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毛細血管がいっぱい詰まってるとこ


 隠しダンジョン『森の洞窟』


 隠しといってもそんな見つけにくい場所ではない。ダンジョンといっても宝箱とかはない。多少の分かれ道と最奥にボスがいるだけのしょぼめの洞窟だ


 ここにはダークバットやらダークスネークやら、ダークなやつらがわらわら出てくる


 隠密からの奇襲を狙ってくるため、外より少し難易度が高めだ


 が、所詮序盤のマップ。わかっていれば対処は簡単だ。なんなら奇襲が厄介な分体力が低く、狩りやすい魔物である



「その程度の『擬態』、スキルがなくてもわかっちゃうんだよなぁ、っと!」


「シャーッ!」



 道の隅でじっと待ち伏せているヘビの頭を打ち抜く。バレてないと思って動かないから、じっくり狙いをつけることができる



「いたいたコウモリちゃん。『鑑定』『鑑定』『鑑定』……1匹だけか」



 進行方向の天井にコウモリが5匹かたまっているのが見えた。ああして暗闇の中に身を潜め、下を通った人を後ろから襲ってくるというやつらだ


 そいつらを『鑑定』し、レベル7以下のやつを打ち落とす



「キキーッ!」


「いいぞ〜、こいっ!」



 仲間を全員倒されて怒り狂った残りの1匹が攻撃をしてくる。が、一定距離以上に近づいてこない



「キーッ!」



 何かを溜めるような仕草の後、コウモリの口の前に闇の球ができあがり、俺に向かって飛んでくる


 『闇魔法』の『ダークボール』だ。ダークバットのLv.8以上の個体が使ってくる魔法スキルだ


 雑魚敵では初の魔法だな。魔法攻撃してくる魔物が少ないから、初心者はMND上げてなくて手痛いダメージを喰らうことも多い


 だが弾速は遅く、俺のAGIなら見てから回避余裕だ。なのでもちろん俺はそれを──


 ──脇腹で受けた



「あべしっ」



 そのまま距離を取り、体力を確認する


 ━━━━━━━━━━━━

 HP 8/10

 ━━━━━━━━━━━━


 よし、計算通り。4発までなら大丈夫だな



「よし!もう1発打ってこい!」


「キ!?キーッ!」


「いいぞー!ぶべらっ」


「キキーッ!」


「違う違う噛みつきじゃない、魔法だよ魔法。もしかしてMPないかんじっすかー?」



 しばらくしても噛みつきしかしてこなかったため、サクッと倒した。もちろん魔法以外の攻撃は全部避けたさ



「キー…」


「もう1匹同じことやったら一旦休憩だな」





 ーーーーーーーーーーーー

 薄めた見習いポーション 品質:やや不良


 見習いポーションを薄めたもの

 使用することでHPを3回復できる

 使用クールタイム:20秒 分類:水薬

 ーーーーーーーーーーーー




「よく考えたら、先に作っとくべきだったな。ポーチの中も圧縮できるし」



 現在俺は、洞窟の外に出てすぐの位置で生産活動をしていた


 初心者用錬金セットを広げ、道すがら雑にむしってきた薬草でポーションを作っていた


 見習いポーションに必要な素材は薬草と水だけ。水は『生活魔法』の『飲み水』で出した


 見習いポーションの回復量は本来20HP。薬草の品質が良くなかったので18HPまで落ちたが、それをさらに水で薄めて3HP回復が5本できた


 明らかに損しているが、今の俺にはこまめな回復手段が欲しかったので仕方がない



 そこらへんから木の枝を集め、『生活魔法』の『種火』で焚き火を起こす。木の枝をゴブリンからのレアドロであるボロいナイフを使って削り、串を作る。できた串に一角ウサギの肉を刺して焼いていく


 焼ける間、動かずにじっと待つ。スキルも何も使わない。『鑑定』も『そよ風』も我慢だ


 待つ……待つ……まだだ……



〈条件を満たしました。スキル『瞑想』が獲得可能になりました〉



「上手に焼けましたぁっ!!」



 ーーーーーーーーーーーー

 兎肉の串焼き 品質:普通


 一角ウサギの肉を使用した串焼き肉。少し焦げている

 使用することでEPを10回復する

 ーーーーーーーーーーーー




「許容範囲だろこんくらい!!」


「グギャー!」


「うるせえ『狙撃』!」


「ギャッ!?」



 くそ、品質:良にできなかった。『料理』スキルさえあればこんくらいの誤差なら行けたのに…


 ちなみに『瞑想』の取得条件は、「安全エリアの外でスキルを使わずに一分間動かない」というものだ。そしてウサ肉のジャストタイミングが一分。タイマーに使ったわけだな


 まあUIに時計ついてるけど


 『瞑想』もかなり便利なスキルなので取得しておく。これがあればボス戦とかでジリ貧になっても耐久勝ちできることもあるからな


〈BP2を消費し、スキル『瞑想』を獲得しました〉



EP()も満たしたし回復も大量に作ったし、続きやりますかぁ」






「キーッ!」


「ほっ!ぐふっ」


「キキーッ!」


「よっ!ぐほっ」


「「キーキーッ!」」


「ワーキーッ!ぐはぁっ」



 やべ、後1発喰らったら死ぬわ。ポーショングビッと


 現在俺は、2匹のダークバットLv.10相手に大立ち回り(?)をしている


 噛みつきは避け、『ダークボール』は全て脇腹で受ける。正確には右腹、へその横あたりである。脇ではなかった


 なぜこんな奇妙な儀式をしているのか。別に俺が右脇を攻められると興奮する特殊性癖というわけではない


 俺は今、『闇魔法』を取得しようとしているのだ



 一から説明しよう。この裏技はマッドサイエンティスト気質のある1人の検証勢によって発見された


 ゲーム中盤、とある国の大図書館に医学書のようなものがあった。解体新書のような、人族などの人類種の解剖図だ


 そこには、実際の人間にはない臓器がいくつかあった。そのひとつが、右腹あたり、心臓と離れた位置にある「魔臓」だ


 その医学書によると、魔臓は無属性の魔力を溜めておき、魔法を使用する際に属性を変換させる機能をもつらしい


 それを見た1人のイカれ野郎は考えた───「これ、魔臓に直接魔法打ち込めばその魔法覚えられるんじゃね?」


 そして彼は仲間を巻き込み、『ソロ鯖』を使って検証を開始した



 ───結果、できてしまった



 条件はダメージの伴う攻撃魔法のみ、魔臓付近の場所に一定数値喰らうと取得可能になるというものだった


 この発見は、「『AWR』スキルコンプRTA」界隈(すごく狭い)を大きく震撼させた。これを使えば、既存のチャートを大きく短縮できるのだ


 といっても、レギュレーションとして「フレンドの助け無し」を設定している人が多数だったため、そこまで盛り上がらなかったが。助け無しなら時間飛ばしてNPCの高感度上げ裏技の方が早かったようである


 主に使われていたのは、新キャラをビルドする決闘勢がフレンドに頼んだり、配信者が仲間内の『ソロ鯖』で仲間に頼んだ結果キルしてしまい、内ゲバ発生したり──といった風だ



 ちなみに喰らう必要のある一定数値というのは、その魔法を発動するのに必要なMPの合計である


 今俺がワキワキしてる『ダークボール』は1発あたり消費MP5だ。そして『闇魔法』習得に必要な数値は400、そこに【錬金術師】の魔法スキル解放難易度緩和補正が入り、380ぐらいだ


 1発で体力が2削れるので、152HP分の回復があれば足りるはずだ。足りなくても、外は森だ。材料の薬草はすぐに取れる


 数え間違えがなければあと40発ちょい。まだ半分にも届いてないぜ!



「お前らレベル10なんだしもう1発打てるだろ?ほら、俺とワキワキしようぜ?」


「「キキー!?」」



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