね。庶民にはとても手が出ないので、紅爵様のお屋敷前でタルトを煮込んだスープを配っているから、それを飲めばよいんですよ。一杯、三銅貨です」
銅貨三枚で死刑を免れるなら、そりゃ必死で公爵様のお屋敷前とやらに行きますよ。
でも死刑って……命、軽すぎやしないか?
「クロケ様紐も、紅爵様のお屋敷前で、一本、三銅貨で貸していただけます」
タルトという、元の世界にあった食べ物と同じ響きの高級料理ってのはすごく気にはなったけれど、死刑がかかっているって考えると、自分の命以上にこだわる問題とは思えず、それ以上を尋ねるのはやめた。
万難を排して明日の朝イチはとにかく紅爵様のお屋敷前だな。
案内された部屋に荷物を置き、誰からとなく、次々とため息を漏らす。
ため息がなんとなく半周したところでようやく今後についての話し合いが始まった。
探索部隊はラビツの顔を知っている俺とメリアン。
効率を考えて二手に分かれるため、エクシあんちゃんが俺の護衛として、レムがメリアンの護衛として一緒に行動し、残りのメンバーは宿で待機。
一応、部屋は二部屋続きで押さえてある。
広い方を人数が多い男部屋にして、もう片方を女部屋にしたけれど、メリアン達が帰るまではルブルムも男部屋の方で待つ。
探索は今夜からもうスタートすることに。
弓矢は置いてゆくが、探検と手斧は念の為に鞘に収めたままで行くことにした。
「この辺で、胸が自慢の娼婦って言ったら誰かな」
はじめのうちは口にするのもためらわれたセリフだけど、十回超えたら恥ずかしさも消えてきた。
あとは歓楽街中を漂う甘い香りに羞恥心を麻痺させる効果があったりして、とか下らないことを考えて気を紛らわせる。
メリアンの話によると、ラビツはとにかくおっぱい好きとのこと。
だからこのセリフで聞き込みするのが一番って教えられたけど……五人に四人は自分だと言うんだよね、ここのお姉さん方。
いや、確かにどの娼婦さんもご立派なものをお持ちなんだけど、ラビツにつながる手がかりはというと……。
そんな中で「金があるなら宵闇通りのフラマかな」というお返事を何件かいただき、思い出す……チェッシャーが、アイシスを訪れたら宵闇通りを訪ねてって言っていたのを。
チェッシャー達、無事にフォーリーにたどり着けたかな。
一応、チェッシャーからもらった銀の髪飾りも、宿には置かずに持ってきている。
本人が居なくとも、情報くらいは分けてもらえるかもしれないし、行く価値はあるだろう。
「宵闇通りに行ってみようかと思います」
「ふーん。そのラビツって奴は、半返りや先祖返りが好みなのかい?」
エクシあんちゃんの口から「返り」って言葉が出ると、胸の奥がやけにざわつく。
「気にしないんじゃないかな。なんで?」
実際、メリアンも半返りだし。
「宵闇通りってのは、半返りや先祖返りが多いんだよ」
自分の中でざわつきが増殖する。
心の中とはいえ、メリアンに対し、半返りという言葉にわざわざ焦点を当ててしまった自分自身へもざわつきが広がる。
俺は話題を無理に変えようとした。
「エクシあんちゃん、この街に詳しいよね」
「ああ、時々、穴を買いに来るからな」
話題は変わったはずなのに、ざわつきは減るどころか……。
「……穴って」
「そりゃそうだろ。愛情で交わるわけじゃないんだ。それに向こうだって俺たちのこと棒の付いた財布くらいにしか見てねぇよ」
エクシあんちゃん……この人は、どうしてこうも上から全てを見下すような口ぶりをするんだろう。
人は道具じゃない。
狩りですら、狩る相手へ敬意を払う。
ロズさん達だって誇りを持って娼婦をやっていた。
それをこの人は……昔から……リテルの記憶の中のエクシあんちゃんを思い出すと、リテルの体が萎縮するのを感じる。
「でもな、人じゃない連中は野性味があって穴としては具合がいいんだよ」
反射的に拳を握りしめる。
リテルの体に根付く苦手意識がなかったら、エクシが次の言葉を吐かなければ、俺はこいつを殴っていたかもしれない……でも。
「ほら、あの穴、前に入れた奴だけどよ。最高に良かったぜ」
エクシが指差した街角の娼婦。
その子は、チェッシャーにとてもよく似ている……しかもその子は俺と目が合うと、やけに嬉しそうに手を振った。
● 主な登場者
・利照/リテル
利照として日本で生き、十五歳の誕生日に熱が出て意識を失うまでの記憶を、同様に十五歳の誕生日に熱を出して寝込んでいたリテルとして取り戻す。ただ、この世界は十二進数なのでリテルの年齢は十七歳ということになる。
リテルの記憶は意識を集中させれば思い出すことができる。利照はこれを「記憶の端末」と呼んでいる。
ケティとの初体験チャンスに戸惑っているときに、頭痛と共に不能となった。不能は魔女の呪詛による。
その呪詛を作ったカエルレウムに弟子入りした。魔術特異症。猿種。
レムールの「ポー」と契約。伸ばしたポーの中においても、自分の体の一部のように魔法代償を集中したり魔法を使えることがわかった。
現在は、呪詛持ちのラビツ一行を追跡している。
・カエルレウム師匠
寄らずの森に二百年ほど住んでいる、青い長髪の魔女。猿種。
肉体の成長を止めているため、見た目は若い美人。家では無防備な格好をしている。
寄らずの森のゴブリンが増えすぎないよう、繁殖を制限する呪詛をかけた張本人。
ディナ先輩、ルブルム、リテルの魔法の師匠。ストウ村の住人からは単に「魔女様」と呼ばれることも。
・ルブルム
寄らずの森の魔女カエルレウムの弟子。赤髪の美少女。リテルと同い年くらい。猿種のホムンクルス。
かつて好奇心がゆえにアルブムを泣かせてしまったことを、気にしている。
カエルレウムの弟子を、リテルのことも含め「家族」だと考えている。
質問好きで、知的好奇心旺盛。驚くほど無防備。
ケティがリテルとキスしたり痴話喧嘩したりするのを見て涙を流した理由に気付き、それでまた自分を責めていた。
・ディナ先輩
フォーリーに住むカエルレウムの弟子にしてルブルムの先輩。
男全般に対する嫌悪が凄まじいが、リテルのことは弟弟子と認めてくれた。
アールヴと猿種のハーフ。壮絶な過去を持つ。
フォーリー以北への旅について、大量の忠告をしてくれた。
・マドハト
赤ん坊のときに取り換え子の被害に遭い、ゴブリン魔術師として育った。犬種の先祖返り。コーギー顔。
今は本来の体を取り戻しているが、その体はあんまり丈夫ではない。
ゴブリンの時に瀕死状態だった自分を助けてくれたリテルに懐き、やたら顔を舐めたがる。
リテルにくっついてきたおかげでちゃっかりカエルレウムの魔法講義を一緒に受けている。
フォーリーの街中で魔法を使ってしまい、三年分の魔法代償徴収刑を受けた。
勇敢なのか無謀なのかわからないときがある。いつも明るい。
・ケティ
リテルの幼馴染。一歳年上の女子。猿種。
旅の傭兵ラビツに唇を奪われ呪詛に伝染し、それを更にリテルへと伝染させた。
カエルレウムが呪詛解除のために村人へ協力要請した際、志願し、リテル達がフォーリーを発つ時、メリアンと共に合流した。
盗賊団に襲われた際は死にかけたり、毒で意識不明になったり。
足手まといを自覚し、ストウ村へ先に戻った。
・メリアン
ディナ先輩が手配した護衛。
リテルたちを鍛える依頼も同時に受けている。
ものすごい筋肉と、角と副乳を持つ牛種の半返りの頼もしい傭兵。
円盾と小剣を二つずつ持ち、手にはスパイク付きのプレートナックルを装備。
謎の襲撃犯を撃退し、リテル達と合流。
騎馬戦も上手く、『戦技』や『気配感知』を使う。どうやらラビツの知り合いである様子。
・マクミラ師匠
リテルに紳士たれと教える狩人の師匠。猿種。
狩りができない日は門番をしていたりも。
・エクシ
ビンスン兄ちゃんと同い年で、リテルが小さな頃は、ビンスンやケティと一緒に遊んでくれた。
村一番の絶倫ハグリーズの次男で、今はフォーリーで領兵をやっている筋肉自慢。
ちょいちょい差別発言や嫌味を吐き、マウントを取ってくる面倒な人。
ルブルム一行の護衛として同行。過去にチェッシャーと何かあったような口ぶり。
・クッサンドラ
病弱だったマドハト(中身はゴブリン)の世話を焼いていたゴド村出身の犬種の先祖返り。ポメラニアン顔。
フォーリーで領兵、それも偵察兵をやっている。
ルブルム一行の護衛として同行。
・ラビツ
ゴブリン魔術師によって変異してしまったカエルレウムの呪詛をストウ村の人々に伝染させた。
兎種ハクトッのラビツをリーダーに、猿種マンッが二人と先祖返りの猫種バステトッが一人の四人組。傭兵集団。
ラビツは、ケティの唇をリテルのファーストキスよりも前に奪った。おっぱい大好き。
北の国境付近を目指している。本人たちは呪詛にかかっていることに気付いていない。
・レム
バータフラ・レムペー。クラースト村のバータフラ世代の五番目の子。
魔法に長けた爬虫種の少女。
リテルより若いが胸はかなり育っている様子。髪型はツインテール。
その母親は利照同様に異世界から来た。
現在は、リテルのことをお兄ちゃんと呼び、魔法の使い方を習ったりもしている。
ルブルム一行の護衛として同行。
・ロッキン・フライ
名無し森砦の兵士。
フライ濁爵の三男。
ウォルラースとダイクの計画を知らされていなかった兵士。正義の心を持っている。
ルブルム一行の護衛として同行。
・チェッシャー
アイシス出身の猫種の半返りの女子。あざといくらいに無防備な姿をしているが、魔法を使う。
姉のために寿命を売りにフォーリーへ向かう途中、乗っていた馬車定期便が襲撃により横転したため、その近くに隠れていた。
チェッシャーたちの命を取らなかったリテルの唇を奪い、銀の髪飾りをくれた。
・レムルース
地界に存在する種族。肉体を持たず、こちらの世界では『契約』されていないと長くは留まれない。
『虫の牙』の呪詛のベースにされていた他、スノドロッフ村の人達が赤目を隠すために『契約』している。
レムルースは複数形で、単体はレムールと呼ぶ。
ディナ先輩の体からリテルの腕へと移ったレムールは、リテルと契約し「ポー」という名を与えられた。
・クー・シー
元々は異世界に居た獣だが、こちらの世界に居着くクー・シーも居る。
暗めの緑色の体毛は長いうえにモジャモジャ。長い尻尾はぐるぐると巻いて背中に乗せている。
四本ある足は、大型犬や牛と比べても太くて大きい。
妖精に飼われていることも多く、牛をさらったりもする。とにかく乳製品が大好き。
・スレイ・ベガ
元々は地界の種族だが、今回遭遇したのは、この世界の妖精丘に居着いている。
人型で背が低い。干渉しなければ無害だが、怒らせた場合は容赦なく襲ってくる。
群れの長は目と耳とを惑わす曲を奏でる楽器を持つ。
● この世界の単位
・ディエス
魔法を使うために消費する魔法代償(寿命)の最小単位。
魔術師が集中する一ディエスは一日分の寿命に相当するが、魔法代償を集中する訓練を積まない素人は一ディエス分を集中するのに何年分もの寿命を費やしてしまう恐れがある。
・ホーラ
一日を二十四に区切った時間の単位(十二進数的には「二十に区切って」いる)。
元の世界のほぼ一時間に相当する。
・ディヴ
一時間の十二分の一となる時間の単位(十二進数的には「十に区切って」いる)。
元の世界のほぼ五分に相当する。
・クビトゥム
長さの単位。
本文中に説明はなかったが、元の世界における五十センチくらいに相当する。
トシテルが元の世界の長さに脳内変換しないでもいいくらい、リテルが日常的に使っていた単位。
・アブス
長さの単位。
元の世界における三メートルくらいに相当する。
・プロクル
長さの単位
一プロクル=百アブス。
この世界は十二進数のため、実際は(3m×12×12=)432mほど。
・通貨
銅貨、銀貨。
十銅貨(十二進数なので十二枚)=一銀貨
・暦
一年は、十ヶ月(十二進数なので十二ヶ月)+「神の日々」という五~六日間。
それぞれの月は、母の月、子の月、大地の月、風の月、水の月、海の月、光の月、空の月、星の月、火の月、父の月、闇の月と呼ばれる。
各月は、月の始めの十日(十二進数なので十二日)間は「月昼」週。次の六日間は「月黄昏」週、最後の十日(十二進数なので十二日)間が「月夜」週。トータルは十二進数で三十日間。
毎月の、月黄昏週の一日が満月で、月夜週の九日が新月。月は二つあるが、大きい月の周期が基本で、小さい月の周期は二日ほど遅れている。夜が明けるまでは日付は変わらない。
第六十三話終了時点では星の月夜週の四日の夜。




