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#60 話したいことがある

「クソっ! こいつウォルラースとかいう奴の手下かっ?」


 エクシあんちゃんが槍を振り回したが、その牛ほどもある巨大な犬のような獣は、足音を立てず滑るように走って躱す。


「この知性もなさそうな魔物がですかっ?」


 ロッキンさんが小剣で切りつけようとするがこれも躱す。

 そしてまっすぐこちらへ向かってくる。

 暗めの緑色の体毛は長いうえにモジャモジャで、これまた長い尻尾をぐるぐると巻いて背中に乗せている。

 トグロを巻いているように見えるあの尻尾、まさか蛇とかじゃないよね?

 四本ある足は、大型犬や牛と比べても太くて大きい。人間の足と変わらない……獅子舞みたい見えるほど不自然に。


「そいつはクー・シーだっ!」


 メリアンが両手で剣を抜きながら叫ぶ。

 この世界ではメジャーな魔物なんだろうか。

 俺とルブルム、マドハト、レムとクッサンドラはそれぞれ自分の武器を持ち、焚き火を背に円形陣を組む。

 その焚き火の傍らでは、今朝の出発時に名無し森砦から餞別にもらった羊のもも肉がたまらなく良い匂いを出していてる。

 時間をかけたら肉が焦げる。なるべく時間をかけたくない。


「リテルさまっ! ぬかるむです!」


 マドハトが魔法代償を集中するのを感じ、俺は斧から弓へと持ち替える。

 クー・シーはメリアンを大回りに避け、またこちらへ向きを変えたその場所にマドハトが『大笑いのぬかるみ』をかける。

 バータフラ・ミンを追っていたときとは違って、クー・シーの動く方向を見極めた上で手前に魔法を発動。

 だが、クー・シーはぬかるみには滑らず、でも滑るように走りながらまっすぐとこちらへ。

 その移動先を読み直して矢を射かけた……当たるが、本体には届いていなさげ。

 おそらく矢はあの長いモジャ毛に絡まって止まっている。


「メリアン! 弱点はないのかっ!」


「素早さ勝負!」


 すぐさまルブルムが自身に魔法をかける。

 おそらく『鹿』だろう。集中力と俊敏性とを強化する魔法。

 俺は弓を捨て再び斧へと持ち替え、クー・シーをルブルムの方へ誘導するべく進路を妨害する。

 メリアンもすぐさまこちらへとダッシュする……その時にはもうルブルムはクー・シーへ切りかかっていた。


「飛ぶだとっ!」


 エクシあんちゃんが投げようとしていた槍の手を止める。

 ルブルムの身長よりも小剣の切っ先よりも高く、メリアンの追撃も届かぬ高さへと跳んだクー・シーは、一気に焚き火のすぐ横へと着地した。

 レムとクッサンドラとが小剣で斬りかかるが、クー・シーは巨体ながらそれらを軽く躱し、革袋を咥えた。

 あの革袋には、今朝もらったばかりのチーズがっ。

 矢をつがえたものの、マドハト達が射線に居て狙いにくい。


 位置を変えるべく走り始めた俺の視界、クー・シーの向こう側へ回り込む影が二つ。

 走るルブルムと、いつの間にか騎乗していたロッキンさん。

 俺も支援したいが、ただの矢だけではきっとさっきの二の舞だろう……鏃に『発火』を『魔法付与』する……発動までの待ち時間と発動してからの待ち時間がイコールになるから、気持ち三秒待ってから、つがえて射る!


 手薄そうな方向へ逃げようとするクー・シーの背中に刺さるが、恐らく今度もクー・シーの毛で止まっている。

 だが『魔法付与』していた『発火』が発動した。

 『発火』は発動期間がもともと一瞬の魔法だから、三秒分に薄められた威力ではあるものの、火が発生したことでクー・シーはかなり慌てた様子。

 そんな一瞬の隙をルブルムが見逃さない。クー・シーの太い足を裏側から斬りつける。

 うまく腱を傷つけられたのだろう。そこからクー・シーに止めを刺すまでは早かった。


「クー・シーは放牧している雌山羊や雌羊や雌牛を追い立ててさらってゆくんだ。牛の乳を直接飲んでいる所を目撃したって話も聞いたことがあったが、チーズまで好きだとはな……てっきりあたしの乳を飲みに来たんだと思ったんだがな」


 メリアンが牛種(モレクッ)ならではのジョークを言うと、ロッキンさんが頬を赤らめる。

 貴族の息子って遊んでいるイメージが勝手にあったけど、この人は反応がいちいち好青年だ。


「このクー・シーは瘴気をまとっていないから、遠くない場所に妖精丘(ノウ)があるかもしれない。クー・シーの飼い主の妖精が報復に来る恐れがある」


 なにげに知識量の多いルブルムの情報を重視した俺たちは昼食を中断し、とりあえず移動することにした。

 もしもクー・シーが瘴気をまとっていたならば、異世界からこの世界へ迷い込んできたばかりだと判断できる。

 しかし瘴気を全く感じられないのならば、異世界からこの世界へやって来て定着した個体の子孫である確率が高くなる。

 となると仲間や飼い主が居る可能性を考慮しなければならなくなる。


 クー・シーの死体は丁寧に土に埋めた。

 持って行かないのは、死体のニオイを追跡される恐れがあったからだ。

 名無し森砦までならば半日で戻れるが、ベイグルさん達と別れたあと名無し森砦に移動し、さらに王都からの使者が到着するまで四日も待たされた俺たちはこれ以上時間を無駄にはできない。

 ラビツ一行が向かっていそうな次の街アイシスまではまだ二日半はかかる。

 夜営をする必要がある以上は、余計なリスクはなるべく抱え込まない方がいい。

 臭いや重量、腐敗なんかを無視できる便利な収納魔法とかがあれば良かったんだけど。


 この世界に収納魔法の類はないわけじゃないようだが、求める結果に対して必要となるコストが見合わない。

 まず収納する空間を作成し、それを長時間維持し、その空間への出入り口を作り、入り口を閉じたり開けたりを制御し、空間にかかる負荷、つまり空間と収納物の重さとを軽減する魔法も必要で……それぞれの魔法にそれぞれの魔法代償が必要となる上、それら魔法をつなげて一つの魔法とする制御部分にも別途魔法代償が必要となる。

 少なくとも今の俺やルブルムには、使い勝手の良い収納魔法は作成困難ってこと。

 ベイグルさんに教えてもらった『遠回りの掟』のように、自分の認識を変えられる魔法に出会えれば、それを元に工夫できるのかな。


 あと、元の世界でよく見ていたファンタジーものだと魔物の死体からは素材が取れる。

 それはこの世界も同様だけど、こっちのは魔物の、というよりは、他の獣同様に、という感じ。

 クー・シーの毛皮は普通の獣よりも丈夫なので防具に使われることが多いそうだ。

 メリアンの傭兵仲間がクー・シーの革鎧を使っていたらしく、長毛部分はクッション素材としての効果が高いが、その分やたら暑く、戦地によってはバテやすいと。

 この世界では素材そのものに魔法効果が宿るわけではないので、アイシスまでの自分たちの安全性と引き換えにできるほどの価値はないという判断だった。


 俺たちは馬車で移動しながら昼食の続きを食べた。

 さっき焼いていた羊のもも肉をナイフで削ぎ、無事に取り返したチーズと一緒にスライスした黒パンで巻き、馬車の外に居るエクシあんちゃんとロッキンさんに手渡す。

 二人は馬に騎乗し、残りは全員この馬車に乗っている。

 御者は馬車の中のメンツが交代で。

 マドハトだけじゃなく俺やルブルムも御者としての技術を学んでいる……とは言っても、街道をただ進ませるだけならば、けっこう簡単だった。




 日が暮れる前に共同夜営地に着くことができた。

 共同夜営地というのは、大きな街と街をつなぐ街道沿いに、馬車でおおよそ一日くらいの距離のところにある場所。

 簡単な柵があり、水場もそう遠くない。

 ないよりはマシという申し訳程度のキャンプ場感。

 そんな共同夜営地に今夜は、俺たち以外にもう一組、アイシスから名無し森砦を経由してフォーリーまで向かう定期便乗合馬車とも一緒だった。


 俺たちがフォーリーを出て最初に遭遇した転倒していた馬車……ウォルラースやチェッシャー達が乗っていた馬車、あれもここの定期便だったらしい。

 ガレーテ様がいち早くフォーリーへ出した通達のおかげで昨晩にはもう、フォーリーからの便が着いたそうだ。

 ということは、ケティも無事にフォーリーまで戻れたということだな。

 名無し森砦までは散々だったから、かなりホッとする。

 あとは、ケティに託したモノが、ディナ先輩までちゃんと届けばいいけれど。


 俺たちの馬車には護衛として、クスフォード領兵のエクシあんちゃんとクッサンドラが、名無し森砦の兵士としてロッキンさんとレムが付き添っている。

 兵士が四人も居るということで定期便の人たちが安心したのか、彼らから「見張り代」として食料を少しわけてもらう。

 名無し森砦まで持ってゆくという腸詰めや野菜を。

 具だくさんになったスープに浸した黒パンを食べながら、安全の価値についても噛みしめた後は稽古の時間。


 名無し森砦で待ち時間の有効活用として始めた稽古だったけれど、メリアンに戦闘術を教えてもらう俺よりも、俺から効率よく魔法代償を集中する方法を教えてもらっているマドハトとレムの方が上達が早く、地味に焦ってみたり。

 ここ数日で判ったことだけど、魔法というのは精神的なものだから、最初の理解を乗り越えることができるとその先が早い。

 武術とか楽器とか体を動かすものは、頭で理解しても体が馴染むまで何度も繰り返し練習が必要になる。でも魔法は算数とか数学みたいに、足し算とか、割り算とか、二次方程式とか、一つの方法論やら公式やらを理解できるだけで簡単に世界が広がる。

 俺が魔法を覚えるのが早かったのは、ちょっと特別だったんじゃないのとか、ちょっぴりだけどいい気になっていたのを反省するくらい、彼らはすぐに魔法代償の絞り込みが上達した。


 本当はポーと一緒に何ができるか色々と試したい気持ちもあるんだけど、いつどんなことが起きるとも限らないから内緒にしておくことにした。

 今はまだルブルムしか知らない……いや、レムとは『テレパシー』でつながったから、薄々は伝わっているかもだけど。




 稽古の後は、明日の出発に備えて早めに就寝だ。

 見張りは、最初がマドハトとクッサンドラ、次が俺とエクシあんちゃん、次がメリアンとロッキンさん、最後がルブルムとレム。


 寝てすぐ起こされた……と思ったら、二つある月がかなり動いていた。

 伸びをしてから武器を装備して馬車の外へ出る……と、エクシあんちゃんは槍を素振りしていた。


「エクシあんちゃん」


 声をかけたが返事はもらえない。

 少し迷い、もう一度声をかけようとして、ようやく返事が返ってくる。


「クッサンドラ達みたいにべちゃべちゃ喋っていたら、見張るべきものを見落とすぞ?」


 確かにその通りだ……けど。

 気まずい空気を勝手に感じながら、エクシあんちゃんとは逆側の見張りを始める。


 満点の星空の下、焚き火の音以外は静寂。

 思考だけがやけに捗る。


 俺と遊んでくれたエクシあんちゃん。

 ドッヂに対して差別的な言葉を吐いたかつてのエクシあんちゃん。

 街を出て領兵になって、体を鍛えまくったエクシあんちゃん。

 ケティとはやたら仲良くしていたエクシあんちゃん。

 俺とはとても距離感を感じるエクシあんちゃん。


 同郷の人と一緒に居ると感じるこの世界における異物感を、エクシあんちゃんと居る時は余計に強く感じる。

 見張りが終わる頃にはもうすっかり心がザラついていた。

 マクミラ師匠。俺、いつまでたっても紳士になれない気がしています。




 馬車に戻りメリアンを起こし、寝藁に寝転がる。

 この旅が終わったら、俺はどうなるんだろう。

 ケティとのこと、リテルに体を返すこと、本気で考えないといけない。


 元の世界の俺はやっぱり死んだんだよな?

 これは転生なんだよな?

 リテルに体を返したら、やっぱり死ぬのかな、こっちでも。


(トシテル)


 ルブルムの声。

 右の手のひらに温かいものが触れたのと、同時だった。

 これは、ルブルムが俺の右手を握りしめているのか。

 そして『魔法偽装』で『テレパシー』を使ったのか。


(ルブルム……寝てないのか? それとも、起こしちゃったか?)


(大丈夫。さっきおしっこに行くために起きた)


 おいおい。年頃の女の子がそんな報告を……ってまあルブルムにとっては家族みたいなもんだから仕方がないのかな。


(寝ないとだよ)


(トシテルに話したいことがある……『テレパシー』を教えてもらっておいて良かった)


 まあ、声を出さずに会話できるのは便利ではあるけれどさ。


(睡眠不足だと魔法を使うとき集中しにくくなるってカエルレウム師匠も)


(わかっている。でも、言いたいことがある。トシテル達が稽古していたときに試してみたこと。『テレパシー』の相手を自分自身にしてみたら)


(自分自身に?)


(自分の過去の記憶を、今見ているみたいに実感できた)


 記憶を実感……利照(おれ)がリテルの記憶にアクセスしているみたいに、自分の記憶にも?

 そしたら自分が一度しか見聞きしなかったことを後で改めて反芻できるのか。


(もしかして魔法の反復練習がすごく便利になるんじゃないか?)


(……それは試していない……)


 それはすごい発見かもって思ったんだけど、ルブルムの反応がなんか歯切れが悪いというか。


(あの時の自分に戻って、アルブムにごめんなさいを言う練習をしてた)


 あー……前に教えてもらった話か。


(アルブムのこと大切だよって伝える練習とね、もう一つ)


(もう一つ?)


(あのとき、泣いてしまった理由がわかった)


 泣いた……もしかしてこっちのは、ベイグルさん達の小屋で、ケティが俺にキスをしたときの事?



● 主な登場者


利照(トシテル)/リテル

 利照として日本で生き、十五歳の誕生日に熱が出て意識を失うまでの記憶を、同様に十五歳の誕生日に熱を出して寝込んでいたリテルとして取り戻す。ただ、この世界は十二進数なのでリテルの年齢は十七歳ということになる。

 リテルの記憶は意識を集中させれば思い出すことができる。利照はこれを「記憶の端末」と呼んでいる。

 ケティとの初体験チャンスに戸惑っているときに、頭痛と共に不能となった。不能は魔女の呪詛による。

 その呪詛を作ったカエルレウムに弟子入りした。魔術特異症。猿種(マンッ)

 レムールの「ポー」と契約。現在は、呪詛持ちのラビツ一行を追跡している。


・カエルレウム師匠

 寄らずの森に二百年ほど住んでいる、青い長髪の魔女。猿種(マンッ)

 肉体の成長を止めているため、見た目は若い美人で、家では無防備な格好をしている。

 寄らずの森のゴブリンが増えすぎないよう、繁殖を制限する呪詛をかけた張本人。

 ディナ先輩、ルブルム、リテルの魔法の師匠。


・ルブルム

 寄らずの森の魔女カエルレウムの弟子。赤髪の美少女。リテルと同い年くらい。猿種(マンッ)のホムンクルス。

 かつて好奇心がゆえにアルブムを泣かせてしまったことをずっと気にしている。

 カエルレウムの弟子を、リテルのことも含め「家族」だと考えている。

 質問好きで、知的好奇心旺盛。驚くほど無防備。

 ディナの屋敷でトシテルとの距離がぐっと近づいた。戦闘時の息の合い方はケティが嫉妬するほど。

 ケティがリテルとキスしたり痴話喧嘩したりするのを見て涙を流したが、その理由に気付いたらしい。


・ディナ先輩

 フォーリーに住むカエルレウムの弟子にしてルブルムの先輩。

 男全般に対する嫌悪が凄まじいが、リテルのことは弟弟子と認めてくれた。

 アールヴと猿種(マンッ)のハーフ。壮絶な過去を持つ。

 フォーリー以北への旅について、大量の忠告をしてくれた。


・マドハト

 赤ん坊のときに取り換え子の被害に遭い、ゴブリン魔術師として育った。犬種(コボルトッ)の先祖返り。コーギー顔。

 今は本来の体を取り戻しているが、その体はあんまり丈夫ではない。

 ゴブリンの時に瀕死状態だった自分を助けてくれたリテルに懐き、やたら顔を舐めたがる。

 リテルにくっついてきたおかげでちゃっかりカエルレウムの魔法講義を一緒に受けている。

 フォーリーの街中で魔法を使ってしまい、三年分の魔法代償徴収刑を受けた。

 勇敢なのか無謀なのかわからないときがある。いつも明るい。


・ケティ

 リテルの幼馴染。一歳年上の女子。猿種(マンッ)

 旅の傭兵ラビツに唇を奪われ呪詛に伝染し、それを更にリテルへと伝染させた。

 カエルレウムが呪詛解除のために村人へ協力要請した際、志願し、リテル達がフォーリーを発つ時、メリアンと共に合流した。

 盗賊団に襲われた際は死にかけたり、毒で意識不明になったり。

 足手まといを自覚し、ストウ村へ先に戻る決意をした。


・メリアン

 ディナ先輩が手配した護衛。

 リテルたちを鍛える依頼も同時に受けている。

 ものすごい筋肉と、角と副乳を持つ牛種(モレクッ)の半返りの頼もしい傭兵。

 円盾と小剣(ごつい)を二つずつ持ち、手にはスパイク付きのプレートナックルを装備。

 謎の襲撃犯を撃退し、リテル達と合流。

 騎馬戦も上手な様子。どうやらラビツの知り合いである様子。


・エクシあんちゃん

 ビンスン兄ちゃんと同い年で、リテルが小さな頃は、ビンスンやケティと一緒に遊んでくれた。

 村一番の絶倫ハグリーズの次男で、今はフォーリーで領兵をやっている筋肉自慢。

 ちょいちょい差別発言を吐き、マウントを取ってくる面倒な人。

 ルブルム一行の護衛として同行。


・ドッヂ

 リテルの弟。ソンとは双子。猿種(マンッ)の先祖返り。


・クッサンドラ

 病弱だったマドハト(中身はゴブリン)の世話を焼いていたゴド村出身の犬種(アヌビスッ)の先祖返り。ポメラニアン顔。

 フォーリーで領兵、それも偵察兵をやっている。

 ルブルム一行の護衛として同行。


・ラビツ

 ゴブリン魔術師によって変異してしまったカエルレウムの呪詛をストウ村の人々に伝染させた。

 兎種ハクトッのラビツをリーダーに、猿種マンッが二人と先祖返りの猫種バステトッが一人の四人組。傭兵集団。

 ラビツは、ケティの唇をリテルのファーストキスよりも前に奪った。

 北の国境付近を目指している。本人たちは呪詛にかかっていることに気付いていない。


・ウォルラース

 かつてディナ先輩とその母を絶望のどん底へ叩き落とした張本人。

 名無し森砦を守る兵士たちと手を組み、スノドロッフの子どもたちを狙っていたが、ダイク達を見捨てて独り逃げた。

 クスフォード虹爵と国王との間で、カウダ盗賊団の首領とされ逆賊認定された。

 本来は身を守るための魔法品を、相手の無力化に用いたりなど、魔法品を使いこなす。


・ベイグル

 猫種(バステトッ)の先祖返り。アルバスだが、レムルースで赤目を隠している。

 槍を持つスノドロッフ村の村長。魔法に詳しい。


・レム

 バータフラ・レムペー。クラースト村のバータフラ世代の五番目の子。

 魔法に長けた爬虫種(セベクッ)の少女。

 リテルより若いが胸はかなり育っている様子。髪型はツインテール。

 カウダの毒を塗った吹き矢や短剣を使う。

 その母親は利照同様に異世界イギリスから来た。

 リテルにお兄ちゃんになるよう要求した。

 レムに罪が及ばぬよう色々と画策したが、クスフォード虹爵と国王との間で名無し森砦の兵士は全員職務を全うした勇敢な兵士とされたため、大丈夫になった。


・ロッキン・フライ

 名無し森砦の兵士。

 フライ濁爵(メイグマ・クラティア)の三男。

 ウォルラースとダイクの計画を唯一知らされていなかった兵士。正義の心を持っている。


・ガレーテ・クスフォード

 クスフォード虹爵マウルタシュの長男にしてクスフォード領兵第二隊隊長。

 白馬にまたがり王子様っぽい雰囲気。

 リテル達に新しい馬車を用立ててくれた。


・レムルース

 地界(クリープタ)に存在する種族。肉体を持たず、こちらの世界では『契約』されていないと長くは留まれない。

 『虫の牙』の呪詛のベースにされていた他、スノドロッフ村の人達が赤目を隠すために『契約』している。

 レムルースは複数形で、単体はレムールと呼ぶ。

 ディナ先輩の体からリテルの腕へと移ったレムールは、リテルと契約し「ポー」という名を与えられた。


・クー・シー

 元々は異世界に居た獣だが、こちらの世界に居着くクー・シーも居る。

 暗めの緑色の体毛は長いうえにモジャモジャ。長い尻尾はぐるぐると巻いて背中に乗せている。

 四本ある足は、大型犬や牛と比べても太くて大きい。

 妖精に飼われていることも多く、牛をさらったりもする。とにかく乳製品が大好き。



● この世界の単位


・ディエス

 魔法を使うために消費する魔法代償(寿命)の最小単位。

 魔術師が集中する一ディエスは一日分の寿命に相当するが、魔法代償を集中する訓練を積まない素人は一ディエス分を集中するのに何年分もの寿命を費やしてしまう恐れがある。


・ホーラ

 一日を二十四に区切った時間の単位(十二進数的には「二十に区切って」いる)。

 元の世界のほぼ一時間に相当する。


・ディヴ

 一時間(ホーラ)の十二分の一となる時間の単位(十二進数的には「十に区切って」いる)。

 元の世界のほぼ五分に相当する。


・クビトゥム

 長さの単位。

 本文中に説明はなかったが、元の世界における五十センチくらいに相当する。

 トシテルが元の世界の長さに脳内変換しないでもいいくらい、リテルが日常的に使っていた単位。


・アブス

 長さの単位。

 元の世界における三メートルくらいに相当する。


・プロクル

 長さの単位

 一プロクル=百アブス。

 この世界は十二進数のため、実際は(3m×12×12=)432mほど。


・通貨

 銅貨(エクス)銀貨(スアー)

 十銅貨(エクス)(十二進数なので十二枚)=一銀貨(スアー)


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