#62 戦技と気力
「すごいねぇ。さすが魔女様のお弟子さんだ」
スレイ・ベガは、ルブルムが楽器を弾いていた奴を含めて四体、メリアンが二体を倒して全滅させた。
ルブルムは魔法で身体強化したのもあったが、カエルレウム師匠の御守りのおかげでスレイ・ベガの演奏に惑わされずに済んだと言っていた。
メリアンは……魔法代償を集中していた様な気がしたけれど。
「これは、魔法への抵抗力が上がる護符のおかげ……それに、リテルがあの音楽を止めてくれたから相手に隙ができた」
俺の矢は、演奏者の楽器を弾いていた腕に運良く当たったものの、三射のうち二射を外していた。
クー・シーへ当てることができたのは、矢に耐性があったクー・シーが矢を恐れなかったからかもしれない。
まだまだ熟練度が足りない。
「へぇ。うちのリテルがねぇ。足を引っ張ってるかと心配だったけど」
エクシあんちゃんの言葉が地味に響く。
ふと、マクミラ師匠の言葉を思い出す……「成功の中には次回の失敗が潜む。失敗の中には次回の成功が潜む」って。
「そんなことないです! リテルは」
「俺の腕が未熟なのは本当だから」
反論を始めたルブルムの言葉を遮ってやめさせる。
「おーお! そうやって魔女様のお弟子さんのこと取り込んだのか。勉強になるなぁ」
エクシあんちゃんに食って掛かろうとするルブルムの手首をつかんで止める。
今までルブルムの周囲には嫌味や軽口の類はなかったのかもしれない。
後でいちいち真面目に取り合わないよう言わないとかな。
「へぇ。なるほどねぇ。それでケティは拗ねてたんかねぇ」
エクシあんちゃんはニヤニヤ笑いながら自分の馬の方へと戻ってゆく。
「なぁ」
メリアンが俺の肩を軽く叩いたので、ルブルムの手を離す。
「また全部埋めるのかい?」
話題を変えてくれたメリアンの空気読み能力に感謝。
「えーと、メリアン達が旅の途中でこういう風に襲われたなら……どうしてました?」
「魔獣だったら毛皮を剥いで、肉は食える分は食って、かな。瘴気がない前提だけどね。小さい方々は丁重に埋葬ってとこかな」
月明かりの下で見るスレイ・ベガは服を着ていた。
ストウ村の人たちも着ているような、こちらの世界の普通の服を。
スレイ・ベガは、他世界から来た他種族なだけで、普段は人が近寄らない場所で慎ましく生きていた。
彼らは魔物ではなく「人」なのだと意識した途端、罪悪感がどっと押し寄せる。
そもそもは、俺達が彼らのクー・シーを返り討ちしたから、追いかけてきて報復しようとしたんだ。
ルブルムから分けてもらった知識では、スレイ・ベガは「干渉しなければ無害」だった。
大きな飼い犬を放し飼いにしていたけれど、その犬は俺たちを傷つけたわけじゃない。攻撃をかいくぐりをしたが、食料を奪っただけ。
そのことが、あのクー・シーが殺されるだけの、彼らが死ななきゃいけないほどの理由になるのだろうか。
それがやるせない。
あのとき、広い心でチーズをクー・シーにあげておけばこんな嫌な気分にならなかったのかな。
下手に逃がすとまた仲間を増やして更なる襲撃の元になるかもと、彼らの全滅を指示したのはメリアンだ。
それはその通りだし、勝手に住み着いて領主へ税金を払うでもなく、いわば外来種みたいなものだし……そうやって自分を納得させる言葉を探すと、それって俺はどうなんだ、俺こそ一番の外来種なんじゃないかとかいうとこに思考が巡ってまたちょっと凹んだりする。
「メリアン、手伝います。これでも狩人としても経験積んでますんで」
「リテルさま! 僕も手伝うです!」
こんな夜更けに元気だなマドハト……でも、お前にクー・シーの解体を手伝わせるのはなぁ……。
マクミラ師匠が教えてくれたことの一つに、獣種と獣の関係性がある。
人は、自分の先祖の動物は食べない場合がほとんどだと。
ストウ村は猿種が多く、隣のゴド村では犬種が多い。
だから猿や犬の類は獲物として積極的には狙わなかったし、リテルは狩人見習いとして獲物の解体をそこそこできる割には猿の解体経験はないし、犬の類だって身を守るために返り討ちした狼を一、二匹、手伝ったくらいだ。
マドハトはゴブリンとして育った期間が長かったけど、やっぱり犬種で、それも先祖返りで、クー・シーは外見はほぼ犬で。
横でクッサンドラが微妙な表情しているのはそういうことだろう。
「ロッキンさん、クッサンドラも休んでいてください。お疲れさまでした。マドハトもちゃんと寝ておくように。ルブルムとレムはこれから見張り、お疲れさまです。後始末は俺とメリアンでやります」
クー・シーからは毛皮を剥ぎ、肉は血抜きのためにぶら下げておく。
こういうとき、ロービンから教えてもらった『森の平穏』が重宝する。
同じ種類の枝を拾って並べて作った円の結界は、円を作った素材以外の臭いが通れないから。
それに円といっても正確な図形的な円ではなく、だいたい円になっている程度で魔法がかかるのがありがたい。
定期便に乗っていた商人が、クー・シーの肉をけっこうな量買い取ってくれたのもラッキーだった。
スレイ・ベガたちは、共同夜営地から街道を挟んだ反対側、ちょっと離れた場所に大きな穴を掘り、並べて丁寧に埋葬した。
この辺りの土は柔らかく、共同夜営地の隅に放っておかれた壊れた柵の一部を使ったら案外簡単に掘れた。
クー・シーを解体するとき傷つけないようにしておいた内蔵と頭も、一緒に同じ穴に埋葬して、最後に柵の一部を目印として立てる。
メリアン曰く、街道移動中に遭遇した魔物は街に付いてから報告すると、通行税が軽減されることが多いんだそうだ。
たまにその検分をすることもあり、そのためには目印を立てておいた方がいいらしい。
目の前の目印がなんだか墓標に見えて、ついうっかり手を合わせてしまったら、メリアンにそれは魔術師の流儀かと尋ねられてしまう。
その時、ようやく気付いた。
この世界が、元の世界の中世ヨーロッパとも、よくある異世界モノとも大きく違う点に。
この世界には人々の心の拠り所的な意味では「神」が不在なのだ。
「神」という単語は存在する。
しかし、誰もその神の名を知らない。
教会もなければ神社も寺もなく、あの世とか天国とかいう概念もない。
死んだ人の肉体は朽ち、切り離された魂はそこいらを漂っているが、次第に記憶を失い、かわりに新しく生まれる力を得て、やがて誰かの子どもとして新しい人生を始める……輪回の考え方はあるみたいだけど、魂はずっとこの世界にあるままっぽいんだよね。
ホムンクルスも、無から人を作るんじゃなく、新しく生まれる魂と結びつける肉体を作るという考え方のようだし。
この世界において、神が日常の中で登場するのは、一日の終わりに万物へ感謝を捧げるとき、そして、一年の終わりのわずかな期間だけ。
一日の終わり、寝る前のお祈りはこんな文言だ。
「今日という日を無事に過ごせたこと、家族、環境、それらに携わった全てのもの、そして神に感謝します」
環境という言葉には、自然だけじゃなく、隣人、領主、自分たちの属する国そのものも含まれている。
携わる全てのものとは、環境が環境であり続けられるよう支えるもの、環境をとりまく環境のことを指してるっぽい。
例えば、今日獲って食べることができたウサギが居たとしたら、そのウサギを今日まで育ててきた自然、ウサギを捕るために協力してくれた隣人たち、ウサギを捕ることを許可してくれた領主、そのウサギが今日まで生き延びてこられた食物連鎖全体にまで感謝を向けている感じ。
最後の神という言葉には、環境を用意してくださったもの……造物主、創造主、的なニュアンスを感じる。
神は全てを用意したが、全てを用意したからこそ平等で、特定の何か、誰かを優遇しない。
だからこの世界の住民は、神に感謝は捧げるものの、すがらない。
それゆえに宗教としての神は居ない。
あくまでも感謝の対象としてのみ存在する感じ。
一方で暦の中に登場する神は、十の月に続く数日間が「神の日々」と呼ばれている。
一月から十月……元の世界では十二月までは、それぞれ母の月、子の月、大地の月、風の月、水の月、海の月、光の月、空の月、星の月、火の月、父の月、闇の月、という名前があって、各月は二十六日間……元の世界でいう三十日間。
「神の日々」は年によって五日だったり六日だったりする。元の世界におけるうるう日的な何かなのかも。
「神の日々」が何日になるかをどう決めているのかは、リテルは知らなかったが、ルブルムから分けてもらった知識によって、魔術師組合が天文学的な観測により毎年の「神の日々」の日数を決めているということがわかった。
一ヶ月は変則的な三週間で構成される。
月の始めの十日……元の世界の十二日間は「月昼」週。次の六日間は「月黄昏」週、最後の十二日間が「月夜」週。
例えば今日は、星の月夜週の三日。次の夜明けまでは今日。
月名と週名は「○○の月」とは区切らず、続けて言う感じ。
毎月の、月黄昏週の一日が満月で、月夜週の九日が新月。月は二つあるが、大きい月の周期が基本で、小さい月の周期は二日ほど遅れている。
ちなみにクスフォード領においては、星の月は秋の後半。今みたいな深夜時間帯はちょっと肌寒い日もあるくらい。
夜風がひときわ強く吹き、首をすくめる。
「これも魔術師の流儀ですよ?」
目が合ったメリアンに笑顔で軽く答えると、笑ってくれた。
メリアンは信頼できるし、頼りにもしている。
だけど、利照が元いた世界の話を打ち明ける人はそんなに増やしたくはないし、そもそもあのラビツの関係者なんだよね……あっ。
「そういえば、さっき……スレイ・ベガと戦っているとき、メリアンが魔法を使ったような気がしたんだけど」
自分のことは秘密にするのに、相手の、しかも仲間の秘密を聞き出そうとする自分を、紳士ではないと責める自分と、ディナ先輩の言う通り貪欲にルブルムや自分を守ることを優先しようとするしたたかさを褒める自分とがせめぎ合う。
「ああ、そうみたいだな。魔術師が『魔力感知』で感じるモノと、あたしら戦慣れした傭兵なんかが使う『気配感知』で感じるモノは同じらしいからな。魔術師と同じ戦場に居たことは何度もあってね」
魔術師かどうか関係なく、この世界の人は誰でも魔法を使うことができる。
ただ魔法代償の集中という行為は訓練しないと大量に寿命の渦を消費してしまうのだけれど。
「魔術師が寿命の渦とか呼んでいるモノを、あたしらは気力って呼んでいる。魔術師が魔法を使うときは、知識から『魔法』を探してきて使うだろ? でも、あたしらはそんな器用なことはできやしないんだ。あたしらが使う『戦技』ってのは、自分の技を何度も磨いて、修練して、極めた先にあるんだよ」
「『戦技』ですか?」
「ああ。同じ技を突き詰めて鍛え上げるとな、ある時、見えてくるんだ。無駄な力を使わずにその技を使える動作が。そこに気力を流し込む。そこからさらにそれを繰り返すとな、その技の名前を思い浮かべて気力を流すだけで、その『戦技』が自然と使えるようになる」
メリアンの脚に魔法代償が一瞬にして溜まったと思った瞬間、メリアンは高く跳び、前方に一回転しながら……多分、かかと落としのような技を放った……俺がとらえられたのは、それだけ。
凄まじく早くて鋭い技だった。
しかも魔法代償、いや、メリアン達の場合は気力か、その集中までもが本当に早かったし、とても絞られていた。
「『魔法』は覚えれば使えるんだろ? でも『戦技』は違う。たゆみない努力と訓練の向こうにしか得られないのさ。ちなみに『戦技』と結びついていない気力の集中は、うまくできないぜ?」
魔術師ならば当然気になるであろう質問には既に回答済か。
「いろいろ教えてくださってありがとうございます」
「あたしは熱心に学ぼうとする奴は好きさ。ただ、実戦で知識に振り回されないようには気をつけなよ。知識があっても騙されれば判断を誤るんだ。それに例え魔術師であろうとも、やっぱり最後に頼れるのは自分の体だよ。体を鍛えるのはやめちゃいけないよ」
「はい」
「リテル!」
メリアンが魔法代償というか気力を集中したせいか、ルブルムが心配して飛んできたようだ。
「ああ、ごめん。『戦技』のことを習っていたんだ」
ルブルムに説明すると、狼の王や鹿の王が使う力も『魔法』よりは『戦技』に近いと追加情報をくれて、見張りへと戻ってゆく。
なんかこのいつでも俺の力になってくれようとする姿勢を、愛おしく感じ始めていることに気付き、心の中で紳士たれと唱える。
紳士たれ。
感情に浸れば、思考を手放しがちになる。
魔術師であるために、思考を手放さないためにも、紳士たれ。
気を取り直し、目印の付近にも『森の平穏』を施す。
これで少なくとも明るくなるまで血の臭いをたどる獣は現れないだろう。
馬車の近くまで戻り、ルブルムとレムに後始末の完了を告げる。
先に手桶で汲んでおいた水で汚れを洗い流し、俺たちは馬車の中へ。
マドハトのいびきが聞こえないと思ったら、クッサンドラの足を枕代わりにして横向きに寝ている。
今後うるさい時はこの作戦だな。
横たわるが、すぐには眠くならない。
昨日まで過ごした名無し森砦での数日間は、兵士用のベッドで寝かせてもらえたから疲れていないのもある。
でも一番の理由は思考がぐるぐる回転しているから。
神は誰も助けない。
ということは、よくある異世界モノみたいな転生理由ではないという感じだよな。
探すべき方向性を絞り込められたのか、それとも手がかりが減っただけなのか……ぐるぐると回る思考は、思考ではないなと気付き、建設的なことを考える。
『戦技』を『魔法』で再現できれば、未熟な俺でももっと貢献できる動きができるだろうか。
ああ、それっていわゆる異世界モノでよく見る「スキル」的な考え方なのかな。
『戦技』を使っている時に触れて学ぶのは難しそうだな……いや、ポーに手伝ってもらえたら……或いは……。
● 主な登場者
・利照/リテル
利照として日本で生き、十五歳の誕生日に熱が出て意識を失うまでの記憶を、同様に十五歳の誕生日に熱を出して寝込んでいたリテルとして取り戻す。ただ、この世界は十二進数なのでリテルの年齢は十七歳ということになる。
リテルの記憶は意識を集中させれば思い出すことができる。利照はこれを「記憶の端末」と呼んでいる。
ケティとの初体験チャンスに戸惑っているときに、頭痛と共に不能となった。不能は魔女の呪詛による。
その呪詛を作ったカエルレウムに弟子入りした。魔術特異症。猿種。
レムールの「ポー」と契約。伸ばしたポーの中においても、自分の体の一部のように魔法代償を集中したり魔法を使えることがわかった。
現在は、呪詛持ちのラビツ一行を追跡している。
・カエルレウム師匠
寄らずの森に二百年ほど住んでいる、青い長髪の魔女。猿種。
肉体の成長を止めているため、見た目は若い美人。家では無防備な格好をしている。
寄らずの森のゴブリンが増えすぎないよう、繁殖を制限する呪詛をかけた張本人。
ディナ先輩、ルブルム、リテルの魔法の師匠。ストウ村の住人からは単に「魔女様」と呼ばれることも。
・ルブルム
寄らずの森の魔女カエルレウムの弟子。赤髪の美少女。リテルと同い年くらい。猿種のホムンクルス。
かつて好奇心がゆえにアルブムを泣かせてしまったことを、気にしている。
カエルレウムの弟子を、リテルのことも含め「家族」だと考えている。
質問好きで、知的好奇心旺盛。驚くほど無防備。
ケティがリテルとキスしたり痴話喧嘩したりするのを見て涙を流した理由に気付き、それでまた自分を責めていた。
・ディナ先輩
フォーリーに住むカエルレウムの弟子にしてルブルムの先輩。
男全般に対する嫌悪が凄まじいが、リテルのことは弟弟子と認めてくれた。
アールヴと猿種のハーフ。壮絶な過去を持つ。
フォーリー以北への旅について、大量の忠告をしてくれた。
・マドハト
赤ん坊のときに取り換え子の被害に遭い、ゴブリン魔術師として育った。犬種の先祖返り。コーギー顔。
今は本来の体を取り戻しているが、その体はあんまり丈夫ではない。
ゴブリンの時に瀕死状態だった自分を助けてくれたリテルに懐き、やたら顔を舐めたがる。
リテルにくっついてきたおかげでちゃっかりカエルレウムの魔法講義を一緒に受けている。
フォーリーの街中で魔法を使ってしまい、三年分の魔法代償徴収刑を受けた。
勇敢なのか無謀なのかわからないときがある。いつも明るい。
・ケティ
リテルの幼馴染。一歳年上の女子。猿種。
旅の傭兵ラビツに唇を奪われ呪詛に伝染し、それを更にリテルへと伝染させた。
カエルレウムが呪詛解除のために村人へ協力要請した際、志願し、リテル達がフォーリーを発つ時、メリアンと共に合流した。
盗賊団に襲われた際は死にかけたり、毒で意識不明になったり。
足手まといを自覚し、ストウ村へ先に戻った。
・メリアン
ディナ先輩が手配した護衛。
リテルたちを鍛える依頼も同時に受けている。
ものすごい筋肉と、角と副乳を持つ牛種の半返りの頼もしい傭兵。
円盾と小剣を二つずつ持ち、手にはスパイク付きのプレートナックルを装備。
謎の襲撃犯を撃退し、リテル達と合流。
騎馬戦も上手く、『戦技』や『気配感知』を使う。どうやらラビツの知り合いである様子。
・マクミラ師匠
リテルに紳士たれと教える狩人の師匠。猿種。
狩りができない日は門番をしていたりも。
・エクシあんちゃん
ビンスン兄ちゃんと同い年で、リテルが小さな頃は、ビンスンやケティと一緒に遊んでくれた。
村一番の絶倫ハグリーズの次男で、今はフォーリーで領兵をやっている筋肉自慢。
ちょいちょい差別発言や嫌味を吐き、マウントを取ってくる面倒な人。
ルブルム一行の護衛として同行。
・クッサンドラ
病弱だったマドハト(中身はゴブリン)の世話を焼いていたゴド村出身の犬種の先祖返り。ポメラニアン顔。
フォーリーで領兵、それも偵察兵をやっている。
ルブルム一行の護衛として同行。
・ラビツ
ゴブリン魔術師によって変異してしまったカエルレウムの呪詛をストウ村の人々に伝染させた。
兎種ハクトッのラビツをリーダーに、猿種マンッが二人と先祖返りの猫種バステトッが一人の四人組。傭兵集団。
ラビツは、ケティの唇をリテルのファーストキスよりも前に奪った。
北の国境付近を目指している。本人たちは呪詛にかかっていることに気付いていない。
・レム
バータフラ・レムペー。クラースト村のバータフラ世代の五番目の子。
魔法に長けた爬虫種の少女。
リテルより若いが胸はかなり育っている様子。髪型はツインテール。
その母親は利照同様に異世界から来た。
現在は、リテルのことをお兄ちゃんと呼び、魔法の使い方を習ったりもしている。
ルブルム一行の護衛として同行。
・ロッキン・フライ
名無し森砦の兵士。
フライ濁爵の三男。
ウォルラースとダイクの計画を知らされていなかった兵士。正義の心を持っている。
ルブルム一行の護衛として同行。
・レムルース
地界に存在する種族。肉体を持たず、こちらの世界では『契約』されていないと長くは留まれない。
『虫の牙』の呪詛のベースにされていた他、スノドロッフ村の人達が赤目を隠すために『契約』している。
レムルースは複数形で、単体はレムールと呼ぶ。
ディナ先輩の体からリテルの腕へと移ったレムールは、リテルと契約し「ポー」という名を与えられた。
・クー・シー
元々は異世界に居た獣だが、こちらの世界に居着くクー・シーも居る。
暗めの緑色の体毛は長いうえにモジャモジャ。長い尻尾はぐるぐると巻いて背中に乗せている。
四本ある足は、大型犬や牛と比べても太くて大きい。
妖精に飼われていることも多く、牛をさらったりもする。とにかく乳製品が大好き。
・スレイ・ベガ
元々は地界の種族だが、今回遭遇したのは、この世界の妖精丘に居着いている。
人型で背が低い。干渉しなければ無害だが、怒らせた場合は容赦なく襲ってくる。
群れの長は目と耳とを惑わす曲を奏でる楽器を持つ。
● この世界の単位
・ディエス
魔法を使うために消費する魔法代償(寿命)の最小単位。
魔術師が集中する一ディエスは一日分の寿命に相当するが、魔法代償を集中する訓練を積まない素人は一ディエス分を集中するのに何年分もの寿命を費やしてしまう恐れがある。
・ホーラ
一日を二十四に区切った時間の単位(十二進数的には「二十に区切って」いる)。
元の世界のほぼ一時間に相当する。
・ディヴ
一時間の十二分の一となる時間の単位(十二進数的には「十に区切って」いる)。
元の世界のほぼ五分に相当する。
・クビトゥム
長さの単位。
本文中に説明はなかったが、元の世界における五十センチくらいに相当する。
トシテルが元の世界の長さに脳内変換しないでもいいくらい、リテルが日常的に使っていた単位。
・アブス
長さの単位。
元の世界における三メートルくらいに相当する。
・プロクル
長さの単位
一プロクル=百アブス。
この世界は十二進数のため、実際は(3m×12×12=)432mほど。
・通貨
銅貨、銀貨。
十銅貨(十二進数なので十二枚)=一銀貨
・暦
一年は、十ヶ月(十二進数なので十二ヶ月)+「神の日々」という五~六日間。
それぞれの月は、母の月、子の月、大地の月、風の月、水の月、海の月、光の月、空の月、星の月、火の月、父の月、闇の月と呼ばれる。
各月は、月の始めの十日(十二進数なので十二日)間は「月昼」週。次の六日間は「月黄昏」週、最後の十日(十二進数なので十二日)間が「月夜」週。トータルは十二進数で三十日間。
毎月の、月黄昏週の一日が満月で、月夜週の九日が新月。月は二つあるが、大きい月の周期が基本で、小さい月の周期は二日ほど遅れている。夜が明けるまでは日付は変わらない。
第六十二話終了時点では星の月夜週の三日の夜。




