プレイヤーキラーのプライド
「おいおい……よりにもよってキッズクランかよ……」
あいつらがいること忘れてたぜ……
あそこの主力パーティは、いつもインする時間帯が昼過ぎあたりだったわそういや。午前中は夏休みの宿題でもしてんのかな?
「なんだ、知り合いか?」
「知り合いっつうか……一回襲った襲われたの仲って感じだな」
「ほぉ……」
ま、その一回以降襲うのやめちゃったんだけどな。あいつらやりにくいんだよ……
クソガキみたいな言動に騙されてはいけない。いや、中身もまんまガキなんだけど、その実力は大人顔負けの強さを持ってやがる
あのガキ、ドラゴンシャイニングは魔法剣士タイプのビルドだ
物理と魔法の両立という、どっちつかずで器用貧乏になりがちなそのスタイルを、プレイスキルのゴリ押しでどちらも高水準で運用できるという結構すげぇことやってるやつだ
…………ただ、PKとして手を出さなくなった理由は、単純に強かったからってだけじゃないんだけどな
ただ強いだけなら、むしろ頻繁に手を出してる。あいつらはまた別の面倒な事情があんだよなぁ……
「……コオロギ、さっきは5分保たせるって言ったけどやっぱ無理だわ。よくて3分、下手すりゃ1分ももたんかも」
「なんだ?直前になって自信なくなったか?」
「自信もなくなるぜ、あんなん相手にするってなりゃあな……」
幸いなことは、相手は護衛ミッション中ってことか。おいらが離脱しても深追いされないはずだ
逃げの手段はあまり考えず、時間いっぱいまで粘り続ければいい
「そうか。……やめとくか?」
「いやいや、一度やるって言っちまったことだ。死んでもやり遂げるぜ」
「そこまで重く捉えんでもいいんだが……わかった。俺もできるだけ早く終わらせるから、頑張れよ?」
「あいよ〜」
それだけ言うと、コオロギは木の影からフッと消えていった
……今のって『シャドウダイブ』か?あまりにも自然に消えるもんだから、目の前で使われたのに全然気づけなかった……
いつかはあいつにも挑んでみたいと思ってるけど、まだまだ実力が足りなさそうだなぁ
「…ふぅ、おいらもお仕事頑張りますかっと」
近づいてきた荷馬車。木の上にいるおいらの下までもう少しというところまで来ているそれに、狙いを定める
盗賊の初撃といやぁ、弓矢でのご挨拶だよなぁ。さてと……まずは馬をビビらせてほしいんだったな?
「一応、当てないどいてやるよ、『狙撃』」
「ヒィィィイン!!?!?」
「なっ、敵襲!!」
「やっと来た!!」
「ヒヒィィン!!!?」
「うおっ!?このっ、クソ馬!大人しく……あぁぁぁ!!?」
おいらが放った矢が馬の足元に突き刺さり、それに驚いた馬がめちゃくちゃに暴れ出す
それを小太りの商人がなんとか制御しようとするが、それも虚しく馬車ごと横転してしまう
……あんま荷馬車には詳しくねえけど、ありゃさすがに過積載じゃねぇか?
「おっさんザマァみろバーカ」
「因果応報!因果応報だ!」
「そのまま死んじゃえばよかったのに」
「こらっ、そういうこと言っちゃいけません」
「それよりも敵が来るぞ!どっからでもこい!!」
おっと、お呼ばれしたな
そんじゃ、いっちょカマしてやりますかぁ!………気が滅入るなぁ………
「『アクセル』、『ソニックスラッシュ』」
「うわっ!?」
木から駆け降り、先頭にいたドラゴンシャイニングへと切りつける
キルはナシって約束だからな。万一を考えて急所は外しておく
「お、お前は……!?」
「PKクランのクランマスターじゃん!!?」
「へへ、ご紹介に預かりまするはクラン〈夜の死花〉の長を務めるネムと申しやす、なんつってな。お久しぶりぃ、ドラシャイくん?」
「な、なんでお前がここに!?」
へっ、ただ注目を集めるってんなら、おいら以上の適役はいねぇんじゃねぇかな?有名人ってつらいわぁ
だが、こいつら相手だとそう簡単にはいかない
おいらにガッツリ向いたはずの全員の敵意。それが──なぜか、仲間内へと向けられた
「タツキ!おまえ騙したな!!」
「へ?なっ、騙すってなんだよ!?」
「オレたちのことPKに売ったんだろ!!」
「仕返しのつもりかよ!!」
「じゃあコオロギのこともウソだったんだな!!」
「ちがっ、全然違う!知らない!こんなのが来るなんて!!」
「やめなさい!決めつけでそんなこと言ったらだめでしょ!!」
あーあ、すぐこれだよ………本当に気が滅入る……
このクソガキども、なにかあればす〜ぐケンカを始めやがる。そういうヘイトは全部おいら達「悪者」に向けて欲しいんだがなぁ
なんつーか、申し訳なくなってくるんだよなぁ。興が削がれるとも言える
クラメンにはこいつらを襲うこと禁止にしたんだけど、言う前から既に避けてたメンバーが多かったのは笑えなかったな
「──すまない、交渉してもいいだろうか?」
「おぉん?」
「に、兄ちゃん!?」
戦闘前で昂った気持ちが萎え始めてたところに、ガキパーティで唯一の大人が話しかけてきた
通称「保護者のお兄さん」。そいつが武器を地面に落とし、無抵抗を表すようにゆっくりと近づいてきた
「今、俺たちは重要なクエストをしてる最中なんだ。どうか邪魔しないで欲しい」
「ほほぉ?」
「承諾してくれるなら、俺の持ってるアイテムを全部渡す。ここにいる全員をキルするよりも、多くのアイテムだ」
「なるほどねぇ……、あんたらはクエストがクリアできる。おいらはあんたら全員ぶっ殺すより多いアイテムが手に入る。お互いWin-Winってわけだな?」
「そうだ。頼む……」
こいつも苦労してんだなぁ。協力してやりたい気持ちもないでもない
たしかにおいらには得しかない。本来の目的である注目を集めるってのも、悩むフリして時間を稼ぐことでいける
渡りに船だ。この提案に乗ってやってもいい──
んなわけないだろ
「俺が今一番欲しいもの、わかるか?」
「いや、わからないができるだけそれに近いものを……」
「快感だよ」
「……なんだと?」
「聞こえなかったかぁ?快感だよか・い・か・ん。特に、あんたらみてぇな甘ぇ考え持ってるヤツをブッ殺すことでしか得られねぇような、極上の快感をなぁ!!」
「チッ!交渉決裂か…!!」
保護者くんが一足に飛び退き、落とした武器を回収しながら元のポジションまで戻る
そうだ、それでいい
おいらはプレイヤーキラーなんだぜ?人を殺したくてたまんないような、悪ぅいヤツなんだぜぇ?
交渉なんてしようとすんな。戦いを避けようとすんな
この一期一会の楽しみを、ゲーム内アイテムとかいう時間かけりゃ誰でも手に入るクソみてぇなもんで潰そうとすんな
保護者くんにゃあそういう意図はなかったんだろうけどなぁ………
「役になりきるゲーム」というジャンルで「悪役」を選んだおいら達にとって、それは侮辱に相当する行為だ
悪ってぇのは、どうやっても相容れないような存在だから悪なんだぜ?話ができると思うなよ
「クヒヒ……殺し合いを楽しもうぜぇ…?」
「クソッ、来るぞ!!」
ありがとうな、おかげで萎えてた気持ちがあったまってきたぜ、クソ野郎
お相手にゃあ理不尽極まりねぇだろうがなぁ……おいらの悪役としての意地につきあってもらうぜぇ……!!




