お互いビクビク
自身をプレイヤーキラーだと明かした目の前の青年。その瞬間俺の警戒心──というか恐怖心が一気に跳ね上がった
び、びっっくりしたぁ!?心臓止まるかと思ったぞ!!
気さくに話してた人が、連続殺人事件の犯人だったときみたいな心境だぞ……。いや、現実でも人殺してるわけないのは頭ではわかってるんだけど……
でも怖いもんは怖い。なんせ、カルマ値を気にせず他プレイヤーを攻撃できるような立ち位置の人だ
普通そういう人って、もっとこうギラギラしたような危険人物オーラを纏ってるんだけど……彼のことは、自ら明かされるまで気付けなかった
「どうしたコオロギさんよぉ?やっぱ人殺しの手は借りれないか?」
「…………いや、驚いてただけだ。まさか自ら打ち明けてくるとは思わなかったからな」
「へぇ、流石のコオロギ様だな。まさか気づかれてるとは」
「そりゃ気づくぜ、そんだけ主張が激しけりゃサルでも気づける」
「……ま、それもそうか」
そう、サルでも気付けたぐらい怪しいところだらけだったんだ。ほーんと俺ってバカ
わざわざ盗賊が待ち伏せに使う場所を選んで、『隠密』使いながら木の上で寝るなんてことしてたし。てか身なりが完全に暗殺者のそれだし
「わかってて見逃されてたとはねぇ……。やっぱりあんたもこっち側だったりするのか?」
「……は?」
「ちょいちょい冗談だって!そんな怖い顔すんなよぉ」
いや、質問の意図がわからんくて生返事を返してしまっただけなんだが……
なんか、さっきから様子がおかしくないか?
「コオロギさんよ、あんたヤケに人殺しに寛容じゃねぇか」
「あぁ、まぁな。人殺しっつっても、異邦人同士に限るが」
「そこが変なんだよ。他の住人からは普通に犯罪者扱いされてんだぜ?歓迎してくれんのは暗殺ギルドぐらいでな………だからそういう関係のお方なんじゃねぇかって邪推しちまったんだわ」
「あぁ〜〜……まぁ、似たようなもんだ」
うっ……こりゃムーブミスったかも?
そうだよな、普通のNPCならPK相手は警戒するよなぁ。これはもう割り切って裏の世界の住人ってことにしとこう
「否定も肯定もしないと。なるほどねぇ……」
「ん?」
「話は戻るんだが、おいらが盗賊役をやるってのは可能なのか?あんたが寛容で、こんなことで機嫌を損ねるような奴じゃないってことはわかったんだが、おいらの気が済まねんだわ」
「………できんこともないが。ただ、結構きちぃぞ?お前1人で盗賊全員分の活躍をせにゃいかんからな」
「腕っぷしには自信がある方だが……どんくらいキツいんだ?」
……どんくらいキツいんだろう?今のドラゴンシャイニングの強さがわからんからなぁ
「……多くても異邦人の護衛が5人。内1人は俺の見立てだと、あんたが殲滅しちまった盗賊共も倒せるだろう強さだ」
「ほう、異邦人ねぇ…」
「そいつらと御者含めた6人の視点をしばらく釘付けにしてもらいたい。もちろん、殺しはなしだ」
「なるほど……。どんなやつがくるかによるが、殺さず暴れ回るんなら5分くらいはいけるぜ?」
「本当か?」
「おいらの実力が心配なら、模擬戦でもしてみるか?」
え、やだこわいこわい
「……いや、やめとくぜ。それだけ言うんなら任せてみようじゃねぇか」
「なんでぃ、せっかくコオロギと手合わせできると思ってたんだけどなぁ」
いや無理無理無理シャレにならんて。こいつが実はバケモンPSで、俺のことをボッコボコにする展開とか普通にありうるもん
俺テトロ戦からの戦闘面での強化、まだ全然できてないんだよ……。できたことといえば、『二重詠唱』と[暗雲のローブ]ぐらい
……一応ミュラもか
手札が割れすぎてる。下手に戦闘したくない
「予定だとそろそろ来るはずだ。用事が終わったら合図するから、それまで引きつけててくれ。……そうだ、退却した後に落ち合う予定の場所を決めておこう。盗ったもんを分配したいからな」
「おいらは別に無報酬で現地解散でもいいけど……。合言葉でも考えるか?」
「いや、そこまで徹底する必要はないぞ」
「そだな。一応おいらの名前だけ教えとくぜ。おいらは「ネム」ってんだ、よろしくな」
ネム……知らない名前だな。もしや未来の『決闘鯖』勢かとも思ったけど、そうポンポン会うわけないか
その後、ネムと二言三言詳細を詰めていたら、道の奥の方から荷馬車の音が聞こえてくるのだった
◆side:ネム
あ〜〜びっっっくりしたぁぁぁ!!!
待ち伏せとかいう絶賛後ろめたい事してる最中に、気づいたら至近距離に超ヤベェやつが佇んでたんだもん、心臓止まるかと思ったぞ……
しかもそんなお方の邪魔をしてしまった件。正直死を悟ったね
幸い、おいらの研ぎ澄まされたロールプレイング力と、コオロギの心が広かったおかげで難を逃れたが………
………あの様子、おいらのポーカーフェイスも見透かした上で付き合ってくれたんだろうなぁ
挽回方法が戦闘方面にできたのは僥倖だなぁ。しかも対プレイヤー。おいらの大得意な分野だ
未知のクソ強NPC相手とかじゃなくてよかった
攻略組パーティ相手だったらソロだとかなりキツいけど、あいつらはもう『サーズ』入りしてる頃だ。よっぽどのことがなけりゃカチ合わんだろな
にしても、コオロギがこんなことしてまで手に入れたい物ってなんなんだろな?
裏の住人で確定っぽいから、日頃からこう言うことはやってんのかもしれんけど……
おいら達と同類扱いした時に威圧してきたし、裏っていってもダークヒーロー的な立ち位置なんかな?
「……おっ、来たぞ。あれがターゲットだ」
唐突にコオロギが注意を促してきた。そっちに意識を集中すると、たしかに何かがやってくる音が聞こえる
「んん〜?どれどれ、『望遠』」
木々の隙間からチラリと見えたそれにむかって、『望遠』を使う
さぁて、おいらの相手はどんな奴になるかな?
「……うへぇ、まじかよ」
見えたのは、一頭立ての馬車を操縦する不機嫌そうな小太りの商人と、その馬車の周りを付き従う、なかなか派手な格好をしたプレイヤー達
特に正面を歩く少年は特徴的だ
黒系を基調とし、赤やら黄やらの差し色が入りまくった装備。ワックス何本使ってんだってぐらい主張の激しい黒ツヤツンツンヘアー。1,2年後には腕に包帯とか眼帯とかしてそうなその雰囲気
ドラシャイくんじゃあねぇですかい
てことは、おいらが相手しなきゃいけないやつらは…………
攻略クラン〈竜殺の光剣〉、その主力パーティってことじゃねぇか……!!
まじぃ、気ぃ抜いたらPKK待ったなしだぞ…?




