トッププレイヤーの激突
「ヒャッハァ!『アクセル』!」
「『エンチャント・ダーク』!『パワースラッシュ』!」
加速アーツで一瞬で距離を詰めようとするも、両手剣の横薙ぎで牽制されたため横に逸れる
その勢いのまま、別のやつに攻撃を仕掛けようとするも……
「『カバーシールド』!」
「ちぇっ、『ダークアロー』」
「あっ!『マジックシー……うわっ!?」
「『ライトヒール』!」
すぐに盾持ちが間に入ってきた
咄嗟に魔法攻撃に切り替えて防御アーツをスカすも、回復魔法が飛んできて体力を回復される
「無視すんな!『アクセル』、『スラッシュ』!」
「無視してねぇよ、『バックステップ』」
「クソ、ちょこまかと……!!兄ちゃん!あれやってもいい!?」
「ああ、魔法も使って全力で倒せ!!」
ドラシャイくんからのラブコールを、後ろに飛び退いて回避
一対多はスタミナ管理がきちぃなぁ
だが、どうやら本番はここかららしい
「『ダークアロー』!『ソニックスラッシュ』!」
「おあっとぉ!?」
魔法の矢と素早い斬撃。片方だけなら大した脅威ではないが、それが同時に来るとなると厄介な攻撃となる
どちらも1人で繰り出したためか、誤差ほぼゼロ秒で迫ってきた二つの攻撃
それを身を捻り、大げさなスウェーをしてなんとか回避する
「『パワースラッシュ』!『スラッシュ』!ここだぁっ!『連続斬り』!!」
「『スラッシュ』!くおおぉ!?チッ、『シャドウダイブ』!」
無理な体勢で避けてしまったところに、ドラシャイくんからアーツの連撃が叩き込まれる
『パワースラッシュ』は甘んじて受け入れ、『スラッシュ』は相殺。それ以上は厳しいんで、仕方なく緊急回避手段を使った
もし、ただの『連続斬り』勝負ならおいらに分があっただろう
相手が両手剣なのに対しおいらは短剣。AGI差もあって、手数攻撃にはカウンターを返すことができた
なのに、おいらは逃げた。逃げざるを得なかった
「影に入った!兄ちゃん!!」
「了解!『フラッシュ』!」
「へへ、遅かったなぁ!もう出てるぅおあっ!?」
「くっそぉ!『ヘビースラッシュ』!」
『フラッシュ』でダウンさせられる前に影から飛び出す……が、なんと眼前に闇の魔法矢が迫ってきていた
それを後転でなんとか避け、続く『ヘビースラッシュ』もそのまま転がり続けて回避する
「おいおい、このへなちょこ魔法、当たるまで維持し続けるつもりかァ?」
そう、さっきからおいらが慌てて回避していた原因、それは最初にドラシャイくんが放った『ダークアロー』だった
初撃を完璧に回避し、おいらの後方へと飛んでいったはずのそれ
それが『魔力操作』によってUターンしてきて、なんともいやらしいタイミングでおいらを貫こうとしてくるのだ
それ単体でも難易度が高い『魔力操作』を、自分自身も動きながら操作して本体の隙を埋めるように攻撃してくるとはな
相変わらず、とんでもない技量の持ち主だぜ……!!
「攻撃ってのは当たんねぇと意味ないぜ?こんなノーコン魔法、使ってるだけ魔力のムダだろ?」
「なんだと!?『アクセル』!『スラッシュ』!『ダークボール』!!」
「惑わされるなよタツキ!当たらなくとも、動きが制限されるからちゃんと意味はあるぞ!」
「わかってるよ!!」
ちぇっ、引っかかってくれたら楽だったのに
このドラシャイくん、魔法職でも十全に扱える奴はごく僅かと言われている『魔力操作』を、剣をぶん回しながら使ってくるヤベェやつだ
『魔力操作』は、魔力をさらに込めることで魔法の威力・スピード・軌道を調整することができるスキルだ
だがこれにはアーツが一つもなく、操作方法は「イメージ力」というなんとも感覚的な方法になっている
『剣』やら『弓』やらは、言ってしまえば身体を動かすことの延長だ。馴染みがなくともスキルアシストもあってわりとなんとかなる
だが、魔法関連はその殆どが未体験な要素だ
廃ゲーマー連中でもこれまでのゲーム経験を活かせる部分がなく、苦戦を強いられているという
そのため戦闘中に咄嗟に撃つ場合、威力かスピードのどちらかを強化する程度になってしまう
それをこいつ、いとも簡単に使ってくれやがる
それも自分自身も動く上に、まるで魔法と連携取ってるかのようにタイミングを合わせるという神技まで披露する始末だ
子供ゆえの柔軟な想像力がそれを可能とさせてんのかぁ?まったく、末恐ろしいガキだぜ
「へへ、そろそろ息切れも『アクセル』!近いんじゃ『バックステップ』!ないかぁ!?」
「っっ!!『ダークアロー』『ダークスフィア』!」
正直、口に出してるほどの余裕はない。さっきから回避にリソースをさいてばっかで、攻撃するタイミングが掴めない
こいつとタイマンだったなら勝ち筋はいくらでも見出せる。調子づかせてスタミナ枯らしゃ、後はどうとでも調理できる
……そのスタミナぶっぱを凌ぐのがどちゃくそ辛いってだけで
「タツキ!どいて!!」
「くっ…そぉ!!『バックステップ』!」
「『アクセル』!『シールドバッシュ』!」
「『不意打ち』!『マジックエッジ』!」
「『ターゲット』!いけぇぇぇ!!」
「かんっ、べんっ、してくれぇ!?『跳躍』!!!」
だが、こいつらは今5人パーティだ
ドラシャイくんが引いた瞬間、正面から盾が突っ込んできて、後ろから斬撃が飛んできて、さらに今まで溜めていたのか、四本の魔法矢が頭上から降り注いだ
おいらはその全てを回避しきれずも、被弾を最小限に抑えて後ろへと跳び、ポーションを使う隙を窺う
「よく耐えたなタツキ、すごかったぞ!」
「うう…もうちょっとだったのに…!」
「あれ以上やってたら、本当に〈息切れ〉になってたぞ。だけど、スタミナ切れが近いのはあっちも同じだ!後は俺たちに任せろ!」
「タツキばっか前出るなよな!」
「そうだそうだ!」
「タツキが1番強いからしょうがないけどさぁ!」
「わ、わかったよ!!」
いやぁ、キビしぃねぇ…
ちょくちょく小休止を挟んで、スタミナ温存させてはいたんだが、それでもカッツカツだ
いつものおいらなら、ハッタリで伏兵の存在を匂わせでもして注意を分散させてたところだが……
今回のミッションはおいらが注意を引きつける役。この手段は使えない
くっ、そろそろ三分は経ったんじゃないかぁ?コオロギ、早くしてくれ───
(───撤退)
「っ!!?」
どこからか聞こえてきた声。一体どこから、と考えるまでもなく、おいらの身体は動き出していた
「今日はこれくらいにしといてやる、ぜっ!!」
取り出したのは手のひら大のボール状のなにか。それを思いっきり地面に叩きつけると……
ボフンっ!!!
「なっ!?」
「煙幕か!!」
「逃がさないぞ!!」
「待てみんな!今は護衛任務中だ!追い払えたならそれでいい!!」
「あっ、じゃあよかっ……でも!倒したかった!!」
「また今度にしなさい!」
おー怖。その今度ってのは、もうちょい万全の状態で挑みたいもんだね
[煙玉]を使い視界を遮ったおいらは、こうして森の中を猛ダッシュすることで逃げおおせることに成功したのだった
キッツかったぁ〜〜。でも………やっぱ、対人戦って楽しぃなぁ!!!




