過疎ゲー住民は新規を逃したくない
トボトボと歩くガキにこっそり近づき、話すタイミングを窺う
近くに人がいなくなったタイミングで、『隠密』を部分解除してあいつにだけ話しかけよう
『隠密』は近づかれるほど効果が薄くなるという特性を逆手に取って、至近距離の相手にだけ存在をあかすという小技だ
実はこれ、結構重要な技術だったりする。今後の必須技能、とまではいかないが、できると要所要所で便利な技だな
まあ言うほど難しくはない。『魔力操作』と同程度の難易度だ
………いいタイミングかな?さてと、驚いてデカい声出さないでくれよ?
「よう、そこの少年」
「………?」
「お前だよ、泣きべそかいてるお前だ」
「なっ、泣いてなんか…!って、どこから……」
「おっと、デカい声出すんじゃねえぞ?静かに、お前から見て左の脇道に入ってこい」
「なんなんだ…?」
一瞬大声出すかと思ったが、なんとか静かに誘導できた。ガキは理解が追いついてないようだが、指示通りに人気の少ない裏路地へときてくれる
よし、この辺でもういいかな?あんま奥に行きすぎるとヤク中共がいるし
「来たぞ!そっちも正体を見せろよ!」
「後ろだよ」
「わっ!?」
ギリギリまで近づいてから『隠密』を解除する。ちょっとしたイタズラだ
なぜかこいつを見ていると、無性にからかいたくなるんだよなぁ。なんでだろう?
「こ、コロロギ!?!?」
「コオロギって言いたいのか?どうやら俺のことは知ってるようだな」
「や、やったっ!俺もコオロギイベント引けた!!これであいつらにも……!!」
まだ何も話してないのに1人で盛り上がってるな。俺の噂もちゃんと知ってるようだ。いつかフェードアウトしようと思ってたけど、これだけ期待されてるならもうちょい頑張っちゃおうかな?
「コオロギ、さん!オレ知りたいことがあって!」
「まあ待て待て、話しかけたのは俺だろ?」
「そうだった、じゃあそれが終わったらオレの話聞いて!」
「せっかちなやつだな」
子供なんてみんなこんなもんなのか?
「少年、お前さっき友達と喧嘩したろ?」
「な、なんでそれを……!?」
「そりゃ見てたからさ。あんだけ騒ぎゃ目立つわな。んで、なんで喧嘩したんだ?」
「それは………」
……話してから思ったけど、これ俺が言うことじゃなくね?NPCが揉め事の仲裁とか不自然だよな
でもなぁ、こいつにゲームを続けてもらうには、友達とちゃんと仲直りしてもらわないといけないし……
いやいや、俺が関与することじゃない。俺はNPC、俺はNPC。ゲームの情報を売るだけのNPCごっこ………言ってて悲しくなってきた
「…………俺だってわるかったけど、あいつらだってわるいんだ……」
「うん?」
「あいつらが毎日毎日クランマスター変われって、みんなでちゃんと決めたのに、だから強くなって文句言えないようにしようと、あのスキルを取って、たしかにみんなでスキルは決めようって、おんなじスキルとか取っても弱いしステータスにあってなかったらダメだからって、でも俺なら使えるって思って、だから………」
「ちょ、待て待て待て!」
黙り込んでたかと思ったら、いきなりぶつくさと文句を言い始めた
ガキ特有の文脈が飛び飛びな話し方で、聞き取るのが非常に難しい
なんとかわかった内容は、「クラマスの座を狙われたから強くなって見返してやろうとした。けどスキルを勝手に取るのは約束破ること」、ってことであってるか?
「で、お前は友達と仲直りしたいのか?」
「……うん……。あっ、そうだよ!仲直りしたいから教えてよ!」
「いや、流石の俺でも仲直りの仕方はわからんぞ?」
「そうじゃなくてスキルの育て方が知りたいんだよ!あのスキルさえ使い物になれば、あいつらだって文句言えないはず!!」
「ほぅ?で、そのスキルは?」
「『時空魔法』だよ!コオロギ、『時空魔法』のレベルの上げ方を教えて!!」
…………なるほどな、そうきたか
『時空魔法』はもうちょい後のスキル。俺みたいに裏技を知ってなければ、ただのBPの無駄遣いになるだけだ
これ、俺のせいかもなぁ……。本来この段階で『時空魔法』を習得するのって、かなり難易度高いはずだからな。ワキ以外の方法だと、『光魔法』と『闇魔法』を同時に習得するにはだいぶ入り組んだ手順を踏む必要があるし
さてと、どうしようか。正規のレベリング手段が使えるのは、現実時間で三週間後以降だ。それを教えてやってもいいが………
目の前のガキを見る。絶対今できる方法を教えろって顔だ。どこか薄暗い感情も見え隠れしてる気がする
どうせ、「ハズレスキルのせいで追放された俺、スキルが覚醒して最強に 〜今更謝られてももう遅い〜 」とか思ってんだろうなぁ……。まだ追放されてないけど
なんでだろう、こいつの考えてそうなことがうっすらとわかってしまう(←なろう主人公)
なんつーか、根本的解決になってないんだよなぁ。約束を守らず勝手にスキルを取ったから糾弾されてるのに、結果良かったから許されるなんてことあるのか……?
う〜〜〜ん……………あっいいこと思いついた
「おう、教えてやってもいいぞ。ただし、俺が言うものを3時間以内に持って来れたらな」
「やった!それで、なにを持ってきたらいいんだ?」
「それはだな………[闇結晶]、それを30個だ!!」
「さ、30個!?」
俺が提示した条件[闇結晶]は、[ダークサーペント]からのレアドロ、もしくは闇属性の魔物からの激レアドロップだ。到底今から集められるものではない
「そ、そんなの無理だ!しかも3時間って!!オレの持ってたのも使っちゃったし!!」
「そりゃあしゃーない、そんだけ価値の高い情報だってことさ」
本当は50個でもよかったんだぞ?
なんせ『時空魔法』は俺のアドバンテージ。教えないでいいのならそれに越したことはない。今回は、こいつが可哀想だから譲歩してやっただけだ
「ほ、他のじゃだめなの?他のアイテムなら持ってこれるから!!」
「ダメだな、変えられん」
「そ、そんな……」
がっくりとする、ガワは高校生っぽい中身中学生。取らぬ狸の皮算用ってやつだな
まあ、追い打ちをかけるためにこんな条件にしたのではない。ここで、ガキに少し助言をしてやる
「まあそう気を落とすなって。友達にでも借りたらどうだ?」
「………え?」
「別にお前1人で集める必要はないんだぜ?友達に借りて、後で返せばいいだろ?」
「そ、そっか。でも……」
「なんだ?仲直りくらいできるだろ?」
「う………俺のこと、信じてくれるかな……」
「約束破ったことか?そりゃしょうがない、お前の責任だ。返す約束も破ったら、それこそクランリーダー譲るとか言って誠意見せればいいさ」
「………わかったっ!みんなに謝って、でもあいつらも悪いから謝らせて、それでみんなから借りてくる!だから待ってて!!」
うむ、だいぶ強引になってしまったけど、仲直りに話を持ってけたな。いやぁ人間関係って難しい
あんまりよくない方法かもだけど、ウジウジしてる子供に謝らせるきっかけをあげれたと考えれば、まあ良いのかな?うん、ヨシ!
「おう、3時間までだぞ?それまではここで待ってるからな。………っと、お前の名前を聞いてなかったな」
一応名前を聞いておく。こんな特徴的なやつならすぐわかるけど、なんか聞いたほうがいい気がした
「オレの名前か?オレは「ドラゴンシャイニング」って言うんだ!かっこいい名前だろ!」
「いや名前ダサッ」
「なんだって!?って時間ないんだった!!もう行くから!!」
そういって、「ドラゴンシャイニング」は走り去っていった
……いやお前かよ「龍輝」
あいつはまあ、なんというか、俺の未来のフレンドみたいなもんだな
『決闘鯖』でレート帯が同じくらいで、よく対戦していた仲だ
にしても、おつむが足りないやつだとは思っていたけど、あそこまでガキっぽかったっけ?
………当たり前か、そりゃリアルガキだもんな。ここ16年前だし
まあ、あいつなら尚更大丈夫だな。結構喧嘩とか多いやつだったけど、結局仲良くなってるくらいコミュ力高いやつだったし
………俺と違って、ちゃんと社会人やってるやつだったし……
嫌なこと思い出した。あー忘れよ忘れよ
うん、生産レベリングしながらタツキの吉報を待つとしますか!
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〜3時間後〜
〜正確には、2時間と50分後〜
「………………」
「………………」
俺の目の前には、涙目で俯いてるガキの姿があった
………え、マジ?




