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マジカルデコピン!相手は死ぬ!







「ちょうどいい時間になったな。[暗雲花]はこれくらいにして、そろそろアレをテイムしに行くか」



 夢中で生産をしていたら、いつのまにか空が暗くなっていた。やっぱり農業は『作製加速』があっても時間がかかるな


 [暗雲花]を60本ほど作ったけど、その代わりに煙草が40本近く消費された。また補充しないとな


 さてと。夜になったから、ようやく目的のものを入手しに行ける

 一旦ログアウトして「コオロギ」の姿になる。今後のために必要だからな


 準備を整えた俺は、おニューの[暗雲のローブ]を翻し、夜のフィールドへと繰り出した



      ・

      ・

      ・



 現在地は『ファスト』周辺の草原。別にフィールドならどこでもよかったが、プレイヤーの少ないところを選んだ結果だ


 辺りを見渡す。やはりプレイヤーはほとんどおらず、いるのはモンスターぐらいだ。ダークバットやダークラット、遠くの方にはダークウルフの群れなど、いつも通りの湧きテーブル


 その中に、一匹だけ異質な存在を見つけた。夜闇にぼんやりと浮かび上がり、羽もないのにフヨフヨと漂い続ける半透明な身体


 あれこそが、昨日のスタンピードで猛威を奮った存在[ゴースト]、その下位種族の[レイス]だ


 昨日のイベントがきっかけで、夜になるとアンデッド系のモンスターがポップするようになったのだ



「ーーー!」


「『エンチャント・ダーク』」



 邪魔なモンスターを蹴散らしながら、レイスへと近づく。俺の接近に気づいたレイスが、声になっていない雄叫びをあげて威嚇してくる。……うん、全然怖くない


 ゴーストのときは、半透明な人間の上半身──しかも、ゾンビのように生気のない──であり、夜に出会ったらびっくりするだろうが、このレイスはなんというか、「ザ・おばけ」というくらいデフォルメされている


 白いシーツをボールにすっぽり被せたような見た目。鼻や耳はなく、子供の落書きみたいな目と口だけある。そして、両サイドから腕がちょこんと生えている。かわいい


 そんなレイスに、俺は自分の身体に闇属性のエンチャントをかけ、おでこに軽くチョップをした



「ていっ」


「ーーー…」


「あっ」



 たったそれだけで、レイスはポリゴンになって消滅してしまった



「調整ミスったな、次だ」



 気を取り直して別のレイスを探す。ちょいレア枠なので、二匹目を見つけるのに10分ほどかかった


 もう一度エンチャントをかけ、今度はレイスにデコピンをしてみた



「ーーー…」


「……………」



 またも消滅するレイス


 これでもダメか……、ただテイムしやすいように体力を削りたいだけなんだがなぁ


 レイスやゴーストなどの霊体のモンスターは、物理無効というとんでもない特性を持っている。物理攻撃は全て透過し、ただの盾や壁ならすり抜けて移動できてしまう


 そのかわり、魔法系には滅法弱い。壁や盾にもエンチャントさえかけてしまえば通り抜けられなくなる。純物理職では絶対に倒せない敵だが、魔法スキルが一つあるだけで紙耐久キャラに成り下がる


 うーん、俺のINTが高すぎるな……。アンデッドが耐性持ってる闇属性のエンチャントにしたのに、デコピンで死んでしまうとは


 『セカン』の方に行けばもっとレベルの高いレイスや、『サーズ』にいけばゴーストも出るから体力調整しやすくなるけど、今更移動は面倒だな。次はもっと弱めに攻撃しよう


 15分ほど歩き回って、三体目のレイスを発見した。今度こそはとエンチャントをかけ、レイスを指でプスッと突いた



「ーーー!!」


「死ぬな!ってもう死んでるのか?」



 プスッで瀕死になったレイスが、おててを振り上げて怒りを(あらわ)にする



「ーーー!!」


「『テイム』!」



 襲いかかってきたレイスに向けて、『テイム』を発動する。すると、魔法陣のようなものがレイスの周りに構築され始め──完成する前に、パキンッと砕けてしまった


 テイム失敗だ。スライムの時のように好感度を上げる方法を使っておらず、テイム率100%になってないからしょうがない


 プンスカ状態のレイスが、短い腕を精一杯伸ばしてぺちぺち攻撃してくる

 ……痛くも痒くもない。強いて言えばくすぐったい。[暗雲のローブ]のMND(魔防力)上昇のおかげで、1ダメージすら入っていない


 俺の腕に張り付いているレイスをそのままにし、何度も『テイム』をかける。MPなら大量にある、成功するまで連打してやろう




「『テイム』、『テイム』、『テイム』、『テイム』……お?」


「ーーー!!……?」



 何度目かの『テイム』のとき、魔法陣が途中で砕けず完成し、レイスを淡い契約の光が包んだ。テイム成功だな


 状況が理解できていないレイスに目を合わせ、話しかけてやる



「これからよろしくな」


「ーー?ーー!」


「おう、何言ってるか全然わかんねえ。あ、そうだ、お前の進化先はもう決まってるから」


「ーー?」


「お前になってもらうのは、俺の影武者、もう一人の俺───[ドッペルゲンガー]だ」

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