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依頼の依頼


 目の前で、悔しさを堪えるかのようにプルプルと震える(ドラゴン)(シャイニング)

 一体何があったのか──大体予想できるが──一応聞いてみることにする



「お、おい、少年。どうかしたのか?」


「………………集められなかった」


「え?」


「集められなかったっっ!!!!!」


「おわっ!?わかった、わかったから!でけえ声出すな!?」



 急に騒ぎ出すガキ。ここはまだ表通りに近い場所なんだから、目立つようなことはしないでほしい


 うーむ、さすがに強引すぎたか……。子供の頃って、一旦怒り出したらなかなか止まないもんなぁ……




「そうか、仲直りできなかったか……」


「え?仲直りはできたよ?」


「ん?」


「コオロギ、さんと会って、魔法のレベルの上げ方教えて貰えるって言ったらすぐ許してもらえた」



 なんだ、仲直りできてたのかよ……そういや子供って単純だったな。怒りよりも目先の利益か


 ……あれ?じゃあなんでこいつ泣いてんだ?



「でも、兄ちゃんにはもっと怒られた……」


「兄ちゃんって、お前の兄か?」


「ううん、近所の一緒にゲームしてくれる兄ちゃん……。オレがコオロギのこと言ったら、「そうじゃないだろ」「反省してない」って()われた……」


「あ〜〜……」



 俺が懸念してた事態が起こったのか。子供相手は騙せても、保護者にお叱りを受けてしまったようだな


 ……あれ?近所の兄さんが他所(よそ)()の子のゲームを禁止にする権限が…?今はいいか



「それでちゃんと、「約束破ってごめんなさい」して、許してもらって、みんなから[闇結晶]貸してもらえた……」


「おぉ………お?」



 いや、結局貸してもらえたんかい!

 じゃあ今までの話はなんだったんだ……



「なんだよ、借りられたんならよかったじゃねぇか」


「よくないよ!!みんなから貸してもらって、返すかわりにオレたちにもレベリング方法教えてって()われて貰って、兄ちゃんにも、他のクランメンバーにも借りて、オレのこの武器も一回バラバラにして、頑張って集めたのに、なのになのに………」


「……なのに?」


「これだけしか集まらなかったんだよ!!!」



 そういって、ドラゴンシャイニングがポーチからザラザラと[闇結晶]を取り出した

 数えてみたところ、23個しかない。俺の提示した30個には少々とどいていない



「そ、それは……残念だったな」


「みんなもう武器とかに使っちゃったし、使ってない人もそんなに持ってないし、そもそもゲットしてる人あんまりいないし、だから足りなかった……」



 よく見たら、ドラゴンシャイニングが装備してる剣が、さっき会った時より貧相になっている。『素材返し』かなにかで一回バラしたようだな


 あー……こりゃお題設定ミスったな……


 よくよく考えれば、初見じゃ属性結晶を使わずに保管しておく人の方が少ないだろう。俺みたいに、今後の用途を知ってて今から貯めておくなんて人はいないはず


 それに[闇結晶]の入手難易度もしっかり考慮するべきだった

 [ダークサーペント]は、なんちゃってとはいえダンジョンの最奥ボス。再戦するには、もう一度ダンジョンの最初からやり直さなきゃいけない。フィールドボスなら出て入るだけでいいのにな


 闇系の素材を集めて、『錬金術』の『等価交換』で圧縮するって方法もあるが……闇属性の素材って、とある事情で現在冒険者ギルドでの買い取り価格が上がってるんだよなぁ


 そんな状況なのに、23個も集められたのはすごいな



 正直、こいつが条件失敗する可能性も考えてはいた


 それならそれでいいとも思ってた。『時空魔法』は俺のアドバンテージ、そう易々と教えたくはなかったからな


 ただ、俺が想定していた失敗は、「仲直りできず誰からも借りられない」状態になった時だ。まさか、単純に条件が難しすぎて集められないとは思ってなかった


 流石にこれは可哀想すぎる。どうしようか……

 もう23個でもOKにしちゃおうか?どんな事情があろうと、失敗は失敗という世知辛い現実を突きつける?いや、それはやりたくないな。こいつがゲーム引退してしまう……


 ……そうだ、別の条件にしよう。今度は簡単なのを



「少年、お前の努力は感じられた。ちゃんと仲直りできたようだしな」


「でも、集められなかった……」


「ああ、それは問題だな。………そこでだ少年、お前にチャンスをくれてやろう」


「チャンス……?」


「ああ。今からお前のパーティを連れて、とあるクエストを受けてこい。それだけで、[闇結晶]7個分の働きとしようじゃねぇか」


「そ、それだけでいいの!?あ、でも大変なクエストってこと?」


「まーちょっと大変だな。こいつは護衛依頼だ。『セカン』から『サーズ』へ抜ける荷馬車のな。依頼人が裏に片足突っ込んでるようなヤツだし、方々から狙われてる。敵も味方も面倒だぞぉ?」


「そ、そんなクエストクリアできるかな…?」


「なぁに安心しろ、別にクリアする必要はない。ただ()()()()()()()()


「え…?」


「その依頼を誰かが受けたら、俺が得するってこった。これ以上は秘密だぜ?」


「ほ、本当に?本当に受けるだけでいいの!?」


「ああ、本当さ。で、やるのか?」


「もちろんやるよ!待ってて、みんなですぐ受けてくるから!!」


「おう、ちょっと待ちな。次会う場所は『サーズ』のここだ。それじゃ、頑張れよ〜」


「わかった!ありがとうコオロギ!!」



 走り出したドラゴンシャイニングに、『サーズ』の簡単な地図を思考操作で書いて渡した。それを受け取ったガキはそのまま走り去っていった



 いやぁ、咄嗟に出たとはいえ我ながら天才的な発想だったな!あのクエストが受注されるのは、ちゃんと俺にも利があるし


 いつもは、NPC冒険者がいつか受注するのを気長に待ってなきゃいけなかったからな。それを、プレイヤーを誘導して好きなタイミングでできるなんてラッキーだ


 おっと、こんなことしてる場合じゃなかった。俺も今のうちに()()についておかないとな

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