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英雄譚でない、一人の男の戦い開幕。

 世界を魔王から救う転移者たちの旅は

佳境となっていた。

強力な魔王の側近たちは既に

転移者たちに倒されて、残るは魔王のみだった。


 転移者たちは33人、

全て10代の少年少女だった。

彼らはレガリアス聖王朝によって

起死回生の一手として召喚された。


その中で勇者、賢者、戦士の職種に対して

特に優れた適性を持った3人と

この世界の唯一無二の聖女、

斥候として名を馳せたまとめ役の男、

そして荷役として2名が同行して、

最後の敵である魔王の鎮座する城への旅路にあった。


レガリアス聖王朝のあるロンムデルド大陸の

大半を一度は支配した魔王の一党も最早、

魔王城を残すのみとなっていた。

既に6名の視界に魔王城が映っていた。


勇樹と呼ばれた勇者、


怜人と呼ばれた賢者、


健二と呼ばれた戦士、


聖女たるレイニィ、


斥候たるドルチ、


荷役のマルコ、ホニィは、


魔王城を前に誰もが黙っていた。


 その夜はいつものように順番で夜警についた。

そこで静かな夜に嬌声と淫靡な臭いを

漂わせる2人がいた。それは勇樹とレイニィだった。


二人は常に同じ夜警の番だった。

二人は皆より少し離れた暗がりで毎晩、

まぐわっていた。


そして聞き耳を立てる同郷の2人、

寝られずにマントにくるまり身もだえるマルコ。


 朝を迎えると誰もが何事もなかったかのように

振舞っていた。

勇樹は荷役の2人にも分け隔てなく接し、

レイニィも2人に優しく接した。


ホビット族のホニィはそんな二人に感銘し、

信者のように二人を崇めていた。

しかし、マルコは勇樹に対して、

嫉妬の目を向けていた。

戦士として成功すること望んで

村を飛び出して早や5年、

その結果は荷役のスペシャリストであった。


目の前に彼が望んだ未来を体現した同世代の男がいた。

その男は、類まれな容姿に他者と冠絶する力を持ち、

そして絶世の美女を毎晩、抱いていた。

マルコは怜人も同じ視線を勇樹に向けていることを

知っており、自分だけではないと己の卑屈な心慰めた。


「よしっ!この城の魔王を倒すだけだ!

皆、あと少しだ。頑張ろう」

魔物の気配のない魔王城に入り、勇樹が陽気に叫んだ。


元々無口な健二は頷くだけだった。


ホニィは頬を紅潮させて、何度も頷いていた。


「おいおい、少しは緊張しろよ」

勇樹を窘めながら、肩を組む怜人だった。


周囲への警戒するドルチは、

全く態度が変わる事はなかった。


「あと少しですわね、勇樹様」

微笑ながら熱ぽい視線を送るレイニィだった。


マルコは少し後ろから醒めた視線を送った。


 暫く深部に向かって魔王城を

歩いていた一行は立ち止まった。


「マルコ、ホニィ、君たちはここまでだ。

もし僕らが全滅したら、直ぐに王朝へ

戻ってそのことを伝えるんだ。

いいね、よろしく頼むよ」


勇樹はマルコの手を力強く握った。

「痛っ!少しは加減しろって」


「あっすまない」

勇樹は慌てて手を離し、今度はホニィの頭を

優しく撫でた。

「ごっご武運を」


「ああ、ちょっと行ってくるよ」


勇樹を先頭に4人は魔王の待つ大広間に

足を踏み入れた。


「魔王、おまえを倒す!」

勇樹は叫ぶと、魔王に向かって走り出し、

聖剣を斬りつけた。


大地を揺らし、大気を震わせ、

激しい爆音と叫び声が飛び交い、

彼等の戦いの激しさを物語っていた。


朝方より戦いは始まったが、

陽は既に陰り始めていた。


彼らの体力、魔力は既に尽きかけていた。

健二は床に突っ伏し、怜人は壁に寄りかかったまま、

ピクリとも動かなかった。


勇樹は聖剣を握り直した。

「魔王よ、そろそろ決着をつけようか」


勇樹は聖剣を握り直した。


聖剣に勇樹の生命力が集まった。


「聖剣よ、世界に平和をもたらす光刃となれ、神魔滅却斬」



巨大な魔王に巨大な光によって

形作られた刃が振り下ろされた。


「グオオオオ」


魔王はそれを右腕と左腕を交錯させて受けた。

光刃の勢いは止まらず、魔王の両腕を斬り落とし、

魔王は袈裟切りにされた。


「カハッ」


魔王は口からどす黒血を勇樹に向けて吐いた。

血は剣のように鋭く、勇樹の右腕を肩口は吹き飛ばした。

両者はその場に倒れ込んだ。


「勇樹、ゆうき、ゆうき」

レイニィは重い身体を引き摺る様に

動かして、勇樹に近づいた。


「ごっごめん、レイニィ。倒せなった。

けどこれで少しは時間が稼げるかも」

土気色の勇樹は、それ以上、何も言わなかった。


「ううっ勇樹。

勇樹、あなたが責任を負うことじゃない。

ありがとう、この世界のため命を賭けてくれて。

後は私たちこの世界の人々で何とかするわ。

だからあなたは生きて、うん、元の世界に戻って」


レイニィは残る魔力で勇樹に回復魔術をかけた。

レイニィは勇樹に唇を重ねた。


そしてレイニィは、立ち上がった。


魔王は虫の息だったが、死んではいなかった。

しかし、レイニィには止めを刺す攻撃力は

皆無だった。


レイニィは、魂を神に捧げた。

聖女と呼ばれた娘の魂は、魔王を封印、

浄化することに対して、神々にとって対価

としては十分であった。


「神を我が魂を持って、魔王を浄化したまえ」


透明なクリスタルが魔王とレイニィを包んだ。

そして、魔王の心臓部からクリスタルは

徐々に黒く濁り始め、ある一点を除いて

真っ黒になった。


その一点には祈りを捧げるレイニィがいた。

ゆっくりと消えゆく自我、そのなかでレイニィは、

お腹に宿る勇樹との子に謝っていた。

『生んであげられずにごめんなさい。

おとうさんに会わせられずにごめんなさい』

その思いも次第に消え去っていった。


よろしくお願いいたします。何の力もない男が夢の実現で成長する物語


『起きるとそこは、森の中。可愛いトラさんが涎を垂らして、こっちをチラ見!もふもふ生活開始の気配(原題.真説・森の獣)』


こちらも読んで頂けると幸いです。

良ければ、ブックマークと評価をよろしくお願いします。


★★★★★にしてくれると嬉しいです。

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